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①景気動向について
円安・株高でロケットスタートを切った安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」。一方で、急激な円安進行は輸入価格の上昇などにより、個人の生活には負の影響が出る可能性もある。円安で輸出企業を中心に業績が上向く兆しが出てきていることもあって、短期的なマインドとしては悪くないが、実際の購買行動という意味では大きく変わっているわけではない。
安倍政権は、金融緩和を実施しデフレ脱却を目指する方針を示し、市場が反応して、確かに「円安ドル高」になってきた。
昨年12月、米国の金融政策を決めるFRBの米連邦公開市場委員会でFOMCは、昨年の9月に始めた金融緩和策第3弾(QE3)の強化を決め、米連邦準備理事会(FRB)は市場に資金を供給すべく毎月、400億ドルの住宅担保ローン証券(MBS)の買い取りに加えて毎月、期間の長い米国債も450億ドル買い取ることを決め、さらに、失業率が6.5%程度に定着するまでQE3を続けるという数値目標まで掲げたことが大々的に報道された。
景気が回復してくれば、FRBは引き締め策に転じると考えられるが、米国ではサブプライムローン問題が浮上して以来、FRBは金利の引き下げと金融緩和策を進めた結果、1ドル=120円から75円まで上昇した。ドル安が牽引する形での円高は、米国が今後、積極金融緩和を縮小することになれば、異常に安くなったドルの価値が正常化し、日本が何もしなくてもドル高円安になることは必至である。
為替の影響はタイムラグを置いて発生するので、今の円安傾向の影響は3~4月頃から徐々に表面化し、ガソリン料金の値上げから、LNGの輸入価格上昇による電力料金の値上げ、輸入食品の値上げまでその影響は広く及び、円安によるインフレが起きてくる。輸入物価の上昇によって起こるインフレは、いわゆるコストプッシュ型のインフレで、給与や可処分所得の上昇につながらず、輸出企業の決算にはそれなりの円安の恩恵が出てくるが、円安のデメリットは顕在化してくる。
為替は「テキーラショック」「リーマンショック」など何かのきっかけで突然大きく変動するから、再燃しつつあるアルゼンチン国債のデフォルトやイタリアの政情不安を機に再び円高に向かう可能性もあり、円のレートが一定の予測値の範囲にあるかどうかは疑問のあるところであるが、日本経済が米国の引き締めに対応できるほど回復していれば問題はないが、そうでなければ、金融引き締めによる中小企業の倒産と日本国債の急落による金融機関の含み損による信用不安は欧州の比ではなくなる。日本の国債は、90%以上が国内で買い支えられてきたが、日本の純金融資産のほとんどは50歳以上が保有、特に60歳以上で全体の8割を持っており、国債を国内だけで買い支えていくという構造はもはや限界を迎えている。
金融引き締めを行わないにしても、今の財政を維持するために国債を発行し、国内だけで消化していくこと自体早晩、難しくなることは必至であり、徹底した緊縮財政に転換しなければ国家の破綻は目に見えている。少子高齢化による人口減が進み、1人暮らしの世帯も増えている。メーカーや流通業もいよいよ転換を迫られており、消費者を含め、今の消費生活を考え直す時期にきていると思う。
そうした中での金融緩和、公共投資の拡大、成長戦略の実施という3本の矢と称する政府の経済対策だが、成長分野の創出がなければマネーは金融市場に流れ、企業の設備投資は国内から海外の成長地域に廻り、国内投資は国債発行による公共投資が主となって財政悪化が増嵩する。東日本大震災以降、化石燃料の輸入増などによって日本の貿易収支は赤字となっており、対外投資による資本収支によって辛うじて国富の減を防止しているのである。
日本は名目GDPで3.3%の経済成長があれば、税収増によって財政収支が均衡すると言われている。国民の金融資産は1500兆円で、1%の金利上昇があれば15兆円、GDPを500兆円とすると3%に相当する。20%の利子課税をしても消費支出は大幅に増加し、拡大循環の効果によって国債の利払いを上回る法人税収となると考えられる。デフレの脱却にはゼロ金利の是正こそが必要だと考えるのだが、県議会で経済政策を論じても詮無いから止めておく。
日本経済、景気の見通しについてどのようにとらえているか。3本の矢で適度な為替レートが実現し、2%程度のインフレ目標が達成されると考えるか。県内経済の状況についてどのような認識を持っているか。
②対外投資の支援について
過般、テクノアークしまねで開催された在日インド大使館神戸総領事と元インド住友商事社長のインドビジネスセミナーに参加した。従来、島根県人は内弁慶で、県外や海外に市場を求めて仕事をするという気風に欠け、せっかくのビジネスチャンスを逸してきた。国内の人口減少をはじめ超円高、交通網やITの発達などによって企業を取り巻く環境は大きく変化し、地域の企業といえどもグローバルな視点で事業展開を考えなければ生き残れない状況にある。企業の異業種参入や対外(海外)進出の支援は待ったなしの行政課題である。ただ、新規開拓のためには市場調査やアドバイザー、コンサルタントなどの選定がまず必要であり、事前準備に相当な経費がかかることから一定の経費支援が必要である。特に海外進出のためには現地の行政手続きや企業、法人とのマッチング支援が不可欠で、現地の代理人から法外な費用を請求されるケースが少なくないと聞く。県でも対外進出のための情報提供やセミナーの開催といった従来からの取り組みに加えて専門デスクの設置や海外ビジネスに詳しい法律家の確保などが必要だと考えるが所見は。
│掲載日:2013年03月04日│
その関連で、日本経済の見通し、為替レート実現の、あるいはインフレ目標達成の見通しについて、私の考えを聞くと、こういうことであります。
日本経済の見通しにつきましては、国としては1月の末に政府経済見通しを出しております。それによりますと、25年度の実質成長率は2.5%程度と見込まれています。民間も、新聞等にいろいろ出ておりますけれども、大体似たようなことではないかと思います。私も、こういう見通しと違うという根拠を持ってるわけではありませんけども、大体そういうことかなというふうに思っております。
次に、消費者物価につきましては、政府経済見通しでは0.5%と見込んでおります。2%というのは、いつまでに達成するかということが必ずしも明確になっておりません。これからすぐに2%上がるようなことになるのかどうか。そのためにはやっぱり経済が相当回復したり、賃金が上がったり、いろんな要素があるわけであります。それから、世界経済全体がどうなるかということもありますし、ここら辺はこれから日本銀行において検討されるということではないかというふうに思います。
為替レートは、これはそれこそ世界の、アメリカの金融政策、あるいはアメリカの景気そのものがどうなるのか。あるいは、財政の崖の問題がありますけれども、これも今大変な問題にまだなっております。あるいは、ヨーロッパで、また債務不安が起こっておるというようなことがあります。それによって、また途上国、新興国がどうなるかということでありまして、これこそ世界全体の動きに大きく影響されますから、これを見通すということは大変難しいことだというふうに思います。
大事なことは、私は、日本が過去20年ぐらいいろんな要因で停滞してるわけです。これは大きな構図でいうと、やはり日本が得意としていた分野で新興国がどんどん追い上げてきているということが大きな要因でありまして、これはなかなか変わりません。しかし、欧米も似たようなプロセスを過去においてとってきてるわけです。その過程でやはり海外に企業が出る。アメリカなんかそうです。あるいは、新しい分野で事業がどんどん拡大する。IT関連の産業がそういうものを担ったわけでありますけども、今後の見通しにつきましては、そういう中長期的にどうなるかということになりますと、これは非常に予測が難しいとこだと思います。政府として大事なことは、できる限りそういう不確定な要因の中で、一生懸命やると。全力を尽くす、最善を尽くすということではないかというふうに思います。
財政の出動にしても、今の財政の状況を見ますと、これを長く続けるというのは難しいわけです。むしろ消費税の増収というのは、社会保障の関連の経費がどんどんふえてまいりますから、そういうものに対応しようというのが主たる目的でありまして、しかし私は、成長戦略、議員のおっしゃるように、いろんな重点を見出してやらなければいけないだろうという点は賛成です。
政府におきましては、戦略市場創造プランということを、産業競争力会議において検討中だというふうに聞いております。その中に、例えば国民の健康寿命を延伸するいろんな技術開発なんかだろうと思います。ここら辺は先端技術をどうやって開発していくかということとも関連していると思います。
それから、クリーンかつ経済的なエネルギー需給を実現をしていくと。再生利用エネルギーを活用する。地方にありますいろんな森林資源でありますとか水資源でありますとか、あるいは風力でありますとか太陽光でありますとか、そういうものを活用するということは大事なことだろうと思います。しかし、それも通常の電力よりも高いコストでありますと、それは必ずしもその国の成長率を高めるわけではないわけです。将来にわたってのエネルギー需給を安定化する、そういう目的があるわけでありまして、しかしこの部分についてもやっていく必要があるだろうと思いますし、それからこの会議におきましては、安全で便利な経済的な次世代インフラの構築をすると。内容がよくわかりませんけども、議論は後で質問されたようなことと関連するのかなというふうに思いますが、ちょっと詳細がわかりません。
それから、世界を引きつける地域資源で稼ぐというようなことも検討されているようです。これは割と地方に関連があるわけであります。地域産業の活性化、中小企業の活性化、農業の競争力強化などが含まれております。私は、これまでの政府の対応を見てますと、成長戦略といいますと、先端的産業をどうやってつくっていくか。新しい分野をどうやって伸ばしていくか。欧米は実はそういうことを、特にアメリカなどはやってきたわけでありますけども、そういうことになりますと、やはり大企業なり力のあるところをさらに伸ばすということに重点が置かれがちでありますけども、それでは地方にとってはどうかなというふうに思うわけでありまして、地域地域における観光でありますとか、あるいは農業でありますとか、あるいはエネルギー資源、そういうものを活用するということにも、ぜひ重点を置いてもらいたいというふうに考えておるとこであります。
やはり島根県の中、物づくり産業がありますから、物づくり産業をいろんな形で支援をしていく。これは後で触れますけども、海外展開を支援して、それによって海外の需要を確保して、島根にある拠点を持続させていくといいますか、本拠として活性化するようにするということがあります。
あるいは、Rubyを中心としたIT産業の振興というのはずっとやっておりますけども、これもかなり伸びておりますから、引き続き県として支援をしていくということであります。
それから、農業におきましても、有機農業の促進でありますとか、あるいはしまね和牛の再興、こうしたこと。あるいは林業におきましては、バイオマス等に関連した産業の振興、林業の振興のためにいろいろな施策を展開する。
それから、観光です。これは神話博でありますとか、各地に歴史的、文化的資源があるわけですけど、そういうものを大いに活用していく。海外にもPRしていくということであります。
それから、再生可能エネルギーにつきましても、来年度の予算の中にもそういう支援措置を入れておりますけども、こうした分野について、さらに努力をしていきたいというふうに思います。
来年度予算の中に盛り込んでおりますけども、国内市場が縮小してる。しかし、そういう中で、海外の市場では拡大が続いている。海外市場での需要を島根の企業が獲得をする。そのために海外展開をする。そういうことに対して支援をお願いしたいという関係の業界の方々の要望もありまして、やはり島根の物づくり産業が拡大をするいろんなチャネルを、手段を使ってそういうことをやるということは、島根県の経済にとって必要なことでありますから、それをやろうということで、まず市場調査です。バンコクの周辺でありますとか、ベトナムでありますとか、あるいはインドネシアでありますとか、東南アジア等、あるいはインドなんかも含まれるかもしれませんけれども、島根の物づくり産業などがそこに進出ができないか。しかし、進出するためにはいろんな市場調査が必要ですし、あるいは道先案内も必要でありまして、そこはまず県と関連業界の方々、あるいは金融界なんかも一緒になって事前に調査をしようと。そういうことを来年度行うということで、予算の中にも盛り込んでおりますけども、そういう取り組みの中で、議員が御指摘の専門デスクを設置をするとか、あるいは現地の法律などの専門家も配置をするといったようなことも検討していきたいというふうに考えております。