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本議会に提出された平成28年度の病院事業会計は、資金収支に大幅赤字を計上する極めて厳しいものとなりました。仄聞するところでは、平成29年度上期の経営状況はその比ではないとのことであります。
翻って、島根大学付属病院は平成28年度は過去最高の経営収支となったと報告され、医学部や大学病院の関係者が出雲市や近隣経済団体と協議会をつくり、大学や病院の医療体制、実績をアナウンスする取り組みがジワジワと功を奏してきたのではないかと感じています。
2月にも指摘しましたが、巷で「中央病院の患者が少なくなっている」と囁かれています。島根県では毎年、4000~5000人の人口減少があり、単純に0.7%づつ患者が減少するとしても、単年度の数値が大きく上下する可能性は少ないと思います。
中央病院の医師確保には、出し手となる大学との連携が不可欠で、できれば島根大学との協調、連携、役割分担をもっと密接にしてもらいたいと思いますし、さきの本会議で、知事もそうした期待を述べられました。
中央病院は総合病院です。
そう簡単なことではないかもしれませんが、私は、遍くすべての診療科にスタッフを並列的に並べるのではなく、得意な分野に最先端の医療機器や大学のスタッフを集めるなど「〇〇なら県中だ」と言われる状況をつくれば島根大学と立派に並立し、高度な医療技術の習得が可能としてさらに評価を高めることができるのではないかと考えます。
はじめに、平成29年度上半期の経営状況について概要をお聞かせ下さい。病院事業管理者)
今年度における医師確保についての取り組みをお尋ねします。報告では、医師確保に有効とされる初任研修医の確保が大きく伸長したとありますが、定着に必要な視点と県が実施している支援はマッチしているか否かお聞かせ下さい。(病院事業管理者)
私は、中央病院が得意とする診療科のブラッシュアップが病院の評価を高めると考えます。また、一方で県が設置する唯一の自治体病院として一定の医療水準を保持するという役割を果たすためには島根大学医学部との連携・協調を密にする以外に方途はないと考えますが、近隣大学と等距離を保つという従前からの姿勢を変える考えはないのかお聞かせ下さい。(病院事業管理者)
同意カードの取得拡大が停滞しているまめネットですが、医療機関側からの視点で、中央病院における「まめネット」の活用と評価、問題があればどのように改善すべきかについてもお聞かせ下さい。(病院事業管理者)
私は、中央病院の経営についてはガバナンスの強化と専門家の診断など財務・会計の改善が必要と考えますが、その必要性について知事のお考えをお聞かせ下さい。(知事)
│掲載日:2017年09月19日│
県立中央病院の経営状況や改善策などの詳細につきましては、後ほど、病院事業管理者から説明がありますが、私の所見について申し上げます。
先日、監査委員から、平成28年度島根県公営企業会計決算審査意見書の提出があり、医師の不足等により、中央病院経営が非常に厳しい状況にあるという報告を受けました。医師の確保につきましては、医師育成機関であります大学の医学部に大きく依存しておりまして、県としては、県内唯一の医師育成機関であります島根大学との一層の連携強化が必要であります。中央病院におきましても、地域医療を支える観点から、大学との連携をさらに進めるよう指示をしているところであります。
中央病院の経営につきましては、病院事業管理者が中心となって、昨年度策定した新公立病院改革プランを、健康福祉部と連携しながら着実に実施していると聞いておりますが、その進展を注視しているところであります。
なお、経営改善を進めるに当たりましては、議員御指摘のとおり、専門家や外部の意見をよくお聞きし、参考にすることは大変大事でありまして、引き続きさまざまな意見を聞きながら、取り組みに生かすよう病院局に指示をしております。
いずれにいたしましても、島根の医療を島根大学と中央病院がしっかりと支えていくことが大切であります。今年度から、県と島根大学医学部との定期的な意見交換も始めておりまして、私としても、両者がより一層連携、協調が図られるよう働きかけてまいります。
平成29年8月末時点の医業収益の速報となりますが、入院、外来の収益が対前年度同期比で5%、約3億円程度の減収となっております。これは昨年の9月以降顕著となりました入院患者の減少傾向が、今年度上半期も継続しており、入院延べ患者数が8%、約6,000人の減少となっているためであります。
このような状況になっている大きな原因は、ここ数年の課題である特定の診療科の医師不足に起因するものと考えております。例えば、外科、消化器科、眼科、耳鼻科、産科など、医師が充足されない状況が続いているため、医師の確保に向けて魅力ある病院づくりや、各大学への協力要請など、引き続きしっかり取り組んでいく必要があると考えております。今年度は、昨年度に比べて、企業債償還が減少すること等もあり、年度末の資金収支不足額は昨年度を上回ることはないと考えておりますが、いずれにしても、大幅な資金収支の赤字が予想される中で、まずは新公立病院改革プランを確実に進めていく必要があると考えております。具体的には、まず医師にとって魅力のある病院となるための高度救命救急センターの指定や手術室の機能向上、次に健康福祉部と連携した大学への働きかけ、さらに入院患者の状況に応じたスリムな体制への見直しの検討、地域包括ケアシステムの構築に寄与する訪問指導等への事業の拡大、さらには地元医師会との意見交換など、地域の医療機関との連携の推進などのさまざまな取り組みを進めているところでございます。病院経営を取り巻く環境は厳しいものがございますが、しっかりと取り組んでまいります。
中央病院の医師は、10年前は他県の大学出身が8割でありましたが、現在は約6割が他県の大学出身者となり、島根大学出身者が4割まで増加をしてきております。県外の大学に対しましては、大学を訪問するなどして、医師の派遣についてお願いをしてきておりますが、国の施策として、病院間の役割分担と連携が求められている中で、それぞれの大学としても、地元医療機関への派遣が優先される状況であり、なかなか島根県への派遣をしていただけない実情がございます。そうした中でも、京都大学始め、広島大学、山口大学、鳥取大学等からも何とか派遣を得ているところであり、引き続き努力を重ねていく所存でございます。
島根大学に対しましては、県と協力をしながら、病院間での意見交換の場を設置したり、個別の教授との話し合いを行ったりして、必要な医師の派遣に協力を求めてきたところでございます。このような大学に対する協力要請においては、何より中央病院が医師にとって魅力のある病院となる必要もあり、先ほど申し上げました新公立病院改革プランに掲げた病院機能の充実に向けた取り組みを着実に実施してまいります。
研修医に対する県の施策とのマッチについてでございますが、県では、若手医師の県内定着を図るため、しまね地域医療センターを中心に、オール島根で若手医師の支援の取り組みを進めており、中央病院としてもその支援の一翼を担っているものと認識をしております。また、奨学金等を始めとしたさまざまな施策は、あくまでも島根県への定着のためのきっかけをつくるためのものであり、中央病院といたしましては、研修医等が最終的に病院に定着するよう、指導医等の育成環境ややりがい、職場の働きやすさなどの整備に向けて、病院として行うべき努力を行ってまいります。
島根大学との関係についてでございますが、中央病院と島根大学は、これまでもそれぞれの病院の強みを生かし、お互いに補完する形で協力し合ってまいりました。例えば、小児部門では、小児外科は大学にお願いをし、新生児等の救急は中央病院が担ってきております。また、基本的には、大学では研究活動に基づくがんや難病等の特殊疾患に対する治療、中央病院では、公立病院として、救急、周産期を始めとした政策的医療を担ってきたところでございます。大学が教育、研究のための機関であり、中央病院が県の医療を支える機関であることから、それぞれの設立目的に沿った役割分担は、今後も変わるものではないと思いますが、現在の地域医療や大学法人の置かれている状況は極めて厳しいものがあることから、双方が共存可能なあり方というのは考えていかなければならないと認識をしております。そのため、これまでも大学との意見交換を行ってきておりますが、今後も健康福祉部と協力しながら、本年度に策定が予定されている県保健医療計画の協議等も通じて、一層の連携を図るために、より深い議論を進めてまいります。
まめネットは、中央病院が他病院や地域の医療機関と連携を進める上でなくてはならないものになっております。例えば、中央病院を退院後、自宅で療養される場合、まめネットを使ってかかりつけ医や訪問看護師、入院中の情報等を提供することで円滑な退院が実現し、退院後の療養の質の確保にも寄与しています。また、地域診療所からの電子化された紹介状は、月に約200件、それに伴う電子診療予約も同数程度あり、地域の医療機関との連携を支えています。さらに、意識不明で救急搬送された患者に対して、まめネットを使って基礎疾患などを確認したケースも出てきており、医療現場での活用が進んでおります。
問題としては、まめネットの一層の普及を図ることが挙げられます。普及に関しましては、中央病院が患者さんに説明をして、これまでに7,000枚を超えるカード発行を行うなど、主体的に取り組んでまいりましたが、利用が進んでいない地域に対しては、一層の普及啓発はもとより、まめネットをより利用価値の高いものにしていくことが望まれます。私からは以上でございます。