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出雲市平田町の袋町、新町界隈は酒蔵や醤油蔵が建ち並び、大正、昭和の風情を残す「木綿街道」と呼ばれる地域です。毎年、節分には30~40軒の店先に、黄粉や醤油味、味噌味の和風のたれをはじめ洋風やイタリアンなど、さまざまな種類のトッピングで、つきたてのもちを味わう「もち街イベント」があります。各人がそれぞれにトッピングしたもちを皿に乗せ、食べ歩き、まち歩きを楽しむイベントには、道路幅がわずか3m足らずの延長500mほどの路地に5000人からの人出でにぎわいます。
古くからの街並みには味わいがあり、松江の武家屋敷や石橋町、竪町、大田市の温泉津温泉や大森地区などの魅力は言うまでもなく、北前船で栄えた大社の鵜鷺地区など、まだまだ隠れた地域もありますが、県内の優秀景観地域についての認識をお聞かせください。(土木部長)
また、出雲平野の築地松、奥出雲地域の閑居風景や中国山地に点在する棚田の景観など、景観が人をひきつけることを実証している地域がたくさんありますが、景観を後世に保存しようとする取り組みをしている地域をご紹介ください。(土木部長)
ところが、今まで残っていた地域でも急速に空き家が増加し、耕作放棄地や荒廃農地、山林の出現など、たくさんの地域で風情が壊れ、また、家並みが崩壊しつつあります。歴史的な景観や建造物などは一度壊れると取り戻すことは極めて困難です。そうした意味では、岡山市の「足守」地域の取り組みは、今後、島根県が取り組身をする上でモデルになると思いますが、この地域の取り組みについてご紹介ください。(土木部長)
そこで、県内に、まだ残っている昔の風情のある家並みや閑居風景、棚田風景などをもう一度調査し、保存継承できる地域については市町村と連携して積極的に保存する取り組みを始めてはいかがかと思いますがいかがでしょうか。(知事)
│掲載日:2017年02月28日│
県内の歴史、文化や伝統を反映した風情ある町並みや、棚田などを含めた幅広い景観を生かすため、地域と一体となって保存に取り組むことは、交流人口の拡大や観光振興などにとって極めて重要であります。
島根県では平成3年にふるさと島根の景観づくり条例を制定し、県、市町村、県民及び事業者が一体となって県内各地のすぐれた景観、資源や展望地などの保全に努めてきております。平成16年には国の景観法が制定され、景観を守るべき事業主体は地域の特色に応じきめ細かな対応ができる市町村が望ましいとされました。これを受けまして、景観の保全を行うための国の助成制度は、事業主体が原則市町村となりました。
現在、県内の8市町で地域の景観資源等を調査し、良好な景観形成に関する計画を策定しております。計画を策定した市町では、地域住民の意欲が高く、保全活動に積極的な地域で、住民と一体となり保全整備を進めております。県はこの計画策定に参画したり経費の補助をしております。
今後、県としましては引き続き計画未策定の11市町村につきまして速やかに調査、計画策定がなされるよう支援するとともに、意欲ある地域に対しましては市町村と一緒になりまして景観保全がなされるよう支援を行う考えであります。
まず、県内の優秀景観地域についての認識を問うとの質問でございます。
県内各市町村にはそれぞれすぐれた景観を有する地域がございますが、長期間にわたって町並みの保存に取り組み、景観法や文化財保護法による地区指定を受けている松江市の塩見縄手地区、津和野町の津和野地区や、地元住民と市町村が一体となって景観保全に関する協定を締結し、国や市町村の補助制度を活用して景観を保全、地域おこしに取り組んでいる出雲大社周辺などは多くの観光客が訪れております。
一方、大社の鵜鷺地区や中山間地域の棚田風景のように、歴史的な町並みや風情ある風景がほとんど手つかずで残されている地域もあり、担い手不足などで保全が進まない現状があると聞いております。島根県固有のすぐれた景観の魅力を生かし、さらに磨きをかけ、町並みの維持や良好な景観を保全していくためには、担い手である意欲のある地元住民や、最も住民に近い市町村の主体的な取り組みが不可欠でございます。
県としましては、市町村が景観法に基づく景観計画を策定し、このようなすぐれた景観の調査、掘り起こしが進むよう支援していくとともに、意欲ある地域での保全の取り組みが進むよう、市町村と一緒になって支援してまいります。
出雲平野に点在する築地松が織りなす景観は、全国に誇り得る貴重な資産でございます。この景観を後世に伝え残すため、平成6年に地元住民、出雲市と県で築地松景観保全対策推進協議会を立ち上げ、松くい虫対策を含む築地松の維持管理費への助成や、陰手伐りと言われる剪定をする職人を育成するための研修会の開催などを行っております。また、広報活動やイベントにより県外からの観光客も多くなり、地元住民の保全意識も高まっている状況にございます。
奥出雲町の環境風景としましては、オオイチョウが有名であり、ここはカヤ葺き屋根の本堂の前に樹齢350年のイチョウの老樹が枝を四方に広げてそそり立つ風情ある景観でございます。秋には地元住民の協力によりライトアップを行い、水を張って水田にイチョウが映るようにしたり、お茶によるおもてなしや地元農産物の販売などの活動を通して保存に向けた取り組みがなされ、毎年県内外からの多数の観光客が訪れております。
また、中山間地域に広く分布する棚田は、日本の棚田百選に選ばれた山王地区の棚田を代表とする農村の美しい原風景の形成や伝統文化の継承など、多面的な機能を発揮しております。この棚田景観を守るため、県としましても地域住民活動や都市と農村の交流を促す棚田オーナー制度、体験イベントの開催に対して棚田基金により支援をしているところでございます。このように県内各地で地元住民と行政が一体となって、景観を後世に保存しようとする取り組みが数多くございます。
岡山市の足守地区は、歴史的風情が残る武家屋敷や商家の町並みが失われていくことを懸念した地元住民や建築家と岡山市が連携し、平成元年にまちづくり計画を策定し、町並み修景に取り組まれました。江戸時代の陣屋町のたたずまいが残る地域一帯を町並み保存地区に指定し、岡山市が定める修景基準に適合する建物改修には市が補助金を出し、地元の建築家の熱心な助言も受けながら、計画策定後20年近くかけて約50軒が改修に協力されました。建物の改修に当たっては、市からの補助金だけではなく、地元関係者による相当の資金投入と、熱い思いや努力があったと聞いております。