県議会だより

Reports

平成26年6月定例島根県議会一般質問(1)

県内企業の海外展開に対する支援について

日銀の短観で、金融緩和と公共投資の拡大いわゆるアベノミクスによる景気回復が一番顕著であるのは山陰との結果が出ております。おそらく、聞いた誰もが「嘘」と言うに違いありません。

株価の動向や一般消費の拡大で恩恵を受けているのは大企業が集中している都市部であり、地方は景気回復の足取りを実感できていないとする見方が大多数で、事実、知事の施政方針や挨拶でも、繰り返しそうした見解が示されてきました。
しかし、日銀の松江支店で島根、鳥取の従業員50人以上の企業約200社を対象にした調査結果には、経済対策による公共事業の発注増加に加えて出雲大社の大遷宮効果がモロに数値として出ており、有効求人倍率も法人企業景気予測調査の数値も全国数値を遙かに上回っていることは紛れもない事実だと聞きました。

従来、国の経済対策の恩恵や景気回復の効果を一番先に受けると言われていた大都市部、とりわけ、太平洋ベルト地帯の企業の多くが、円安になっても輸出が伸び悩み、逆にエネルギーコストや原材料費の増大で思ったほどではないとする見方が多く、株価の上昇や金利の低下など経常外収益によって財務内容は向上しても、企業の事業収益が好転したとは言い難いと言っているのです。

一方で、従業員20人以下の企業を対象にした日本政策金融公庫松江支店の景気予測調査では、山陰の状況は「依然厳しい」とあり、景気回復の実感は「ほとんどない」というもので、全国最下位の数値となっており、日銀と公庫の見方はまったく異なっています。

識者の分析では、零細な下請け企業の多い山陰地域では、大都市部の製造業の景気回復が遅れているため、製品価格への転嫁が容易でなく、原材料費やエネルギーコストの上昇分を吸収できていないことが顕著に表れているとのことで、収益性の向上は価格と生産性の上昇如何ですから、価格転嫁が難しければ、設備投資で生産性を向上させる以外にないが、コストの上昇分を吸収した上に利息と返済元資を上回るキャッシュフローを生む設備投資などほとんど不可能であるから、「厳しい」のが当然と言うのです。

この、全く異なる景気判断から想像できることは、この地域の景気回復は、業種、業態、規模によって異なるということであります。

製造業と比べて情報通信業、サービス業、流通業といった非製造業においては、無形資産の付加価値(利益と言い換えても良いのですが)への寄与度が大きく、設備投資(有形資産投資)と比較して、無形資産投資はキャッシュフロー(内部資金)に対する感応度が高い。また、製造業と非製造業を比較すると、非製造業において無形資産投資のキャッシュフロー感応度が高く、中小企業や企業年齢の若い企業において、大企業や成熟企業に比べて無形資産投資のキャッシュフロー感応度が高い。つまり、無形資産への過小投資を補正するには、中小企業や企業年齢の若い企業に対して金融や税制を通じた政策的支援が有効だということがわかります。

島根県は、今年度ASEAN地域に進出する県内企業の支援拠点をタイのバンコックにおくと発表し、仄聞するところでは、9月にもオープンとのことでありますが、島根県内の企業が海外展開するために必要な要素は何だとお考えになっているかお尋ねします。
また、成功に導くためには行政としてどのような支援が必要だとお考えになっているのかお尋ねいたします。
島根県がバンコクに設置するデスクの展開の範囲と想定する具体的な活動内容については、どのようなものをお考えになっているのかお尋ねします。

従前、対外進出を希望する企業に対する支援は情報提供やインキュベーション施設の活用、コンサルタントの紹介などがジェトロ松江事務所や中小機構などによって行われていますが、今回の取り組みによって、ジェトロや中小など企業の海外進出を支援する国家機構とどのような連携をし、県内企業の海外進出をサポートするお考えなのかお尋ねします。

また、従来から進めてきた中国、韓国、台湾、ロシア沿海地域への企業展開に対する支援はどのようにされるのかお尋ねします。

海外進出にはコストダウンのために製造拠点を海外に移転する従来型と発展途上国をマーケットとして展開する型がありますが、資金調達に懸念がある県内企業には大きな制約がありますが、どのような対応を行うのかお尋ねします。

海外展開を図る上で、出身企業の国籍や自治体のネームバリューは成否のカギと言われます。国内での島根県の位置づけは出雲大社効果があると言ってもまだまだ低く、況や海外地域ではほとんど無名です。今後、島根県としてのイメージアップ(紹介)に、どのような広報戦略をお考えになりますか。

何年か前にウラジオストックにデスクを設置するイベントがありました。しかし、本年5月に開催された観光見本市は情報不足もあってか、来場者の予測を間違え、悲惨な結果だったと聞いており、せっかくのチャンスを逃す結果となりましたが、経緯をお聞きします。

米子空港にスカイマークが就航し、大山・宍道湖圏域の航空ネットワークは、従来の羽田、大阪、福岡に加え、成田、神戸、茨城、札幌、沖縄へと大きく拡大させることとなりました。47位の外国人観光客の入り込みを増加させ、インバウンドの取り組みを向上させるためにも、他地域、とりわけ米子空港や定期貨客船が就航しクルーズ船の寄港も見込める境港との連携強化が必要ですが、外国人観光客の増加をどのようにして図るのか所見をお尋ねします。

今後、島根県の企業が海外で成功するためには、海外展開を考える企業の人材育成や海外企業の買収、技術連携などの無形資産投資が必要です。しかし、県内企業には資金調達の手だてが極めて限られており、自ずから展開は限られたものとならざるを得ず、他地域の企業との連携や現地企業との提携などが不可欠ですが、県内企業が新規の展開を進めるために必要な新たな支援施策はどのようなものが考えられますか。
また、海外投資とは関係ありませんが、好調と言われる分野、例えば島根県東部の観光関連業種などの成長(景気)を持続させるためには何が必要だとお考えになりますか、お尋ねします。

溝口善兵衛知事答弁

県内企業の海外展開に対する支援について

県内企業の海外展開に必要な要素について
県内企業が海外展開をするために必要な要素としては、企業が海外市場に出ていくわけでありますから、ふだん国内でしている事業とは違う世界で活動しなきゃいかんわけであります。そういう点で非常にリスクがある、いわば投資をするということになりますから、1つ大事な点は、やはり国内で企業体として一定のリスクに耐えられるような安定した経営基盤を持っていると、これは非常に大事な要素だと思います。それから2番目に、海外でビジネスをすることになりますから、海外で通用する製品あるいはサービスあるいは技術力、そうしたものを有するということも大事な要素であります。そして、そうした事業を行うわけでありますから、企業体全体として、この海外投資を成功するために組織を挙げて進めていかなければならないわけでありますから、やはり経営者が海外展開を指揮する、そしてそれに応えて働く従業員が企業内にいると、こういうことが大事だろうというふうに思います。

海外展開への支援について
県内企業の多くは中小企業であります。そして、申し上げましたように海外展開には一定のリスクが伴いますから、しかし、海外展開をすることによって拡大する市場でビジネスを拡大をしていくということは、県内の本拠地における経済活動を支える役割を果たすわけでありまして、県としてもそうした活動を支援するということは、県経済にとっても大事なことだというふうに考えております。
そこで、県としましては幾つかの段階によっていろんな支援をしていく考えであります。まず、国内の準備段階では、企業が進出計画をつくっていくためには調査をしたりしなければなりません。そのために必要な経費を助成をする、そして計画自体をつくるための経費を助成をする、こうしたことが考えられる。それから実際に進出をする場合には、バンコクに開催する予定であります支援デスクで、次のような支援を行うと。タイの市場あるいは近隣の市場を含め、企業の要請に応じて最新の必要な情報を提供してもらうと。それから、市場の調査をしなければなりませんから、市場の調査などに場合によると同行するということもあるでしょう。それから、どういう取引先を開拓していっていいのか、そういう道先案内のようなこともあるでしょう。そして、県としましては、こうした国におきましてはやはり行政の関与っていうものが経済活動に対しまして先進国よりも大きな役割を演ずることがありますから、現地政府と経済連携を促進する覚書を締結をいたしまして、県内企業の円滑な活動を支援をしていくと、こんなようなことを考えておるわけでございます。

海外展開支援デスクの役割について
対象地域はタイが中心でありますけども、その周辺の、必要に応じ、企業の要請に応じ、インドネシア、ベトナムを中心としたASEAN地域も対象とするということです。それから、製造業、非製造業問わず、先ほど申し上げたような支援をしていくということでございます。計画段階の支援は既に申し上げましたが、現地の進出段階ですと、より具体的に申し上げますと、取引先を紹介をする、あるいは法人を設立するなどとなりますと、許認可とかいろいろな手続がありますから、そういうものへの助言をする。あるいは立地の場所なども、知らない地ですからいろんな手助けをする。それから、進出した後におきましては、事業運営についての助言もありますが、いろんなトラブルも行き違いなども生ずる可能性もありますけども、そういうものを手助けをするといったことがあるわけでございます。また、こうした支援デスクの活動は、県内の企業の方で、現在は海外展開に関心を有していないけれども、こうした支援デスクがいろんな情報を提供する、あるいは進出をした企業からいろんな話を聞くといったことで、ほかの企業にも海外展開への関心なども高まるといった効果があろうかというふうに考えております。

国の機関との連携について
情報提供をジェトロから得るとか、いろんなことはありますけども、最近は政府のほうも地方の企業が出ていくことを支援をするような施策を講じております。例えば、最近の事例としてはJICAの、政府開発援助の施策を活用して、松江のIT企業がベトナムの事業を請け負うといったようなことが起こっております。それから、中小企業機構が市場可能性調査事業というのを国内企業に提供してますが、そういうものを活用して物づくり企業がタイへ進出したということもあります。そういうものも活用していくっていうことが国家機関との関連でございます。それから、現地の日本大使館あるいはジェトロ、JICA等の現地にもいろんな拠点がありますから、そういうものと支援デスクが連携を図って、そういう現地の政府系機関との連携ですね、そういうものを支援デスクが行っていくというようなことがあります。いずれにしましても、状況に応じ必要な支援を行っていくよう努力をしていきたいということであります。

外国人観光客の誘致について
これはいろんなルートがあるわけであります。飛行機も、米子便で来られる外国人観光客もいますし、あるいは広島空港に来られる方もおられます。そういう方については、島根に来ていただくようにいろんな助成をするとかございます。それから、船のことについてもお触れになりましたけども、今週の月曜には「ダイヤモンド・プリンセス号」11万トンが境港に来られました。2,000人ぐらいの乗客がいるわけですけども、その方々は1泊はここではしませんけども、朝着いて夕方出るまでの間、松江城でありますとか出雲大社でありますとか足立美術館でありますとか、やはり島根にはそういうものがあるということで境港にも寄港されるという話を、日本のエージェントから聞きましたけども、そういう意味で船などの船便なども活用していくと。
それから、大事なことは海外の人が島根のことを知っていただくっていうことが大事でございます。ただ、これも島根だけでいろんなことをしても効果が限られておりますから、中国5県と共同をしていろんな説明会をするということも考えております。今年9月には、松江市において海外旅行者との商談会をインバウンドフォーラムということで開催をしたりいたしますし、タイからも旅行会社を招きまして、島根への商品の造成を働きかける、そういうことをやりますが、PR活動、旅行会社の方の県内視察、いろんなことをやっていきたいと考えております。

中村光男商工労働部長答弁

海外展開等の取り組みに対する具体的な支援施策について

中国、韓国、台湾、ロシア等への展開に対する支援について
県内企業の海外展開全般についての窓口としましては、しまね産業振興財団に国際取引支援を行うアドバイザーと担当職員を配置して、貿易、投資、実務に関する情報提供や個別相談に応じております。最近の支援実績ですと、石州瓦の輸出について、中国、台湾、ロシア以外にシンガポール、フィリピンでの支援実績がございます。県の支援制度では全ての地域を対象として、先ほど知事答弁にありました海外進出計画の策定、それから海外展開事業にかかわる人材採用、それから現地で雇用する技術者等の育成などを行う場合に支援を行っております。
貿易については、輸出拡大支援プロジェクトとして、海外販路開拓を目指す企業に対して市場調査、販売促進活動、輸出向け商品開発などに対する支援を行っております。今回タイに拠点を設置して、東南アジアでのよりきめ細かい支援を行うこととしましたが、その他の地域におきましても、今後の本県企業の海外展開に応じた支援を引き続き考えていきたいと思っております。

県内企業の海外進出に対する支援の内容について
まず、地域経済への波及効果が高い企業への海外市場での事業展開につきましては、平成25年3月に地域の金融機関等と協力して組成しましたしまね中小企業未来への挑戦ファンドの支援対象に加えました。さらに、今年度から海外へ進出しようとする中小企業向けの制度融資であります海外展開支援資金制度を創設しました。これは、海外展開を目指す企業の取り組み、具体的には海外の支店、工場等の設置または拡張にかかわる事業、それから海外に直接投資する事業への調査や従業員教育など、これに対して設備資金または運転資金を融資する制度でございます。県は、これらの取り組みにより県内企業の海外展開を支援してまいりたいと思っております。
人材育成や技術連携などの無形資産投資に対する支援に関しては、先ほどの融資制度のほか、支援制度の中では、繰り返しになりますが現地従業員の研修や海外で活躍できる専門的人材を採用する場合などの助成が該当すると思われます。また、しまね産業振興財団では、特許や商標等の外国出願に要する費用に対して助成を行っております。今後ですが、この無形資産投資の支援につきましては、例えば海外展開の段階に応じ若手職員からマネジャーまでに対して、社内で行う幅広い人材育成、それから海外向けのサービスや製品の開発等に対する支援も検討する必要があると考えております。
加えまして、今回タイに開設します支援拠点には、現地での取引先の情報収集、マッチングなどを通じまして、企業の無形資産投資の一助になる役割も期待しております。海外進出につきましては、企業によってさまざまな形態や展開があります。進出状況に応じて企業の意見をよく聞いた上で、補助制度、融資制度をどうしていけばいいのか考えていきたいと思っております。

島根県の対外広報戦略について
県内企業が海外展開を図る上で、島根県についてのイメージは海外における取引相手先との関係構築に影響を及ぼすものと考えております。そのため、県としては、まず現地政府機関等と信頼関係を構築することが県のイメージアップにつながり、その結果、企業の海外展開に寄与するものと認識しております。また、進出企業が現地での円滑な企業活動を進めていけるよう島根県を紹介していくことも必要であります。先般、県内企業が出展しました、タイでありましたサブコンタイランドのときに開催されましたセミナーでは、島根県の文化に加えて、物づくり産業についても紹介しました。タイへの拠点設置を機会として、今後島根県の風景、歴史、文化などを紹介し、イメージアップに努めていきます。

ロシアでの観光見本市出陳について
御指摘の見本市は、ロシア沿海地方行政府の主催で、本年5月に開催された観光の見本市でございます。この見本市には、山陰両県や民間団体で組織する山陰国際観光協議会の取り組みとして、初めて出展したものです。日本からは、山陰両県を始め新潟県など5県と日本政府観光局が出展しておりました。また、海外からは韓国、中国、タイなど12カ国から出展があり、一般来場者は3日間で2万5,000人でございました。韓国やマレーシアなどが国を挙げて大々的にPRしていたのに対し、山陰国際観光協議会のブースは装飾が簡素で見劣りして、アピールが弱かったとのことです。また、予想以上の人出で、用意した観光パンフレットも不足するという事態も重なりました。今後は、山陰国際観光協議会や日本政府観光局とも協議し、改善を図っていきたいと思っております。
ロシア沿海地方では、今年度フェリーを使った山陰への団体ツアーが検討されるなど、誘客の拡大が期待できます。今後、現地の情報収集やPRの強化に向けて、平成21年度にウラジオストク市内に貿易促進のために設置しました島根ビジネスサポートセンターを観光面で幾らかは活用できないかなども検討してまいりたいと思っております。

観光関連産業の成長の持続について
一般的には、企業の業績が好調なときに長期的に立った経営基盤の強化が必要と言われております。これは、1つには商品やサービスの顧客満足度などの現状を再認識すること、3年から5年先を見通し、経営資源を充実させたり設備投資を行うこと、それから市場動向を分析し、新商品の開発や新たな顧客開拓にチャレンジするといったようなことかと存じます。これを県内の観光関連産業に置きかえてみますと、1つは観光客の満足度を上げること、観光地や宿泊施設などで心のこもったサービスでリピーターをふやす取り組みが県内各地で行われ始めました。それから次に、人材の育成でございます。優秀な人材の育成には時間がかかりますので、早くからの対応が必要です。そして、さらに施設設備の整備も上げられます。さらに、新規事業の開拓です。県の役割としては、こうした民間事業者の取り組みを支援していくことです。具体的には経営者向けの研修会の開催や、専門家をアドバイザーとして派遣する事業、制度融資などによって、これらの要望にこれからも応えていきます。
また、近年増加しております外国人観光客やMICEと呼ばれる会議や大会に合わせた観光需要といった新たな客層の取り込みと切れ目のない情報発信は、県の重要な役割と認識しております。観光産業の持続的な発展に向けて、今後も県として積極的に取り組んでまいります。

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