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福島原発の事故は「原発の事故は日本でも起こりうる」と言うことを見せつけた。島根原発の立地がある私たちにも大きな不安と戸惑いがある。「仮に事故が発生しても放射能の漏洩、飛散はない」という従来の説明は灰燼に帰してしまった。政府は、原賠法による賠償額の上限1200億円を事実上撤廃し、事業者である東京電力にすべての損失補償を求めている。もし、万が一、島根原発で事故が発生し、福島のように30km圏内の立ち入りが制限されれば、事業者である中国電力は40万人を超える住民に対する賠償が発生する。6市2町の資産評価額は4兆5千億円を超えており、即座に破綻することは目に見えている。
電気事業者に対し、国が、原発の設置から運転、管理まで徹底して安全審査を行い、指導、監督するからこそ、われわれは原発の立地を容認しているのであり、原発事故の最終責任は国がきちんと担保しなければならないと考える。つまり、福島のケースでは、国が避難指示をされた個人、法人に対する損失補償をすることが当然と考えるが知事の所感を求める。
従来、示されてきたEPZの範囲は8~10kmであったが、福島では事実上、20kmとなり、周辺30kmも避難地域とされたが、県は、国に対し、EPZの拡大範囲をどのように求めるのか。また、事故発生時の国の対応、安全審査、情報開示のありかたについてどのような意見を具申するか。
仮に、自然災害によって原発に影響があるとすれば、設計基準からして、近隣で一番強固な施設であると考えられる施設に損傷が起これば、道路や鉄道、港湾などは使用不能となる可能性が強い。原発の設計基準はマグニチュード8を超えると聞いているが、一般の建物はそこまでではない。小生は宮城県の女川を訪ねたが、壊滅状態の連旦地の被災者の多くは、東北電力の女川原発に避難しているのである。と、なれば、防災計画はさまざまな想定のもとに、「まずは減災」というコンセプトが必要ではないか。小生は平成9年に土石流災害による集落避難、平成18年の梅雨前線豪雨による灘分地区1000世帯の避難を体験したが、そう簡単には行かない。非常時に電話はつながらず、停電で、街灯もつかない。
地震発生時の対応については、東京ディズニーランドでの危機管理のあり方が非常に高く評価されている。7万人のお客を従業員が整然と誘導し、施設内に2万人を超える人を泊めたという。地震時の防護に売店の販売用のぬいぐるみをずきん代わりに提供し、夜食に販売用のお菓子やスナックを提供したという。これは、非常時にあって「いちばん優先すべきこと」についてのコンセプトが確立されているからだと言われるが、所感を問う。岩手県の普代村は、過去の震災を教訓とし、防潮堤と水門の設置によって、今回の地震、津波の被害を唯一免れた自治体であるが、停電で制御できなかった水門を手動で下ろしたのは、訓練された消防隊員の機転だったと報道されている。
過去、小生は原発から10km圏内である出雲市地合町を含む伊野地区について避難導線の確保について必要性を述べてきたが、「重大事故は起こらないだろう」という意識から「事故は起こりうる」との前提で、避難路の整備について現実的な検討が求められるのではないか。
従来、自民党政権は発電量に占める原発の割合は1/3,全エネルギーの15%としてきた。しかし民主党政権は原発を1/2、25%と、さらに進めるとするエネルギー計画を立案した。福島原発の事故発生によって、原発を推進するとする政府与党の方針を菅首相は白紙とした。しかし、現状では、我が国の発電量の30%が原発で賄われており、産業立地を考えれば、直ちに原発を留めることは難しい。イタリアやドイツでは脱原発を選択した。しかし、陸続きのヨーロッパは隣国からの買電で融通が可能だが、日本は無理。しかも、中・韓両国をはじめアジア周辺国は原発の建設を進めており、我が国が原発を放棄すれば、戦略核を持たない日本は原子力技術を放棄することになる。
確かに、福島原発の事故をすれば、国民に「原発はいらない」という声が強まることは自明で、マスコミも「脱原発」や「自然エネルギーの利用」という報道をするだろう。しかし、長期的には再生可能エネルギーの活用という方向に進むにしろ、原発を止めれば、LNGや石炭、石油の火力発電のフル稼働となり、ただでさえ投機による価格上昇が明らかな化石燃料の価格上昇は避けられず、発展途上国などから日本への非難が大きくなることは必至である。
さすれば、段階的に原発から自然エネルギーの活用への流れが加速するにせよ、当面、原発の運転が継続するだろう。そのためにも、早急なる福島の事故収束が求められるのであり、稼働中の原発の安全性の向上が求められるのである。
しかし、今こそ、島根県は木質系バイオマスによる発電、エネルギーサイクルについて真剣に取り組むべきである。小生は原油高騰の折、島根県の木材利用によるエネルギー代替について私見を述べたが、島根県のおかれた環境からすれば、バイオコークスやバイオエタノールについて真剣に取り組む好機ではないか。
また、従来、メガソーラー計画は10年間で14万kwの施設を建設するというものが、ソフトバンクの孫社長が国内の10カ所に1~5kwの施設を建設すると発表したことから、にわかに各地で関心が高まったようである。昨日、知事は、研究会への参加と出雲市など県内6市町9カ所でメガソーラーについての立地が検討されていると述べられた。自然エネルギーの活用についての取り組みを進化させることには、論をまたないが、島根県にとっては、木質系の検討こそ、置かれた環境から進むべき道だと考えるが、所感を問う。
│掲載日:2011年06月23日│
原発の問題に関する国の責任についてであります。
原発は、日本全体のエネルギーをどうやって確保するのか、どういう方法で確保するのか、これは国が決めるほかないわけであります。そうした国の政策の中で、地球温暖化や他の方法との比較など、安全対策をとりながらエネルギーを確保するということで、歴代の政府が進めてきておるわけであり、国がこうした問題については最終的な責任は国が負わなければならない、当然のことでありまして、議員と同じ考えであります。
福島原発であのような事故が起こり、避難区域が拡大をされたわけであります。その経験をもとにEPZの拡大を図らなければならない、そういうことを国に私どもは申し入れをしておるわけでございます。範囲をどうするかというのは、当座、福島の経験をもとに考えるのが妥当だろうと思いますけども、もちろんそこは専門家の方々がもう少しよく検討してもらいたいというふうに思います。私ども県としては、20キロ、30キロをある程度念頭に置きながら、関係市町と準備を進めておるという状況でございます。
安全対策につきましては、国が福島で起こったことをきちっと調査分析をして、原因と対策について責任を持って政府が電力会社の対応をきちっと指導監督するということです。情報の開示につきましては、事故発生後の放射能の流出の状況や各原子炉の中でどういう事態が生じたか、あるいはSPEEDIでの放射能の流出を予測などが十分伝わらなかったというような問題もあるわけであり、きちっとやってもらいたいということを国に伝えておるところであります。
防災計画はさまざまな想定のもとで、まず減災というコンセプトのもとでも対応しなきゃいかんと思います。今回の問題で見ますと、津波などについて住民の方々にきちっと情報が伝えにくかったというような問題があるわけであります。あるいは、それが人命に大きな影響を与えたという指摘もなされております。それから、津波などに対しましては、避難の訓練をきちっとやっていくということが被害を少なくするのに大変大事だということが今回の経験でよくわかってきておるわけでございますから、そうした対応をきちっとやっていかなければいけないと。そういうことによって、被害を少なくする、そういう努力をしなければいかんというふうに思うところであります。
次に、危機管理に関連しまして、ディズニーランドでの状況を御紹介いただいたわけでありますけども、私もテレビの放映は見てませんけども、ブログでそこにいた人の記録を読みました。議員が紹介されたようなことが書いてあるわけであります。そこはやはり7万人の観客がいて、1万人ぐらいのスタッフが働いている。何か起こったときに、安全対策をきちっとやる。訓練を非常に日ごろからやって、マニュアルに沿って、従業員の人たちが、きちっとした体制が上から下までできておるということであります。我々が参考にしなければならない一つの組織の仕方であるというふうに感じたところであります。
それから、出雲市の伊野地区の避難動線の確保について、重大事故は起こり得るという前提でいろんなものを考えなければならないという御指摘であり、ハードの整備はもとより大事ですけども、避難の仕方、情報の提供、誘導の仕方、そういうものについても、今回新たな経験をしてるわけでありますから、政府の検証の模様なども我々もよく勉強しながら、対処したいと考えております。
原発の運転については、我が国は、現状で電力の3割近いものを原発に依存をしておるわけであり、すぐに全部とめるというのはなかなか難しい問題があると思います。そういう中で、代替的な電力もいろんな手段で確保ができるようでありますから、そういうものについて、できる限りの努力をまずやらなければならないんではないかというふうに思います。さらに、我々の側、企業の側、消費者の側でも、節電の対策をできる限りやらなければならないというふうに思います。中国電力管内におきましては、まだ電力供給の余裕が当座ありますので、1号機をどうするかという問題、中国電力から提起をされておりません。2号機につきましては、そういう問題から考えていかなければならないと思いますけれども、当座の問題としては、政府におきます津波対策でありますとか、あるいは6月7日に発出をされましたシビアアクシデントに対する対応などを勘案しながらこの問題を考える必要があろうというふうに考えておるところであります。
次に、バイオマスとメガソーラーの問題でございますが、バイオマスにつきましては、島根県は御指摘のようにたくさんの森林資源があるわけでありますから、木質バイオマスのエネルギーの活用については県もよく取り組んでいく必要があるというふうに考えておりますけども、啓発でありますとか研究でありますとか、そういうことをやりながら、国の自然エネルギーを活用する対策等がどう進むかということも見ながら研究をしていきたいというふうに考えておるところであります。
それから、メガソーラーにつきましては、ソフトバンクが提唱しておるわけであります。県もあの協議会に参加をするということを表明しております。そして、県下の市町にも、どういう希望を有してるか、あるいは設置の場所があるのか、そういうことを今確認をしてるという状況でございます。