県議会だより

Reports

平成28年11月定例県議会一般質問(3)

保育人材の確保について

テレビ、新聞を問わず、ほとんど毎日のように「待機児童」と「保育士の待遇」という言葉が踊り、保護者とりわけ女性が社会で活躍できないのは子どもを保育園に預けることができないからだとばかりの報道が続いています。
小生は、父が児童福祉に関わったことから40年近く保育園の運営を直接、間接に見てきましたが、このところ、保育園の役割が「保護者に代わって子どもを見守る」から「保護者に代わってこどもを育てる」へ大きく変質してきたように感じます。
「朝ご飯を食べさせない」「家庭で基本的な生活習慣を(しつけを含めて)つけない」などは珍しいことではなくなり、「勤務が休みの日でも『リフレッシュ』として子どもを保育園に預ける」子どもを保育園に預けることは権利とばかりの保護者が増加し、また、食物アレルギーや発達障害など「注意を要する児童」の急増は保育現場の負担を飛躍的に増加させています。
平成21年の保育所運営指針改定で、保育所の保育内容には幼児教育の分野が大きく付加されました。保育士に求められるスキルが大きく上昇し、専門知識の習得範囲は格段に大きくなりながらも、養成課程は従前と同じであり、養成校を卒業し、資格を取得しても、相当な現場経験を積まないと職務をこなすことは難しくなりつつあります。
入所児童の低年齢化や休日保育、病児、病後児保育など、既存の保育所は次から次へと新たな対応を求められ、そのたびに必要となる保育人材の確保に躍起となっている中で、国は待機児童対策として保育人材の量的確保策を示すことなく、短兵急に小規模保育所や企業内保育所の設置や配置基準の改定などを骨子とする新しい子育て支援制度を見切り発車しました。
保育士は「子どもが好きである」ということはもちろん大前提ですが、「保護者の就労と子どもの育ちを支援する」という強い使命感が必要であり、「子どもの成長を保護者と一緒に喜びにする」という達成感を得るために不断の努力を要する職種です。
保育士の資格取得者で保育現場で働いていない人を「潜在保育士」と言いますが、いまの保育現場は、相当なキャリアを有する保育士でなければ、とても勤まる職務ではなく、保育現場から離れた資格者に復職を促す「待遇改善」と称する給与の改定などで人材が充足できるとは到底思えません。
むしろ、保育士の不足が解消できるまでの間、無資格であっても子育ての経験を有する人たちを保育助手として活用した方が現場のニーズに叶っており、また、保育士の年休取得や勤務時間短縮のためにも、早急に保育現場に子育て支援のできる人材配置を可能にするこうした対応を求めるところです。
また、このところ、保育士養成校を卒業する人たちが保育士になることを忌避しており、県内養成校の実態もそうした傾向にあります。これは、「保育現場は厳しい、保育現場は待遇が悪い」との保育現場に対するネガティブキャンペーンが一つの要因です。このアナウンスを止め、「保育士は就労を志す保護者と子どもの育ちを支援するすばらしい職務である」という社会認識をつくることを求めますが、認識はいかがでしょうか。(知事)
保育現場の人材は大きく不足しています。保育士の量の確保が不十分な状況下で配置基準を引き下げすれば、新たな待機児童の出現が予想されることから、保育助手の運営費算入を考慮すべきであります。(健康福祉部長)特に0歳、1歳の保育には従前の配置基準中、1名は授乳やおむつ交換など保育助手の配置を認めるべきで、早急に国にそうした対応を求めていただきたいと思います。
また、勤務を要しない日の保育所への乳幼児登所を自粛し、保護者が家庭で子どもと過すよう奨励すべきです。土曜日は親や保護者がリフレッシュする日として、子どもを保育所に預けて遊びまわる例は枚挙に暇がありません。健康福祉部長は、保育士の年休取得率が低いと述べていますが、そうした認識があれば、保育士の年休取得率向上のため、県内の(市町村で)保育所をグループ分けし、土曜日は集合保育としてはいかがでしょうか。(健康福祉部長)
厚生労働省は、社会福祉法人改革を掲げ、法人の自己評価や第3者評価を実施して、その結果を公表するよう義務づけています。県は市町村と協調してこれらについて具体的な評価項目の設定シートを示すとともに高額な第3者評価の費用について支援されるよう要請します。(健康福祉部長)

溝口善兵衛知事答弁

保育士に対する社会的な認識について

保育士は、未来を担う子どもの健やかな成長を支える大切な仕事であり、保護者の仕事と子育ての両立を支援するなど、大事な役割を果たしております。近年の子育て支援施策という大きな取り組みの中で、保育所の役割が注目され、保育士の給与水準や労働環境の問題が指摘されておりますが、議員御指摘のように、一部に、苛酷な仕事と極端にあおるような報道も見受けられるところであります。保育士不足が深刻な中、保育士という仕事のイメージが悪くなることは、人材確保の面からも大きな問題であると考えております。
県としましても、県民への啓発に努める一方、今後、職業を志す中学、高校の生徒に対しまして、総合的な学習時間等を利用した保育士の体験の実施、保育士の仕事の魅力を紹介した職業紹介パンフレットの配付など、保育の仕事のやりがいや大切さについて理解が深まるような取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えております。以上であります。

藤間博之健康福祉部長答弁

保育士の不足に伴う人材確保対策について

保育所の入所希望者が年々増加している現状におきまして、保育士1人が受け持つ児童数を減らすということは、議員御指摘のとおり、待機児童発生の要因になり得ます。県では、必要とする子どもが確実に保育を受けることができるよう、保育士・保育所支援センターの設置等により保育士確保対策を積極的に進めておりますが、依然として不足は解消されていない状況であります。
こうしたことから、保育士不足が解消されるまでの緊急的な措置として、保育に関する研修を受けた子育て経験のある主婦の方などを子育て支援員に認定をし、一定の人数まで保育士とみなすといった特例を設けております。この中では、対象となる子育て支援員は運営費対象となっているところでございます。
一方で、必要な研修を受けていない一般の人を保育助手として保育士にかえて配置を認めるということは、保育の円滑な実施に影響があるとも考えられます。このことにつきましては、現に保育士が不足しているという現状、実態と、片や、一定の保育の質を確保する必要があるという両面のバランスをよく考慮しながら、国の制度の中で慎重に考えていく必要があるというふうに考えております。
集合保育は、利用が少ない土曜日に、近隣の保育所が連携をいたしまして、1カ所の保育所で共同して保育を行うものでありまして、今年度、国において認められました。既に県内で取り組みを始められた法人もございますが、こうした集合保育は、より保育士が休暇をとりやすくなるなど、保育士の勤務環境改善を図る上でも大変有効な取り組みだと考えております。
実施の可否につきましては、地域のニーズや資源を勘案し、市町村や保育所等で判断すべきものでございますが、県といたしましては、県内の実施事例を紹介するなど積極的に情報提供を図っていきたいと考えております。

藤間博之健康福祉部長答弁

社会福祉法人の自己評価及び第三者評価について

社会福祉法人などが提供する福祉サービスにつきましては、その質の向上を図ることを目的といたしまして、従来から、自己評価及び第三者評価の取り組みを進めているところでございます。このような中、保育所に関しましては、平成27年度からスタートいたしました子ども・子育て支援新制度により自己評価が義務化され、また第三者評価が努力義務化となりました。
自己評価につきましては、これまでのところ、県で評価項目や様式等について具体的に示しておりませんでしたが、保育所からの要望等があることも踏まえまして、今後はモデル事例等の情報提供を行っていきたいと考えております。
また、第三者評価につきましては、それを受けることで相当な費用がかかることから、保育所運営費の中で半額程度を補助することとなっております。新制度におきましては、全額補助を目指すとされておりますので、その実現に向けて国に要望を行ってまいります。

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