県議会だより

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令和元年度6月定例県議会一般質問(3)

80・50問題と健康寿命の伸長について

「8050問題」は「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支えるという問題で、一般にはひきこもりの人がいる家庭の問題とされていますが、県内の状況を見ますと、多少、事情は異なりますが、(老親の介護で、職を続けることが難しいという問題で)老親と中高年独身者の暮らす家庭にも同様の問題が生じているように見えます。以前、県内のひきこもりの現状を尋ねたところ、プライバシーの問題で、調査は難しいとの答えがありましたが、ひきこもりを原因にした痛ましい犯罪事案や心中などが社会問題化する中では、放置できる問題ではありません。まず、県内の現状把握がどのようになっているのかお尋ねいたします。また、中高年独身者と老親家庭の状況についても伺います。昨年、伺った時点では、ひきこもり支援センターでの相談件数の割に、就労につながった件数はそう多くなく、ひきこもりの状況把握や原因究明、適切な支援の方法、人的体制の構築などにケーススタディが不足しているように感じましたが、どのように改善されたのかお尋ねいたします。(健康福祉部長)

ひきこもりにつながる事例で多いのは、不登校、対人関係の行き詰まりが多いと聞きますが、その要因が発達障がいにあることが少なくないと聞きます。発達障がいを有する者に対する社会の理解が十分でないため、支援が受けられずに就労ができず、ひきこもりになるというのは不幸なことであります。今年の国に対する重点要望で、障がいの認定に対する改善が要望されたのは極めてタイムリー、適切なことですが、県内の発達障がいに対する検診体制と確定診断医の現状は十分ではないと聞いていますが、どのようなものでしょうか。また、障がいに対する理解が不十分で、多くのケースで家族が支援の阻害要因となることがあると聞きます。障害に対する理解促進はどのように図られていますか。また、今後、保育所、幼稚園、学校での啓発、理解促進にどのように取り組まれるのかお尋ねします。(健康福祉部長・教育長)

県内の活力を維持しようとすれば、地域や産業を担っている高齢者の社会参画をできるだけ長くする必要があり、健康寿命を伸長させる取り組みは極めて大切です。高年者の就労促進に資するシルバー人材センターが全県的に設置されていますが、派遣法の改正によって、センターの利用には都度都度に契約書取り交わしが必要となり、草取りや、清掃、障子貼りなどに煩雑な事務処理が必要となり、要らざる事務費用が付加され、その分利用料に転嫁されることになりましたが、就労疎外となりかねない事務処理の簡略化について意を尽くしていただきたいと思います。(健康福祉部長)

今後、団塊世代の高齢化が進行する状況下で、高齢者の皆さんの健康増進は医療費の節減に直結し、地域の担い手を確保する上からの不可欠で、健康寿命を伸ばすためには、食事、運動、健診いわゆる「栄養」「スポーツ」「医療」の専門家の知見を活かす取り組みが必要で、県内の公民館を活用した県民運動とすることを提唱します。また、今年度から、スポーツ行政が環境生活部の所管となりましたが、スポーツ活動と健康は不離一体で、競技力や体力強化も栄養や医療と密接不可分ですから、真の一元化が図られるよう、適切な見直しを求めます。(知事)

丸山達也知事答弁

健康寿命を延ばす取り組みについて

島根県内の健康寿命の延伸を阻害する要因としては、脳血管疾患、認知症などがございます。これらを予防するためには、高血圧症、糖尿病などの疾病管理や生活習慣の改善などが重要でありまして、こういった対策を科学的、体系的に進めるためには、栄養、運動、医療の知見を生かすことが欠かせません。現在、地域の拠点であります公民館などの場におきまして、体力維持や認知症予防のため、医師や理学療法士などが考案した体操や運動の普及、栄養士や食生活改善推進員がかかわった減塩食レシピの普及などによりまして、住民みずからが取り組んでいる地域がございます。
今後は、こういった取り組みを県民運動として展開いたしまして、身近な地域でより多くの方々に参加していただける機会を提供することなどによりまして、県民の健康寿命の延伸を一層加速し、活力ある地域づくりにつなげていきたいと考えておるとこでございます。
最後に、スポーツ行政の一元化の見直しについてであります。
スポーツ行政につきましては、本年の県議会、2月定例会におきまして、条例改正を行い、その所管を一元化し、4月から、環境生活部が担うことといたしております。その趣旨は、一元化によりまして、スポーツ全体の振興を効果的、効率的に図るためでありまして、スポーツ施策が県民生活にさまざまな効果をもたらすものであることから、環境生活部の所管としたとこでございます。
もとよりスポーツは、健康づくりを始め、学校教育など、さまざまな分野とかかわりがあることから、今後、庁内に部局横断の会議を設けまして、環境生活部を中心に関係部局が連携し、効果的な事業展開を図っていくという方針でございます。その状況に応じまして対応してまいりたいと考えております。

吉川健康福祉部長答弁

ひきこもり対策について

県では、平成25年11月に、県内の民生委員児童委員の協力を得て、ひきこもり等に関する実態調査を実施いたしました。この調査で、6カ月以上続けて自宅に引きこもっている状態、またはそれに準じた状態であるとして把握できた方は1,040人でございました。ひきこもりの方の年齢は、10代が70人、20代が164人、30代が219人、40代が229人、50代が177人、60代以上が115人であり、40代以上が50.1%と半数を超えております。
また、世帯の状況を見てみますと、40代までの層では、ほぼ父母などと同居していらっしゃいますが、50代では3割、60代以上では約半数の方が単身という状況でございます。また、ひきこもりの期間を年代別に見ますと、年齢が高くなるほど、10年以上の長期化の割合が高く見られました。
なお、この実態調査から既に5年が経過しておりますので、このたび改めて、民生委員児童委員の協力を得て、本年7月現在の実態調査の実施を予定しているところでございます。
中高年独身者と老親家庭の状況について平成27年度の国勢調査によりますと、島根県で親と子の核家族、つまり両親と子のみ、またはひとり親と子のみの世帯であって、かつ世帯主が現役を退き、年金生活に入る65歳以上の世帯数は1万4,360世帯で、島根県の全世帯総数の5.44%でございました。全国平均は5.35%であり、ほぼ全国平均並みとなっております。
なお、世帯主が80歳以上の世帯を見てみますと、2,924世帯あり、全体の1.11%、全国平均は0.82%であり、高い状況にあります。
ひきこもり支援センターの就労支援について平成30年度に相談支援を行った84人のうち、11人が就労に向けた動きにつながったとのことでございます。ひきこもり支援センターでは、個別相談やグループ活動などを通じて、就労に向けての支援が可能な状態に至った際に、本人や家族の状況を踏まえながら、若者サポートステーションやハローワークなどの地域の関係機関へつなぐ、こういった段階的な支援を行っております。
ひきこもり支援につきましては、一人一人原因や背景がさまざまであり、その対応につきましては、それぞれのケースで引き続き試行錯誤を重ねているところでございます。先ほど申し上げました、本年に実施予定の実態調査により現状を把握し、前回調査からの経年変化を含めて内容の分析を行い、市町村や関係機関などと情報を共有しながら、今後の効果的な取り組みにつなげてまいりたいと考えております。

吉川健康福祉部長答弁

発達障がいの健診体制と就労について

県内の乳幼児の健診体制といたしましては、全市町村において、1歳6カ月児健診、3歳児健診が実施されており、またほとんどの市町村で、就学前の年中児等への健診、保育所巡回相談等が行われております。その中で、発達が気になる子どもについては、小児科医や保健師などによる相談につなげるなど、早期発見、早期支援に努めております。
また、就学期においては、発達障害者支援センターが、学校や保護者からの相談があった場合に、児童相談所や保健所等の関係機関と連携して対応しております。それ以降の世代につきましては、定期的な健診の機会がないことから、進学、就職等の環境変化によって困り事が顕在化し、発達障害者支援センターに相談が寄せられることが多くなっております。
発達障がいの確定診断につきましては、県立こころの医療センター、島根大学医学部附属病院、東部、西部の島根医療福祉センターの医師のほか、一般の小児科や精神科の医師により行われており、現在、県内43カ所の医療機関において実施が可能となっております。
また、早期発見、早期支援につなげるため、昨年度から、県内のかかりつけ医の診療対応能力を向上するための研修を開始したところです。しかしながら、より専門的な診断が可能な医師が限られていることから、国に対し、専門医の養成や確保を要請してきているところでございます。
発達障がいについて理解し、本人の気持ちに共感し、身近で寄り添える家族の存在が重要でございます。こうしたことから、家族の理解促進のため、県内2カ所の発達障害者支援センターでは、発達障がい児の子育て経験のある親をペアレントメンターとして養成し、電話や訪問による個別相談や学習会を実施しております。また、障がい児を持つ家族を対象とし、障がい特性を踏まえた対応について学ぶ研修会を県内5会場で市町村と連携して実施しており、これらの家族支援の活動が、地域で一層広がるよう努めてまいります。
一方で、保護者が発達障がいを受け入れたくない、あるいは気づかないという場合には、保健師など専門職が、保護者との信頼関係に配慮しながら、保護者が子どもの特性を受け入れられるよう、丁寧な対応を心がけています。また、気づきのきっかけとして、市町村が行う親子教室などを紹介しているところでございます。
なお、発達障がい者の支援には、周囲の理解や障がい特性に合った配慮が重要であることから、発達障害者支援センターを中心に、一般県民を対象とした理解促進のための啓発フォーラムや研修会を開催しております。
加えまして、職場に対しては、ハローワークと連携した説明会の開催や個別相談があった職場への訪問指導、職員向け研修会の実施などを行い、発達障がいに関する理解促進や助言、指導を実施しております。
発達障がい児の早期発見、早期支援には、保育所や幼稚園、学校での啓発が効果的であり、これまで保育士、幼稚園教諭、学校教員を対象とした専門研修、親子教室や相談会などに取り組んでおります。保育所や幼稚園の現場からは、専門的な知識と支援技術を習得するための研修が求められており、要請に応じ、発達障害者支援センター職員を積極的に派遣し、県内各地で研修が広がっていくよう取り組む考えでおります。
最後に、健康寿命の伸長に関係しまして、シルバー人材センターの事務処理の簡略化についてでございます。
少子高齢化の進展に伴い、県内各地、各分野で担い手不足が深刻さを増し、高齢者に期待される役割は増大しております。シルバー人材センターは、高齢者に働く機会を提供し、高齢者の生きがいと健康の維持増進などを図りながら、地域社会で生き生きと活躍できるよう取り組みを推進しています。
議員御指摘の件につきましては、煩雑な事務処理により、センター本来の目的が阻害されることがないよう、県内のシルバー人材センターを指導統括する県連合会に早急に相談をしてまいりたいと考えております。

新田英夫教育長答弁

発達障がいについて

就学前における健診などにおいて、発達障がいやその可能性があると判断された子どもに対しては、保護者の同意を得て、できるだけ早い段階から必要な支援を開始しております。この支援につきましては、発達障がいの状況が子ども一人一人で異なることから、必要な支援も異なってまいります。支援の例を申し上げますと、読み書きの際のルビ振り、文字の拡大、席を離れることなどへの見守り、集中が途切れた場合の声かけ、行事などに個別に参加する方法をとること、こういった支援がございます。
保育所や幼稚園で既にこうした支援を受けていた子どもに対しましては、小学校入学時にそれまでの支援を引き継いで、必要な支援を継続することとしております。
また、入学後、学級担任などが何らかの支援が必要だと気づいた場合にも、特別支援教育コーディネーターを中心とした校内の委員会で、支援について速やかに検討することとしております。
しかしながら、保育所、幼稚園においては、その体制が十分でないところもあることから、最寄りの特別支援学校などが必要な支援を行っているところでございます。
次に、発達障がいに対する家族の理解促進についてであります。
発達障がいのある子どもが、学校や家庭において適切な支援を受けるためには、その子どもの保護者や家族の理解が重要となります。しかしながら、学校等が保護者に支援の必要性を伝えても、理解していただけないケースもあり、適切な時期に適切な支援が受けられないことも生じる可能性がございます。発達障がいの状況は、一人一人で異なっており、必要な支援もさまざまであることから、教員は保護者と丁寧に向き合い、子どもが自立していくためにどのような支援が必要かをともに考えながら、話し合いを続けるなど、家族の理解を得て、適切な支援を行えるよう努めておるところでございます。
次に、保育所、幼稚園、学校での啓発、理解促進の取り組みについてであります。
保育所や幼稚園、学校において、発達障がいに対する正しい知識や接し方について、子ども、教職員、保護者、それぞれが理解して対応していくことが重要であります。まず、幼児、児童生徒の理解を促進するためには、学校等において、障がいのある子どもとない子どもがともに学習する機会を設け、障がいやかかわりについて学ぶことにより、障がいについての正しい認識を深め、ともに助け合い、支え合って生きる大切さを学ぶ機会をつくることが重要であります。
教職員につきましては、障がいに対する正しい理解に加えて、子どもへの接し方が重要でありますので、校内や校外での研修を充実してまいります。また、特別支援学校のセンター的な機能や教育事務所に配置しております特別支援教育支援専任教員によるサポートも充実に努めてまいります。
また、全ての保護者の理解を促していくために、各学校の特別支援教育コーディネーターや養護教諭が中心となり、啓発用通信の配付や人権教育を含めた保護者向けの研修会の実施などに努めております。
今後も、健康福祉部長からお答えいたしましたように、関係機関との協力を得ながら、子どものプライバシーに配慮しつつ、理解、啓発を進めてまいります。
また、県教育委員会では、発達障がいのある子どもも、県立高校で学び、必要な支援が受けられるよう、通級による指導を3校で実施しております。こうした取り組みは、発達障がいのある子どもの自立を促し、理解、啓発にもつながるものであると考えております。
域、エリア、エリアの置かれている環境によって異なると思います。ただ、先ほど知事もお答えしましたように、生活機能の確保が困難になってきている、そうした地域において、いかに機能を確保していくのか。こちらが急務でありますから、そうしたエリアに関しては、人口減少が進んだ複数の公民館エリアでの取り組みというのが中心になってくるのかなというふうには考えております。
いずれにしても、そうした、どういったエリアの捉え方を考えるのかという部分、詳細について固めながら、できるだけ早く、考え方をお示しできるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。

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