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島根県教育委員会は平成29年度において「部活動のありかた検討会」を設置し、教員の長時間勤務の一因となっている部活動顧問の負担軽減を検討されていると聞いております。
先日、馳浩自由民主党教育再生実行本部長が教員の長時間勤務を是正するために「部活を廃止して社会体育に移行させる」との発言があり、文科省で検討が始められたと報道されていますが、部活動を通じて子どもたちを鍛え、子どもたちに学習と違う面で一つ一つの達成感を味わせて、子どもたちの成長を図ろうと、一緒に汗を流して、現場で頑張っている教員の気持ちに反するもので、全く同意できないものであります。
今さら、部活動の必要性や意義を云々することは企図しませんが、部活動の支援は教員の奉仕ではありますが、同時に,それは多くの教員にとっては、生き甲斐・やり甲斐につながるものであります。部活動を一律に制限することは、子どもはもちろんのこと、県内の現場で指導する教員・顧問の三モチベーションを著しく低下させることは必至だと思いますが、県教委に設置されている検討委員会の議論の状況と部活動の指導にあたっている顧問・指導教員に対する所感があればお聞かせください。(教育長)
また、県内の現状を見れば、現場で部活動の指導にあたっている教員・顧問に、外部講師、指導員並の手当を支給する方が現実的で、当事者の頑張りに応えることになると考えますが、この点、見解を求めます。(教育長)
│掲載日:2018年03月01日│
部活動は学校の教育活動の一環として教員等の指導のもとに、生徒の自発的、自主的な参加により行われ、スポーツや文化、科学等に親しみ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養に資するものであり、充実した学校生活を過ごしていく上で、重要であります。そうした重要な位置づけのある部活動に対し、部活動の顧問等となって、そして多くのケースではみずからが学生時代などに一生懸命練習に励み、頑張ってきた体験の中から得たものを、ぜひ子どもたちにも感じ取ってもらいたいとの熱意から、みずからの時間や家族と過ごす時間を割いてまで日々熱心に指導されている教員の皆さんに対しまして、私は敬意と感謝を深く感じ、頭の下がる思いであります。顧問等を務める教員の皆さんには、御苦労をおかけしておりますが、島根の子どもたちをしっかり育てていくため、引き続き力をかしていただきたいと考えております。
昨年、島根県教育委員会が設置した部活動のあり方検討会の目的は、次の2点であります。1つは、昨今、部活動についてはとかく教員の多忙の問題が指摘されておりますが、生徒にとっても過度な練習による教育活動全般への支障や燃え尽き症候群などの面が懸念されており、生徒と教員双方の課題解決に向けて、教育の現場が納得できる内容に向けて、合意形成を図る必要があること。2点目は、島根県の現行のガイドラインは、平成14年3月に学校の週5日制導入時に定められたものであり、その後の状況の変化を踏まえ、島根県版の新たなガイドラインの作成に向けて、関係者の合意形成を図る必要があることであります。
一方、部活動のあり方については、部活動にかかわる立場の違いなどにより、さまざまな意見があるため、各校種の校長会、体育連盟、職員団体など関係する組織の代表に参画いただき、合意に向けて時間をかけて議論を尽くしていただく必要があります。また、これら関係者の合意形成や、場合によっては利害調整のためには、おのおのの組織内部で意見調整も図っていただく必要があります。そして、最終的には検討会の結果をそれぞれが持ち帰ることで、教育の現場で尊重してもらえるような実効性のあるものにする必要があります。したがいまして、この検討会は決して国のガイドラインを単に追認するだけというような結論ありきの会議にしてはならない、このような考えに立って設置したものであります。
昨年8月4日に初回の検討会を開催し、これまで3回にわたり議論を重ねてまいりました。まずは実情の把握が必要であり、国の実態調査も参考としながら、県独自の調査項目を加え、中学校と高校合わせて延べ4,000名余の教員、生徒、保護者から回答を得ました。教員からの回答の中には部活動に関する課題や悩みとして、自分自身の指導力の不足や校務が忙しくて思うように指導できない、あるいは自身のワーク・ライフ・バランスという回答の割合が多かったわけですが、その一方で、技術指導をしながら部員とともに活発に取り組みたいとの意欲を示す回答も多くありました。このように教員の側にもさまざまな意見があり、部活動のあり方検討会での合意形成には相当な困難を伴うと考えております。検討会の議論はいよいよこれから本格化する段階に入りますが、時間を惜しまず慎重に議論を積み重ねてもらう必要があると考えております。
教員の給与については、教員の職務と勤務対応の特殊性を踏まえ、公立の義務教育諸学校等の教職員の給与等に関する特別措置法、いわゆる給特法でありますが、この給特法の規定により時間外勤務手当を支給しないかわりに、給料月額の4%に相当する教職調整額が措置されております。
議員から平日の部活動指導に係る手当を支給してはどうかとの趣旨の御指摘がございましたが、現行の給特法のもとでは教職調整額との関係を整理する必要があるとされており、義務教育費国庫負担金の算定基礎においても平日の部活動指導は支給対象外となっております。一方、昨年12月に中央教育審議会で取りまとめられました働き方改革に関する中間まとめにおいて、給特法のあり方も含む教職員の勤務時間等に関する制度のあり方については、引き続き議論を進めていく必要があるとされたところであります。
その際の主な論点は、次のとおりでありました。まず、教師の自発性や創造性に基づく勤務とそれに対する給与上の評価をどのように行うのか。また、部活動指導についてはそれが学校教育上果たしている役割も踏まえ、部活動指導の時間を勤務時間と位置づけるかどうか。専門的指導者を配置するなどの条件整備をどうするか。適切な部活動指導の時間をどう考えるか。そして、教職調整額を見直すに当たっては、学校業務の効率化などとあわせて教師の時間外勤務が抑制される仕組みをどのように講じていくべきかなどであります。これを受け、文部科学省では給特法の見直しについて、中央教育審議会における議論を踏まえながら、慎重に検討を行っていくと聞いております。部活動指導に当たっている教員の熱意と頑張りには頭の下がる思いでありますが、その頑張りを給与にどう反映するかという問題については、給特法のあり方の議論の中で教育の現場のみならず広く国民の皆様が納得する姿を慎重に探っていく必要があると考えております。