県議会だより

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島根県議会平成28年5月定例会一般質問(5)

人材確保について

全国のポリテクカレッジの入所状況を見るとかなりの志願者がありますが、江津市にあるポリテクカレッジ島根は定員割れの状況が続いています。先端的な機材と指導スタッフがおかれた工業系の施設は松江工専と遜色はないように見えるのですが、圧倒的に知名度が低いのです。
県内の企業経営者や採用担当者の多くはポリテクカレッジとポリテクセンターを混同し、高校の進路指導教諭の認識も同様で、せっかくの施設が生かされていないように感じますがその要因は何でしょうか。(商工労働部長)
同僚議員は石見地域の高校生にポリテクカレッジ島根を高校課程3年と専門課程2年の「江津工専」と位置づけ、産業人材の養成施設としてもっと活用すべきとの提言を行っていますが、まさに至言であり、直ちに取り組みすべきです。また、高卒採用者を採用後にポリテクカレッジへの進学できる制度を県内の事業者に対し積極的にPRすべきであり、産業人材のスキルアップ施設として活用すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。(商工労働部長)
企業の生産性向上には「投資」が不可欠な要素であり、ほとんどの人は「設備投資」による生産手段の高度化を想起します。しかし、従事者のスキルアップ、いわゆる「無形資産投資」が不可欠の要素であることは言うまでもありません。そうした意味では、工業系の技術者養成施設であるポリテクカレッジは県内事業者にとって生産性向上のツールであり、県は政策的なアピールを強化すべきですが、どのような対応をお考えですか。(商工労働部長)
島根県は、県内に不足する医師、獣医師、看護師、介護士、保育士などの人材の確保対策として卒業後の県内従事を条件に進学に必要な資金の貸付や奨学金の支給を制度化し、実効をあげています。
小生は、これを一歩進めて、県内の事業者が高校生を採用し、採用後に大学や資格修得に必要な専門学校へ進学させる制度を創設してはと思っています。現在、定年退職の年齢は60歳。多くが再雇用されるとしても、県内で65歳前後に職を離れる人が年間6000~8000人程度に対し、少子化によって、島根県の出生数は5000人から6000人で、マンパワーの不足は明白で、資格が必要となる高度人材の確保はますます至難となることは容易に予測できるのです。
今のうちに言わば「青田刈り」して、人材を確保する制度を自治体と事業者が共同でつくり、実施してはどうかと考えます。方式はいろいろ考えられますが、零細企業の多い状況を考えれば、企業が支払う給与相当の進学費用を無利子で貸付する制度や参加企業を募集して基金を創設し奨学金として支払う制度等が現実的だと考えますが、島根版の人材確保策を検討してはどうでしょうか。(知事)

最後に、インバウンドの対策について一言申し上げます。外国人観光客の受け入れのために空港や駅、観光地、道路などのサイン(標識)は英語や韓国語、中国語などの表記となり、WIFIの整備やトイレの洋式化など設備改善も進んできました。ほとんどの人は、中学、高校で5~6年英語を習っていますが、「話せず、聞けず、書けず」で、外国人の受け入れに必要な英会話は不十分です。しかし、間違いなく外国人観光客は増加し、関係者には英会話修得が必要最低限の無形資産投資であります。
島根県は松江と出雲、浜田に県立大のキャンパスを有しています。山陰DMOの設立によってこのほど山陰地域限定通訳案内士が誕生し活動が開始されました。この人たちを講師にして、県立大のキャンパスで、講義のない週末や夜間、長期休業中に英会話や中国語、韓国語の講座を実施してほしいのですが、対応できますか。(商工労働部長)

溝口善兵衛知事答弁

産業人材の確保について

島根の企業が経営の改善等のために専門家を確保するということが必要なわけでありますが、それが難しい状況になっているが、この問題に対して専門人材を確保する制度を自治体、事業者が共同でつくって実施してはどうかという御質問であります。
県が行っております企業からの聞き取りによりますと、団塊世代が退職をする、あるいは若者の理系離れなどによりまして、専門的な人材や生産現場の人材の確保が徐々に難しくなっているという状況が起きております。県では、中堅以上の専門人材を確保する際の経費の支援、専門人材確保支援窓口による相談による対応などに取り組んでおりますが、最近の経営者の声を踏まえますと、さらなる取り組みの必要性もあるように感じております。今後、生産年齢人口の減少が見込まれる中、優秀な産業人材の確保育成は、地方にとりまして大変重要な課題であります。議員御提案の資金貸し付けや奨学金制度などにつきましては、企業や市町村の意見なども聞きながら、効果の上がる方法を検討していく考えであります。

安井克久商工労働部長答弁

産業人材の確保とインバウンド対策について

産業人材の育成について
ポリテクカレッジ島根は、近年、数年にわたって定員割れが続いております。この要因としては、1つには、ポリテクカレッジ自身の高校や企業に対する情報発信が弱かったこともあると考えますが、県としてもポリテクカレッジが県内産業に資するすぐれた人材を養成する極めて重要な施設であるという認識と企業等へのPRが十分でなかったことがあると考えております。そのため、ポリテクカレッジの充実した訓練内容や100%に近い就職率、最新の設備や優秀な指導体制などの魅力が、高校生や保護者、企業等へ十分に伝えられていなかったと考えております。
短期大学並みの物づくり人材の養成機関であるポリテクカレッジは、高校の新卒生徒だけではなく、企業の従業員を入校生として2年間受け入れる制度を持っております。また、その在学中に企業が支払った賃金の一部について、国の助成を受けることもできます。しかしながら、企業の従業員の入校は極めて少ないと聞いております。企業は、従業員をポリテクカレッジで学ばせることにより従業員の技術力向上を通じて企業の競争力の強化が図れること、また従業員の人材育成に重きを置く企業として、人材確保の上からも効果が期待できます。こうしたポリテクカレッジを使った従業員のスキルアップの効果、利点を県としても広く企業に周知してまいります。
今後、企業が経営を維持していくためには生産性の向上が必要であり、そのためには設備投資を行うか、長期的視野に立ち、従業員一人一人のスキルの向上を図る人材育成の投資を行うかであるということを、まず県としても企業に対してしっかり伝えてまいります。そのためにも、ポリテクカレッジが県内にあって、松江高専に類するような設備と指導陣を備えていて、製造業に在職している職員を長期で受け入れ、育成できる唯一の施設であること、また設立から20年を超え、県西部では卒業生が製造業の企業の中核として活躍していることなどを、ポリテクカレッジとともに関係の業界、企業、高校等に知らせるとともに、先ほど知事の答弁にもございましたが、何らかの対策も検討しながら、その活用を働きかけてまいります。

インバウンド対策について
インバウンド観光の推進には、関係者が語学力を高め、外国人観光客サービスの向上を図るということは大変重要でございます。山陰地域限定通訳案内士については、2月に研修を開始し、島根県においては5月18日に50名の方が合格され、今後の活躍が期待されております。御提案の県立大学を会場に通訳案内士を講師として関係者向けの語学講座を行うことは、1つには通訳案内士の活用そのものに加え、通訳案内士本人にとっても現場に対する理解が深まること、地域力を高める事業に県立大学としても貢献できることなどの効果も見込まれるため、実施に向けて検討をしてまいります。

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