Reports
島根県林業公社は昭和40年に民有林の計画的、組織的な造林を実施することによって森林資源の造成と県土の保全、水資源のかん養等を目的に設立されて現在に至っていますが、木材価格の下落により分収造林事業の採算、収益性が失われ、巨額の含み損が発生しております。そこでお尋ねいたしますが、平成24年度末の財務および損益状況と平成25年度の見通しをお示しください。また、経営を維持、存続させるためにかなりの公費が投入されていると思いますが、平成24年度に投入された公費(県費)および平成25年度の予定額をお示し下さい。(農林水産部長)
分収造林事業は、40年の契約期間を80年とする長伐方針に転換する再建計画が示された平成21年以降、利息のかかる金融機関からの借り入れを繰上返済し、県からの貸付金に変更するなどの手法が執られていますが、25年までに投入された5カ年の県費の累計はいくらになりますか。また、事業の立案、執行に関する稟議や承認に関する県の関わりについてご説明願います。加えて、県が林業公社に負う保証債務と貸付金の残高はいくらになっていますか。平成15年、平成20年、平成25年(見込)の年度末の数値をお示し下さい。(農林水産部長)
島根県は林業公社の損失補償を行っており、県議会は債務負担について議決を行っていますが、県の貸し付けや損失に伴う保証債務の残高が大きく変動する状況があるにもかかわらず、逐年の収支などは団体から「ほぼ良好」とする経営評価報告書が提出されるだけで、損益計算書や財務諸表の写しが提出されず、県議会が経営状況の詳細をチェックできない状況は極めて不適切と考えます。今後、議長において検討されるよう要望しておきます。また、先般、有識者によって公社のあり方について審議され、答申がされていますが、その内容を簡潔にご報告下さい。(農林水産部長)
林業公社の長伐方針を中止し、造林木を伐採する方針に改めれば、1立米あたり2500円の現状価格でもこれ以上の県費投入はなくなります。分収契約を解約すれば県は金融機関からの借入金200億円強を補填することになります。しかし、現状の長伐方針を継続すれば毎年10億円の財政負担が50年以上も継続する上に、損失がさらに膨張するおそれがあります。国の拡大造林方針の失敗による巨額のツケを地方がそのまま被ることは極めて不適切であり、他の都道府県とともに国に対して適切な措置を強力に求めるべきでありますが、知事は公社が抱える問題点と課題についてどのようにお考えになっていますか。(知事)
│掲載日:2013年11月30日│
おっしゃるように、林業公社の問題は難しい問題です。そもそもの考えは、日本が終戦後、どうやって日本の国土をつくっていくか。そういう中で、林業をどういうふうにするのか。あるいは林業の持つ公益的機能があるわけでありまして、そういうことで、国の政策として、こうした林業公社をつくりまして、分収という、将来木が大きくなって切ったときにそういうものを返しましょうと。それから、山を提供される、出される地主の方々にも、将来売ったお金で収益を上げましょうと、こういうことで行われてきたわけでありますけども、日本における住宅木材利用の需要の問題、あるいは海外からの木材が入ってくるといった事情、そういう中で木材価格は下がっていくということで、林業公社問題は、これを設立した各県みんな同様の状況にあるわけでございます。そういう意味で、例えば議員のおっしゃるように、じゃあ今、この制度をやめるということも可能でありますけども、しかし今度はやめたら、やめた県もあります。じゃあ、その管理を一体どうするのかとか、その公益的機能は誰が負担をしていくのかとか、あるいはさらに公社保有の山林以外にも周辺にはたくさんの山林があるわけです。そういう山林の持つ役割、あるいはそれが手入れをしませんと、いろいろなことで災害が起こるとか、いろんな問題が、あるいは水源を確保するといった問題にも影響が及ぶわけでございます。これは、普通の企業のように、収益が今こうだから、もう解散して損失は損失で処理して、あとは知らないというわけにはこれはいかない、大きな問題だろうというふうに、私は思っております。
そういう意味におきまして、林業公社における経営を、できるだけ合理化をしていく。そして、もともと日本の全体のためということでこういう施策が国によって進められてきておるわけでありますから、国に対して、必要な支援を我々としては求める。そういうことをしながら、この問題に対処をしていきませんと、解散したらおしまいということにはなかなかならない、難しい問題だというふうに思います。そういう意味で、長期の計画、見通しなどについて、専門家の方々にお集まりをいただいて、委員会を開いて、どうするかという議論をしていただいて、今回、報告書が出たわけでございます。県としては、その報告書を参考にしながら、県としてやるべきこと、あるいは公社に求めること、国に求めること、いろんな対応をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
林業公社の平成24年度末の財務状況でございますけれども、資産が831億8,300万円、負債が601億4,800万円、正味財産230億3,500万円でありまして、負債のうち長期借入金の合計は533億円となっております。分収造林の制度上、収穫期を迎えて伐採収入が得られるまでの間は、自主財源がほとんどないものですから、収入の大半は日本政策金融公庫、それから県等からの借入金や補助金で賄われております。このため、財務評価指標の一つである借入金依存率は64.1%と高くなっております。
平成24年度の経営状況についてでございますけれども、収入は補助金、間伐収入、資産運用益などで1億4,300万円、支出につきましては、事業費、管理費など7億5,800万円、森林市債への振りかえが5億1,400万円、経常収支はマイナスの1億100万円となります。平成25年度につきましても、平成24年度と同様の経営状況になるものと見込んでおります。
森林市債の振りかえが5億1,400万円ということでございますけれども、この森林市債の振りかえにつきましては、林業公社の会計基準によりまして、森林造成に要した経費ということで補助金なり借入金、これを資産会計、森林資産に計上することとなっておりますので、一般の方に理解がされるものかどうかということについては、なかなか明快じゃない部分があるというのは御指摘のとおりかと思います。
林業公社が設立された昭和40年は1立米当たりの立木の価格でございますけども、杉で9,380円でございます。1ヘクタール当たりの金額では、杉の場合、その1ヘクタール当たり400立米といたしまして計算しますと、375万円となります。また木材価格が最も高かった昭和55年では、1立米当たりの立木価格、杉で2万2,707円でございます。これを1ヘクタール当たりの金額に計算いたしますと、908万円で、現在の市場価格とは随分開きがあることは事実でございます。
平成24年度に公社に対して支出した県費は、公庫への償還金や公社の事務費などのための貸付金が7億7,900万円、造林事業などの補助金が7,100万円、合計で8億5,000万円となっております。
平成25年度の県費の支出予定額は、同様に公庫への償還金や公社の事務費などのための貸付金が8億2,700万円、造林事業などの補助金が8,500万円、合計9億1,200万円の予定でございます。
平成21年度から25年度までの県費の支出予定額の合計額は、公庫への償還金や公社の事務費等のための貸付金、これが38億9,800万円、造林事業などの補助金が4億3,900万円、合計で43億3,700万円でございます。
林業公社の借入金でございますけれども、林業公社が金融機関から借り入れを行った場合には、県が損失補償を行っているところでございます。損失補償の額につきましては、平成15年度末で247億6,000万円、平成20年度末で235億3,100万円、平成25年度末の見込みで216億1,400万円となっております。
それから、県の貸付金、林業公社に対する貸付金の残高でございますけれども、平成15年度末が302億3,400万円、平成20年度末が342億4,200万円、平成25年度末見込みで379億9,600万円となっております。
公社の事業の立案等への県のかかわりということでございますけれども、まず各年度の林業公社の事業計画の立案に関しましては、事業実施年度の前の年に、造林公共事業でございますとか、公社への補助事業などを所管しております県の森林整備課、また林業課、それぞれ公社の事業量や予算などについて協議を行いまして、公社の事業計画、それから県の予算に反映させております。林業公社では、県との協議を踏まえまして、事業計画を立案して、公社の理事会で決定をされております。なお、公社の理事会には、理事として、県の農林水産部次長が出席しているところです。
それから、事業の執行につきましては、公社事業のほとんどが造林補助事業を活用しておりますものですから、公社につきましても、ほかの民間事業者と同様に、県に対して補助金交付申請を行って、県はこの審査でございますとか、事業完了後に現地検査などを実施しているところでございます。