県議会だより

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令和元年度6月定例県議会一般質問(1)

知事と職員の県政課題の意識共有について

「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」
これは、「やろうと思えば何でも出来る。出来ないのはやろうと思わないからである。やろうとすることは他人のためではなく、自分のためになることである」という意味で、米沢藩中興の祖にして、ジョン・F・ケネディが尊敬す為政者として掲げた上杉鷹山の遺した言葉です。

上杉治憲(鷹山)は日向高鍋藩主の次男として生まれ、米沢藩に婿養子として迎えられましたが、石高15万石の米沢藩財政は2度に亘る国替えによる石高削減にも、120万石当時の家臣団6000人の召し放ちをせず、人件費が藩財政の8割に達するなど深刻な財政窮乏による借財で、治憲が16歳で家督を継承したとき、重臣から藩領を幕府に返上する以外に方途がないと建議されるほど切迫していました。

17才の上杉治憲は家督を継いで初めてのお国入りを前に、疲弊し、廃村寸前の雪の板谷宿で野宿をした翌朝、冷たくなった煙草盆の灰の中に残る小さな残り火を見つけ、炭を継ぎ、近習に「汝らが改革の火種となって周囲の炭(家臣)に火を継げよ」と火種を渡した逸話はあまりにも有名ですが、後に、「寛三の改革」と称された財政支出の削減と産業振興を図る半世紀にも及ぶ改革が成功した大きな理由は、「精神の改革」に着手し、粘り強く、家臣の意識改革に取り組んだことにあると思います。

上杉治憲が進めた改革は、
・まず全員が実情を共通認識する
・無駄なことを排除して新しく仕事を創る
・家臣団ごとに目標を立てる
・目標が達成できない場合には組織、人員変更を行い、意識改革を行う。
・信賞必罰を明確にし、重臣であっても改革に必要な場合は処罰する
・良い意見は身分を問わず重用すること
・無駄なしきたりをやめる
の7つで「情報の共有」「スクラップアンドビルドの徹底」「目標の立案」「進行管理の徹底」「信賞必罰」「若手(人材)の登用」「先例踏襲の廃止」と読み替えれば、まさに島根県の県政改革に当てはまるのではないかと思うのであります。

さらには農民のために藩内12ヵ所に郷村教導出役という役人を配置し、リアルタイムで藩内の現状が把握できるようにし、新田開発や特産につながる蝋や漆の植栽、織物の奨励などを指導したとあり、支援が必要な地域に県職員を駐在させる方向をさらに充実させることも先人に学ぶ事例ではないかと思います。

知事は、知事選挙において、また、就任後も、終始一貫、「人口減少に歯止めをかけ、人口減少に打ち勝つ島根をつくり、県民が均しく望む『かけがえのないふるさと島根を次代に引き継ぐ』という思いを実現させたい」とする意欲を語り、「島根創生」として掲げる人口対策を県政の最重要課題に掲げています。
知事が掲げる「島根創生」を実現するためには、県庁職員の一人ひとりが、知事の思いを共有し、島根の現状に関心を持ち、「どうすれば人口減少に打ち勝つことができるのか」「今、取り組んでいる事務事業は人口減少に抗う取り組みに有効となるか」という意識を徹底することが、まず基本だと思うのでありますが、現状はどうでしょうか。「それはうちの部局の所管ではない」という県庁に蔓延している「所管病ウィルス」と前例踏襲意識を一掃するためには、相当な荒療治が必要だと思います。

過去、澄田知事は、県政運営の基本姿勢を「選挙において皆さんから寄せられた熱い支持は十分に議論を尽くし、最終的には知事が責任を持って決断し、決めたことは確実に実行するという手法で進めてきた着実な県行政に対する厚い信頼と評価であると確信している。私は派手なパフォーマンスではなく、現場主義を一層徹底し、県民の声を着実に県政へ反映していくことが重要であると考えており、あらゆる機会を通じ、私の考える将来の姿を具体的な数値等を用いながら、自らの言葉で県民の皆さんに直接語りかけ、県民との協動による県政を推進する。」と述べ、 溝口知事は、「県政は県民のためになるためにはどうしたらいいかということをまず根本に据えて物事に当たっていくことが最も大事なことである。島根の現状は少子高齢化、人口の減少が進んでおり、県民のために何が必要か、何をやらなければならないかは現状を知り、現場を見、人々の意見を聞くことが第一で、机の上だけの仕事ではだめだ。大都市のデパートに行くと、店員は親切に売り場を教えてくれる。県政も同じで、形式的なことを避け、実施主義でやるためには、部内のみならず、組織の意思疎通・情報が共有されていればテイクケアできる。」と述べられ、いずれも現状把握をもとに、現場に出かけ、タイムリーな政策遂行を実践したいとされてきましたが、人口のみならず、市町村や産業、医療、福祉、教育などの現状把握は、国の統計数値を基にしたものが圧倒的多数で、リアルタイムの情報が共有できるようになっているとは言い難い状況です。

私が丸山知事に望むのは、職員1人ひとりに知事の思いを伝え、「島根創生」の種火を県庁職員の懐にしっかりと植え付けてほしいということであり、一定の時間が経過した後に、現状把握をするための手法、職員の意識改革、組織のあり方、部局横断の施策展開の実施に必要な視点などについて、目に見える形でお示しいただきたいのでありますが、この点について、まず、お尋ねいたします。(知事)

丸山達也知事答弁

島根創生の実現に向けた職員の意識改革などについて

私は、5月に就任してすぐに、職員に、島根創生の認識を強く持ってもらうために、人口減少に歯どめをかけ、人口減少に打ち勝つ島根をつくるという大方針を県政の真ん中において、その実現を目指して私と一緒になって取り組みを求めたとこでありますが、県庁組織全体に行き渡らせるために、今後も特定の部局に指示をした事項でありましても、他の部局にかかわる事項であれば、重ねて幹部会議で繰り返し指示を行うなど、私の目指すべき方向、考え方について繰り返し、県庁内で日夜協議されるように取り組んでいきたいというふうに思っております。
また、現状把握の方法につきましては、現場を見ていくということを徹底いたしまして、県民の皆さんの生活や事業者の皆さんの実態を、私自身がこの目でこの耳で確認をしていくということを通じまして、通常の手法であります県庁内部から上がってくるデータ報告が県民の皆さん、事業者の皆さんの肌感覚、実態に合っているかどうかということを確認した上で施策を進めていきたいというふうに考えております。
部局横断の施策展開につきましては、5月に女性活躍の推進、島根をつくる人づくりといったプロジェクトを立ち上げたところでありますが、幹部職員には、みずからの部局で完結するような提案ではなく、県民が求めておられる他部局にもわたる幅広い提案を行うように指示をしたところであります。
また、多くの部局にまたがる重要課題につきましては、必要に応じて、私または副知事をトップとする推進本部といった組織を立ち上げまして、まずはその統括役となる部局長を指名し、権限を与えるとともに、トップとなります私と副知事が、他の部局の動きが十分かどうかをたえずチェックすることによりまして、部局間の連携が強化できるよう、組織運営を行ってまいりたいと考えております。
組織のあり方につきましては、先ほど申し上げました部局横断によります施策展開に加えまして、私と部局長との共通認識のもとで、この島根創生を進めていくということのために、部局長の目標の設定や進捗を確認する四半期ごとの個別の面談を行うこととしておりまして、そういったことを通事まして、県庁全体が島根創生にきちんと進んでいるかどうかということのマネジメントを行っていきたいと考えております。
職員の意識改革につきましては、まず前例踏襲に陥らないようにするために、前例に従ってということではなく、県政の変わり目でございますので、前例のままでよいかどうかを必ずチェックするように指示を行っております。
特に、御指摘のございました縦割り意識につきましては、先日、須山議員からの代表質問にもお答えしましたとおり、先日、大田市で開催いたしました公聴会を通じまして、やはり県民生活を守る、県民の皆さんのための施策を進めていくためには、新生児から高齢者の方々に至るまで、年代や分野ごとに別々に捉えるのではなくて、一人の人生として切れ目のない視点、この視点で捉えた上で、県民の皆さんから何を求められているのかと、県政全体として考えなければならないと感じたところであります。
今後、改めてこの点につきまして職員に指示することで、縦割り意識の改善に取り組んでいきたいと思っておるとこでございます。
以上の事項に加えまして、今後におきましても、県庁内部の状況が不十分であるというふうな状況でありますれば、逐次、追加の指示や対策を講じてまいりたいと考えております。

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