県議会だより

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平成25年島根県議会2月定例会一般質問(3)

社会資本整備について

①社会資本整備の考え方について
経済学における社会資本の定義は、「企業・個人の双方の経済活動が円滑に進められるために作られる基盤のことで、国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設でインフラストラクチャーに相当する。その分野は道路・港湾・住宅・公園・緑地・工業用地・上下水道・公営住宅や病院学校等多岐に渡る。公共の福祉のための施設であるが、これらについては民間で供給することが難しく、民間が事業として成立しにくいため政府や公共が重要な供給主体となることが予想され、政府や公共機関が確保し建設、管理を行うことが多い。」と書かれている。
社会資本は一般には公共的資本ストック(行政投資と政府企業投資の累積額)を指し、民間資本ストックと区別される。社会資本は社会的間接資本または社会的共通資本とよばれることもあるが、これは、社会資本が生産活動や消費活動などの経済活動一般の基礎となり、財・サービスの生産に間接的に貢献することを意味する。
民間資本は明確な動機(利潤動機)のもとに、市場機構を通して建設される。しかし社会資本は、民間企業に委ねていたのでは、その供給がなされなかったり、不足したりするので政府の手に委ねられるのである。しかし、政府の公共投資は、民間企業の場合と異なり、明確で客観的な基準のもとに遂行されるわけではなく、また社会資本から生み出される財・サービスも、公共財としての性格を持つものが多く、民間財のように、受益者負担原則に基づいて、その利用者から料金を徴収することは困難である。したがってしばしば、それらの財・サービスはゼロまたは低廉な価格で供給されることになる。
われわれは今まで、社会資本はいかなる経済主体に対してもゼロまたは低廉な価格でしか対価を求めないものとして来たが、社会資本の利用者たる受益者に対し一定の負担を追求する必要があると考える。例えば、自動車保有者は道路を利用することにより、多大の便益を享受する。直接的には無償で利用しているように見えるが、燃料に課税されることで便益に対する負担をしており、全般的に合理的な社会資本の受益者負担のありかたを検討すべきであると考えるが所見は。

②景気対策としての公共事業について
安倍政権は国土強靭化を掲げ、公共事業の拡大に動き出した。日本の社会資本は短期間に集中して整備された。国土交通省社会資本整備審議会の資料によると、道路が最も多く建設されたのは1960年代後半、橋梁が70年代前半、河川(水門、ダム)が80年前後、港湾が80年代前半、公営住宅が70年代前半、公園が70年代後半、学校施設が70年代後半から80年代前半である。これらは現在30~40年経過していることになる。
今後これらが一斉に老朽化し崩壊の危険は加速度的に高まる。これが“朽ちるインフラ”問題だ。老朽化の症状が唯一笹子トンネルの天井板だけに表れ、他は安全だという理屈はあり得ない。
東日本大震災の時に津波被害を受けず、震度5以下だった地域でも事故が多発した。東京九段会館では天井が崩落して、2名の方が亡くなった。震災はきっかけに過ぎず築77年という老朽化が真の原因だ。この事故では、遺族が管理者を業務上過失致死傷で訴えている。老朽化の危険を知りうる立場にありながら供用を継続し人命を失った、その罪は重いとする。今や、老朽化を見過ごすことは、罪に問われる可能性がある。
首都高速道路は第1期開業が1962年であり今年は51年目となる。先月、首都高速道路会社の第三者委員会は、特に劣化著しい箇所の架け替えや大規模改修に最大9100億円の投資が必要と発表した。全体を架け替えるには何兆円かかるかわからない。もちろん簡単に調達できる金額ではない。首都高速道路の改修のために、北海道や九州の人が支払う税金を多額につぎ込むことは許されるはずもない。今後は、利用料金の大幅な引き上げや高架方式の廃止など、抜本的な見直しが不可避である。
こうした中、安倍政権では公共投資拡大に舵を切っている。今年度の緊急経済対策を来年度予算と合体して15ヵ月予算とし、10兆円を超える公共事業予算を確保している。このこと自体は正しい。国民の生命に危険が及んでいる状況に対応するには当然の措置である。
しかし、“朽ちるインフラ”問題は、1、2年景気対策として公共事業を拡大する程度では、まったく追いつかない構造的な問題だ。報道では、日本に今ある社会資本を単純に更新するだけでも、年間8.1兆円の投資を50年間続けなければならないとあり、社会資本の耐用年数が50年であれば、51年目には再度同額を投資しなければならず、8.1兆円の投資が未来永劫続くのである。
さて、島根県はどうだろうか。社会資本整備、維持・管理の構造的問題の解決を図るための処方箋が示されているだろうか。島根県の社会資本の全量はいくらか。また、その耐用年数と施設の点検状況およびそうしたデータ整備、将来の維持更新費用の推計と、財政的に持続可能な社会資本更新投資計画の策定はどのようになっているのか示されたい。
小生は、山陰道の整備は別にして、島根県の今後の方向は、老朽化したインフラの維持管理・更新投資を優先し、新規投資を後回しにするという明確な構造転換が必要だと考える。今までも、維持補修の重要性は指摘されてきた。しかし、実際に有効に支出されてこなかったのは、同時に「新規も重要」と言ってきたからである。しかし、これを明確に切り替えるべきである。インフラの9割は地方自治体が所有している。島根県はすでに橋梁やトンネルなどの長寿命化に取り組んでいるが、公共施設は「広域化」「多機能化」「ソフト化」をキーワードに現在の社会資本の選択と集中が必要である。また、多機能化やソフト化が使えない道路、橋りょう、トンネル、水道、下水道等のインフラに関しては「予防保全マネジメント」が有効で、建設会社など民間企業にアウトソースすれば、費用の圧縮になると考えるが所見は。
従来型の公共事業では景気対策にならない。なぜなら、現状の財政状況からすれば、建設予算が長期に拡大する見込みは少なく、事業者が大規模な投資や新規雇用をするとは考えにくい。国債発行による公共事業の拡大は財政状況を悪化させるだけであり、いま私たちに必要なのは、「財政負担によって社会資本を大量に保有していることが豊かである」という認識から「財政負担が少なくても、質の高いスマートな社会資本を持つ」という知恵を出すことであると考えるが、所見は。

③事業者の確保と発注・受注方法について
除雪や災害時の対応など地域の建設事業者の社会的な役割は大きいが、事業量の減少とともに一定規模の建設事業体は減少している。とりわけ、山間地域や海岸地域などの条件不利地域の事業体の存続は地域の社会コストに直結する問題でもある。もちろん、債務超過などに陥っている事業体や施工能力などに問題があるものは論外だが、指名競争入札での算入機会の付与や総合評価方式の加点要素に「地域性」の観点を強化すべきではないか。

溝口善兵衛知事答弁

社会資本の受益者負担のあり方について

受益が比較的特定をされてると。そして、その受益に対する負担を容易かつ合理的に徴収できるものは受益者負担というほうがいいだろうと思います。例えば、下水道でありますとか、あるいは上水道も実質上そういうことです。料金という形で負担をしているわけであります。あるいは、工業用地、住宅用地などは、本来は民間で供用、提供すべきものでありますけども、大きいものになりますと、民間ではできませんから県がやってますが、こういうものも用地の取得費を払うということで、受益者負担といいますか、当たり前ですけども、そういうことが行われてるということです。
難しいのは、道路のような多くの人が使うものについてどういう負担をするかということでありますが、多くの場合は、燃料に係る税金という形で負担をしておるわけです。自動車を使う人が道路を使うと。高速道路なんかになりますと、料金という形で受益者負担をするということもありますが、高速道路などについても、一般国道とそう変わらないというようなことになりますと、それは無料ということがあり得るわけでありますが、無料ですけども、それは別途国としてガソリン税だとかいろんな形で税収を受けてますから、そういうもので道路をつくるということで、広い意味での受益者負担がなされていると。
ただ以前はそういうエネルギー、ガソリン等に係る、あるいは自動車の使用に係る税というのは特定財源化されてましたけども、そこは外れておるということです。従来は、特定財源の中で道路整備を行ってまいりましたけども、道路整備を落とすと、道路財源のほうが多くなりますから、そこは国の財政ということも考えて一般財源化してますけども、受益者負担ということは広い意味で貫かれてると。今後も、そういう一般的な税制でやるよりもいいかどうかというのは、受益の特定性とか、あるいは徴収の仕方とか、いろんな要素を考えてやっていくべきものだというふうに思います。
それから、財政負担が少なくても質の高いスマート社会資本を持つと。これは、スマート社会資本ということは、いろんな形がありますけども、うまく管理をしていくということだろうと思います。必要でない、あるいは利用頻度の少ない施設などを多くつくるよりも、それをみんなで一緒に使用するとか、あるいは管理運営を民間に任すとか、いろんなことがあるんだろうと思いますけども、日本の財政事情、あるいは地方における財政事情とも関連し、スマートな社会資本を持つということは大事な課題だと思いますが、ただ私は、島根などのように、道路の整備がほかの県よりも全国的におくれてるようなとこは、その必要性は別になくなったわけじゃなくて、それは公平の観点から、発達の早いとこから順番にやってきてるわけですから、そういう部分はきちっとやらなきゃいかん。だから、社会資本一般の話と整備がおくれてる、私どもは高速道路などにつきましては、ミッシングリンクがある県知事が一緒になって、そこを早く整備をしてもらいたいということを国に言っとりますけども、それはいわば当然の権利と申しますか、として国に強く要請をしていかなきゃいかんと。
したがいまして、社会インフラあるいは社会資本整備の予算がふえるということは時代おくれだというのは、それは整備の進んだ地域の人たちの逆のエゴでありまして、我々はおくれてるわけですから、そこはちゃんと早くやってもらうように国に引き続き強く要請していく必要があるというふうに考えております。

赤松俊彦総務部長答弁

島根県の社会資本について

まず、社会資本の量でございますが、県が総務省のモデルにより作成をしておりますバランスシートにおきましては、庁舎、学校、道路、橋梁、トンネル、河川、砂防ダム等のいわゆる社会資本を公共資産というふうに位置づけて計上しておりまして、平成23年度の数字でございますが、3兆444億円となっているところでございます。
バランスシートの作成に当たりましては、施設更新の目安となります耐用年数についても整理をされておるところでありまして、庁舎等は50年、道路48年、橋梁60年などと定められており、毎年減価償却を行っておるところでございます。
社会資本の点検、更新などにつきましては、知事部局、教育庁、警察本部がそれぞれ対応しているところでありまして、また知事部局におきましても、庁舎等につきましては総務部、土木、農林施設につきましてはそれぞれ土木部、農林水産部が担当をしておるところでございます。
私のほうから、今回、各部所管の施設等全体についての概略を説明をさせていただきます。
点検状況でございますが、庁舎、学校につきましては、法律に基づく定期点検のほか、長期保全のための点検を定期的に実施をしておるところでございます。道路につきましては、1週間に1回から2回の頻度でパトロールを実施をしております。砂防ダムにつきましては、1年から3年に1回の割合で点検を実施をしております。河川につきましては、築堤区間などの重要な区間につきましては、出水期前1回と大きな出水の後に点検を実施し、その他の区間につきましては、年1回以上の点検を実施をしております。橋梁やトンネル、河川の水門などの構造物につきましては、点検要領を定め、それに基づき点検を実施をしておるところでございます。
次に、データベース化という意味でのデータ整備についてでございますが、職員宿舎につきましては、現在、基礎データを整理をしているところでございまして、25年度中の整備を考えておるところでございます。
庁舎等でございますが、まず知事部局におきましては、建築年度、構造などの基本情報、改修履歴及び点検結果などのデータについて整備済みでございます。教育庁におきましては、各学校の建築年度や改修履歴等の情報については整備済みとなってございます。警察においては、主要施設について、データベース化の前提となります施設保全台帳の整備を終えている段階でございます。土木施設のうち橋梁は、点検結果や修繕履歴等についてはデータの整備は終わっております。その他の土木農林施設につきましては、点検結果などの情報について整備済みとなっておるような状況でございます。
次に、将来の維持更新費用の推計というようなことでございますが、庁舎、学校は築後30年で大規模修繕、60年で建てかえとして推計を行っておりまして、今後40年間の更新費用の推計を実施をしておるところでございます。また、橋梁についてでございますが、2,644橋の今後60年の修繕費用の推計を実施をしておるところでございます。それ以外のものにつきましては、現在、長寿命化計画等を策定中でありまして、計画策定後に維持管理更新費用を推計をすることとしておるところでございます。
次に、社会資本更新投資計画の策定についてでございますが、現在、施設の更新投資計画は策定をしておらないという状況でございます。策定に当たりましては、国、県を含めた今後の財政状況でありますとか、制度をどういうふうに見ていくのかというような難しい面があるわけでございますが、まずは将来の維持更新費用の推計に努めるとともに、更新投資計画については研究をしていきたいと考えておるところでございます。
また、毎年度作成をしております財政見通しにおきましても、現在、一部施設の大規模修繕費や改築費のみを織り込んでおるところでございますが、可能な限り反映できるように努力をしていきたいと考えておるところでございます。

西野賢治土木部長答弁

予防保全マネージメントについて

道路などのインフラにおいて、早期に損傷を発見し、適切に補修を行っていく予防保全的な管理は、維持管理費の縮減や平準化につながることから大変有効な手段であると考えております。さらに、民間企業に予防保全の考えを取り入れた維持管理についてアウトソース、外部委託化することにつきましては、メリットとして、まず民間がみずからの判断により、自社のノウハウを活用することによるコスト縮減が可能であること。また、民間企業の新たな投資機会の拡大などあると考えられます。また、アウトソースの内容が長期的、包括的になるほど、その効果は大きくなると考えられます。
イギリスのポーツマス市では、修繕を含めた道路管理を25年間の長期にわたりアウトソースしている事例もあるようですけれども、国内の一般の道路においてこのような事例はないようでございます。また、国内でこのような長期間にわたる包括的な契約を導入することにつきましては、議員のほうから九段会館の天井の崩落の事例を挙げられましたが、災害や事故などさまざまなリスクに対する民間企業と行政とのリスク分担や瑕疵担保の問題や、長期間にわたるサービスの質の担保、長期間にわたり契約可能な業者が限られるのではないかなど、検討すべき課題も多くあります。
今後、国や他自治体の状況を見ながら、海外の事例も含め、研究してまいりたいと考えております。

西野賢治土木部長答弁

事業者の確保と発注、受注方法について

地域の建設業者は、災害対応や除雪、インフラの維持管理など、地域社会の維持に不可欠な役割を担っております。例えば、東日本大震災においては、地元の建設業者が震災発生直後から応急復旧工事を実施したことについて高く評価をされております。工事発注に当たりましては、工事規模や内容等に応じて適切な参加条件を設定することが必要だと考えております。
例えば、一般土木工事で1,000万円未満に適用している指名競争入札につきましては、地域に密着した工事が多いため、地域維持の観点から、地域に精通した管内や旧市町村単位の企業を対象として入札を行っております。また、総合評価方式入札におきましても、現場の自然的、社会的条件を熟知している必要がある工事や、比較的小規模工事などでは、必要に応じ、地域精通度などを評価対象として入札を行っております。
今後も、地域の安全・安心を担う企業の維持のために、県土整備事務所管内ごとの実情に応じた発注条件の設定に努めてまいりたいと考えております。

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