県議会だより

Reports

平成26年島根県議会2月定例会一般質問(4)

食育と地域の栄養指導について

3点目は食育と地域の栄養指導についてであります。
島根県の死因の1位はがんですが、2位が心疾患、3位が脳疾患、4位が糖尿病など生活習慣病と言われるもので、これらは血液に由来する疾患だと言われ、日常の食生活で一定の防止ができる疾患です。一般に「食育」と言われている取り組みは、主として学校や幼稚園、保育所などに在籍する子供や保護者を対象に行われており、食物、とりわけ動植物の由来や栄養を学習することや、食事のマナーや残さずに食べる習慣などを育成することは大切な取り組みではありますが、一面から見ると、非常に限定的な取り組みでしかないと思われますが、食育の現状と問題点、今後の方向についてお示し願います。
魚戸おさむ先生のコミック作品は私の食育教科書です。とりわけ、生きていくために、絶対に欠かせない食事について、国木田大学農学部講師の結城玄米が、楽しく美味しい食事の大切さを教える「玄米せんせいの弁当箱」や、ひとりでも多くの子供達に料理をつくる楽しさを伝えたいと「こども料理教室」を始めた今田妃代子とちいさな生徒たちとの、楽しくて、美味しくて、心温まる交流を描く「ひよっこ料理人」はすばらしい作品であります。食のエキスパートと言えば、栄養士と調理師を思い描きますが、栄養士、調理師ともに社会的評価が必ずしも高くありません。特に、栄養士は住民の健康生活の基本となる食にまつわる大きな役割がありながら、活動する場所が限定されています。生活習慣病の予防には、医療機関での定期検診も必要ですが、むしろ日常の食に対する啓発、意識付けが大事です。島根に暮らす人々が毎日の食事を楽しみ、健康で暮らし「ピンピンコロリ」を実現することは、医療費や介護費の劇的削減をもたらします。また、安全で新鮮な地域食材を取り入れた和食の普及・啓発は、知られていないあるいは眠っている多くの伝統料理を呼び覚ますことは疑う余地のないところです。栄養士にもっと役割を与え、栄養や健康づくりのエキスパートとして働く場を与えるべきと考えますが、ご所見を伺います。
幼稚園や保育所で栄養士がおかれていない施設がたくさんあります。また、雇用されていても、栄養士としての本来業務ではなく、調理員としての仕事に就いている例が多いようにも見受けられます。離乳期の食事は子どもの一生を左右すると言っても過言ではなく、一つ間違えると食物アレルギーの因をかかえることとなりかねません。乳、幼児期に子どもの成長に必要な栄養を摂るための献立作成や栄養指導に欠かせない役割を持つのが、栄養士ですが、こうした施設に必置義務がないことにも原因があり、県として、栄養士の配置を奨励してはと思います。
現在、私たちの廻りには、インスタントやレトルト、フリーズドライなどの加工食品やさまざまな添加物の使用、海外でつくられたものなど千差万別の食品、食材に溢れており、毎日の食生活によって知らず知らずのうちに栄養過多になったり、偏ったりで健康を害する結果となり、いたずらに医療費の増大を招いているのが実態で、島根県の医療費総額は年間3000億円に達するのであります。こうした状況を改善するためにも栄養士の社会的役割は大きく、保育所や幼稚園、学校のみならず、日常の栄養指導の充実を図るためには、栄養教諭や管理栄養士の資格取得を可能とする養成施設が必要です。現在、栄養士の資格取得者がスキルアップや専門性を向上させるためにも、現在は2年生となっている島根県立大学の栄養学科を4年制とすることを求められますが、ご見解を伺います。
また、保育教諭の免状創設によって従来の保育科についても、いずれ4大化が求められると考えますが、この点についてもご見解を伺います。

溝口善兵衛知事答弁

栄養士の活用について

近年、子どもたちが朝食を食べないとか、あるいは高齢者が糖尿病などの生活習慣病になられるとか、あるいは食物アレルギーの増加とか、いろんな食にかかわる問題が大きく社会にも影響を及ぼすようになっておるわけでありまして、そうした中で、栄養士の方々が栄養や食に関する指導、助言を行う専門家として果たすその役割が、ますます大きくなっているというふうに思います。また、保育所におきましては、給食による子どもの栄養管理、食物アレルギーを持つ子どもへの配慮、保護者に対するバランスのとれた食事のつくり方の指導でありますとか、栄養士によるきめ細かい対応が求められております。県としても国に対しまして、保育所での食事の充実を図るため栄養士と調理職員の配置の充実を要望しておるところであります。

溝口善兵衛知事答弁

県立大学松江キャンパスの健康栄養科と保育学科の4大化について

栄養士につきましては、県立大学の松江キャンパス健康栄養学科で養成に努めております。卒業生の多くは県内の病院や保育所、福祉施設を中心に活躍をされておられますが、先ほど申し上げたようにいろんな食にかかわる問題が出てきておりまして、高度な専門知識と技術を持った管理栄養士や栄養教諭の必要性が高まっているところであります。
次に、保育学科につきましては、保育士資格とともに幼稚園教諭の免許もあわせ持って取得する学生が100%、県内就職率も平均で70%を超えるなど、多くの人材を輩出をしております。そしてまた、子どもを取り巻くいろんな環境が大きく変化する中で、高度な専門性を有する保育士が求められてるという状況にあります。県立大学では、現在こうした社会的な状況も踏まえながら、健康栄養学科、保育学科を含め、松江キャンパスの今後のあり方について検討をされておられます。県としましては、この大学当局の検討結果を受け、社会情勢あるいは時代の要請、あるいは県内の管理栄養士、保育教諭等のニーズの動向、また関係の方々の御意見などをよくお聞きしながら、今後この問題について4大化の問題につきまして、よく検討をしてまいりたいというふうに考えているところであります。

原仁史健康福祉部長答弁

食育の現状と問題点および今後の方向について

県では、県民一人一人が生涯を通じて食への理解を深め、食の恵みに感謝し、心と体の健康を守れるよう関係機関、団体が連携しながら、地域全体で食育を推進しております。食育の大きな柱の一つに健康づくりがあります。食が健康に及ぼす影響を理解した上で、朝食を欠かさずとること、バランスのとれた食事を心がけることなど、適切な食習慣を子どものころから身につけることが、高齢になっても元気で生活するために重要なことであります。これまで、保育所、学校、地域などで食育の取り組みを進め、子どもが朝食を食べる割合の増加や大人の野菜を食べる量が増加したなど、一定の成果がありました。一方で、若者の食事の栄養バランスの悪さや働き盛りのメタボリックシンドローム、あるいは糖尿病などの生活習慣病の増加といった課題もございます。食育の取り組みが必ずしも全般的な健康指標の向上につながっていない面も出ております。そこで、今後は食育を健康づくりや生活習慣病の予防にしっかりとつなげて、医療費や介護費の増大をできる限り抑えるとともに、生活の質を高め、健康に老いることを目標とする県民の意識を醸成していきたいというふうに考えております。

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