県議会だより

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島根県議会平成28年5月定例会一般質問(1)

地域医療のあり方について

5月27日、アメリカ大統領が広島を訪問しました。
わずか50分足らずの時間であったにせよ、その訪問が持つ意味は、戦後の71年に匹敵するほど大きく、ワシントン講和条約、沖縄返還に続く日米和解の象徴的な出来事として長く歴史に残るものであり、
「71年前の雲一つない晴れた朝、空から死が降ってきて、世界は一変した。閃光(せんこう)と火の壁が街を破壊した。そして人類が自らを滅ぼす手段を持ったことを明示した。・・・・・(中略)
「なぜわれわれはこの地、広島にやって来るのか。そう遠くない過去に放たれた恐ろしい力について思案するために来るのだ。
世界はここで永遠に変わってしまった。しかしきょう、この街の子供たちは平和に一日を過ごすだろう。それは何と貴重なことか。それは守るに値することであり、全ての子供がそうあるべきだ。これこそわれわれが選択できる未来だ。広島と長崎が核戦争の夜明けとしてではなく、私たち自身の道義的な目覚めの始まりとして知られる未来だ。
無辜の人々が、残酷な戦争によって殺されたことを記憶にとどめる。過去の戦争、そして未来の戦争の犠牲者に思いをはせるのだ……」で結ばれた17分のスピーチは、きっと、未来に語り継がれるものでありましょう。

海外では、日本は敗戦国で、かつ、原爆や激しい空爆の犠牲者ですから、戦勝国の行為に謝罪や言及を求めるだろうとの観測があり、アメリカでも反対意見があったと聞きます。
小生は、オバマ大統領の訪問で、マスコミを含めて、大方の日本人にはそうした意識が少ないことに、日本人の精神性、性根はきちんと残っているということが確認でき、安堵し、嬉しく思いました。
それは、古事記に書かれている、大国主命が天つ神と国つ神の争いに敗れた「国譲り」や、勝海舟と西郷隆盛との「江戸城無血開城」に象徴されるように、いずれも日本人が「和譲の精神」として受け継いできた現実をありのままに受け入れる寛容さであります。
1890年に来日、帰化し、学生に英米文学を教える傍ら、鋭い感性で日本人の内面や文化の本質をつく作品を遺した小泉八雲は「蓬莱」という作品で、「西方から邪悪の風が蓬莱に吹き渡り、あの不思議な精気は、ああ悲しいことに風の前にかき消えてゆきます。今や、あの精気は散りぢりなって漂うばかりです。」と100年も前に、日本人の美徳が西洋化され失われるのではないかと予測し、心配していますが、生活様式や様々な面で西洋化が進んだものの、どっこい、日本人の精神性は、まだ、しっかり残っていると実感できたのであります。
それを支えているのが神々の時代から「和譲」を伝え、先年、60年に1度の大遷宮で「蘇り」を果たした大国主命が鎮座する出雲大社であり、平成15年に豊かな海づくり大会で行幸あそばされた折に皇后様がお詠みになった
「国譲り 祀られましし 大神の 奇しき御業を 偲びて止まず」という詩に、改めて味わいを感じます。

いま、島根県の人口は69万人を割るところにあります。危機にあって、職員各位に松下幸之助翁の言葉を贈ります。「できない理由より、できる方法を考えろ」「とにかく始めてみなさい」「『前例がない』でなく『前例をつくれ』」「道は心を定め 希望を持って歩むとき 拓かれる」

国は医療介護総合確保推進法を制定し、都道府県に対し地域医療構想の策定を義務付けるとともに、増大する一方の医療費総額を抑制する方針を示し、今般の診療報酬改定において7:1看護を志向する急性期医療施設に対する規制を強めるなど、その方向は今後さらに強化されるものと思われます。

とりわけ、救命救急の要諦をなすICUでの超高密度医療提供体制の要件付加(特定集中治療室管理料と総合入院体制加算の制限)や在院日数制限の厳格化は、地域医療における病病連携はもとより病診、病療の連携・役割分担の強化がなければ医療の提供体制そのものを崩壊させる危険性があります。
在院日数の厳格化によって、最近、救急車で病院に搬送された患者が、在宅で介護できる状況にまで回復していないにもかかわらず、医師から退院を告げられ、家族が右往左往する事例を複数見聞きしました。
そこで、まず、島根県の地域医療構想の策定状況について尋ねます。(知事)
また、現状で想定する医療圏域ごとの急性期、慢性期、療養期のベッド数の試算と見通し、施設介護と在宅介護の数値予測を明らかにするとともに、平成26年、28年の診療報酬改定の主たる変更点についてご説明ください。(健康福祉部長)
厚生労働省は、増大する医療費の総額を抑制するために、「地域包括ケア体制の整備」を謳っているが、島根県の現状は、とてもそうした体制が機能する状況とは言い難いものです。
今後、サービスの提供体制整備やマンパワーの確保、地域医療機関と介護、療養施設との連携などシステムが有効に機能するまでのロードマップをいつ、どのように示されるのかお尋ねいたします。(知事)

本年3月、長谷川包括外部監査人から県立病院の包括監査の結果を報告された。その内容は医師、看護師の確保の必要性から資金収支の内容、事務手続きのあり方まで実に詳細に調査されており、極めて適切で、真摯に受け止めるべきものと考えます。
監査人の指摘に対する県立病院(中央病院・こころの医療センター)の受け止め方と経営改善の方向をお示しください。(病院事業管理者)
さらに、「このまま推移したのでは、県立病院に対する県の財政支援は難しくなる」との懸念を示され、従来の交付税標準算定の一定交付から、診療科別の収支実績やシビアな計数管理などによる合理的な支援数値の算定交付に改めるべきと述べられています。「どこにどのような経営阻害要因を抱えているか」「どこにどれだけの財政支援が必要か」を冷静に見究め、必要な支援がきちんと担保される仕組みをつくる必要があると考えますが知事の所見をお示しください。(知事)

溝口善兵衛知事答弁

地域医療構想と県立病院の支援について

地域医療構想の策定状況について
地域医療構想は、2025年に向け、各地域の実情に応じた医療体制を構築するための出発点として策定するものであります。これを機に、医療や行政の関係者が将来の地域医療のあり方について認識を共有することが大事であります。現在、7つの2次医療圏ごとに、市町村や医療、介護関係者などが集まり、策定に向けた議論が精力的に進められております。この議論の中で、在宅医療をどのように充実させていくか、病院間の機能分担と連携をどうするか、病院と診療所、介護施設等との連携をどう図っていくかなどについて話し合いが行われています。構想自体の取りまとめは、県の医療審議会の審議などを踏まえ、今年秋ごろの策定を目指しております。

地域包括ケアシステム構築に向けたロードマップについて
地域包括ケアシステムの構築に向けましては、とりわけ医療と介護の連携が重要であります。医療分野では、在宅医療の確保や医療連携体制、医療従事者の確保等を定める医療計画を5年ごとに策定をしております。一方、介護の分野では、介護サービスの目標量や市町村への支援等を定める介護保険事業支援計画を3年ごとに策定をいたしております。この2つの現行計画は平成29年度に終了いたします。平成30年度に両計画が同時に新たにスタートすることとなります。次期医療計画は、訪問介護等の在宅医療の提供体制について、また介護保険事業支援計画は特養等の施設サービスや訪問介護等の居宅サービスについて、地域医療構想と整合性を図りながら、30年度の前、29年度中に策定していく考えであります。

県立病院に対する県の財政支援のあり方について
地方公営企業法におきまして、公立病院に対して一般会計が経費を負担するのは、1つには、性質上、公立病院収入を充てることが適当でない経費、例えば救急医療などであります。2つには、能率的な経営を行っても、その収入を賄うことができない経費、例えば僻地医療などであります。この2つに限るものだというふうにされております。県立病院は、県全体の医療提供体制を確保する上で欠かすことのできない病院でありますが、医療を取り巻く状況が大きく変化する中で、まず県立病院みずからが状況の変化に対応していく必要があります。そうした中で、一般会計からどういった支援が必要なのかについて、経営状況等さまざまな分析も踏まえながら検討していく考えであります。
なお、議員もお触れになったわけですが、今回の包括外部監査人から指摘された経営分析指標等も参考にしながら、関係部局にしっかりと検討してもらう考えであります。

藤間博之健康福祉部長答弁

地域医療構想の内容と国の診療報酬改定について

地域医療構想で想定するベッド数等の試算について
地域医療構想では、入院ベッド数を国が示した方法で試算をし、盛り込むこととなります。現在2次医療圏ごとのベッド数は調整中で数字が出ないために、その算定のもととなります医療需要推計、患者数の推計でございますが、これについて申し上げますと、2025年の1日当たりの県内入院患者数は5,595人、これは2013年と比較しまして197人の減というふうに試算をしております。病床別には、高度急性期が459人の同様に10人の減であります。急性期が1,691人、23人の増、回復期が1,801人、139人増、慢性期が1,644人、349人の減でございます。また、圏域別で見ますと、松江圏域が2,112人、2013年と比べまして32人の減、雲南圏域が457人で68人の増、出雲圏域1,386人、257人の減、大田圏域351人、96人の増、浜田圏域648人、94人の減、益田圏域523人、2人の減、隠岐圏域116人、19人の増となっております。今後、この数値をもとに圏域ごとの必要ベッド数を推計する予定でございます。
将来の実際のベッド数の見通しにつきましては、ベッドの回転率の向上ですとか、在宅医療の転換がどの程度進むのかにもよりまして、現時点で見通すことは難しい状況でございます。関係者が検証いたしまして、地域に必要な体制が整うよう、継続検討をしてまいります。
また、施設介護と在宅介護の数値予測につきましては、2025年度の医療需要推計で1日当たりの在宅医療患者数を1万1,786人、これは2013年と比べて1,451人の増と試算をしております。これを現在の施設と在宅の患者割合により試算をしてみますと、施設入所が必要な患者、これが4,733人で888人増、自宅で訪問医療を受ける患者、7,053人で563人の増というような予測になっております。今後、実際に地域で必要な体制が整うように必要な支援をしていく考えでございます。

診療報酬改定の主たる変更点について
平成26年度及び28年度の診療報酬改定につきましては、改定の視点はともに共通でございますが、1つには、医療機能の分化、強化、連携を一層進めるということ、それからまた、地域包括ケアシステムを推進すること、これを主眼とした報酬設定となっております。具体的には、急性期を担う病院におきまして、主に重症患者を診ることに重点を置いて、さらに短期に退院させるということが求められております。また、在宅医療を支援する地域包括ケア病床の新設、それから在宅医療専門の医療機関の新設など、在宅医療の充実を目指した報酬改定となっておるところでございます。

中川正久病院事業管理者答弁

包括外部監査人の指摘について

県立病院の運営につきまして、包括外部監査を通じてさまざまな御指摘をいただいたところでございますが、第三者の専門的な視点から大変貴重な御意見をいただいたものと認識をしております。事務手続上の御指摘に関しましては、速やかな改善を図っているところでございます。また、県立病院の運営に関する御指摘の意図を重く受けとめ、もう一段の工夫をしていく必要があると考えております。今後の経営改善の方向につきましては、監査人の御指摘、御提案はもちろんのこと、国や県の医療政策の動向や県民のニーズの変化等を踏まえつつ、検討する必要があると考えております。今後、公立病院改革プランとして、将来的な取り組みを整理していくこととしておりますが、まずはその前提となる次の取り組みを進めていく必要があると考えております。1つは、健康福祉部や関係機関とも連携した必要な医療従事者、特に医師と看護師でありますけれども、必要な医療従事者の確保、1つは、職員が高いモチベーションを維持しながら働けるよう、勤務環境のさらなる充実。あと一つは、地域包括ケアのかなめとなる地域の医療機関等との連携強化であります。これらの取り組みを含め、さまざまな工夫をしながら県立病院に期待される医療の確保と経営改善を両立してまいります。

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