県議会だより

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令和元年11月定例県議会一般質問(1)

若年女性人口の確保と女性活躍特区について

私は「島根創生計画」について、いくつかお尋ねしたいと思います。
『島根創生計画』の冒頭には「笑顔あふれる しまね暮らし」宣言が書かれています。丸山知事が描く島根県のめざす将来像を謳いあげたものととらえていますが、目を閉じると、かつて、私が子供のころ、近くに、日本一の石膏鉱山であった昭和鉱業鰐淵工業所が存置し、1100人もの人が働く地域であった頃の生活シーンが思い起こされます。河下港の近くの地域は、活気に満ち、映画館やスーパー、飲食店や診療所、歯科医院、美容院、公衆浴場もありました。
しかし、目を開けると、かつての社宅の跡には空き地が広がり、16の教室がある3階建ての鉄筋コンクリート造りの小学校には30人ほどの子どもの姿が見えるのみで、まさに、北海道や九州の炭鉱跡と同じ光景が広がります。
「一言よく人を生かし。一言よく人を殺す」と言いますが、知事の「人口減少に打ち克つ」とする強いメッセージが、県庁で働く職員の意志となり、立案する政策となり、実施する施策となり、その効果の発現によって、もう一度、生活の場に子どもや若者の姿がある地域を蘇らせ、笑顔のあふれる風景を見ることができることを期待するところです。
人口減少対策には様々な観点が必要ですが、人口減少に打ち勝つためには、どうすべきかを、県庁職員に問うた時、間髪を入れずに帰ってきた答えは「若年女性の人口を確保しなくてはならないと思う」でありました。
ほとんどの若者は、15歳と18歳、22歳(20歳もある)の時に、自らの将来、進路の選択を行います。島根県の若年女性が進学、就職の選択をする18歳時点で県内に残る人は、ほぼ島根で人生を過ごすのに対し、県外を選択した人が島根に帰ってくる比率は極めて低いのが現状です。そして、男性に比べて、女性が「県内」を選択する比率が圧倒的に少ないのであります。
まず、女性の学ぶ場所すなわち大学や専門学校の拡充はもとより、若者に魅力となる就労の場の確保や起業支援などについて、しっかりと現状の問題点を洗い出し、対応策を準備しなければならないのではないかと思いますがいかがでしょうか。(知事)

島根県も市町村も企業誘致に精力的に取り組み、一次産業就労者の受け皿を用意して、定住人口の維持に努力してきましたが、例えば、出雲市で展開している世界的な半導体メーカーは、3交代の24時間操業で、従事者の多くは男性で、女性はごく一部の職種に限られている男性向きの職場です。
女性向けの職場は、弱電や縫製と言った職種が主で、円高やメーカーの海外移転などによって閉鎖、縮小となり、今はコールセンターなどにシフトしているものの、男性職場に比べると給与などの待遇、水準は低いと思われます。
島根県を代表する企業と言えば、ごうぎんとJA、島根県庁などですが、いずれも大卒の上級職の採用は圧倒的に男性が多く、女性管理職や役員はゼロかごく少数です。
つまり、依然として、島根県の社会は男性の理屈が主となっており、女性のスキルや能力を生かす、あるいは発現させることに消極的だということです。18才の選択で、県外進学を選んだ女性が、圧倒的な男性優位の場所にリターンする可能性が低いのは当然です。自分のスキルが生かせる、伸ばせる、そこに自分を生かす場所があると考えれば、女性に島根を選択していただけると思います。
古典に「まず、隗より始めよ」とありますが、県職員の採用の方法を変え、当面、県庁職員の採用を男女同数、もしくは4:6ぐらいに改め、県内企業にも同様の要請をすれば、島根県に若年女性が増えて来るのではないかと述べたら、人事課の職員は、瞬時に「法律があって難しい」と答えました。小生はそれなら「女性活躍特区を申請して、法の枠を超えることを考えろ」と応じたのですが、今度は、違う県庁幹部から「憲法14条の規定があって女性特区の申請は難しい」と電話をいただきました。
いま、政府は女性活躍を国家目標に掲げ、霞が関の管理職の割合を30%にする、女性に限定した起業支援や補助金制度の創設などを次期通常国会に提案するとし、国会も女性議員の立候補を法制化するなど女性の社会参画を促進するために躍起です。確かに、憲法14条を理由にした反対意見もあるようですが、ごく少数だと聞きます。
一定期間、女性の採用を促進し、増加した女性職員の昇進がなければ、女性の管理職の割合を増加させることはできず、「女性だから」という理由で昇進させれば、それこそ憲法違反です。違憲請求は、誰かの訴求があって、はじめて裁判所で審査されるのであり、現状の男性優位社会を一定期間をかけて是正するための特区申請を、どこのどなたが憲法違反として訴えるでしょうか。
島根県の若年女性の減少はもはや看過できる状況にはなく、対外的に、大きなメッセージを発する必要があり、「島根が変わった」とするに、今回の知事交代の時期を逃せば、チャンスは、何年も先になります。こうした、千載一遇の機会を「○○の恐れがある」として封じることは、笑止千万です。
小生は、女性担当部長や100人会議は導入点で、子育て支援の充実も端緒だと見ています。知事にはぜひ、「女性活躍特区の創設」を考えてほしいと思っています。特区の創設にはほとんど、お金はかかりません。特区申請は「丸山知事になって島根県は変わった」と大きくアピールできると考えるがいかがでしょうか。(知事)

丸山達也知事答弁

女性の活躍を増やす特区創設について

若い女性に残り、戻ってきてもらうためにはその環境づくりが必要でありまして、そのためには安定した魅力ある仕事につくことや、充実した家庭生活を送れることを、そう思ってもらえる状況をつくることが重要であります。島根県の合計特殊出生率は1.74と全国第2位であり、働く女性の割合が74.6%、育児中の女性の働く割合が85.3%といずれも全国1位であります。その一方で、子育て世代の家事、育児時間は、男女の別で見ますと、女性が1日当たり407分であるのに対して、男性は69分と約6分の1であり、現状として女性に負担が偏り、そこに依存している状況にあります。こうした女性への依存の状況が女性が仕事や地域社会で活躍する上で足かせになっていると捉える必要があると考えております。
女性活躍の推進をするため、また若い女性に戻ってきてもらうためには、法制度の見直しというよりも、こうした家庭や社会の実態を変えていくことが重要であると考えておりまして、男性や企業の意識、行動を変えていくことが求められていると考えております。例えば、男性が育児休業を取得することについて本人や家族、職場の理解を進めることによりまして、制度はあっても実際に男性が取得していないという実態を変えていく必要がございます。そのために、家庭においては、男性の家事、育児、介護の参加を促す取り組みや、職場においては、経営者や管理職の意識改革、仕事と家庭を両立できる職場環境づくりの支援を進めていく考えであります。こうしたことにより、島根が若い女性にとって、仕事や地域社会でその個性や能力を生かして、その能力を発揮し、生き生きと活躍をしてもらう環境を整え、島根での生活、人生を選択してもらえるように取り組んでまいります。
また、県職員の採用の関係につきましては、現在、教員、警察、病院の部門を除いて、過去5年間の新規採用職員における女性の割合は全職種で35.6%、事務職に限りますと46.2%と半数近くなっておるとこであります。これは、平成28年3月に策定いたしました島根県特定事業主行動計画に基づきまして、県職員や職務の能力を紹介するプロモーション映像を公開したり、職員募集のパンフレットやホームページにおいて先輩職員からのメッセージや子育て支援制度を紹介するなど、県庁が子どもを育てながらでも働きやすい職場であることをPRしていることが要因の一つであると考えております。
一方で、技術職について、同じく過去5年間で見ますと、例えば総合土木が13.6%、建築が5.9%と新規採用職員に占める女性の割合が低くなっております。したがいまして、これら技術職の職員が、女性が県庁で働くことの魅力をさらにPRする必要がございます。
議員から御提案の特区申請につきましては、採用試験合格者の一定割合を女性とするといった性別で異なる取り扱いをする採用試験を実施することは憲法、地方公務員法に定める平等取扱の原則の規定に反することになりますので、難しいと考えております。その保障につきましても、そういった制度のもとで不合格となられた男性からの提訴は考えられないわけでございます。そういった意味で、そういった提訴が考えられる特区申請が認められるということについては見込めないというふうに思っておりますし、あわせてそういった率先行動をとった上で、議員の御提案ですと、県内の各事業所それから企業に働きかけていくという御提案でございましたが、やはり男女雇用機会均等法の法律のもとにあるこの民間事業所、各事業所の中で波及効果を望むのもなかなか難しいのではないかというふうに考えておりますので、この女性の応募者が、特に技術職等の現在少なくなっている部門においてさらにふえるような地道な取り組みを進めていくことで対応していきたいと考えておりますので、御理解をいただければと思うところであります。

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