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宮城全共への取り組みについて伺う。
(1)長崎全共の惨敗から2年が経過した。和牛の生産、飼養頭数や従事者は依然として漸減傾向にあるように見えるが、近年の状況と、この間、県が講じた振興施策の内容と宮城全共に向けた和牛改良の取り組みの現状を尋ねる。(農林水産部長)
(2)島根県が基幹種雄牛と位置づけた「隆娘」について遺伝的な懸念があると報道された。期待が大きかっただけに、関係者の落胆は大きいものがある。また、初めて、精液が事業団を通じて全国に提供され、「第7糸桜の系譜をひく島根の優秀血統」をアピールするはずが裏目となり、風評被害による価格下落を懸念する声もある。改めて、詳しい内容について説明するとともに、できるだけ早期に、徹底した原因究明を図る必要があるのではないか。(農林水産部長)
(3)飼料米の生産拡大は消費の拡大があってのことである。養鶏業の大きな伸びが見込めない中で、コメ飼料でも肉質に大きな変化が生じないとされる褐毛和種の飼育に関心が高まっているが、本県でも試験導入するなどの取り組みを始めるべきではないか。(農林水産部長)
│掲載日:2014年09月29日│
(1)宮城全共に向けた和牛改良の取り組みの現状について
近年の和牛の生産状況につきましては、子牛の市場出荷頭数につきまして、鳥取全共のございました平成19年度、それと長崎全共のありました24年度、それから最新の数字ということで25年度、3つ挙げさせていただきますけれども、平成19年度6,545頭、平成24年度が5,670頭、平成25年度が5,581頭ということでございまして、鳥取全共からの6年間で964頭の減少ということになっております。
それから、肥育牛、これは去勢の雄でございますけれども、この出荷頭数につきましては、平成19年度が2,421頭、平成24年度が2,910頭、平成25年度が2,602頭ということで、181頭の増加ということになっております。
また、飼養頭数の状況でございますけれども、同様に、平成19年度の数字ということで、平成20年2月1日現在の数字を申し上げますけれども、2万3,023頭、同様に平成25年2月1日現在で1万9,954頭、平成26年1万9,322頭で、3,701頭の減少でございます。このうち繁殖雌牛の飼養頭数につきましては、平成20年が1万832頭、平成25年が8,944頭、平成26年が8,743頭で、2,089頭の減少となっております。
従事者につきましては、従事者という形で統計の数字がないものでございますので、飼養戸数を挙げさせてもらいますけれども、平成20年1,791戸、平成25年1,167戸、平成26年1,086戸で705戸の減少となっております。
次に、この2年間、県が講じてきた振興施策についてお答えをいたします。
長崎全共での厳しい結果を踏まえまして、島根和牛の質を向上させる対策、それから量を確保する対策、この2つをポイントに、再興を目指して取り組んでまいりました。
質の対策の1番目といたしまして、産肉能力にすぐれた種雄牛の造成に取り組んできたところでございます。昨年度、検定を終了いたしました恵茂勝号などにつきまして、能力が高いことが確認されたところでございます。このような優秀な種雄牛の精液の交配を促進する施策を展開し、子牛市場における県内外の購買者の評価を高めていきたいと考えております。
質の対策の2番目といたしまして、毎年度200頭の優秀な若い雌牛の導入、保留支援を行っております。肉質が高く、肉量も確保できる雌牛への世代交代を進めているところでございます。
次に、量の確保の関係でございます。新たな担い手を確保し、繁殖雌牛頭数を増加させるため、集落営農組織等が放牧を活用した省力低コストな子牛生産を始められるよう支援を行っているところでございます。今後は、子牛を預かって集中管理するキャトルステーションなどの設置を進めまして、飼養管理の分業化を図っていくことで、生産者が増頭しやすい環境をつくっていきたいというふうに考えております。
宮城全共、29年度に行われるわけでございますけれども、第11回宮城全共に向けましては、長崎全共の検証結果を踏まえまして、また他県の先進事例の取り組みも参考にいたしまして対策を実施しているところでございます。
まず、出品対策組織、こちらの組織に生産者の方々にも参加をしていただき、その御意見を反映させながら、出品対策を展開しているところでございます。具体的には、肉牛の部の出品要件であります24カ月での早期肥育技術の確立について実証を行っているところでございます。また、性選別精液や受精卵移植などの新技術を活用して、優秀な肥育元牛を確保することとし、恵茂勝号を種雄牛として受精卵を作成したところでございます。ことしの11月末から、この受精卵を使いまして移植を開始し、優秀な元牛生産を行っていくなど、肉牛の部を中心に上位入賞を目指して取り組んでまいりたいというふうに考えております。
(2)基幹種雄牛の「隆娘号」について
隆娘号の関係でございます。
昨年度から、県が実施しております早期肥育技術確立支援事業で優秀な肥育元牛を生産確保する、こういう目的を持ちまして、県の基幹種雄牛隆娘号をすぐれた雌牛に交配して受精卵を作成したところでございます。この受精卵を2つの農場で7頭の借腹牛に移植して受胎をさせましたが、この2つの農場、それぞれにおきまして、合計3頭が胎膜水腫と診断されまして、母子ともに相次いで死亡するという事例がことしの7月から8月に発生をいたしました。異なる2つの農場で借腹牛であります和牛と乳牛とで胎膜水腫が発生したということですので、発生の要因は借腹牛ではなくて受精卵の側にあるのではないかという推測をしたところでございます。
このため、種雄牛としての能力検定時に同様の事例が発生していないかどうか、さかのぼって調査をしてみましたところ、平成22年度に隆娘号で1例、平成21年度に茂福花号で2例確認されたところでございます。これらの事例につきましては、母方の父がいずれも県有種雄牛の茂重桜号でありまして、一方でこの父親である隆娘号、茂福花号につきましても、茂重桜号の血を受け継いでいることから、遺伝的な要因により発症したものではないかという推測をしたところでございます。
このような状況を踏まえまして、今般県のほうでは、次のような対応をしているところでございます。
1点目といたしまして、隆娘号、それから茂福花号の精液の供給を休止しております。2点目といたしまして、平成21年度以降の全ての胎膜水腫の発生事例を調査しているところでございます。3点目といたしまして、国の研究機関に対しまして協力を要請しております。4点目といたしまして、先週26日に生産者団体や市町村などを対象とする説明会を開催いたしまして、関係者に今申し上げたような情報を詳細にお伝えするとともに、当面の間、精液の使用を控えるよう周知徹底をしたところでございます。風評被害が生じることがないように、早急な原因究明に努めていきたいというふうに考えております。
(3)飼料米の生産と赤毛和種の導入について
赤毛和種でございます。赤毛和種につきまして、国の研究所、農研機構の畜産草地研究所でございますけど、こちらに確認をしてみました。そうしましたところ、この研究所において、飼料用米を赤毛和種に給与する試験を実施した事例がないということでございまして、どれぐらいの量まで赤毛和種に飼料用米を給与することができるのか、また肉質にどういう影響があるのか、こういったことについてデータがない状況であるということでございました。
あわせて、赤毛和種の主産地であります高知県、それから熊本県にも問い合わせをしてみましたところ、生産者段階で実際に飼料用米を給与している事例、こういう事例は現時点ではまだまだ少ないということでございましたけれども、熊本県では、平成24年度から赤毛和種に飼料用米を給与して肉質がどうなるかということを調査する試験が開始されているということでございました。赤毛和種は、赤肉のうまみと脂肪の少ない牛肉を嗜好する消費者のニーズにマッチしている品種というふうに言われておりますので、まず赤毛飼育の先進県の事例調査を行ってみたいというふうに考えております。