県議会だより

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平成24年6月定例会一般質問(2)

道路整備の視点について

今春、新規に3つの山陰自動車道の事業化区間が発表され、また、温泉津・江津間の事業化に向けた調査着手の方針により、ようやく、本県の懸案であった高速道路網の整備について「つながる」見通しがつきかけてきました。国土の発展軸にリンクできることは大きな喜びです。
もとより、道路は、高速幹線・国道・県道・市町村道・農林漁港関連道など、その種類によって整備の目的や整備の方法も大きく異なりますが、高速道のように国土の発展軸にアクセスするすることを主眼にするものと地域の交流動線の役割を担う地方道では主眼におくべき要素・視点が異なると思います。
小生は、過去に、中国横断道松江・尾道線の三刀屋以南が新直轄方式で整備され、料金が徴収されない区間となることに伴い、並行する国道54号沿線が裏街道化し、活力低下に苦心するのではと危惧するとの意見を申し上げてきました。
過去、県内各地域で、幹線道路の改良に伴ってバイパスが築造され、既存市街地の活力低下が顕著になった例は枚挙に遑がありません。先人達が、永い時間と資金をかけて築いた都市基盤や空間が道路一本によって消滅する姿を目の当たりにするとき、道路整備のルート決定やまちづくりのあり方に住民が無関心であってはならないと強く思います。地域の生殺与奪に関わる問題に、住む人たちがもっと真剣に向きあってほしいと思うと同時に道路行政に携わる人たちにも、こうした視点を持ってほしいと思うのです。
平成20年5月、出雲大社は60年に1度の大遷宮に伴う正遷座祭が行われ、全国各地からたくさんの参拝がありました。国道431号は大渋滞し、松江から出雲大社まで6時間もかかるという状況で、当時の土木部関係者と平成25年の大遷宮までに何らかの改良が必要だと話し、その必要性について共通理解を持ちました。
しかし、現状はどうでしょうか。全体計画が凍結されたまま、バイパスの暫定事業が実施され、湖北地域の幹線である国道431号の整備は遅々として進みません。道路整備を行うのであれば、まず、全体計画を示し、地域に住む住民や関係行政機関と十分な協議の上で進められるべきであります。
まちの発展を願って既定路線沿線に大きな投資を行い、商業施設や健康・福祉施設などを建設した途端、新しい道路の路線計画が発表され、事業破綻に至ったのでは何もなりません。
とりわけ、財政事情が厳しい本県にとって今後の道路整備は重点化と長命化に力点がおくべきであり、既定路線の機能強化こそ目指すべき方途であると思うのですがいかがでしょうか。
この際、整備手法が異なる各級道路の整備の目的、および整備方法と整備に伴う利害得失についてお尋ねします。(部長) 今後の道路整備に対する視点と維持管理の重点をどのように考えているのかお尋ねします。(部長)
また、福島県の原発事故によって「原発有事」を想定した避難や避難ルートの確保が必要になりました。事柄の性格から、これは緊急を要するものですが、原発から30㌔圏内はおろか10㌔圏内の半島地域の避難路となる地域の導線確保は全く進んでいません。私は、過去何度も、出雲市地合町の主要地方道斐川一畑大社線の整備の必要性について申し上げてきましたが、県は「国の財源措置」を理由にこれを拒んできました。
従来、原発は「事故は起きない」。日本海で大津波は「来ない」でしたが、東日本大震災から「事故は起きる」「津波は起きる」を前提にした対処が必要になっています。
事実、島根原発でも津波を想定し、予備電源の整備などの緊急対策が講じられました。
それに引き換え、島根半島沿岸部の住民に対する津波への備え、防災体制はどうなっているのでしょう。出雲市から住民に配布されたハザードマップは豪雨時の記載がほとんどで、原発事故や津波に関するものはありません。島根県から配布された「土砂災害の啓発チラシ」を見ると、『防災情報はしまね防災ポータルを見よ』と書かれています。
島根半島一帯は津波の危険地域であり、同時にほとんどが島根原発から30㌔圏内の地域であります。原発の立地自治体である松江市の周辺地域となる出雲、雲南、安来地域の原発ハザードマップは県がその作成をすべきです。
同時に津波に対する備えは、住んでいる地域の海抜表示や緊急時の避難路確保は直ちに行う必要があります。小生は、過去にも、ハザードマップの作成、配布を進言し、知事もその必要性に言及されながら、今日まで県民に周知されたとは言い難い状況にあります。小生が住んでいる半島地域のほとんどは、幹線道路が家屋よりも低い海岸沿いに設置され、津波の襲来があれば、ほとんどが通行不能となり、十六島に見られるように浦ごとに密集集落となっていますから、緊急時の避難導線の確保を図っておかなければなりません。
災害から身を守るためには「まず避難」であり、それは、日頃から「万が一の時にどうするか」という備えが必要です。津波に対する「緊急避難」と原発事故に対する対応は密接不可分かも知れませんが、別々に考えるべきであります。
島根半島のみならず、日本海沿岸の住民に対し、直ちに県の責任においてハザードマップを作成、配布され、また、緊急時の導線確保について関係市町村と連携され、必要な措置を講じられるよう強く申し入れいたします。また、「国の財源措置」がないのであれば、原発稼働の条件整備の一つとして、早急にこれを国に求めるべきであると考えますがいかがでしょうか。(知事)

溝口善兵衛知事答弁

避難道路の整備について

原発等の避難道路の整備は逐次進めておりますが、そうした道路につきましては、原発の特措法や電源三法による交付金の対象が法律的には旧鹿島町、旧松江市、旧島根町に限定をされておりまして、それ以外の地域では整備財源の確保に私どもも苦労をしておるというのが現状でございます。しかし、福島原発の状況を見ますと、万が一の事態が起こると放射性物質の飛散は広範囲に及ぶわけでございまして、そういう意味で、広範囲な万が一の場合の対応をとるべきだということは、知事会あるいは電源立地の原発立地の14県でも国に対して申し入れてるとこでございますが、その面につきましてはまだ国の方針、対応等が出てないわけでございますが、我々もこれからも引き続きやっていきたいということでございます。
他方で、議員は、松江市に接する出雲市の島根半島の東の縁辺におきます地合町地内の県道につきましていろいろ御意見をいただいておるわけでございますが、そこはちょうど10キロの、これまでの10キロの範囲のちょうど外にあるわけでございまして、そういう交付金の対象にはなりませんが、私どもとしては、日本海に面した急峻な地形であり、トンネルなど抜本的な改良も考える必要がありますけども、多大な事業費が必要でありますことから、当座の対応で申しわけないわけでありますけども、待避所の設置あるいは急カーブの改修工事などを行ってきておりまして、23年度、24年度も一定の事業を行い、25年度以降にも若干の事業量が残りますけども、一生懸命対応してまいりたいと考えてるとこでございます。

西野賢治土木部長答弁

各級道路の整備の目的と整備方法と整備に伴う利害得失について

土木部が関与します道路法上の道路といたしましては、高速道路、一般国道、県道、市町村道があります。高速道路は、全国で1万4,000キロメートルの自動車専用道路ネットワークを形成するものであり、国土の均衡ある発展を図るため、国の責任において整備されるものであると考えております。一般国道は、県内外の都市間を連結し、県内道路網の骨格となるものであり、松江市、出雲市、大田市、浜田市、益田市などの広域市町村圏の中心地間及び隣県との交流の強化拡大がその整備目的となっております。県道は、国道を補完する道路網であり、島根県におきましては幹線道路と生活関連道路に区分して整備を行っております。幹線道路は、合併前の旧市町村から広域市町村圏中心地へのアクセスや、高速道路インターチェンジや空港、港湾などの交通拠点へのアクセス向上などが整備目的で、基本的に2車線で整備を行うこととしております。生活関連道路は、一定規模の集落から病院などの公共施設への連絡やバス路線の強化などが整備目的で、2車線にこだわらず、沿道の状況や交通量によって1.5車線での整備も行っております。市町村道は、基本的に市町村内で完結する道路であり、道路管理者である市町村の整備方針に基づき整備がなされております。
道路の整備方法は、現道を拡幅する方法と、現道と別ルートのバイパスを整備する方法に分けられます。一般的には、小規模な道路整備や、沿道開発が進んでおらず拡幅のための用地が買収しやすい区間、交通量が少ない区間などにおいては、現道拡幅による整備が主となります。また、大規模な道路整備が必要な場合や、拡幅する場合の用地買収が困難な場合、あるいは交通量が多く、バイパスと現道で交通量を分担させることが望ましいような場合、山や河川などと並行し地形的に現道拡幅が困難な場合などは、別ルートによるバイパス整備の手法をとることが多くなります。どちらの手法を採用するかにつきましては、交通渋滞の解消や交通安全の確保など現況の課題に対して、現道拡幅、バイパスの複数案を設定した上で比較検討を行い、経済性、事業の実現性、土地利用の状況、地域の意向などを総合的に判断して決定しております。
利害得失につきましては、現道拡幅整備の利点は、部分的に供用開始を図ることができ、効果の発現が早いということです。欠点といたしましては、現道沿いの土地利用の状況によっては用地買収が困難となる点が挙げられます。バイパス整備の利点は、主要物件を避けたルートを設定するため、用地買収が比較的早く進む場合が多いことや、通過交通はバイパス、域内交通は現道というように交通を適切に分担させることにより現道沿線の生活環境が向上する点、あるいは信号が少なく走行性の向上が容易に図られる点などがあります。欠点といたしましては、議員御指摘のとおり、大半の交通が新たなバイパスに転換する場合、現道沿いの既存市街地のにぎわいの低下を招く事例があることや、一定区間の整備が完了しないと開通できず効果が発現しないことなどがございます。

原仁史農林水産部長答弁

農林水産に関わる道路整備について

農林水産部の所管する道路としましては、農道、林道、漁港関連道がございます。これらの道路はいずれも、農林水産物の生産流通の合理化による農林漁業の振興を図るとともに、農山漁村地域の生活環境の改善に資することを目的としております。その整備に当たりましては、農林漁業者等、地元住民の声を受けた市町村からの要望に基づきまして、費用対効果の分析や厳しい財政状況を踏まえた優先順位づけ等も考慮しつつ、計画的、効率的に行うこととしており、今後もそのような観点で取り組んでいく考えでございます。
道路の整備後は、この道路を市町村に譲与することを基本としておりますが、維持管理に当たりましては、市町村の施設の長寿命化が重要な課題であります。補修、補強が適時適切に行われる必要があると考えております。
また、このように、当部の所管する道路につきましては、その整備目的や地元合意を前提とした事業手法からいいまして、整備に伴う特段の利害得失は生じないものと考えております。

西野賢治土木部長答弁(2)

今後の道路整備の視点と持管理の重点について

道路整備につきましては、公共事業予算が厳しく、また今後維持管理に係るコストがふえることが想定される状況の中、事業化に際しては、地域の抱える課題を適切に把握し、市町村や地域の方々の意見をよく聞くことにより、県民にとって真に必要な事業に限定して事業を行うことに努めてまいります。また、事業の実施に当たっては、道づくり調整会議などにより道路関係部局間の連携を密にし、効率的な整備を行うこと、1.5車線整備や新技術の採用などコスト縮減を徹底すること、ルート決定時点から情報を公開し住民意見を聴取することや、市民によるワークショップなどを通じて合意形成を図ることなど、透明かつ効果的な事業の執行という視点に立って進めてまいります。
今後、高度成長期に整備された多くの道路施設の老朽化が進んでいき、例えば橋梁につきましては、建設後50年以上経過するものは現在15%の比率でございますが、20年後には45%に達し、急速に老朽化が進んでいく状況となります。このため、損傷が発見された段階で修繕を行うこれまでの対症療法的な対応から、道路施設をきちんと点検し損傷が軽微なうちに修繕を行う予防保全的な対応へ転換を図っております。このことにより道路施設の長寿命化を図り、維持管理費の縮減と平準化及び道路利用者の安全・安心の確保をしてまいりたいと考えております。

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