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最近、漁業者から「サザエ、アワビ、ウニとりわけアワビやバフンウニの水揚げが激減した」「モズクやアラメ、ハバノリの収穫は従前の1~2割」などと聞きます。以前、沿岸の磯やけの状況を問い、「県内湾岸地域の調査を実施する」との答弁がありましたが、調査結果を明らかにするとともに、県内沿岸地域の磯焼けの状況をどのように把握しておられるのか。また、採貝、採藻の漁獲状況とあわせて答弁を願います。(農林水産部長)
磯焼けの原因は必ずしも特定されていませんが、一般的にはウニやヒトデの食害、土砂流出などによる環境変化、山林環境の変化による栄養不足、水質汚濁などが要因としてあげられています。小生は沿岸地域に約60年住んでいますが、例えば、島根半島沿岸地域を例にとると、周辺環境変化は海岸の松枯れ、海岸道路の整備に伴う法面のコンクリート化が顕著で、ほかには農地や山林の荒廃があります。
海岸環境の回復に必要な視点と対策については、ずいぶん前にNHK-TVの「プロジェクトX」で北海道の知床半島周辺で海岸縁の森の再生によって豊穣の海を蘇らせたことが放映されましたが、漁村の再生のためにも早急に有効な対策が必要と考えますが、所見をお示しください。(知事)
過去、何度も申し上げてきましたが、県内の漁村の疲弊は著しく、沿岸漁業就業者が置かれた状況は非常に厳しいものです。過去、現状を問うと、その都度、島根県の担当者からは、何年も前の漁業センサスの数字が返ってきます。対策のベースが実態と大きく異なる5年も前の数値を用いてどうして有効な対策が打てるでしょうか。県内漁業の状況について、直近の就業者数、平均年齢、粗生産額と新規就業者の状況および県内漁村の人口・戸数の推移についてお聞かせ願います。(農林水産部長)
また、大中型まき網船団による沿岸地域での夜間操業は個人の沿岸漁業者や定置網漁業に少なからぬ影響を与えているように思います。島根県は水産取締船「せいふう」を新造しましたが、この際、違法操業の取締りの状況と今後の対応についてお聞かせください。(農林水産部長)
ところで、国は、TPP対策として平成27年度補正予算で沿岸漁業対策として漁船の近代化、省エネ化などに資するリース事業などを事業化したと聞きますが、その内容と県内の対応状況についてお聞かせください。
仄聞するところでは、5月中旬に説明会を開催し、6月上旬にエントリーを締め切ると言った性急な手続きを求められているとのことですが、説明会がアリバイづくりであってはなりません。国の事業情報の情報開示が遅延した理由があれば、お聞かせください。(農林水産部長)
│掲載日:2016年06月03日│
沿岸漁業と漁村の現状を見ますと、高齢化によるリタイアと申しますか、仕事をおやめになる人々が続いておるわけでありますが、そうした中で、新たな担い手参入が少ないこと、また魚価の低下、資材費の高どまりなどにより経営が困難な状況にあること、これらにより漁業就業者、漁村人口が減少し、活力が低下傾向にあります。こういうふうに認識をしております。島根半島などの比較的小規模な漁村の沿岸漁業者は、主としてアワビ、サザエなどの磯根資源を利用する方々がほとんどでありますが、これらの磯根資源を育む藻場の減少は、こうした沿岸漁業者の経営の根幹にかかわる重要な問題であります。このため、県では次のような対策を講ずることとしております。
第1に、磯焼け対策として、海域の調査や海藻の増殖試験を実施し、効果が認められたものは早期に現場導入することとしております。第2に、魚の産卵場や稚魚の保護育成場である藻場増殖場の整備を、平成29年度から順次県内全域で実施することとしております。第3に、海岸環境の回復に向けて、植林や間伐を推進し、水源涵養機能等の持続的発揮を図る考えであります。さらに、漁業、漁村の再生のため、将来を担う新規就業者のさらなる確保を目的として、今年度から漁村出身の若者を対象に、親元、漁家での研修ができるよう制度を拡充をいたします。また、漁村の中核となっている沿岸漁業者については、国の事業を活用しながら、収益性の改善等による経営の安定化を推進していく考えであります。
県内沿岸地域の磯焼けの状況及び採貝、採藻の漁獲状況などについて
磯焼けの状況につきましては、県の水産技術センターにおきまして、平成26年度に県下18地区の採貝、採藻漁業者を対象に聞き取り調査を実施いたしました。その結果、藻場が減少したとの回答が18地区中16地区ございました。特に島根半島の東部と隠岐の南部では、藻場減少の度合いが大きいとの回答がありました。これは7割から9割程度の減少ということでございます。時期としては、平成元年ないし5年ごろから藻場の減少が始まったとの回答結果でございます。
一方、漁獲状況でございますが、県内の平成27年のサザエ、アワビ、藻類の漁獲量については、平成20年と比較いたしまして、サザエは3割減少、アワビは5割減少、特にモズク、ノリなどの藻類については7割と大きく減少しております。その関係についてですが、ただ先ほど申し上げた漁業者からの聞き取り調査による藻場減少の状況と漁獲量との間の関連性は現状では明確にわかっておりません。この関連性を明らかにすべく、平成27年度から30年度にかけて県内4カ所で潜水調査などによりまして藻場の種類や量の変化などをモニタリングする定点観測を行っているところでございます。
県内の漁業、漁村などの状況について
漁業の就業者につきましては、県の調査、これは漁業背後集落の現状把握のために実施している調査でございますが、この県の調査によりますと、直近の数字、平成26年の就業者数は3,640人で、毎年平均120人程度減少している傾向でございます。
新規就業者につきましては、直近の数字でございますが、平成27年度の新規就業者数については27人で、平成23年度から5年間の合計で見ますと169人となっています。内訳については、定置網、まき網、底びき網等の雇用型の漁業が主体で、釣りなどの沿岸漁業経営を目指す自営型については、年平均4人程度の状況です。
漁業就業者数の平均年齢につきましては、これは漁業センサスから推計したものですが、これはセンサスの直近の数字、平成25年で見ますと平均年齢は58歳となっています。
沿岸漁業の粗生産額について見ますと、これは県の集計による数字ですが、直近の平成27年は48.5億円で、10年前に比べると21%減少しています。これを漁業種類別に見ますと、特に刺し網、採貝漁業で40%以上と大幅に減少している状況です。地区別に見ますと、出雲地区は16%減少、隠岐地区は15%減少、石見地区は35%と、石見地区で大幅に減少しております。
漁村について見ますと、直近の平成26年度末の県全体の漁村人口は5万485人で、近年は毎年およそ1,300人程度減少している傾向です。漁村の戸数については、同じく平成26年度末の数字ですが2万1,281戸で、この10年間で1割減少しております。このように漁業就業者や沿岸漁業の生産額とともに、漁村人口なども減少しているという状況でございます。
違法操業の取り締まりの状況と今後の対応について
県の漁業取り締まり船「せいふう」でございますが、これは県内外のまき網や底びき網漁業などを対象に、漁業者などからの通報による取り締まりや違法操業の抑止のための監視活動を行っております。昼夜を問わず、年間100日程度実施している状況でございます。近年の検挙件数につきましては、これは県に寄せられる違反通報が減少していることなどもありまして、年間数件程度、ゼロ件から2件程度で推移しております。今後の対応ですが、新しい「せいふう」が導入されましたことを機に、速力が向上し、高性能のレーダーあるいはカメラを備えたという能力を最大限に活用して、監視取り締まりを実施してまいりたいと考えております。
国が実施する水産関係のTPP対策について
国の平成27年度補正予算で水産業競争力強化緊急事業が事業化されました。このうち沿岸漁業に関連するものとしては、次の3つの事業がございます。1つは、効率的な操業体制確立のための支援や収入向上、コスト削減実証の取り組みを支援する広域浜プラン緊急対策事業というものがございます。2つ目は、省力、省コスト化のための機器整備を支援する競争力強化型機器等導入緊急対策事業というものがございます。3つ目は、中核的漁業者が所得向上対策に取り組むための漁船導入を支援する浜の担い手漁船リース緊急事業の3つが主なものでございます。これらの事業の実施には、漁村地域が広域的に連携しまして、浜の機能再編や担い手育成の具体策をまとめた、いわゆる広域浜プランの策定が必要となっています。現在、JFしまねが中心となって準備作業中でございます。県としては、プランの策定などを行う委員会に参画いたしまして必要な支援を行うこととなると考えております。まずはJFしまねにおいて、漁業者の要望などを踏まえ、丁寧に検討されていくことが重要だと考えております。
先ごろ、JFしまねが説明会を開催した浜の担い手漁船リース緊急事業は、中核的漁業者の漁船導入を支援するという事業でございますが、全国レベルでは4月下旬、県内では5月中旬に説明会が開催されました。1月末に国でございました補正予算に関する説明会からはかなり、時間を要しているということでございますが、国によりますと、新規事業であるためリース債権の保全の方法など事業実施に向けた具体的な仕組みの構築が必要であり、これに時間を要したというふうに聞いています。