県議会だより

Reports

平成24年9月定例島根県議会一般質問(2)

新エネルギーの取り組みについて

福島第1原発事故後、政府は新エネルギー政策策定に着手し、2030年の電源構成における原発の比率について各地で意見聴取会を開催した結果、原発ゼロへの要望で溢れ返り、新戦略に「30年代原発ゼロ」と「原発の増設なし」「稼働40年の厳格適用」を盛り込みました。しかし、原子力規制委員会が安全を確認した原発は「重要電源として活用」と記載し、建設中の大間と島根3号が例外、国の原発輸出や使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルが継続されるなど、矛盾は大きくとても基本方針と言えるものではありません。
原発の代替となる火力発電所の燃料費のほか、再生可能エネルギー導入による電気料金への上乗せや、送電網整備への兆円単位の費用負担が確実に表面化し、国民は重い負担を強いられることになりますから、もっと、近視眼的ではなく、中、長期的な対策を考えるべきです。
知事は、従来、島根原発の再稼働判断に関し、「福島原発事故の詳細な究明」「国のエネルギー政策の位置付け」「原子力顧問や県議会、地元自治体の意見」を参考に慎重に判断するとしてきました。今回、経済産業省は島根3号の稼働に関しては設置済の原発と同等の扱いとするように感じます。政府、国会の福島原発事故報告書提出、国のエネルギー政策の閣議決定、原子力規制庁の設置と知事が示された条件は不十分ながら整理されつつあります。この後、島根1号から3号の安全確認がされ、その通知を受けた場合、どのような手順をもって稼働の是非を判断されるのかお尋ねします。
過去の質疑で、島根県の森林面積は52万ヘクタールで、その内49万ヘクタール、94%が民有林です。民有林の人工林面積は19万ヘクタールで、その資源量はおよそ5,200万立方メートルで、切り時を迎える8齢級以上の人工林面積は約10万ヘクタールで、人工林の55%、資源量にして3,500万立方メートル。熱量を原油に換算いたしますと、約3万キロバレル、490万キロリットルで、県の総世帯数26万戸の15年分の消費量に相当する、木質系バイオマスエネルギーのストックがあると聞きました。
2010年の日本の木材需要は、7025万立方メートルで、製材用材35%、パルプ・チップ用材45%、合板用材13%、その他7%です。1973年のピークには、1億1800万立方メートルに達したものの漸減し、6割弱となりました。 供給は2010年は、国産材は1820万立方メートルで、自給率は1955年の95%から低下し、26%です。国産材供給量のピークは1967年の5300万立方メートルでした。
需要が低下する中で自給率は緩やかに回復していますが木材価格は劇的に低下し、ピーク時の1980年に比べると、2010年はスギ13%、ヒノキ20%程度で、木材生産額は、1980年の9674億円に対し、2010年は1946億円と2割の水準です。
山の資産価値は減少し、山はお荷物になってきているのです。例えば、スギ人工林の造成・育成費用は、50年間で1ヘクタール当たり231万円かかりますが、2009年時点の価格で販売した場合91万円にしかならならず、140万円の赤字です。
戦後の林業政策で植林・造林された1000万ヘクタールの人工林が樹齢50年生以上の伐採期に入り、2017年には6割にも達し、毎年8000万立方メートルずつ森林資源が増加していると試算され、島根県でも年間50~60万立方メートルが増加しております。
これを放置すると森林は劣化して資源価値を失うだけでなく、いわゆる「多様な価値」が減じ、計りしれない社会損失をもたらことになります。事実、島根県産材は枝打ちや間伐などの手入れ不足による涙節が多く、価格低迷の因ともなっています。
林業の最大の課題は、山に利益が落ちず、山側の意欲が減退していることであります。しかし、森林面積の4割を占める人工林は伐採期に入り、森林を適正に管理する上でも一定量の伐採は不可欠であり、確実に消費されるバイオマス利用とりわけ電力はネットワークが整備されコストはともかく事業体制を整えやすい点から、バイオマス発電への期待は高まっています。
電力利用の場合は、他の再エネ発電と比べて、燃料調達が容易で発電所、森林、輸送等で地元雇用に大きく寄与するでしょうから、林業・製材業が回ると、そこに利益が落ち、林業活動に結びつきます。
政府の調達価格等算定委員会(FIT委員会)で示された仕様・コストのデータを見ると、未利用木材利用を前提に、出力は5000キロワット、バイオマス利用量を年間6万トンとすると、水分率40%、発電効率25.5%で、森林県での立地であれば、収集範囲は半径50キロメートルとして、乾燥工程を設けてリサイクル材並みの水分率まで落としたうえで燃やすと、所内で使う電力が多くなり、売電陵は若干低下しますが、乾燥効果により年間バイオマス使用量は6万トンに収まります。投資収益率(IRR)は前引き前8%と風力発電並みですが、燃料収集が必要でランニングコストの占める割合が高く、波及効果は極めて高いのか特徴です。
木材の購入価格は、トン当たりで「未利用木材」は1万2000円とかなり高い水準でも収益性を確保でき、山側からも無理なく搬出できる水準ですから、県が量的な目標や再エネ電力の固定価格買い取り制度(FIT)に加えて、県が補助金や税制などのバランスを考慮した全体計画を策定してはと考えます。
そこでお尋ねするのですが、先ごろ県ではメガソーラーに供することが出来る県有地を発表されましたが、驚くほど少ない候補地で、しかも、土地の賃貸価格が極めて高額と聞きました。メガソーラーのみならず、再生可能エネルギー投資の的確性を有する県有地は潜在的にどのぐらいあると見込まれますか。(イ)メガソーラー (ロ)小水力 (ハ)バイオマス (ニ)風力 (ニ)その他 に分けてお示し下さい。
また、再生可能エネルギーに対する県の取り組み方針と事業化の可能性についてお尋ねします。
出雲市ではグリーンステップと言われる治水工事に伴う広大な造成地があり、高圧線の架線があるなど、その地勢的優位性から地元の民間事業者が事業参入について強い意欲が示されていますが、この活用に対する所見をお聞かせ下さい。
私は、過去、再生可能エネルギーとりわけ木質系バイオマス資源の活用は、森林率が全国3位、面積で16位となる森林県である島根県の山村地域が再生できる方途だと申し上げてきました。含み損で立ち往生している林業公社の整理も可能となるに違いありません。
特に、国が設定した再エネ電力の固定価格買い取り制度と過疎市町村の振興事業財源として活用できる過疎債、林業再生事業の間伐事業などを組み合わせることによって、採算性に対する懸念は大きく改善されると思いますが、今後の県内市町村の事業参入に対する県の支援についてその考えをお聞かせ下さい。

溝口善兵衛知事答弁

原発の稼働判断について

先般、政府が1つの戦略を出されました。それを踏まえて、これからの政府の動き、再稼働についてどういうふうな手続でされるのだろうかということを想像しますと、大体次のようなことではないかと思います。
まず、原子力規制委員会が新たな安全基準をつくられる。それに基づいて、各原発の安全性について評価をされる。そして、政府の2030年代原発ゼロの方針との整合性をチェックをするということがあろうかと思います。さらに、国全体あるいはそれぞれの地域の電力の需給上、稼働が必要なのかどうか。ことしの夏の前に大飯原発についてありましたけども、そういうチェックをされるということではないかと思います。そうしたさまざまなチェックを経た上で、国が稼働の必要性について判断をするというふうに思います。
そこで、仮にそうした国から稼働のチェックをした上で稼働の要請があった場合には、国から詳しい判断に至った事情でありますとか、そういうことをよく聞きまして、議会でありますとか、周辺自治体、県民の方々、あるいは専門家の方々などの意見もよく聞きまして、県として総合的な判断をしていくというふうに考えておるところであります。

溝口善兵衛知事答弁

再生可能エネルギー資源活用に対する県の支援と出雲市のグリーンステップについて

本年度につきましては、市町村が中心となって地域の関係者と協働して協議会を設置し、多様な地域資源を再生可能エネルギーとして利活用する取り組みを支援することとしております。これまでに、協議会設置市町村は、出雲市、大田市、飯南町、奥出雲町、邑南町、海士町の6団体であります。
また、小水力発電及び小規模地熱発電につきましては、本年度、県内の事業化の可能性のある適地を調査し、年度内に公表する予定であります。
市町村が固定価格買取制度を適用し、売電事業を行う場合の財源措置としましては、現行制度上は農林水産省所管の国庫補助事業及び公営企業債の活用が可能であります。今後、市町村等が先導的な発電事業に取り組む場合に何ができるのか、さらに検討していく考えであります。
出雲市のグリーンステップ用地の活用についてですが、斐伊川放水路事業は昭和47年の洪水を直接の契機として始められた斐伊川・神戸川治水事業のいわゆる3点セットの一つであります。この放水路に対しましては、地元におきまして、田畑を手放さなければならないとか、あるいは多くの方々の家屋を移転をしなければならないとか、いろんな地元に負担のかかる事業でございまして、大変激しい反対もあったということはよく聞いておるところであります。そういう中で、昭和57年に出雲市の同意のもとに、事業者である国等による地元の協議が開始をされたわけであります。
グリーンステップは、この工事の残土の埋立場としてできたものでございまして、その利活用につきましては、こうした経緯から、地元の皆さんや関係者の意向をよく尊重することが必要だろうというふうに思います。したがいまして、今後、地元を始めとする関係者の意見を聞きながら、意向を尊重して出雲市とともに具体的な利活用策を検討すべきだというふうに考えております。

楫野弘和地域振興部長答弁

再生可能エネルギーに関する県有地及び県の取り組み方針等について

今年度、再生可能エネルギーに関する県有地の調査につきましては、メガソーラーのみ行っております。メガソーラーの候補地につきましては、本年7月、おおむね2ヘクタール以上の土地、おおむね20年以上事業に使用可能な土地、造成や送電線の接続工事等に多額の費用がかからない土地などの要件を満たす県有地につきまして、当面利用可能な候補地として4カ所、約20ヘクタール程度を公表したところで、メガソーラー以外では、小水力発電、地熱発電につきましては、県有地、民有地は別として適地調査を実施しておるところでございます。今後、必要に応じて調査をしてまいります。
県の取り組み方針と事業化の可能性については、メガソーラーは先ほど申し上げました候補地について、今後、公募を行い、貸付事業者を決定する予定でございます。
小水力発電につきましては、農業用水路等の適地調査を行い、事業可能性のある適地を年度内に公表する予定でございます。
風力発電につきましては、全国第6位の導入実績でございます。現在、浜田市で出力4万8,000キロワットの規模の事業を実施中でございます。その他複数の事業計画があり、民間主導で進んでおります。
既存の温泉を利用いたしました小規模地熱発電につきましては、適地調査を行い、小水力発電と同様に年度内に公表いたします。
木質バイオマス発電につきましては、燃料チップの安定供給がポイントとなっております。木材チップ事業者の施設整備と組織化を進め、供給能力は高まりつつあります。今後、事業化に向けた具体的な取り組みがあれば、木材チップ事業者と発電事業者の双方の取り組みを支援してまいります。
県内におきます再生可能エネルギーの事業化につきましては、事業規模の大小はありますが、可能性は非常にあるものと考えております。今後とも、市町村と連携して、再生可能エネルギーの導入促進に努めてまいります。

過去の投稿

園山繁の活動日誌