県議会だより

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平成27年9月定例会一般質問(1)

地方創生総合戦略について

第2次世界大戦の終結から70年が経過し、戦争を体験した人たちが極めて少なくなって、平和の大切さを身をもって伝えることが難しくなりつつあります。こうした中で、出雲市の鰐淵コミュニティーセンターでは、昭和19年9月にフィリピン北方海域で戦死した青年兵士が応召前に詠んだ歌集「野虎の叫び」を刊行しました。
作者の松浦虎三さんは、大正5年2月、鰐淵寺のあります別所町に生まれ、河下尋常高等小学校卒業後、昭和12年に歩兵第21連隊に入隊、昭和14年に負傷により除隊後、昭和18年に再召集により服役されたとあります。戦後70年、ことし、巻紙に毛筆でしたためられた歌集が遺族からコミュニティーセンターに寄託をされました。コミュニティーセンターでは、この寄託を受け、「野虎の叫び」を刊行されました。
その序文には、「我が心の糧として、魂の叫びとして詠うてきた歌をまとめて有事に処するのも皇国の戦士のたしなみではあるまいか」で始まり、「詠み上げた自作の中から100首を選んで「野虎の叫び」と名づくる」とし、「歌は人のまことの心のほとばしりなるがゆえに、無人の大荒野に心行くばかり咆哮する野虎の叫びであった」と結ばれております。編さん日は昭和17年6月30日とされております。そして、その中を見ますと、第1項、天の巻、死生観として、「散りて又来たらん春をしのびつつ風もさやかに山ざくら花」とあり、「草深き田舎に住みて年老いし父母にしあり吾如何にして」と結ばれておりました。
ふるさとを思い、年老いし父母を思い、戦陣に散った青年兵士の詩歌には万感胸に迫るものがあり、ふるさとの後世を託された我々の責任は大きなものがあると思います。少子高齢化や過疎化の厳しい課題を克服し、何としても豊かで住みやすい島根として次の時代に送っていかなければならない、英知を結集しなければならないと思う次第でございます。
それでは、通告に従って質問させていただきます。
初めに、地方創生総合戦略についてお尋ねをいたします。
私は、産業振興、とりわけ労働力確保に重点を置いてお伺いをいたします。
我が自民党議連の中村議員の質問にありましたように、県は、合計特殊出生率を2.07、人口の社会動態を均衡させるとする目標を掲げ、2060年の島根県の人口をおおむね46万8,000人程度確保するとする総合戦略をまとめ、それを達成するために必要となる産業振興対策や結婚子育て対策の充実を4つの柱として掲げられました。46万8,000人の数値を達成すべき最低ラインとして捉えるのか、あくまで目標数値とするのかで取り組む姿勢は大きく異なるのでありますけれども、この数値をクリアすべき最低ラインとして各種の施策を展開すべきと結論づけた自民党議連の方向に県政のかじを向けていただきたいと思っております。
ただ、現状では、県と市町村の間に人口の予測数値や重点的に取り組む施策等の捉え方に相当の温度差があるとの指摘もあり、松江、出雲を中心とする東部地域と、高齢化の進む石見地域、島嶼部の隠岐地域では、目先に抱える問題が異なることから、一丸となって取り組むことは難しい面もあろうかと思いますが、そこは知事のリーダーシップに期待したいと思います。
その上でお伺いするのは、高齢化が進行したとはいえ、現在県内には40万人を超す生産年齢人口がございます。2兆4,000億円程度の総生産額がありますが、将来もこの水準を維持していくためには一定の労働力を確保する必要があるのではないかということであります。46万8,000人とすると、現在の6割程度の生産年齢人口となるのであります。
日本の総人口が減少しているのは、子どもが生まれないことに原因がありますから、若年世代が減少していることは都会も田舎も同じでございます。本来は、出生率の低い都会の落ち込みが大きいはずですけれども、田舎から都会への人口移動がありますから、都会の若年人口は保たれているのであります。今後、生産や販売の拠点となる都会の高齢化が進行して、都市部での労働力不足が顕在化するにつれて、都会から地方の若年層に対する求人需要は今よりももっともっと大きくなることが予測されますから、放置をすれば国内での人材獲得競争が激化するのは自明であります。
政府は、この労働力不足を補う対策として、女性の参画を促す、そしてまた高齢者を生産現場へ復帰させる、あるいは高齢者を活用するという政策を掲げておりますけれども、島根県の現状を見ますと、共稼ぎ世帯が、すなわち女性の労働進出が日本一という統計がありますから、島根県で今以上に女性の皆さんを生産現場へ進出してくださいというのはなかなか難しいことだと思いますし、そして女性の皆さん、家庭にいらっしゃる方を社会にもっともっと出てきてくださいと言うためには、今女性の皆さんが担っておられる家事、育児というものを社会化するか、またその分野を誰かに委ねていかなくてはならない。一つの方策は、多世代同居によって家族の中で役割分担をする、あるいはおじいさんやおばあさんにその役割を担ってもらうということがあります。
しかし、女性の皆さんに何も講じないまま、社会に出てきてくださいと言えば、若い世代に結婚して出産して子どもをなしてください、子育てを皆さん奨励しますよという、こうした政策と相矛盾するおそれもあります。また、高齢者が農山漁村を支えているという実態からすれば、島根県において女性や高齢者を潜在的な労働力として評価をしていくことには少し違和感を感じるわけでございます。
多世代同居は、一つの大きな解決する方策でありますし、私は過去何度もそうした必要性を申し上げてきました。しかしながら、今もう一つ考えておかなければならないのは、外国人ワーカーの活用であります。少子高齢化の進行は、あらゆる手段を講じても、一朝一夕では解決しません。相当な時間を要する課題であります。もはやこの外国人ワーカーの導入なくして人口減少を上回る新規労働力を確保することは困難であり、そのための条件整備を急ぐ必要を感じるのでございます。
人口が減少する中で、生産活動や地域活力を低下させずに維持していくためには県はどのような方策を講ずるおつもりなのか、お尋ねいたします。(知事)

溝口善兵衛知事答弁

人口減少下での地域活力の維持について

人口が減少する中にあっても生産活動の規模を維持していくためには、2つあると思います。1つは生産性の向上を図ること、そしてまた労働力の確保を行うということだろうと思います。
生産性の向上の中にもいろんな対応があると思いますが、1つはやはり生産の過程を効率化をすると、そのためにはやはり設備投資でありますとかイノベーションが必要でございます。それを進めていくということ、さらにそれを支える人材が必要ですから、そういう人材を確保していくこと。もう一つは、やはり売れる商品をつくるということが一番大事で、一番と申しますか、大変大事でございます。一度設備投資をし、あるいは人を雇い、そういう中で、いい商品が出てくる。そうしますと、生産性というよりも販売の段階で売り上げがふえるわけでございますから、それによっていわば企業の収入は所得がふえるわけでございまして、そういうことが人口が減少する中でも生産あるいは経済活動を維持するのに必要なことだろうというふうに思います。
こうした観点から、総合戦略には次のような施策を盛り込んでおります。まず、企業の生産性向上には、物づくり産業のイノベーションを促進するための設備投資への支援を行う考えであります。それから、新技術の開発等を促進するための産学官連携による技術支援を行うと。高専でありますとか島大でありますとか、そういうところと県の産業技術センター、あるいは民間の方々が協力をして開発を進めるといったことであります。また、電気電子産業の競争力強化のための人材の育成の支援を行う考えであります。
そして、ITソフトに関連いたしましては、しまねソフト研究センターを設置をいたしますので、そこで先駆的な技術開発、また高度のIT人材を育成していくと。それに、先ほど申し上げましたように、これはいろんな形の努力が必要でありますけども、よく売れる商品を、あるいは製品をつくっていくと、このための対策を計画の中に織り込んでおるところでございます。
また、農林水産業の生産性向上に対しましては、農業の担い手の組織化、法人化や、担い手への農地集積による中核的な経営体を育成していく。林業におきましては、必要な作業道の整備、林業機械の導入など、生産流通基盤の整備を行っていくということ、それからコスト削減や付加価値向上等を通じまして水産業の構造改革などにも取り組むというふうに考えております。
次に、労働力の確保ということになります。人口が減っても労働力人口が減らないようにするという考えでありますが、議員が御指摘になりましたように、外人労働者の活用も一つの方策だろうと私どもも考えております。
そのほか、県の考えとしましては、これも議員から御指摘ありましたけれども、多世代同居の推進を行うということでございます。また、若年者の県内就職の促進や人材の育成、職場の定着の支援を行ってまいります。そして、高度技術、技能を有する産業人材を都市部から移転することを促進をしていく。そして、ワーク・ライフ・バランスの推進や夫婦間での家事の分担などによりまして、女性が仕事と子育てを両立できるような環境づくりを行ってまいります。それから、就職相談窓口の設置などによりまして、就労意欲のある中高年齢者の就職支援を行うといったさまざまな観点から就業促進策を取り組むこととしております。
さらに、ふるさと教育や高校等の魅力化、活性化による県外からの入学促進といった取り組みも、社会減対策の観点から、県内の労働力確保に将来はつながっていくだろうというふうに見ております。戦略に沿ったこれらの取り組みを推進することにより、生産活動、販売力の拡大、あるいは地域活力の維持に努めてまいります。

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