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島根県の学校剣道界に大きな足跡を残し、陸上競技の吉岡隆徳さんなど数人にしか贈られていない島根県のスポーツ指導功労者として知事表彰を受け、平成23年7月に早世された小村美正先生は、「上手くなりたい」「伸びたい」と願う子どもたちの支援・指導が教員(指導者)の役割で、できなかったことができるようになる達成感や試合や大会で成果を上げた時の喜び、感動を共有できることが,私たち教員(指導者)の醍醐味であり、私の生きがいとするところだと述べておられます。
ここのところ、議会のやりとりを聞いておりますと、教育現場に従来の学習指導、生活指導に加えて、人権事象や貧困、スマホ、有権者など次から次へと新しい課題が持ち込まれ、その都度、教育委員会は具体的な対応に言及します。普通、受け持つ業務が拡大すれば,人員の増加がなければ,負担が増すのは当然で、それがなければ、教育現場のストレスが増すのは自明でありますが、学校は万能の神のごとく何から何まで、完璧な答えを求められています。
日本国憲法第27条には、「勤労の権利と義務」が規定、されいるとおり、権利を取得するためには義務と責任を伴うことが明文化されているように、私たちは、まず、「自己責任」についてもう一度しっかりと、認識し、考える必要があると思います。弱い立場の人や困っている人を助けるのは法令の規定にかかわらず、人間としてとして『当たり前』であります。
しかし、従来、家庭や地域社会が担ってきた『助け合い』が、核家族や個人情報保護法などによって変質をしており、時代にふさわしい「共助のあり方」を考える必要性を感じるところです。
今回はこうした観点から質疑を行います。
今年の10月、NHKの朝のニュース「おはよう日本」で、熊本地震の際、地元自治体の食糧備蓄が大幅に不足した際、隣県などから、ニーズに応じた、かつ、素早い支援が被災地を救ったことが取り上げられていました。
「フードバンク」は、食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設や災害被害地等へ無料で提供する活動または団体を言います。
1960年代にアメリカ・アリゾナ州フェニックスで「セントメアリーズフードバンク」として始まり、全米に拡大、日本では、上智大学の留学生であったチャールズ・E・マクジルトンによって2002年3月に設立された「NPO法人セカンドハーベストジャパン」から各地に広がったと言われています。
国の試算では、年間の食品ロスは500?800万トンにも上るとされており、フードバンクにこうした食品が提供されれば、廃棄に掛かる金銭的な費用を抑制できるだけでなく、食品廃棄物の発生を抑え、災害時の食糧支援はもとより、野外生活者や児童施設入居者など生活困窮者に供給することで企業のCSRの取り組みともなることから、近年、参加事業所が増加しているようであります。
フードバンクは米国ではすでに50年の歴史がありますが、日本では2000年以降ようやく、フードバンクが設立されたところであり、農林水産省が、平成21年度に「フードバンク活動実態調査事業」を実施し、運営上の課題等を整理しています。 それによると、準備段階で、事務所、食品の保管場所、運搬車両などの施設・設備の確保はもとより、社会的に信頼される安定的な組織の構築や、運営体制、人材の確保と育成、資金の確保を要し、活動開始と同時に、食品の適切な管理や食品を提供する支援企業の確保や受益者ニーズの把握、責任・費用負担の明確化 、運搬・保管における品質の維持などが必要で、さらに、災害発生時など大規模なニーズが生じた際の近隣との協力体制の構築など、福祉や防災のセクションを司る関係行政機関と密接なかかわりを持たないと立ち行かないと思います。
熊本地震の折に大きな役割を果たした「NPO法人フードバンクかごしま」。
1年間に扱う食品の量は350トンと、全国的には中規模とされていますが、管理をしている倉庫にストックされている食品を必要な場所に素早く搬送、提供する活動はすばらしいと感じました。
近年、日本の相対的貧困率が上昇していると言われますが、フードバンクによる食料支援によって食べることが保障され、生命が維持されれば、生活保護受給者や生活困窮者らの就労支援につながる可能性も生まれるばかりでなく、自治体が確保している備蓄食料を廃棄せずに入れ替えできれば、行政自身で食品廃棄物のリデュースができると思います。
島根県では県社協によって、「パーソナルサポートセンター」というフードバンクが設置され、現在、その運営は市町村の社会福祉協議会が引き継ぎ、主たる活動は生活困窮者に対する食料提供が主で、全県的な活動の把握やストックの状況については不明のようであります。
仮に、県や市町村が備蓄する非常用食糧や水の管理とフードバンクをうまく連動させれば、日頃から「どこに、どのくらいのストックがある」という認識が官民で共有され、非常時の備えになるばかりでなく、希薄になりつつある住民連携の補完になるのではと思います。
熊本地震の折に、鹿児島県のNPO法人フードバンクかごしまがNPO法人セカンドハーベストジャパンと連携し、避難指示を受けた住民や被災者のニーズに適う食料支援活動を行ったと報道されています。また、隣県となる大分県や高知県のフードバンクも同様の支援を行ったと聞きますが、県は、こうした内容を把握されていますか。(防災部長)
島根県や県内市町村の災害用備蓄食料や水のストックはどのようになっており、関係機関でどのように情報共有されていますか。(防災部長)
島根県でのフードバンクである「パーソナルサポートセンター」は、県社協が実施主体となって行われていると聞いていますが、対外的なPR等がされていないため、ほとんど一般には知られていません。また、運営が市町村社協に委ねられているため、情報共有がされておらず、現状では、災害時などには機能しないと思われます。
災害は防ぐことはできませんが、防災は平時の取り組みによってステージをあげることが可能であり、他県の取り組みを参考にして、県と市町村が一緒になってフードバンクの取り組みを積極的に推進されてはと考えますが、知事の所見を求めます。(知事)
│掲載日:2016年12月01日│
島根県社会福祉協議会では、生活困窮者の食料支援のためフードバンク事業を行っておりましたが、実は、平成27年度から生活困窮者の支援事業が市町村で開始されることに伴い、この県社協の活動は終了し、市町村社協に引き継がれているところであります。
今、県内では、12カ所の市町の社協で、生活困窮者への食料支援が取り組まれております。食品の調達方法は、1つには、家庭で使わない食品の寄附を呼びかける一人一品運動と、2つ目には、協力していただける地元の企業を登録し、必要なときに必要な食品を提供してもらう登録型フードバンクであります。
議員御指摘の災害時のフードバンクの活用につきましては、熊本地震の際に支援活動をされたフードバンクかごしまなどのような取り組み事例もあります。現在、県内の12カ所の市町の社協では、災害時の支援を想定されてはいませんが、今後、災害時に支援物資を迅速に被災者に届ける手段の一つとして、フードバンクの活用についてどのようなことができるのか、あるいはどのようにすべきなのか、他県の事例なども参考に、市町村などと研究検討をしてみたいと考えております。
まず、NPO法人でありますフードバンクかごしまについては、議員も御紹介ありましたが、食品関連企業や農家、個人などから寄贈された食品などを福祉施設や生活困窮者の支援団体などに届ける活動をされております。そして、熊本地震の際には、熊本県からの支援要請を受けて、最初の地震の発生の2日後の4月16日に第1便として、管理する倉庫の備蓄食品などを熊本県庁などに送られました。その後も、熊本県や、あるいは熊本の現地で支援活動を行っている団体などから要請を受けまして、多くの食料を避難所ですとか現地の支援団体などに搬送されております。
また、大分県のフードバンクおおいたは、これは県の社協が設立したものでありますけども、大分県内の生活困窮者や被災者等へ無料で食品を提供する活動をされております。そして、高知県のフードバンク高知は、これはボランティア団体でございますが、県内の福祉施設ですとか生活困窮者などに食品を提供する活動を行っておられまして、熊本地震の際には、食品などを被災地に届ける活動を実施されております。おおむねこのような状況であると聞いてるところでございます。
県の防災備蓄物資のうち、食料、飲料水については、現時点で、乾パンですとか即席のおかゆ、粉ミルクといった食料、これが約5万8,000食、飲料水として500ミリリットルペットボトルの換算の数量として約1万9,000本、これらを松江と浜田の防災備蓄倉庫など――一部、隠岐の合庁などにございますけども――に備蓄しておるところでございます。この県の備蓄物資については、県内の市町村、それから中国各県に情報提供をしておるとこであります。
また、県内の市町村においても、クラッカーですとかレトルト食品、粉ミルクなどの食料として合計約17万食、それから飲料水として、やはり500ミリリットルペットボトル換算でございますけど、約8万7,000本を備蓄しておる状況であります。この市の備蓄物資についても、県に情報提供をいただいているところであります。
なお、県では、賞味期限が1年未満となった備蓄してる食料、飲料水については、賞味期限が到来する前に防災訓練ですとか研修会などで有効に活用しておりまして、市町村の備蓄分についても同様な対応をとっておられると聞いております。また、県の備蓄食料などにつきましては、県社協を通じまして、県内市町の社協に対しても要望をお伺いした上で、必要に応じて提供をしておる状況でございます。
今後とも、防災備蓄食料や飲料水が災害時において迅速に提供されますよう、また平時にも無駄に廃棄されることなく有効に活用されますよう、県、市町村関係機関と情報共有を図ってまいりたいと考えております。以上でございます。