県議会だより

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平成26年11月定例島根県議会一般質問(2)

「住みやすい地方の先端県しまね」について(2)

東京の1人あたり所得は437万円に対し、島根県は238万円だが、1世帯あたりの構成員は1:2で、世帯所得で見ると遜色は無い。いままで続けてきた施策に加えて、農林水産業を基盤にした内発的な産業振興に着手すべきである。

島根県の大半は中小、零細企業で、自己資本は小さく、設備投資の原資は借り入れがほとんどである。借り入れた資本は利息を付加して、返済する必要があるから、企業は返済のキャッシュフローを確保しなければならない。
キャッシュフローが減価償却と同程度で、借り入れの返済が減価償却の範囲内であれば、借入の返済はできるが、資産は減少し、ほとんどの場合、再生産投資のためには、新たな借り入れが必要となる。
製造業やホテル、旅館などのイニシャルコストがかさむ装置産業では、キャッシュフローが減価償却を上回るが、利益が出ると課税されるので、返済原資が不足し、資金の回転のために運転資金が必要となるケースが多い。
都市部の大企業とりわけ、上場企業に顕著だが、資本が証券市場で調達できる企業は、資本の返還の必要が無い分、事業活動で生じるキャッシュフローは配当や再生産投資の原資となるから、自己資本を増やし、純資産を積み上げる。島根県の企業と都会地の企業の競争力の違いは、まずその資本構成にあり、地方の企業が伍していくためには立地の優位性や高い技術力がなければとても太刀打ちはできない。

島根県の成功事例は奥出雲町と海士町にある。奥出雲町は町が100%出資した第3セクターの事業会社のイニシャルコストに過疎債を活用した事業手法であり、海士町は徹底した情報発信と外部人材の登用による起業の促進であり、事業主体は町が100%出資した第3セクターで行っている。
いずれも施策展開にスピード感があり、独自の展開を後に国が応援する形になっている。

例えば、農業では、特区申請により、県が耕作放棄地の接収を図り、耕作を希望する法人や個人に貸し与える制度の創設、漁業では荷捌き所に鮮魚の1次処理施設と冷凍・冷蔵施設を設置し、小ロットの生産品を加工することによって収益アップを図ること、林業では500mピッチの作業道整備による山林の団地化など、島根県発の取り組みによって停滞を脱する方途を拓くべきではないか。

つまり、島根県で新たな雇用の場を作ろうとした場合、中海、宍道湖地域のような集積地域は民間活力で、農村、漁村、中山間、離島地域は官主導の手法を検討すべきであり、従来発想を超えた発想で雇用の創出や産業振興を図ってほしいのである。

「あきないの詩」の「あきない」を県政に置き換えてみると、「ほんもの」がある島根県には、多くの可能性がある。島根の何を地域資源としてどう活用すれば、内発的な発展が可能となると考えるか。具体的に示せ。(知事)

また、産業や医療、福祉の人材養成、確保にどのように取り組むか。知事)

また、3世代同居を進め、世代間の協力によって島根県の地域課題を解決する道を検討すべきではないかと思う。結婚と3世代同居の奨励を図ることは島根の定住に大きく寄与し、島根の伝統や文化を継承するためにも大きな効果を生むと思うが見解は。(知事)

島根県の高校生の3分の2超は進学などで一旦県外に出るが、学業を終えて、いざ就職というときに、島根県で一番大きな職場である県庁や県教委、県警察の待遇が、隣県を下回る全国最低水準で、「帰りたい」という気持ちが萎える。
人材の登用、確保を図るのであれば、国家公務員を上回るぐらいの待遇を用意し、全知全能を傾けて県民福祉の向上に邁進してもらいたいという島根県の気概を示すべきではないだろうか。唯々諾々と国の方針に従っていても、島根県に良い人材は集まらない。
執行権者として全国最低の給与水準についての所感を問う。(知事、公安委員長、教育委員長)

困難な課題を抱えた今だからこそ、県には最高の人材が必要だが、現状で秀逸な人材を発掘、登用できるのか。(知事)
人事委員会は島根県の職員の給与待遇について全国最低とすべきとする勧告を行ったが、納得できる理由を示されたい。(人事委員長)

島根県立大学は島根県が設置した人材養成機関である。時代に相応しい、また、島根県の将来を切りひらく優秀な人材を輩出できるようにしてほしいと思っている。
北東アジアの研究を行うのであれば、英語はもちろんのこと中国語やロシア語、韓国語を収得すべきだが、ほとんどそうした取り組みはされていない。

せっかくの県立大学だが、十分に島根県の人材養成施設となり得ていない。松江キャンパスの保育人材養成や出雲キャンパスの看護人材養成についてもスキルアップや資格収得などに新たなリクエストがあるが、各キャンパスにどのような役割を期待するか。また、どうすれば、有為な人材養成の場となるか。(知事)

また、国の子育て対策の変更により認定子ども園へのシフトが可能となった。島根県では、ほとんどが定員を割りこんでいる公立幼稚園を子ども園に移行させれば、保育所の増設などはほとんど必要なくなる。国の子育て支援政策はダッチロールで2転3転した挙句、消費税増税延期によって計画通りの実施は危うい。

県内の幼稚園はすでに社会的な役割を終えたと言っても過言ではなく、この際、島根県の子どもは希望すればすべてが子育て支援施設に入所できるようにしてはどうか。(知事)

ベルギーのブルージュのごとく高齢者の地域居住を可能にする政策展開と福島県三島町や徳島県上勝町のごとく「余禄」の創出は過疎、高齢化を克服する一つのモデルだと考える。地域のコミュニチィが残存している島根ならではの見守りや看取り、共同作業などの在りようを公民館や小学校単位で考え、実践することで社会コストを削減することも可能ではないか。(知事)

また、働くことを放棄し、納税や年金、保険制度を拒否する住民の増加は、日本社会を崩壊させる危機である。行き過ぎた社会福祉の給付によって国の財政は破綻寸前だが、福祉のあり方について知事の見解を問う。(知事)

青少年に対する「権利と義務についての教育の必要性」について教育委員長に問う。(教育委員長)

溝口善兵衛知事答弁(1)

3世代の同居などについて

それから、結婚と3世代同居の奨励による島根の定住への寄与についての御質問であります。
未婚、晩婚化によりまして、出生数の減少が人口減少の一つの大きな原因でありますから、結婚に関する取り組みは大変大事であります。これまで、結婚ボランティア、はぴこと言っておりますけども、このはぴこの方々が実績を上げております。若者の結婚相談でありますとか紹介でありますとか、出会いの場の創出などもさらに取り組んでいく考えであります。これも地域地域でやっておりますけども、結婚をしたい方、あるいはこういう人がいいといったデータなどを皆さんに紹介をする一つの、何といいますか、パソコン上の場といいますかね、そういうものを県などがつくってはどうかというような提案もありますから、そういうことも今検討しているところであります。
また、3世代同居につきましては、経済的な子育て世代に対する負担でありますとか心身にかかる負担を軽減するという意味で大変望ましい世帯であるわけでありますけども、そのほかに、地域の祭事でありますとか伝統芸能でありますとか、あるいは食文化でありますとか、そうしたものはおじいちゃん、おばあちゃんなどから子、孫に伝わっていくわけでありますから、そういう面でも3世代住宅ということはいいことだというふうに私どもも思っております。また、そのためには一定の財源が必要なわけでございます。邑南町とか奥出雲町で3世代同居の方々に対して一定の補助をしておりますけども、多額ではありませんけども、そういうことができるように過疎債のソフト債を活用できるように、ソフト枠を拡大をするような要請を今行っておるところでございます。

溝口善兵衛知事答弁(2)

人材の養成などについて

それから、島根県職員の給与水準についての御質問がありました。
人事委員会は毎年、県内の民間事業者の給与実態を調査をしまして、県職員の給与水準を県内の民間給与水準と均衡させるということが人事委員会の一つと申しますか、考え方でありまして、それに基づいて人事委員会は勧告をされておられるということでございます。県としては、人事委員会の勧告を尊重して職員給与を定めておるということであります。
平成25年度の都道府県のラスパイレス指数、国と比べてどういう状況になってるかという指数でありますけども、島根県は43位でございます。大体島根の周辺にいる県は、給与カットをまだ継続してるところを除きますと、大体宮崎県でありますとか鹿児島県、徳島県、鳥取県等、似たような状況にあると思います。これらの県は、島根と同様で、高度成長期以降、経済発展のおくれなどから民間企業の拡大がおくれてきてるわけでございまして、そういう意味で民間給与水準が低くなってることの反映だろうというふうに思っております。
それから、県には最高の人材が必要であり、そのための発掘、登用、給与も今のようなことでいいのかという御質問でありますが、給与水準は民間準拠ということでございますから、そこは平均的な給与はそれで決まっていくということでございますけども、職員の採用試験を見ますと、競争倍率で見ますと、大卒程度では、試験に応募される方が採用される方の約5倍ぐらいでございます。事務職では11倍ぐらいでございまして、給与だけでなく、県職員が県民のために働いているとか公共のために働いているとか、あるいはそういう職に働いていきたいといったような要素が、給与だけでなく、県職員に応募する方々の数に反映をされてるんではないかというふうに思います。
そういう意味で、非常に多くの倍率の中から県職員で採用されますから、そういう意味では、入る段階で一定のレベル、意欲を持った人たちが入ってこられるということでございます。そして、県の中では、やはりそうした若い人たちがよく育っていくように、各部局でいろんな指導をする、上司も手本を見せる、あるいはみんな一緒になって働く、そういう中でリーダーシップを発揮する職員がどんどん出てくるというふうに我々も努力をしていきたいというふうに思っております。
それから、県立大学各キャンパスの役割についての御質問がありました。
浜田キャンパスでは、東北アジア各国、アメリカへの海外留学、TOEICなどの英語検定を通じまして、国際社会にも通用するグローバル人材の育成にも努めておられます。松江キャンパスでは、保育士や栄養士、司書など、地域から求められる資格職等の育成も行っております。出雲キャンパスでは、地域で不足する看護師や保健師、助産師の育成などに取り組んでおります。
議員御指摘のとおり、資格者に対しましては、栄養の分野では、生活習慣病の予防やアレルギー対策におけるより専門的な栄養指導というものが求められます。保育の分野では、発達障がいへの理解やコミュニケーション能力など現場での対応力の向上、看護の分野では、緩和ケアなど特定の看護分野でのより質の高い看護の提供などが求められておりまして、それに対応した教育訓練を行っていただいておるということでございます。各キャンパスとも、現場での実習やボランティア活動など、地域に出かけていきましてそうした実情を学ぶことも積極的に取り組んでおります。今後も、こうした活動を通じまして、地域とのつながりや島根への愛着が醸成され、将来の島根の発展に貢献する人材を育成していくことが必要でありますので、そういう方向で県立大学にもお願いをしておるところであります。
産業や医療、福祉の人材の養成、確保についての質問でありますが、産業人材の養成、確保のためには、キャリア教育の中で地域の課題を学び、将来地域の担い手として貢献するという気持ちを育てていくということが大事であります。また、産業分野で人手不足が深刻化している業種、職種につきましては、関連する業界から意見をお伺いしながら、県としてさらにどういうことをすべきなのか、考えていきたいと考えております。
医療、福祉の分野では、高齢化の進展に伴い、今後も医療、介護のニーズの増加が見込まれることから、将来の需給見通しを踏まえながら、計画的に確保、定着のための対策を進めていく考えであります。
次に、子育て支援施設に関連しましての御質問であります。
県内の幼稚園と保育所の入園、入所の状況を見ますと、大半の幼稚園が定員割れとなっている一方で、保育所では定員を超えた受け入れを行ってもなお待機児童が発生している市町村も見られ、地域の保育ニーズに応え切れていない状況となっております。現在、各市町村では、来年度から始まる子ども・子育て支援新制度に向けまして、幼稚園や保育所などの利用ニーズに基づいた市町村計画の策定に取り組んでおります。この計画において、こうしたいろんなニーズに対する受け皿をいつどのような形で整備するかについて明記をするということとなっておりますが、市町村の現時点の需給見通しでは、平成27年度以降の5年間の計画期間中に、入所を希望するほぼ全ての児童を幼稚園、保育所、認定こども園のどれかの施設で受け入れることが可能となる見込みとなっております。
県としましては、市町村のこの計画に基づく取り組みの支援や、質の高い保育サービスの提供が可能となるような人材の確保育成に努めていきたいというふうに考えております。

溝口善兵衛知事答弁(3)

地域のコミュニティなどについて

それから、地域のコミュニティーの役割に関しまして御質問がありました。
人口減少や高齢化が進行する我が国において、今後は、国や自治体により提供される公助だけでなく、公の助けだけでなく、地域における住民同士の助け合いの活動を広げていく互助――互いに助ける――の取り組みや、健康管理など自分のことは自分でする自助の取り組みが一層必要となってまいります。互助の例としましては、県内各地で自治会単位での住民の助け合いによる通院や買い物の支援、道路の草刈りや除雪のボランティアなどの活動が県内各地で見られるとこであります。こうした地域の実情に応じて、公民館や小学校単位など、より広い範囲でこうした取り組みを広げていくと、それによりましてさまざまな社会的なコストを軽減する努力をするといったことは、やはり公費によるいろんな、結局は国民に保険料でありますとか税でありますとかかかってくるわけでございまして、社会的なコストを減らす努力をしていかなければならないというふうに考えておるところであります。
最後に、福祉全体のあり方についての御質問でありますが、国、地方を通じた厳しい財政事情が続いておるわけであります。これは、短期間で健全な形になるというのはなかなか見通しがないわけでございます。そういう意味でも、自助、互助、公助のバランスをとりながら、持続可能な福祉の仕組みを構築していく必要があるというふうに思います。
そういう意味では、それぞれの人がみずからの持てる能力を生かしながら積極的に社会参加し、真に支援が必要な人に対して適切な支援が行われるよう、国民全体として協力して取り組んでいく必要があるというふうに考えております。私どもも、そうした互助あるいは自助、そういうものを進めるいろんな民間の方々の活動があります。そういうものもよく支援をしていきたいと考えているところであります。

仲佐久子教育委員会委員長答弁

教員の給与水準の所感および権利と義務についての教育実践について

今日の教育現場には、学力向上問題やいじめ問題などさまざまな課題がありますが、先生方は、これらの課題に日々懸命に取り組み、子どもたちと真摯に向き合っておられます。
先生方の給与については、制度上、地域の民間給与水準との均衡を図ることとされており、県の人事委員会においては、教員の給与水準を県内民間給与の推移を踏まえての水準と均衡させるという勧告を行われたものと考えております。今後とも、教員の職務にふさわしい水準の処遇が必要であると考えます。
次に、青少年に対する権利と義務についての教育の必要性についてお答えさせていただきます。
私たちの社会は、国民の税金により支えられています。少子高齢化社会を迎え、医療費助成などによる高齢者への支援や、児童手当などによる子育てへの支援などが必要ですが、これら支援にも税金が使われています。このような事業も、税を納めない人が出てくると、実施できなくなります。もちろん、社会保障を受ける権利や消費者保護の権利も当然にありますが、権利には勤労や納税の義務を伴います。これからの社会を崩壊させないためにも、青少年に対して権利と義務についてしっかり教えることが必要であると考えます。
学校では、小中学校の社会科や高等学校の公民科において、社会を支える租税や勤労の意義と役割について考える学習を行い、納税や勤労の義務を果たすことの大切さを教えています。私は、松江法人会の女性部会の活動の一環として、小学校に出向き、税の意義や役割を中心に、租税教育用ビデオのほか、身近な税に関する内容を題材とした小道具を使用し、児童に参加させながら考えさせる、動きのある楽しい授業の活動に取り組んでいます。今後もこのような取り組みに参加する中で、納税や勤労の義務を果たすことの大切さを教えていきたいと考えています。

服部京子公安委員会委員答弁

警察官の給与水準についての所感について

治安情勢が多様化、複雑化する中で、県民の安全・安心の確保に向けて、昼夜を分かたず、使命感を持って、精力的に日々職務に邁進している警察官の姿を目の当たりにし、感銘を受けているところでございます。
県の人事委員会におきまして、警察官の給与水準につきましても、県内の民間給与水準を考慮した勧告が行われたものと承知しておりますが、警察活動の専門性、困難性などを踏まえれば、今後ともこれに見合う水準の給与などの処遇が必要であると考えます。

中村寿夫人事委員会委員長答弁

県職員の給与勧告について

県職員の給与について全国最低とすべきとの勧告を行った理由を示されたいとの御質問についてお答えをいたします。
島根県人事委員会は、近年、県職員の給与については、制度、構造は国に準じ、水準は県内民間給与の水準との均衡を図ることを基本として、勧告を行ってきております。具体的には、毎年4月1日における事業所規模50人以上の県内民間事業所の給与実態を調査しており、本年は138事業所について調査を実施したところであります。この調査結果に基づき、県内の民間給与と県職員との給与水準が均衡するよう勧告を行っており、ボーナスにつきましても同様に、県内民間事業所の支給月数と均衡させているところであります。
その結果といたしまして、ボーナスは本年度の勧告後におきまして、年間3.8月分で、全国で最も低い支給月数となっておりますが、勧告後の県職員の平均給与を見ますと月額37万1,036円でありまして、平均年齢や職員構成の違いはありますものの、全国36位というふうになっております。
先ほど、鳥取県職員の給与を下回るという御指摘がございましたが、島根県職員の給与は、平均月額で鳥取県職員の給与を3万4,700円余り上回っております。また、ボーナスの支給月数の面では若干下回っておりますが、支給額の面で見ますと相当額上回っておるというのが実態でございます。
なお、職員の構成等を盛り込んだラスパイレス指数につきましては、これは昨年度の数字でありますけれども、97.5ということで、先ほど知事の御答弁にありましたように43位というふうになっております。
人事委員会といたしましては、今後とも、県内の民間事業所の給与実態を的確に反映した給与勧告を行うという基本的な考え方であります。産業を振興して県内民間事業所の給与の底上げを図ることが県職員の待遇の改善につながるものと考えている次第でございます。

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