Reports
厚生労働省が2017年7月に発表した簡易生命表では、2016年における日本の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳です。明治、大正時代に男性42~43歳、女性43~44歳で推移してきた日本人の平均寿命は、第2次世界大戦前に50歳ラインを超えることはなく、戦後の1947年の調査で、初めて男女とも50歳を超えました。
以降、乳幼児死亡率の低下や、社会情勢・健康・食料事情の安定化、さらには戦死の要素が無くなったなどから1960年までに男性65.32才、女性70.19歳と飛躍的に上昇し、その後も、若干、緩やかになったものの、ほとんど変わりないペースで今日まで上昇傾向が続いています。
平均寿命は、各年における0歳児の平均余命であり、2016年時点で亡くなった女性の平均年齢が87.14歳ではありません。
高齢者政策には、平均寿命と同時に発表される「その歳において、平均的にあと何年生きられるか」という「平均余命」の視点が欠かせないと思います。
年金開始年齢となる65歳の平均余命は男性19.55歳、女性24.38歳であり、80歳では男性8.92歳、女性11.82歳となっているのです。
ところで、WHO(世界保健機関)は、平均寿命から衰弱・病気・痴呆などによる介護期間を差し引いて、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間を「健康寿命」と定義しています。(ちなみに、2013年のデータでは島根県は男性の平均寿命は79.51歳(全国26位)、健康寿命は70.97歳(30位)。女性の平均寿命は87.02歳(2位)、健康寿命は73.80歳(38位))。
全国統計では、平均寿命と健康寿命の差は、男性が概ね9年、女性が12.5年程度とされていますが、島根県の女性の健康寿命は前年に比べて低下しています。平均寿命と健康寿命の差は健康上の問題や医療、介護の費用負担に対する準備が必要になる期間であります。不摂生の先は「ねんねんコロリ」であり、健康寿命を伸ばせば「ピンピンコロリ」で逝くことができますから、いかに、1日も長く元気で過ごすかであり、「今日の用事を作る」「今日の行く先を作る」つまり、「キョウヨウ」と「キョウイク」で、生涯現役を心がけることが大事だと思います。
さて、小生はいま60歳ですが、今春から県庁から同級生の姿は無くなり、県議会に3人を数えるだけになりました。自分が定年の年齢に達して感じることは「何故、年齢だけを理由にして職場を追われなければならないのか」と言うことです。体力の衰えは町内の運動会に出る度に、毎年実感させられますが、知力や仕事の遂行力が50代と60代で大きく劣るとは思わないのです。多分、議場におられる多くの皆さん、議員も執行部も(とりわけ選挙に立候補した人たちは特にそうでしょうが)そう思っておられるに違いありません。私が、還暦前と後で異なるのは、「残りの時間には限りがある」という意識の有無だけですので、かかる観点から、「高齢者の社会参加促進について」お尋ねしたいと思います。
現在の高齢者施策の大半は昭和38年の老人福祉法制定当時の「平均寿命が男性65歳、女性70歳当時の職場の定年は55歳」をベースに組み立てられており、15年の寿命の伸びと制度、政策はマッチしていないと感じます。
平均寿命が80歳の時代に、何故65歳を「高齢者」と定義し、社会の一線からリタイアーさせてしまうのでしょうか。大きな損失と言わざるを得ないのです。仮に、生産年齢人口の定義の就業開始年齢を現状から22才とし、平均寿命の伸びを勘案して最終を80才とすれば、日本社会が直面しているさまざまな問題を解決することができると思います。
宮城全共の場で「島根県では70代は現役バリバリ」ということを実感したことは私にとって、大きな収穫でした。体力や疲労の回復度などを考慮して年齢相応の働き方、いわゆる「生涯現役」を実践する取り組みを進めるべきと実感した次第です。
そこで、知事、あなたも70歳を超えてなお現役ですが、60歳定年についてどうお考えになりますか。(知事)
定年を撤廃または定年が職場の新陳代謝のために必要とすれば、役職定年だけを規定し、就労年齢で退職させる現行制度は変更すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。(知事)
日本では厚労省が医療事故を恐れて医療用ロボットの活用を認めなかったため、世界最先端のロボット技術を持ちながらこの分野で後塵を拝する結果となっていますが、医療ロボットの導入やビッグデータ・AIの活用による医療の出現は極めて近い将来、医療政策や医療の現場、医師の養成などに劇的な変化が来ることを予感させています。
「ライドシェア」も同じで、スマートフォンの普及によって欧米で当たり前になってきた「乗り合い」サービスが「タクシー業界の営業を阻害する」として国土交通省によって認められておらず、日本では一部の地域で実験導入されただけで普及していません。
「まめネット」は島根県が始めた画期的な医療サービスですが、IDカード(個人番号カード)、医療保険のレセプトとの相乗りや介護保険とのドッキングは採用されておらず、導入時から進化していません。生まれてから亡くなるまでの医療記録の保存や二重診療や投薬の防止など医療保険の給付費が劇的に削減できる可能性もあります。しかし、現行でも、県民への周知は拡大しておらず、県内すべての医療機関で診療記録を閲覧・共有という当初の目的さえ十分には果たせず、ムダ金になってしまうおそれもあります。
島根県が「過疎、高齢化」を理由に国家戦略特区や構造改革特区を申請し、ICTやスマートフォンのアプリなどを活用してライドシェアや画像診療、国保の医療情報一元化など霞が関の規制を緩和、撤廃して先駆的な取り組みを実現、試行することは高齢者の社会参画や健康寿命を維持するために有効ではないかと思いますが、知事の所見を伺います。(知事)
高齢者の就労を促進するためのシルバー人材センターの役割は大きくなるこそすれ低下することはありません。しかし、驚いたことに隠岐にはまだその組織もサービスも無いのです。
法人格を有する組織の人材派遣には週20時間の就労時間制限が設けられていましたが、高齢者の就労や社会参加をもっと活発に、もっと「当たり前」にするためには、登録者を増やし、派遣のリクエストをネットで応諾できるようにするなど、シルバー人材センターの機能強化やハローワークとの相互乗り入れ、派遣分野の拡大などが必要と考えられますが、県として積極的に取り組みを進める考えはありませんか。(知事)
│掲載日:2017年09月19日│
現行の定年制度は、平成16年度に高年齢者雇用安定法が改正され、次のいずれかの措置の実施が義務づけられております。1つは、65歳までの定年年齢の引き上げ、2つ目は、65歳までの継続雇用制度の導入、3番目は、定年制の廃止であります。ただし、多くの企業が採用しております継続雇用制度は、平成36年度まで継続雇用の年齢の引き上げを猶予できる経過措置がとられております。こうした状況で、高齢者の7割近くが65歳を超えても働きたいという希望を持っておられる現状と、改正制度の進捗スピードとの間で差が生じているのが現状ではないかと思います。
こうした中、政府は、ニッポン一億総活躍プランにおいて、高齢者の就労を促進するため、次の取り組みを進められております。1つは、65歳以上の継続雇用延長に向けた環境整備。2つ目には、高齢者雇用を支える法整備や年金受給のあり方の検討などであります。
島根県では、生産年齢人口の割合が全国最下位の状況であり、企業の人材確保も厳しい状況にあります。高齢者の豊かな経験と知恵を生かして働き続けてもらうことは、産業や地域の活性化に重要であります。一方、現行定年制度の変更につきましては、健康管理や人事管理上の課題、あるいは一律に法定化していくことへの慎重な意見などもありますので、まずは高齢者が柔軟に働ける職場環境の整備を進めることが必要であると考えております。
特区とは、民間事業者や地方公共団体による経済活動や事業を活性化させたり、新たな産業を創出したりするために、国が行う規制を緩和するなどの特例措置が適用される特定の地域のことであります。議員がおっしゃっておられるように、ライドシェアにつきましては、道路運送法により制限されているところであります。また、画像診療につきましては、医師法により制限されております。さらに、医療情報の一元化につきましても、個人情報保護法の観点からデータの一元化が難しい状況であります。
過疎、高齢化が進む島根県にありましては、さまざまな地域課題に対し、規制緩和により対応できる場合もあると思われますので、特区制度でどのようなことができるのか、厚生労働省など関係省とも協議をいたしまして、県としてよく検討してまいる考えであります。
シルバー人材センターは、県内12市町に設置され、主に清掃、施設管理等を受託し、会員である60歳以上の高齢者の方々に、知識、経験を生かした就業の場を提供しております。近年は、企業の人手不足を背景に、介護サービス業、小売業、製造業などへの派遣事業が伸びてきている状況にあります。
島根県は、生産年齢人口の割合が全国の都道府県の中で、御指摘のように最低になっております。そういう意味におきまして、高齢者や女性の活躍が期待されているところであります。働く意欲のある高齢者が身近な地域に設置されているシルバー人材センターを活用し、積極的に企業などにお勤めいただくことは、県内企業の人材確保や地場産業の維持発展につながるものと考えております。
議員から御指摘のありましたハローワークとの連携につきましては、現在、会員募集や求職者の確保の面で具体的な取り組みが協議されております。インターネットでの派遣業務の応諾や派遣事業における業務拡大につきましては、今後、関係者の意見等を把握した上で、その対応について検討する考えであります。
シルバー人材センターによる高齢者のニーズを踏まえた多様な就業機会の提供は、今後一層、その重要性を増すものと考えており、県としましても、会員の拡大への支援等を通じ、その活動が広がるよう取り組んでまいります。
知事は高齢者が働く意欲や能力に応じて柔軟に働くことが可能となるような職場環境整備が必要と答弁されましたが、「60歳定年をやめたらどうか」「高齢者をもっと活用したらどうか」と言う私の問いに対して具体的に何が必要なのか言及がありません。例えば県庁で、高齢者が働く意欲や能力に応じて柔軟に働く職場環境をどう構築されるのか。あるいは、民間でこうしたことを実現していくためにはどういう要素が必要で、行政はどのような支援が必要なのか具体的に述べていただきたい。
溝口善兵衛知事答弁
私が述べましたのは、高齢者が柔軟に働ける職場環境の整備を進める必要があるということを申し上げたわけですけども、県のOBの方々は何十年も県で働いてますから、県の仕事の一部を担うというようなことは十分できるわけでございます。ただそのためには、仕事量がふえないとなかなか難しいという問題があるわけです。現状で足りてるところにするのか、あるいはさらに新しい業務を県として進めていくのか、そういうことを考えないといかんだろうというふうに思います。
それから、職場環境ということでございまして、そういう場所が確保できるのかどうかということもありまして、やはり財政問題と関連するんではないかというふうに考えております。いずれにしても、どういうことができるのか。一部、そういうOBの方々も活用している例もあると思いますが、さらに勉強してまいりたいというふうに考えているところであります。