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①金融円滑化法の期限切れ後の対応について
金融円滑化法の期限切れに伴う各種の対応が執られているが、債務の繰り延べでは企業の再生はない。成長分野の創出こそが低迷を脱する方途である。金融緩和で通貨の供給を増やしても投資の対象が創られなければ、マネーゲームを助長させるだけである。財政支出によって成長を誘導するのであれば、もっと強力に分野を絞った政策誘導を実施すべきではないか。例えば、自然エネルギーの供給を図るのであれば、原発事故で避難を余儀なくされている地域の宅地や農地、山林を国が借り受け、ギガソーラーの施設をつくるとかといった施策を考えるべきだ。過去、何度も申し上げてきたが、化石燃料の輸入を20%減少させることができれば年間4兆円の国富が国内に止まるわけで、農地や山林の利活用を促進するバイオマスエネルギーの利活用策の推進こそ目指すべき方途だと思う。景気対策として社会資本整備を進めるという従来発想では経済効果の発現は限定的で、景気浮揚は難しいと考えるが、島根県における成長分野にはどのようなものがあり、景気対策としてどのような施策を考えているか。
②信用保証制度について
新聞報道によると、法制審議会は「中小企業融資で個人保証を原則認めない」とする民法改正案を本格的に検討する方針とされている。銀行や貸金業者が中小企業などに融資する際に求めてきた個人保証については事業者の資金調達を容易にする半面、善意で保証人を引き受けた人が高額の請求を受け、自己破産や自殺に追いやられる悲劇も生んできた。
法制審は平成21年に千葉法相から明治時代からの民法の契約・債権分野について今の時代に合ったものに改めるよう諮問され、専門部会を設けて検討しており、近く、個人保証を原則無効とする試案をまとめるとしている。
中小企業などが融資を受ける時の個人補償は、ほとんどが、保証人が債務者と同じ立場で無条件で請求に応じなければならない「連帯保証」となっているのが実態であり、一般に、中小企業が銀行などの市中金融機関から融資を受けようとする場合、その成長性や経営のリスクが大企業に比べて大きいため、融資を得ることができなかったり、調達できる額や条件において不利になったりすることを解消し、中小企業がスムーズに資金を調達できるよう、信用保証協会が中小企業の委託に基づき金融機関に対して信用保証(保証承諾)を行っている。
信用保証協会は株式会社日本政策金融公庫との間で再保険契約(中小企業信用保険)を結んでおり、信用保証協会は保証契約額に応じた保険料を支払い、代位弁済時に回収不能となった場合は保険事故となり保険金を受け取る。保険事故時には、当該債権が日本政策金融公庫にさらに代位されるが、保証協会には回収と返納が義務付けられており、求償権の行使が必要となる。
従来、政府系金融機関や信用保証協会は債権放棄のシステムを持っておらず、多くの中・小・零細企業、あるいは連帯保証人らは、求償権弁済に苦しんできたが、サービサー法の施行により保証協会等の求償権が債権回収株式会社に回収委託または譲渡できるようになったため、一定の条件を満たせば債務の圧縮や求償権消滅保証による債務弁済が可能となっている。
現在、全国の信用保証協会の保証残高は本年4~6月期に33兆円(うち緊急保証制度を含む100%保証22兆円)もの巨額に膨れ上がっているが、10年以降、毎年8600億~1兆1000億円もの代位弁済(肩代わり)を行っており、緊急保証制度に限っても、累計で8700億円もの代位弁済が行われている。
このように、リーマンショック後の中小企業対策は、表面的には成果を挙げているように見えるが、問題を先送りしてきた側面は否めない。経済が好転せず、倒産が増加すればいずれ銀行の不良債権比率が大きく上昇することは自明で、場合によっては自己資本の不足に直面する地域金融機関が出てきてもおかしくないが、県内の状況はどうか。
③島根県信用保証協会について
島根県信用保証協会は昭和24年に設立されて以来、県内の中小企業金融に大きな役割を担ってきたと考えているが、自己資本いわゆる利益剰余金は年々積み増しされる一方となっている。
県の制度融資が保証協会の保証を前提条件としていることもあり、制度融資の伸長に伴って大きく膨らんでいるようにも思えるが、保証協会の保証承諾額、うち県の制度融資引受額と県の財政措置の金額、代弁額およびに利益剰余金(基本財産)の推移について問う。代弁額については保証人に対する求償債権の追求額についても示せ。
保証人がいないからこそ保証料を支払って保証を受けるのに、保証協会に対し連帯保証人を立てて、結果として求償債務を負うのであれば保証料を支払う意味は無い。また、保証人として求償債務を負っている期間は保証が受けられず、結果として県の制度融資は受けられないとされるが、求償権消滅保証などにより救済を指導すべきではないか。また、県の制度融資は保証協会の保証が条件となっている。本来、企業に信用力があり、協会に保証してもらう必要が無くても保証料を支払う必要が生じるのは極めて不合理で、実情に応じた融資方法を検討するとともに保証料の引き下げなどによって保証協会の利益剰余金を企業にフィードバックすべきではないか。
④企業の再生、業態転換、破綻処理などへの支援について
今後、金融円滑化法の推移によっては企業の再生、業態転換、破綻処理などに保証協会を含めて求償債務・債権の処理が大きな問題となる可能性がある。さきに設置が表明された再生ファンドの役割や債務の圧縮、放棄などの基準如何だが、採算が厳しい業種や市場性に不安のある分野にある企業をリセットして改めて成長分野に導くためには、現状では、貸し手、借り手双方にかなり大きな犠牲があるように思うが、具体的にどのような支援を考えるか。
│掲載日:2013年03月04日│
中小企業などで、実は企業としてはいいものを持っておるけども、たまたまいろんな要因で経営状況が悪くなってる。そのために債務負担が加重になって、事業の継続が非常に難しいといった企業について、再生をするということは、これは大事なことじゃないかと思います。たまたまリーマン・ショックで大きな損害をこうむってしまった。それによる負担が経営を圧迫している。そうしますと、そうした負担を軽減をして、その上で議員がおっしゃるように、企業の再生を図っていく。これは、県としても大事な課題だというふうに思います。
そのためには、企業の所有者といいますか、経営者と申しますか、そういう人たち、そして債権を持っておる銀行等の金融機関、そして株主等関係者がそれぞれ一定の負担を負って、身軽にして企業の再生を行っていくということが大事であります。これに対して公的に支援をするということも必要だというふうに思います。
この点につきましては、国がそういうことがあるから、企業再生支援機構というのをつくって支援をしてるわけです。企業再生支援機構自身が資金を供与したり、あるいは債務保証したりしておるわけであります。島根県におきましても、最近は室崎商店が企業再生機構の支援を受けたということがあります。
そういう中で、企業が再興されるということになりますと、借金もできる、新しい投資に対する資金調達もできる。そういう場合には、島根県の信用保証協会の保証という形で、これは国がバックにあるわけでありますけども、新規資金を調達するということもできますけども、県レベルでは、まずそういう株主、経営者、そして債権者との話し合いが進むように、再生計画をつくろうと。そのために中小企業再生支援協議会というのを設置しております。もちろんこの制度の枠組み自体は、国が地方団体に対して示しておるわけでありますけども、そういうものでやっておると。この協議会自身は資金は出しませんけども、関連金融機関が島根、山陰の金融機関が一緒になりまして、山陰再生ファンドというのを設けてます。協議会で再建の計画をつくる。そして、山陰再生ファンドがその協議会の再生計画を見ながら出資をする。さらに、借り入れできるようになれば、信用保証協会の保証をもって県の制度融資を借りるというようなことが現状でございますし、県としては、企業の販路の支援でありますとか、あるいは技術支援でありますとか、あるいは海外展開を支援をするといったようなことで支援もしております。
しかし、議員がおっしゃるように、さらに支援が必要になるんではないかという御指摘もありますけども、そういう面につきましては、関係機関とよく話もし、どういう対応が必要なのか、あるいは可能なのか、よく勉強していきたいというふうに思います。
島根県内の金融機関を所管しております松江財務事務所によりますと、県内に本店がある金融機関6行の自己資本比率は、直近の時点で9,45%から17.33%となっております。いずれも財務の健全性基準であります4%、これは国内のみに営業拠点を持っている場合ですが、それを大幅に上回っており、財務内容に問題があるとは考えていないとのことでございました。
また、不良債権については、松江財務事務所では、各金融機関において不良債権の推移にばらつきがあるものの、金融円滑化法期限到来後の金融庁による検査、監督の方針や、不良債権の基準は変わるものではないこと。また、金融機関が貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきという役割も変わるものではないこと。これらを踏まえると、4月以降、不良債権が極端に増加することは考えていないとのことでございました。
以上のことから、松江財務事務所では、現状において、各金融機関が健全性を失うような状況にはならないというふうに判断しておられます。
まず、保証承諾額の推移でございますが、平成元年度以降、単年度の推移を見てみますと、平成元年度の561億円から平成23年度には625億円と約10%増加しており、この間、平成10年度には1,100億円、平成20年度には過去最高の1,141億円となり、この2カ年は1,000億円を超えております。
この保証承諾額のうち、県制度融資分の推移ですが、平成元年度の117億円から、平成23年度には344億円と約3倍になっております。この間、リーマン・ショック後の借りかえ需要によりまして、平成20年度には過去最高の757億円となっております。
県の財政措置の推移でございますが、財政措置として、主なものとして、保証協会が代位弁済した場合の損失補償、また保証料率の引き下げのための保証料補給を行っております。損失補償は、平成元年度の2億3,300万円から、平成23年度には3億7,000万円と約1.5倍となっており、この間、平成20年度と21年度には10億円を超えております。また、保証料補給は、平成14年度からでございますが、2,000万円から年々増加し、平成17年度には7,000万円となっております。平成18年度から減少に転じまして6,000万円となり、その後減少を続けて、平成22年度と23年度には2,300万円となっております。
次に、信用保証協会の代位弁済額の推移及び保証人等からの回収額をあわせてお答えいたします。
まず、代位弁済額の推移ですが、平成元年度の9億9,300万円から、平成23年度には35億円と、約3.5倍となっており、この間、平成19年度と20年度には81億円を超えております。この19年度、20年度は、それぞれリーマン・ショック後などなどから損失補償もあわせて先ほどお答えしたとおり、連携してふえております。
次に、代位弁済後に回収された額については、平成元年度から平成23年度までを平均しますと約13億円となっております。このうち主債務者からが約3分の1、それ以外の保証人から約3分の2というふうになっております。
利益剰余金、いわゆる基本財産の推移でございますが、平成元年度の82億円から年々積み増しされまして、平成23年度には185億円となっております。
県制度融資では、融資対象者を保証協会が求償権を融資していない者と定めておりますが、例外規定も設けておりまして、求償権が連帯保証債務に係るもので、かつ保証協会が認めた場合は制度融資が利用可能となっております。具体的には、連帯保証人が一定期間内に求償権を完済させる見込みがある場合など、要件に合致した場合、制度融資の利用を認めております。
一方、求償債務を負っている主債務者に対しては、求償権消滅保証の活用により救済が図られる場合があります。この求償権消滅保証について仕組みを御説明しますと、通常、求償権先になった事業者は保証協会の保証を受けることができません。しかし、こうした場合でも、企業の再生を支援するため、再生が見込める場合に、再生計画を策定を前提に、求償権を消滅する保証を行い、その結果として、保証協会の求償権から通常の借入扱いに変更させた上で、金融機関から新たな資金調達を容易にするものでございます。これまでに11件の例がございます。
こうした制度を活用することによりまして、求償権債務を負った方の再出発が円滑に行われるよう、保証協会にも働きかけていきたいというふうに思います。
県の制度融資は、信用力、担保力の不足する中小企業を念頭に、信用保証協会の保証とセットで制度を設計いたしております。信用力、与信力のある企業は、制度融資ではなく、保証を求められない場合もある金融機関のプロパー資金を活用していただくことを想定しております。議員御指摘のような与信力のある企業が保証協会の保証が必要な制度融資を使わざるを得ない状況がどのような場合に発生するのか、まずよく調べて対応を考えたいと思います。金融機関等に聞いたときには、こういった場合は今まで例はないというふうに、電話等の調査では伺っております。
次に、保証協会の利益剰余金の企業へのフィードバックでございます。
保証協会は、債務保証を行うことにより、中小企業の金融を円滑にする債務を負っております。この責務を果たすためには、保証協会自体の経営が健全であることが重要でございます。一方で、保証協会がその利益を県内企業に還元することも大切であり、これまで島根県保証協会においては、他県では例のないような企業支援に自主的に取り組んでおります。例えば、協会の全額負担によって経営改善のアドバイザーを中小企業に派遣する無料専門家派遣制度、中山間地や離島にある企業の利便を図るための出張相談、女性経営者の相談には女性相談員が対応するチームエスポワール制度、そして信用保証料の低減として、簡易な手続でスピーディーな保証が受けられる小口追認保証、かなえという名前をつけておりますが、そういったところで信用力の低い企業に0.2から0.35%の保証料の引き下げなども行っておられます。
県内企業は、国内市場の縮小、生産拠点の海外移転など、厳しい状況にあります。保証協会の健全な経営を確保した上で、保証料の引き下げを含め、県内企業に対する支援をさらに充実できるのかについては、保証協会と十分にこれから話し合っていきたいというふうに考えております。