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施政方針に「IoT」とあり、正直、驚きました。「Internet of Things」は「モノのインターネット」と訳され、パソコンやスマホなどの情報通信機器に限らず、すべての「モノ」がインターネットにつながることで、私たちの生活やビジネスが根底から変わるとされていますが、島根には、まだまだ遠いことと思っていました。
個人の生活においては、ドアロックやお風呂、冷蔵庫、洗濯機などがインターネットにつながることはある程度理解ができ、生産現場における工場のライン管理や監視、物流(宅配)におけるトラックの配送状況の検索などがインターネットにつながることで飛躍的にサービス水準が向上することは現実に始まっています。
これが、進化すれば、「モノから得た情報を、インターネットを経由して『クラウド』に蓄積し、パソコンやスマホで情報を出し入れし、蓄積されたデータをAI(人工知能)が分析し、分析結果に応じてモノが作動してヒトに最適なフィードバック(分析結果に応じた情報がスマートフォンに表示される。温度、湿度、外気温などの情報を分析し、エアコンが最適な状態を保つなど)されますから、私たちの生活も変わっていくだろうとは想像できます。
しかし、実際に平成28年度の施政方針にIoTの文言が入り、県行政がこれに対応するとなれば、漠としたイメージで収めることは適切ではありません。大変申し訳ありませんが、始めにIot,AIについて説明を願います。また、それによって、何がどう変わるのか、島根にどのような効果と影響があるとお考えかお聞かせください。(知事)
高齢者の徘徊対策にタグの活用はすでに介護現場では始まっていますが、施政方針にある「ものづくり」の現場にIoTへの取り組みを加速させるためには、圧倒的なコスト削減や利便性が見込まれなければ投資効果は発現せず、相当な企業間の連携等が必要と考えますが、県が想定するIoTへの取り組みやAIの活用についてお聞かせください。(知事)
また、IoTやAIの活用は民間企業ばかりではなく、防災や施設管理など県行政で率先して取り組めるものが多いと感じますが、どのようなイメージをお考えですか。(地域振興部長)
また、行政や「ものづくり」の現場におけるIoTの活用に向けたロードマップはどのようにお考えでしょうか。(地域振興部長・商工労働部長)
EdTechは「教育」と「技術」を組み合わせた造語で、オンラインを活用した教育サービスですが、高校生の受験サプリや小中学生向けの勉強サプリ、大学や予備校の講義をオンラインで公開する例を想定します。
高校魅力化で実績を挙げた隠岐島前高校は、現在スーパーグローバルハイスクールとして活動中ですが、国境を越えて世界各地の学校と交流し、単位の交換等を起案するにはEdTechの活用が避けて通れないと感じますが、県教委はこうした環境整備をどのように考えているのかお尋ねします。(教育長)
│掲載日:2017年02月28日│
IoTやAIは、企業がインターネットに接続してインターネット上に蓄積、保管した自社の工場や店舗のさまざまなデータと、インターネット上に公開されている消費者や市場動向などの大量情報をソフトウエアを使って解析し、組み合わせたり加工することで企業が生産する商品やサービスの品質向上などに活用されるものと理解をしております。
具体的な事例をお話しいたしますと、例えば農業ではハウスの中に設置された計器から気温や湿度、土壌の状態などの情報をインターネット上に蓄積し、インターネット上に公開されている気象予測、市場動向等の情報と一緒に解析して災害に活用することで、最適な時期に高品質な農産物の出荷が可能になるといったようなことがあるようであります。
商業の分野では、自分の店舗内のカメラを使って収集したお客様の年齢層や時間帯などの情報をインターネット上に蓄積し、インターネット上で公開されている過去の購買動向とあわせて分析し、顧客が買いたくなるような商品の陳列や、あるいは通路の幅の変更のようなことを行いまして、売り上げを伸ばしていける可能性もあるとのことであります。
製造業で見ますと、工場内の生産機械に取りつけたセンサーから収集した使用時間や温度などの情報をインターネット上に蓄積して、インターネット上で公開された過去に機械の故障や不良品が生じたときの使用時間、温度などの情報とあわせて解析することで、機械の故障や部品の交換時期を予想したり不良品の発生を抑えたりすることで、品質の向上につなげることができることなどがあるとされております。
AIにつきましては、人工知能と呼ばれているものでありますが、IoTで集められた大量の情報を高速で解析する高度な情報技術であります。例えば、最近ではコンピューター囲碁プログラムなどがありまして、世界のプロ棋士と戦って勝ったといったような話が新聞等で報道されています。それは一例でございますが、そういうものだろうというように思います。
このように、議員御指摘のとおり、産業面ではビジネスの拡大のチャンスが生まれ、それと同時に我々の生活が大きく変わっていく可能性があると思われます。
ものづくりの現場でのIoTなどの活用は世界的に急速に進んでおりますが、グローバル競争の一層の激化が予想される中で、県内の物づくり産業におきましてもIoTなどの活用に向けて準備を開始し、対応していく必要があろうかと思います。
そのため、今年度からしまねソフト研究開発センターにおきまして、IoTに対する理解を進めるためのセミナーを開催することを考えております。来年度はIoTに取り組もうとする物づくり企業に対しまして、専門家の派遣や県内IT企業との連携の支援、IoTを活用するための設備導入などの経費への支援を行っていく考えであります。こうしたことによりまして、県内物づくり産業の生産性の向上や新たな製品サービスの開発につなげ、競争力の強化に努めていきたいと考えているところであります。
行政の各分野におきましても点IoTやAIの活用の可能性は今後広がっていく方向にあるものと考えております。IoTの活用としては、防災の分野では気象情報、河川水位、道路交通情報などさまざまな情報を各所に設置したセンサーにより収集し、災害予測の精度の向上、災害情報の迅速な把握、円滑な避難の実施などに役立てる取り組みが一部の自治体で進められております。
施設管理の分野におきましては、民間における取り組みとして、センサーから得られた情報をもとに道路の点検業務の効率化、発電所の稼働率、発電効率の向上などさまざまな実証実験が行われております。
また、AIの活用としては、民間の研究機関等により問い合わせ対応、翻訳サービス、音声認識による議事録作成などさまざまな活用の可能性が提唱されており、一部の先駆的な自治体においては窓口業務の支援を目的として試験導入に向けた動きがあると承知しております。
今後の活用につきましては、他の自治体における事例や実証事業の成果も参考にしながら、県としてどのように活用できるのか研究していきたいと考えております。
IoTやAIの行政における活用については、先ほども答弁しましたとおり、民間企業や先進自治体などにおいて実証実験など始まったり、あるいは活用の可能性が提唱されている段階にあると考えております。昨年末には新たな法律として、官民データ活用推進基本法が制定され、その中で国はIoTやAI関連技術などの先端的な技術に関する研究開発実証の推進、成果の普及を図るために必要な措置を講ずることとされております。
今後、国において法に基づく基本計画の策定が予定されており、その状況も注視しながら、行政における活用に関する県としての進め方について考えていきたいと思います。
IoTの導入は全国的には大手企業を中心に進みつつありますが、県内ではIoTの活用事例が少なく、どういった効果があり、どのように導入していくのかについて十分な認識がされていない状況にあります。
一方、昨年10月に松江と益田を会場にしまねソフト研究開発センターが開催しました啓発セミナーには、両会場で70社が参加し、関心が高まりつつあります。中には強い導入意欲の会社もありました。
現在、県内のIoT活用に向けたロードマップが見通せる状況にはございませんが、こうした状況も踏まえて、先ほど知事が答弁しましたように、来年度から物づくり産業の支援を始めてまいります。その内容は、IoT導入を前提とした工場内の製造ラインやネットワークの見直し、構築の支援と、実際にIoTに取り組む企業へのモデル的な支援であります。
また、しまねソフト研究開発センターでは、IoTの必須技術となる小型センター向けのソフトウエアなどの研究や実証を進め、それらの技術の専門エンジニアの育成、技術相談を行ってまいります。
こうした取り組みを通じて県内の取り組みもふやしていきたいと考えておりますが、お話にありましたように、IoTの導入に当たっては、その導入規模に応じて相当の投資が必要な場合があり、加えてその投資がソフト事業の部分もあることから、相当な効果が見込まれなければ、例えば融資に際して資産評価が難しいといったケースも想定がされます。そのため、将来を見据えた十分な経営計画が重要となりますので、県としてはこうした経営計画策定の支援や、あるいは金融機関との連携等々も今後進めていく必要があると考えております。
来年度の導入事例の検証や県内での導入状況を踏まえて、その後のタイムスケジュールを検討していきたいと考えております。
情報通信技術の目覚ましい進展によりまして、地理的条件に左右されることなく、インターネットを通じて国内外の遠隔地の学校と交流学習が可能となってきております。例えば、スーパーグローバルハイスクールであります出雲高校や隠岐島前高校においては、双方向の動画伝送アプリケーションを用いて海外の高校生と交流をしております。
一方、島根県の公共施設ネットワークであります全県域WANの回線容量の増速を進めておりまして、全ての県立学校において今年度中に毎秒50メガビットという超高速の通信環境が実現することになります。また、これに合わせまして学校内の無線LAN機器の更新も進めておりまして、普通教室でもパソコンやタブレットを用いて動画を送受信できる環境が整うことになります。したがって、スーパーグローバルハイスクールと同様の取り組みを進めることが中山間地域、離島も含めて全ての県立学校で通信環境の面では技術的に可能になります。
先ほど例に挙げましたスーパーグローバルハイスクールの取り組みのように、海外の高校生と英語を使って交流することは、英語の力やコミュニケーション力を向上させるとともに、国際社会に対する興味、関心を高め、多様な価値観や文化に触れ、グローバルな視野を持った生徒の育成につながっており、大いに意義があるものと考えております。
このため、向上する通信環境を活用して教育活動の質を高めていく観点から、スーパーグローバルハイスクールの具体的な取り組み内容を他校に紹介し、積極的な検討を促していきたいと考えております。
なお、外国の学校との単位の交換の問題については、法令上の多くの制約が課せられるため、現行制度のもとでは困難な面があると考えております。