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本年は、島根県松江市の出身で文化勲章を受章されたインド哲学者で、東京大学名誉教授の中村 元先生の生誕100年にあたります。中村先生は、主たる専門領域であるインド哲学・仏教思想にとどまらず、西洋哲学にも幅広い知識をもち思想における東洋と西洋の超克を目指していた日本を代表する哲学者であり、思想家であります。
その業績については、いまさら言うまでもありませんが、「東洋思想の研究およびその成果の普及」ために1970年特例民法法人の東方研究会を、1973年東京大学を定年退官後、東方学院をされざれ開設、学院長に就任し、「寺子屋」と称して、国籍も学歴も年齢も問わず、真に学問を目指す若手研究者の育成につとめられたことです。サンスクリット語・パーリ語に精通し、仏典などの解説や翻訳に代表される著作は『佛教語大辞典』わはじめ多数にのぼり、3万冊を超える文献・資料を収集、研究されていたと聞いています。それが、本年10月、生誕地である松江市にご遺族から寄託されると聞き、素晴らしいことだと思っております。
日本では、欧米とは異なり、哲学家というと「変わり者」「清貧」のイメージで、必ずしも社会的な評価が高いとは言いがたいものがありますが、「人の『心』について」や「21世紀以降の人類社会のあるべき大前提」など、日本人の精神の根元でもある仏教の死生観の一端に触れることができることを幸せに思います。
本年、松江市は、八束支所の建物を改修して中村元記念館を設立されると伺っており、この6月定例市議会に必要な予算措置を提案されていると承っておりますが、設立の経緯から、文献の管理や運営について東方研究会の研究者各位が全面関与され、今後、この地が東洋思想研究者のメッカとして活用されると期待しております。
建物の管理については、既に民間の有志でNPOが設置され、会員や基金の募集が始まっていると聞いておりますが、運営に対する行政の積極的な関わりを期待するものであります。
また、島根県においても今後、研究者の滞在支援のために資する施設整備や中村元研究に対する支援体制をされてはと思いますがいかがでしょうか。
今後の記念館の活用等に対する期待にあわせてお尋ねいたします。(知事)
│掲載日:2012年06月22日│
中村元さんの御紹介、そして記念館の運営等につきましては、議員から御紹介のあったとおりでございます。島根の生んだ誇るべき偉人であろうというふうに思います。その業績は多大であります。そういう意味で、新たにできます施設がよく活用されて、中村先生の考えあるいは業績が多くの人に、子どもたちを含めまして知られていくということは大変いいことでありまして、県としても関係の方々の御意見、御提案等を承りながら支援を相談していきたいというふうに考えてるとこであります。