県議会だより

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平成26年島根県議会2月定例会一般質問(5)

島根原子力発電所の再稼働について

4点目は原発の再稼働についてであります。
私が市議会に籍を置いていた頃、島根原発の設置や稼働に対して、当時の市長答弁は「島根原発の問題に関しては、第一義的には立地自治体の鹿島町と隣接の島根町、松江市の問題」とするものでありました。原発から10㌔圏内にあるにもかかわらず「何故、何も言えないのか」という意識を持ちながらも、「原発事故は起きない」という前提で組み立てられた施策に対する懸念は大きくはありませんでした。ただ、私は県議会議員に当選した最初の質問で、原発から10㌔圏内にある平田市(現在は出雲市)地合町について、万が一の場合の動線が全く確保されていない不合理を述べ、現在まで、何度かご指摘申し上げてきました。
平成23年3月11日、東日本大震災による大津波によって福島原発1号機の外部電源喪失による炉心溶融という過酷事故の発生は、私たちに「原発事故」を現実のものとして想起させました。加えて、原発の周囲30㌔圏内にある自治体は、関係自治体として原発事故対策と事故時の対応方針を防災計画に具体化する必要性を政府から指示されるに至っては、「原発の立地、稼働は立地自治体が判断すべきもの」という従来の意識から「立地に対して無関心ではいられない」という意識に大きく変化したように見受けられます。私は原発から15㌔のところに事業所があり、25㌔のところに自宅がありますが、従来、さしたる不安を持たなかった原発の存在が、心配の種になったことは紛れもない事実です。
言うまでもなく、エネルギーは国民生活の基盤であり、国のエネルギー政策の基本は国民がエネルギーを安心して、安定的に使えるような環境を整備することにあります。イニシャルコストを技術革新で低廉化し再生可能エネルギーを大量に導入すれば、国産の資源循環ですからエネルギーの調達リスクは小さくなりますが、自然由来であり、出力変動の幅や気候変動のリスクが大きく安定供給に難点があります。現状、エネルギーの中核を担っている石油や天然ガスなどの化石燃料には、ほとんどを輸入に頼る我が国には調達コストと長期的な安定供給、環境負荷のリスクがあります。
原子力規制委員会の資料で発電コストを比較すると、化石燃料による火力が10円~11円/KWHに対し、原発が8.9円/KWHと優位性がありますが、福島事故や今後の安全対策等の経費を付加すると10円/KWH程度となるようであります。過去、「原発は安全」「原発は安価」と言われてきましたが、福島事故以降、確かに、状況は大きく変わりました。
ただ、現在、国内にある使用済み核燃料が17000㌧あり、これを再処理してMOX燃料とすれば原子力発電に必要な燃料の5年分が確保されると言われており、今後の技術革新で核燃料サイクルが完成すれば燃料の安定かつ長期的な調達、利用が可能となります。日本は世界で核兵器保有国以外で核燃料サイクルを認められている唯一の国であり、直ちに、原発の稼働を止め、技術開発を中断することは将来世代に対して多様なエネルギーの選択を閉ざすことになります。原発はひとたび事故を起こせばその影響は途方もなく大きいものですが、リスクが技術の進化で提言できるとすれば、日本にとって、エネルギーのベストミックスは時代によって変わると言うことであり、多様なエネルギーの供給方法を持つことが次代のためにも必要になると考えますが、知事はどのようにお考えになりますか。
政府は新しいエネルギーの基本計画案で原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけました。私はそのこと自体に異論はありませんが、言われている「安全性がすべてに優先し、少しでも懸念が生じれば徹底的に安全対策を講じる」という方針が、福島原発の事故の前と後でどのように変わったのかということが必ずしも明確ではないようにも感じます。日本のエネルギー政策において、原発の必要性ありとしても、現状で、再稼働に向かう道のりが険しい、踏み切ることが難しいと考える要因には、原発に対する国民の信頼回復がどうなのかと言うことだと思いますが、知事は、そのために何が必要だとお考えになりますか。
私は、安全性がきちんと確認され、良好な運転環境が担保されれば、稼働、運転は差し支えないと考えていますが、万が一のリスクを被る地域に住む住民の皆さんには十分な理解をいただくことが前提であり、それには、常に安全性の監視ができる状況が保証される必要があります。知事の言動を聞いておりますと、立地自治体である松江市と隣接自治体となる出雲市や雲南市、安来市などとは異なる対応は当然というスタンスのように感じられますが、万が一の場合、5㌔圏と30㌔圏の住民の意識にいかなる違いがあるでしょうか。
国の安全審査が終了すれば、早晩、再稼働の判断が必要となりますが、小生は松江市と周辺を区別する現状の姿勢を了とすることは出来ません。ある日突然、「あなたが住んでいる地域は原発事故のリスクを抱える地域です。万が一の時には避難が必要です。」と言われて、無条件に「はい、そうですか。」と答えることができるでしょうか。「私たちは原発の立地、稼働を了承した覚えもなければ、どのような経済的利益も得ていません。無条件に、いつ起こるかわからないリスクを背負うことはきません。」と言うのは当たり前ではありませんか。原発の稼働を40年とすれば、向こう40年間、この地域は原発事故のリスクを負うこととなります。
しかし、従前のルールであれ、決められた手続きを経て建設された施設を有効活用し、皆がそこから生ずるエネルギーの恩恵に浴し、リスクを上回る豊かさを感じて、普通に生活できるのであれば、原発の再稼働は認めざるを得ないと思います。福島原発は1000年に1回の津波で、ついこの前、アグリフーズの農薬事件はいずれも「想定外」の事故が起こりうることを示しました。
私は、島根3号を含め、適切な安全審査の受診後に再稼働に向けたアクションをするのであれば、関係住民の理解と協力が不可欠であります。国は「事故は起きない」から「事故は起こさせない」という方針を明確にするとともに、「事故が起こった場合」の責任、つまり原発の立地、稼働とうに関する最終責任は国にあるということ、避難を要する区域を有する自治体と事業者が「常に安全に運転をしているという監視・報告を求めることや立ち入り、懸念のあるときには運転の停止を求めること」を明記した安全協定を締結すること、避難に必要な最低限の動線確保を図るためのインフラ整備に要する財源の保障についてきちんと法律に明記することが必要であると思います。
再稼働判断に至る周辺自治体の安全協定締結については、もっと知事が主体的な役割を果たされるとともに、国に対しては所要の法律改正を含めて、原発の運転に関する最終責任は国が負うという基本的スタンスを明らかにするよう求めるべきと考えますが、所見を伺います。

溝口善兵衛知事答弁

原発の信頼性回復について

福島原発の事故があったわけでありますから、原発についての政府が考え方をしっかり国民に示すっていうことが一番大事だと。そして、その内容としては、第1に、国が前面に立って福島原発の事故の早期収束を実現するように努力をする、それが第1です。第2に、そして既存の原発をどうするかという点につきましては、原子力規制委員会が厳格な審査をする。第3に、審査を終えて政府が再稼働を要請するといったような場合には、先ほどの国のエネルギー政策でありますとか、あるいは国が責任持って対応するといった問題でありますとか、国民にわかりやすく丁寧に説明をしていくということは、説明をし理解を得るっていうことは、大事だというふうに思います。また、万が一の対応につきましては、既にいろんな対応もやっておりますけども、政府もこれに対してしっかりと対応してもらいたいというのが私どもの考えであります。
政府は、やはり国全体としてエネルギー政策をどういうふうにすべきかということは、日本の経済活動に大きく影響を及ぼすわけです。経済活動に影響を及ぼすっていうことは、人々の生活にも影響を及ぼすわけでありますし、それは電力料金っていうふうな形を通じても及びますし、いろんな形でも及ぶわけであります。そういう意味で、国はやはり国としてのエネルギー政策、さっきのこのベストミックスといったものをどう考えるかっていうことをわかりやすく決めて、国民の理解を得るということが大変大事だというふうに思います。
それから次は、原子力規制委員会が厳格な審査をするということでございます。これは審査、中国電力が2号機について審査の申請した際に、私どもは原子力規制委員会あるいはエネルギー庁等に対しまして、7項目のいろんな要請をしております。こういうことをしっかり国にやってもらいたいということを言っておるわけであります。そして、審議会の審査が終了してパスしたといっても、リスクが完全にゼロになるわけじゃありませんから、その点につきましては国が責任をきちっと持って対応するんだということを、やはり国が明らかにする必要があると思います。この点も、私は立地府県の同僚たちにもそういうことを強く求めていきましょうという話はいろいろやっております。そこら辺も必ずしも、立地の状況が違いますから、すぐにこれでっていうことになかなかまとまらないっていうところもあります。しかし、私どもとしてはそうした問題につきまして、原発の問題につきまして政府が責任をきちっと持つということを明快にし、それを政府の方針と決め、国民にわかりやすく説明するということが大事だというふうに考えております。

溝口善兵衛知事答弁

エネルギーのベストミックスについて

エネルギーのベストミックスをどうするかということは、日本全体としてのエネルギー政策をどうするかということとほぼ同義でありますが、国におきましては、現在エネルギー基本計画の見直しを作業中であります。新しい基本計画は3月中にも閣議決定されるといったことも伝えられております。このエネルギーベストミックスにつきましては基本計画見直しの過程で、12月に基本政策分科会で意見が出されております。その意見は、大体こういうことでございます。各エネルギー源の位置づけを踏まえ、原子力発電所の再稼働、固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギーの導入、地球温暖化問題に関する国際的な議論の状況等を見きわめて、先行きがある程度見通せると判断された段階で速やかに示すという見解でございます。その後どういう状況になっているのか、つまびらかにいたしませんが、国におきましては、多様な電源を持つそれぞれの特性や課題について十分議論をし、次世代に続く長期的な観点に立ったエネルギーミックスを示していただき、それを国民によくわかりやすく説明をして理解を求めるということが必要だというふうに考えております。

溝口善兵衛知事答弁

原発の安全協定について

周辺自治体が立地自治体と同様の安全協定を中国電力と締結すべく交渉していることは御指摘のとおりであります。私も、その考えはよく理解しておるところであります。県といたしましては中国電力に対しまして協定締結に働きかけておりますが、中国電力のほうからは前向きな返答は出てきておりません。そしてまた、国にも私は機会あるごとに、エネルギー庁でありますとかそういうところに、国としても調整をすべきではないかということは言っております。
そういう中で私は感ずるのは、大体こういうことです。1つは、原発といっても立地の状況が各原発ごとに非常に違うわけです。非常に離れた、離島に近いようなところで、人が住んでいないようなところで原発をしておるところもあります。それから、比較的近いところ、あるいは複数の県にまたがるようなところもあります。あるいは島根などでは、比較的原発の周辺に人口の多いところでございます。あるいは茨城ぐらいになりますと、もっと多いところもある。立地の状況によって違いますから、そこをどういうふうに調整をするかという問題があるわけでありまして、また、電力会社の中でそういう相談をしてもなかなか一つにまとまらないというところがあるようです。
他方で、あるところで行ったことはほかにも一定の影響を及ぼしますから、そこはそれぞれ抑制がかかるといったことがあります。したがって、それはやはり国などが関与すべきではないかと私は言ってるんですが、これまでのところは限定的にやっておるわけです。1つは、今回の原発がある以前から、非常に狭い範囲で合併をしても、合併をした町村も原発のある町村と接しているとか、そういうような解釈で限定的にやっておるというのが国の状況です。
それは私は適当でないということを言っておりますけども、多分そのためにはいろんな対策もしなきゃいかんわけでありますけども、そういうものをどういうふうにして手当てをするかということとも関連をしておるんではないかというふうに思います。したがいまして、私どもとしてはできる限りそうするのがいいという考えでありますけども、なかなか我々の努力だけでは進まない。そして、じゃあ立地県が全部それで共通の立場かっていうと、立場が違うんです。したがって、そこが一つに、立地府県も一つにまとまるっていうことがなかなかできない状況になっておるということでございます。引き続き、こういう問題につきましては国に働きかけていきたいというふうに思っております。

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