県議会だより

Reports

平成25年島根県議会2月定例会一般質問(4)

学校教育について

①権利、義務および責任について
「大人」と「子供」は対等ではない。大人と子供は平等だと主張する言論人がいるが、義務と責任を果たせない子供に大人と同じレベルの権利が与えられるわけはなく、様々な保護がされている子供と大人は大きく違うと考えるが所見は。
子どもの権利条約の内容には、生きる権利 、守られる権利 、育つ権利 、参加する権利 の4つの柱があるが、同時に「まずルールを守ること」が求められている。憲法の生存権を盾にして、権利と義務はイコールではないと主張する人がいるが、学校と生徒、企業と従業員などの関係は、基本的に社会契約である。「権利には義務がつきもの」というのは、 「一般的な権利の主張には義務を果たすという約束がつきもの」と解するべきであり、学校においては、まず「児童・生徒は教師の指導に従う」という基本的なルールを確認する必要があるのではないか。子供の権利は十分に尊重されるべきではあるが、教師の存在があまりにも軽く捉えられていることに危惧を持つのである。

②体罰など不適切とされる事案の情報について
文部科学省は体罰事案などの不適切事案についてどのような報告、対応を求めているか。
小生は桜宮高校の事案は明らかに暴行事案であり、体罰事案ではないと考える。報道は暴力=体罰としているが果たしてそうだろうか。
昨年は滋賀県の市立中学でいじめ自殺が起きたが、日本では学校での自殺のほとんどが公立中学を舞台としている。自ら死を選ぶのはどこにも逃げ場がない絶望の深さを示している。公立中学の生徒がいじめで自殺するのは、義務教育によって退学の自由がなく、また相手の生徒を退学させることもできず、いじめが未来永劫に続くように感じられるからである。つまり、義務教育現場での問題事案に対する対応には、不足しているものがあるのではないか。
高校でいじめ自殺が起きない理由は、いじめられた生徒が転校や退学するハードルが下がることと、問題のある生徒を停学・退学処分にし易いことで説明できる。現状が改善できる希望があれば誰も死のうとは思わない。だから、高校の部活動で自殺が起きるのは不可解で、死を考えるほど思いつめる前に、退部してしまえば済むはずだ。大阪や岡山のような事件が起きるのは、退部できないような強力な何かが、部活動に働いているからである。マスメディアは顧問教諭の体罰を大きな問題にしているが、簡単に退部できる環境がないことが重大な問題であり、生徒を精神的な監禁状態に置く状況こそ不適切な指導が継続される可能性を大きくさせているのであり、その原因を究明しなければ、問題の本質を見誤ると思うが所見は。
教師と児童、生徒の関係はそれこそ千差万別で、指導方法や対処もケースバイケースだと思うが、学校や教師間でもっと情報の共有が必要だと考えるが、果たして朝や夕刻の職員朝礼や終礼の時間だけで対応可能だとは思えない。現状、勤務時間内での対応は不可能ではないか。児童・生徒や教師の授業、課外活動、部活動などにおいては、常に複数の教職員が情報を共有することによって不適切とされる事案が防止または発生した場合の対応が可能である。学校や教師への支援についてどのように考えるか。また、教師の有給休暇の取得状況と残業時間の実態把握はどのようになっているのか問う。

③ふるまい向上プロジェクトについて
ふるまい向上運動に対する県民の認知度についてどのように把握しているか。先週、小生は子育て期間中の世代の男女300人ほどに「ふるまい向上プロジェクト」に対する認識を問うたところ、「聞いたことがある」と答えた人は20%ほどで、取り組みの内容を知る人はほとんどなかった。小生は江戸時代に会津藩が「什の掟」として、藩内の少年達に毎日唱和をさせたということに感銘を受けた。
一 年長者の言ふことに背いてはなりませぬ
二 年長者には御辞儀をしなければなりませぬ
三 虚言を言ふ事はなりませぬ
四 卑怯な振舞をしてはなりませぬ
五 弱い者をいぢめてはなりませぬ
六 戸外で物を食べてはなりませぬ
七 戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
ならぬことはならぬものです。
というものである。
多くの人は、教育勅語の
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ
我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ
常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ
是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
という内容について、現代人に推奨すべきものだとされる。小生もその通りだと思うものの、現行憲法下でこれを全県の学童に唱和をさせることは諸般の状況から不可能だと思う。
そこで、「什の掟」を現代風にアレンジし、例えば、
一 先生の 言いつけを 守ります
二 父母 祖父母を 敬います
三 友達と 仲良く します
四 弱いものいじめは しません
五 うそは つきません
六 交通ルールを 守ります
七 ご飯は 良く噛んで 全部食べます
八 早寝 早起きを します
などの内容で、「私たちの約束」として、毎日の朝礼時に県内の全小学校でふるまい向上プロジェクトの一環として唱和をしてはと思うが所見を求める。

④教師の懲戒権について
先の定例会で小生は教師の懲戒権について教育委員会で議論されるよう希望を述べた。滋賀や大阪の事案を想起したわけではないが、学校でのいじめや体罰が自殺の原因とされ、大きな社会問題化していることもあり、委員会で討議されていると思う。仄聞するところでは、教育委員のなかに「教師は、児童、生徒がどのような言動をしようとも、つねに沈着冷静に対応し、決して自らの感情を表すことがあってはならない」などと仰天の見解を持つものがあると聞き絶句した。現在、教育委員に県立学校の教員OBはなく、ここのところ、学校現場の経験を持つ人がほとんど選任されていないことを危惧するところであるが、教師の懲戒権について改めて見解を求める。

⑤学校、教師の支援について
体罰事件の報道によって学校での指導のありかたに大きな関心が寄せられている。教師のモチベーションを低下させることなく、教職員が島根の教育に全身全霊を打ち込めるようにするためにはどのような支援が必要か、見解を問う。

山本弘正教育委員長答弁

子どもの権利、義務と教師の指導、教師への支援について

私は、大人であろうと子どもであろうと、1人の人間として、その権利が尊重されるということが大前提にあると考えております。その前提の上で、例えば子どもには参政権が制限されるとか、少年法の規定により、成人に比べて一定の保護があるなど、いわゆる大人とは違う扱いとなっていると理解をいたしております。
また、議員からありました子どもの権利条約においても、権利にあわせ、家庭や地域社会の一員としてルールを守って行動する義務があるとしております。さらに、この条約に関連いたしまして、文部科学省が通知を出しております。その中に、意見を表明する権利などに対しまして、教育目的を達成するために必要な合理的な範囲内で児童生徒等に対し指導や指示を行い、また校則を定めることができると示しております。私も、当然のことですが、そのとおりであると考えております。
話が少し飛びますけれども、東日本大震災の被災地に、島根県の中高生がたくさんボランティアとして行きました。被災地から帰ってきた彼らは口々に、今自分にできることを精いっぱいやりたい、誰かの役に立ちたいと言っておりました。明日の日本をつくるのは、まさにこの子どもたちでありまして、その子どもたちを育てるのが学校の教師だと思っております。
次の世代を育成するという崇高な職務を一身に背負う教師には、ぜひとも自信と誇りを持って、教育という職に邁進してほしいと考えております。だからこそ、いつまでも自分を成長させていく努力が必要だというように考えております。
私は、島根県の教師は真摯に児童生徒に向かい合い、日々一生懸命指導に当たってもらってると思いますし、信頼をいたしております。もちろん暴力や体罰があってはなりませんが、教師は引き続き毅然とした態度で自信を持って指導に当たってもらいたいと思っております。
校長は、学校運営の方針のもと、リーダーシップを発揮するとともに、教職員と十分に意思疎通を図りながら学校運営に当たっていただきたいと思っております。そして、全教職員が共通認識を持ち、それぞれの得意分野で力を発揮でき、教師が指導に悩んだときには互いに相談し合い、保護者からも学校の考え方を理解していただけるような、風通しのよい学校にしてもらいたいと思っております。
今後も教育委員が学校を訪問して現場の声を聞き、学校現場との連携を密にしながら、教師と学校を支援していきたいと考えております。

今井康雄教育長答弁

学校の不適切事案情報の共有について

今回の滋賀のいじめ、大阪の部活におきます暴力、体罰の事案、これらにつきましては、私どもも実は報道されている範囲内の情報しか持ち合わせておりません。一般論での答弁になることをお断りをいたしたいと思います。
いずれにしましても、今回のように生徒が追い詰められて自殺にまで至るような事態になったということは、あってはならないことだというふうに思っております。こうした事案につきましては、本来は、関係者がそれぞれの事情、背景、原因、学校等の対応状況等を検証いたして、今後の生徒指導等に生かしていくことが大切であると思っております。そして、深刻で重大な結果を招かないためには、何よりも、子どもが抱える課題にいかに早く気づき、手を差し伸べるかが大切だと思っております。そのためにも、学校教員はもとより、家庭や地域社会とも十分に連携を図って対応していく必要があると考えております。
なお、義務教育と高校では紹介できる内容が異なっているということは御指摘のとおりでございます。今回の滋賀の事案につきましては、第三者によります調査以下の検討報告が出されておりますが、その中で、学校の対応について、学校がいじめを認識できたにもかかわらず、救いの手を差し伸べなかったという学校の対応の不足が指摘をされております。繰り返しになりますが、これは義務教育、高校教育通じまして、問題の解決に向けまして、早期に問題を発見し、適切な対応をしていく必要があるというふうに考えております。
児童生徒や保護者の方々の考え方も多様化する今日でございます。県内の教育現場におきましては、教員は学習指導、生徒指導、部活動など、さまざまな指導面において多くの課題に直面しながら一生懸命指導に当たっていると認識をいたしております。そうした中で、教師に自信と誇りを持って子どもたちの指導に当たってもらうためには、何よりも学校が組織として統一した指導方針のもとで生徒指導に当たること。そして、管理職が教員との意思疎通を図り、教員間で情報や指導方針を共有していくということ。大変大切なことだというふうに思っております。このため、御質問にございました毎日の朝礼、終礼、あるいは毎日の職員会議、さらには随時関係者での緊急会議等で情報の共有に努めております。さらに、定期的に校内での服務規律研修も行っておるというふうに承知をいたしております。
教育委員会といたしましては、先ほど委員長からも答弁いたしましたように、こうした学校教員への支援をしっかりと行っていきたいというふうに考えております。
私のほうから具体的に申し上げますと、事案についての指導、助言、それから事例を掲載した研修資料の提供、また生徒指導への支援といたしまして、スクールカウンセラーと専門家の派遣、それから部活動における負担軽減のための外部指導者の派遣、また教員のメンタル面での支援のための臨床心理士によります巡回相談等を行ってまいります。
これに関連しまして、教師の有給休暇と残業時間の実態把握についてであります。
教職員の年次有給休暇の取得状況でございますが、平成23年度、高校、特別支援学校では平均で年間11日、それから小中学校では10.6日というふうになっております。
それから、勤務時間外、いわゆる残業時間の実態でございますが、県立学校につきましては、毎月教育委員会のほうに報告を出すようにしております。ただ通常の職員の勤務時間外と違いまして、部活動中でありますとか、あるいは舎監でありますとか、いろいろな要素が入っておりますが、その報告によりますと、高校、特別支援学校で月100時間を超える者、いわゆる産業医の面接、これが必要な者でございますが、これが11.8%を占めております。それから、小中学校につきましては、詳細なデータ、私ども持ち合わせておりませんが、実態を聞きますと、特に部活動を担う中学校の教員においては、先ほど申し上げました高校の勤務と同様に、いろいろな課題を抱えた勤務実態にあるのではないかと考えております。

今井康雄教育長答弁

ふるまい向上運動について

この運動でございますが、子どもたちに礼儀作法、ルール、思いやり、規範意識、こういったものを身につけてもらうことを目的に、3年前から始めた事業でございます。そういった観点から、学校教育や社会教育を主に担います学校や公民館等ではさまざまな取り組みが行われてきているところであります。ただ、御指摘ございました一般県民への認知度という点では、まだまだ我々の調査でも十分ではないというふうに思っております。
そういった中で、来年度以降、県民の方々にもっと関心を持っていただくように、さらに工夫を凝らしながら、取り組みを進めていきたいというふうに考えております。
その関連で御提案をいただきました。御提案いただきましたことにつきましては、大変おもしろいお考えであるというように思っております。現在進めている運動の中で、横田町、横田しぐさ7ヶ条ということで取り決めをして、学校のほうで取り組んでおります。それから、飯石小学校ではふるまい向上20ヶ条、こういったものも取り組まれております。
現在、こうしたことを含めまして、各学校でこの3年間取り組んできた内容、成果を整理をしているところであります。それを踏まえまして、今後、全県的に子どもたちに取り組んでほしいこと、こういうことが整理できればいいなというふうに我々も思っておりまして、今の御提案を受けまして、どういう内容がよいのか、あるいは学校でどういう活用ができるのか、市町村教育委員会との協議も進めながら、検討してまいりたいというふうに思います。

今井康雄教育長答弁

教師の懲戒権について

改めて、懲戒権に係る法の規定を見ますと、学校教育法第11条では、校長及び教員は教育上必要があると認めるときは、児童生徒に懲戒を加えることができる。ただし体罰を加えることはできないと規定をされております。この懲戒には、叱責や起立、居残りといった事実上の懲戒、それから退学や停学、訓告といった校長が行う処分がございます。
いじめや体罰が社会的な問題となってきておりますので、そのこともありまして、教育委員間でこの教員の懲戒権も含めまして、生徒指導のあり方について意見交換の場を持ってまいりました。その中で、主な意見、出た意見としまして、まずどうしても体罰というのは容認されるものではない。当然でございますが。それから、どこまでが懲戒として教育上必要な行為なのか。どこからが体罰かというのは明確な境界線を引くことはなかなか難しいのではないかという意見。それから、子どもたちや教員が萎縮をして、指導に支障が生じるのを危惧するという意見。それから、子ども、保護者、地域住民を含めた社会全体が一人一人の人間を大事にするという人権教育がやはり大切である。こういった意見がございました。
懲戒ですが、懲戒はそもそも、児童生徒の自己教育力や規範意識の育成を期待しているものでございます。したがいまして、児童生徒の問題行動に対しては、教師は自信を持って毅然として指導に当たってもらいたいというふうに考えております。ただ申し上げるまでもなく、先ほどの法律の規定にございますように、懲戒に当たっては体罰があってはならず、教育者として愛情や使命感を持って児童生徒の指導を行い、また日ごろから、教員、児童生徒、保護者の間で信頼関係を築いていくことが必要であると思っております。
県内では、現場の教員が児童生徒のために懸命に努力をしてると承知をしております。今後も管理職を中心に、学校全体で問題に対応し、そうした教員の教育活動を支援していくことが大切であると考えております。

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