県議会だより

Reports

令和元年9月定例島根県議会一般質問(3)

災害史の検証と広報について

さきの台風15号は伊豆諸島から東京湾に襲来し、50mを超える暴風と豪雨によって東京都や千葉県など南関東一円に大きな爪痕を残し、今も相当な地域で停電が続いていると報道されています。
「過去に例を見ない」「想定を超える」との形容を聞くと、平成3年の台風19号の風速60mを超える暴風で大きな災害が起こったことを思い出しますので、少し違和感を覚え、事前の気象通報で40~60mの暴風とアナウンスされていたことを考えれば、備えが甘かったと言わざるを得ず、東日本大震災の教訓が生かされていないように思いました。
9月1日は「防災の日」であります。
1923年9月1日の関東大震災にちなんで1960年に制定されました。
関東大震災は関東一円で190万人が被災、136件の火災で東京の約43%が消失し、10万人を超える死者・行方不明者を出したと記録されており、小生の曽祖父も横浜で倒壊した建物の下敷きになって死亡した震災被害者であり、2年後に100回忌となります。
今年も政府は安倍首相が本部長となって防災訓練を実施し、島根県内でも出雲市の久多美地区ではさくら小学校を実施本部に総合防災訓練が行われました。
ところで、出雲風土記には十六島や小津など小生が住んでいる地域の記述があり、鰐淵寺の寺伝からも相当昔から人が住んでいたことがわかりますが、現状は、いちばん古いと言われる家でさえ15,6代で、高々500年ぐらいの歴史しか確認できません。
日本海側には貞観地震による大津波の発生や梅原猛さんの「水底のうた」の中に1026年(万寿3年)の万寿地震で益田沖の鴨島が水没し、柿本人麻呂が死亡したという記述があるように、平安時代から安土桃山時代までの間に大きな自然災害があったとの伝承はあっても、記録が極めて少なく、有史以来、過去に大きな厄災に見舞われたのではないかと想像はできても、その実態は一般にはほとんど知られておらず、定かではありません。
昨年、大田市を中心とした地震がありましたが、その折に、出雲地震や鳥取地震などの歴史を引き、その被害の実態を記録したものを行政に求めましたが、「詳細不明」で、地域で、どのような被害があったのかは分からず仕舞いで、不明でした。
小生の住む地域では昭和18,19年に洪水、土石流の被害に見舞われ、死者、行方不明者を出した記録があり、古老から伝えられた口伝によって、住民に災害に対するいくらかの認識があったこともあって、平成9年の土石流の折に早期の避難で奇跡的に人的被害を免れました。
しかしながら、県内のほとんどの地域で、市町村合併や記録をとどめてきた公民館、小中学校の統合はこうした記録を消失、風化させています。そこで、お尋ねしますが、①県内の災害史はどのように記録されているでしょうか。②ハザードマップの整備は進んでいると思いますが、住んでいる人たちに、自分たちが住んでいる地域の災害史を教育することは、防災や地域開発などを考える上で必要ではありませんか。③島根県の災害史をまとめて記録、保存、いつでも閲覧可能にすることや、島根県立大学の研究テーマとして掲げることはとても有効で、災害史の広報や研究に取り組む考えはありませんか。

丸山達也知事答弁

災害史の記録保存や大学の研究テーマとして取り組むことについて

自然災害は、人間の営みや記憶に比べますとはるかに長いサイクルで発生しており、地震や洪水、土石流などが発生した場合に、多くの県民は、災害による大規模な被害を初めて経験することになります。そのため、県民が過去に発生した災害を振り返り、今後も起こり得るものとして災害に備えることは重要な要素であり、災害の教訓をわかりやすい形で得ることにより、地域における防災力の向上、また起きた際の災害被害の防止、最小限化につなげていくということが重要であります。
県内で過去に発生した災害につきましては、正確な記録が残っていないものや被害の実態がわかっていないものもあるところであります。資料が残っている災害につきましては、島根大学や県の古代文化センターなどにおきまして調査が進められており、一部はデータベース化の作業が行われているところであります。
県といたしましては、自主防災組織を対象とした出前講座や住民を対象とする講演会などに専門家や被災経験者を招き、地域の災害史や過去の災害被害の経験について学ぶ機会を設けるとともに、今後、記録資料や研究機関などによります調査結果の効果的な活用について、どのようなことが可能か考えてまいりたいと考えております。

山口和志防災部長答弁

県内災害史の記録と周知について

県では、県内で発生した災害を記録に残すため、毎年、発生した災害ごとに被害の状況等をまとめた災害年報や、過去の災害をまとめた災害年表などの記録を作成しています。こうした記録は、県のホームページで広く県民に公開しているほか、県や市町村が行う出前講座などで活用をしております。
また、県が平成30年3月に策定した島根県津波避難計画策定指針では、過去に島根県で大きな被害が発生した地震なども参考にして作成をしているところでございます。
また、県では、平成30年7月豪雨で浸水被害が発生しました江の川流域の住民の方々を対象としたアンケート調査を実施しました。この調査では、過去に被災した教訓をもとに判断して適切な避難行動につながった人が多かったという分析結果が出ております。こうしたことからも、過去に発生した災害から得られた教訓を住民に正しく伝えて、将来の災害に備えた防災対策に生かしていくことが大変重要であると考えています。
今後は市町村とも連携いたしまして、知事答弁にもありましたように、出前講座などのほかにも、防災リーダー研修における町歩きですとか、各地域における防災人材育成研修、地区の防災計画策定支援など、さまざまな機会に過去の災害の教訓なども取り入れ、地域の実情に即した、より効果的な防災・減災対策ができるよう取り組んでまいります。

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