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国は「働き方改革」を「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と位置づけ、多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するとして、残業の縮減や休暇・休日の増加を掲げています。
しかしながら、民間事業者にのみ、残業の圧縮や規制を課すばかで、官庁や公立学校の教員の働き方改革の話は聞こえてきません。
過去、県庁職員の残業、教員の長時間勤務の実態についてお尋ねし、年間1000時間を超える残業が珍しくない実態をご答弁いただいていますが、まず、公務員の働き方改革、警察や教員をはじめ県庁職員(議会や財政担当職員)の現状をどのように改善するのかお尋ねいたします。(総務部長)
現在、島根県の有効求人倍率は1.6程度で、若年層を中心に人手不足は深刻化しつつあります。
国の短兵急な改革で、24時間体制のローテーションをとっているものづくり産業やコンビニ、ホテルなどのサービス、介護現場の人手不足が深刻な状況にあり、職場に大きな影響が出つつありますが、県として、どのような支援をお考えになりますか。(知事)
また、民間企業とりわけ飲食・宿泊などのサービス業は残業時間や勤務時間の制限が企業の消長にかかわりますが、国の働き方改革の方向について注視すべき点についてお聞かせください。(商工労働部長)
│掲載日:2017年06月22日│
国が進める働き方改革に対応する上で、県内企業のほとんどが中小、小規模企業で、経営体制が脆弱であるため生産コストの上昇を吸収するだけの生産性向上が進みにくい面があります。そのため、イノベーションや投資による生産性の向上や社員一人一人の能力の向上を進めることが重要であります。また、人材不足に対応するため、高齢者や女性の就職を促進する必要もあります。そうした状況の中で、国は、生産性向上のための人材育成や設備投資助成を行っております。県におきましては、物づくり産業に対するIoT活用のための設備導入の支援や介護職場の環境改善に向けた介護ロボット導入の支援などにより、生産性向上を促進していくこととしております。また、物づくり人材の技術力向上や観光産業の接客サービス力向上などの人材育成事業を新たに開始し、また、介護人材の資質向上研修などを実施することで、社員の技術や能力の向上を支援していくこととしております。
また、一昨年度から、松江と浜田にミドル・シニア仕事センターを設置し、高齢者の就職を促進をしております。さらに、地域の実情と企業のニーズに応じた働き方改革の取り組みとなるよう、国に対しまして、各種の支援策の充実や、地方自治体に対する財政支援を働きかけてまいります。
国が進める働き方改革には、長時間労働の是正や柔軟な働き方、また、女性や若者が活躍しやすい環境整備など、さまざまな取り組みがございますが、まず、知事部局では働き方改革の一環として、昨年末から生き生きと働きやすい職場づくりという取り組みを進めております。この職場づくりの具体的には、各職場におきまして時間外勤務縮減の取り組み、業務の効率化や仕事のやり方の工夫など働き方や職場環境を題材に、所属長と職員とが毎月さまざまな形で話し合いを行っております。この話し合いでは、例えば、会議や協議の時間の短縮や時間の設定、また、内部資料の省力化や簡素化、スケジュールシステムの活用による職員の行動の見える化など、こうした工夫や要望等をそれぞれの職場での対応にとどまらず、業務所管課、また部全体に広げていくといった仕組みをつくったところでございます。また、これに加えまして、この4月より全職場におきまして職員一人一人の日々の時間外勤務の発生理由を分析し、その対応策などについて具体的に目標を立てて、縮減に向けた取り組みを始めているところでもございます。今後、これらの成果をよく検証しながら、長時間労働の是正や職員が心身ともに健康で働きやすい職場となるよう一層の取り組みを進めてまいります。
平成28年3月に行いました勤務実態調査により多くの教員が相当な長時間勤務を行っており、また多忙感を感じているという実態が判明をしております。社会全体で働き方改革を進めようという機運が生まれてきた中で、教員の長時間勤務の縮減や多忙、また多忙感の解消を目指した取り組みを進めることは、従来にも増して重要な課題となってきております。一方、この問題は教職員定数が制約される構造的要因の中で生じている面があり、この点につきましては国への要望活動を含め定数改善の実現に向けて引き続き粘り強く取り組んでいく必要がございます。こうした教職員定数の改善に向けた取り組みに並行いたしまして、教員の働き方改革を進めるためには、まず教職員のワーク・ライフ・バランスを図っていくことが大切であり、それが島根の子どもたちに質の高い教育を提供する基盤になるという基本認識を県教育委員会、市町村教育委員会、学校の管理職の間で共有することから始める必要がございます。この基本認識のもとで、それぞれの学校の課題や実態に応じて、例えば会議資料を事前に配布して目を通しておく、会議終了時間を徹底する、ノー時間外勤務デーや部活動休養日を設定する、校務分担の適正化を図るなど、個別具体な業務改善に向けた地道な取り組みを一つ一つ着実に積み重ねていくことが大切でございます。県立学校におきましては、寄宿舎舎監の一部嘱託化や県への提出書類及び手続を簡素化するなど、学校における事務負担の軽減に向けて教育委員会として新たな措置を講じることとしました。
また、部活動につきましては、今後設置する予定の部活動のあり方検討会において、改善の方向性や運営体制、望ましい指導のあり方などについて協議をし、関係者の合意形成を図っていくこととしております。
以上のように構造的要因への対処を図りつつ、教育委員会や学校現場の工夫によって実施できる地道な取り組みを着実に積み重ねてまいります。
警察は、県民の安全・安心を第一に考え、突発的に発生す事件、事故を始め行方不明事案や人身安全関連事案の相談等、あらゆる事案に対し昼夜を問わず対処をしております。こうした中、公務員の働き方改革が求められているわけでございますが、警察におきましても県民の安全・安心を確保するための対処体制を確保しながら、職員のワーク・ライフ・バランスを実現するため、働き方改革にも取り組んでおります。
具体的には、時間外勤務を縮減するため、職務情報管理システムを導入をし、勤務管理関係簿冊の作成を省略したり、複雑な交代制勤務の指定をシステム化するなど職員の勤務管理を一元化することで事務手続を大幅に簡素化するなど業務の合理化、効率化を推進しているほか、所属ごとの定時退庁日の設定、さらに年次有給休暇の取得促進についても取り組みを行っております。
また、各所属に職員が働きやすい職場環境づくり委員会を設置をし、職員一人一人の意見を吸い上げる体制も構築しており、各所属で創意工夫した取り組みを行っております。こうした働き方改革につきましては、所長会議でも取り組みの強化を指示をしているほか、幹部会議でも取り組み状況の検証を行うなど県警全体で時間外勤務の縮減を含めたワーク・ライフ・バランスの実現に向け各種取り組みを推進しております。引き続きこうした取り組みを一層強化するとともに、検証改善を進め、職員が働きやすく、さらに警察が魅力ある職場となるよう働き方改革を推進してまいります。
飲食、宿泊などのサービス業について、国の働き方改革の方向について注視すべき点などについてまずお答えいたします。
飲食、宿泊などのサービス業は多様な労働形態の従業員が一定数いて営業が成り立つという、他業種に比べて労働集約性の高い業種であります。こうした業種では、勤務時間が制限されますと、サービスを落とさずに対応するためには、短期雇用が必要ですが、そのコストを売り上げなどでカバーできなくなる、あるいは雇用そのものができなく、サービスを落とさざるを得なくなるという可能性があり、経営への影響は大きいと認識しております。今後、国では働き方改革について労働政策審議会で長時間労働の是正や同一労働同一賃金の具体的制度の検討が進められます。検討に当たっては、このような経営課題を抱えるサービス業を始めとする中小小規模企業に対して、次のような点への配慮、対策が必要と考えております。
1つには、顧客からの要求に応えるためのサービス業ならではの雇用慣行や取引先からの短い納期での発注などがあることから、こうした商慣習の見直しや取引条件の適正化が一層推進される必要があること、また十分な準備期間が確保されるとともに、関係法の施行に当たっては十分な周知が行われることなどであります。こうしたことに特に留意が必要ですので、今後も国の動きに注意しつつ、業界からの意見や課題をよく聞いて、商工団体などと一緒になって国に伝え、要望してまいります。