県議会だより

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令和2年9月定例会一般質問(1)

新型コロナウイルス感染症について

アメリカの新型コロナウイルス感染症の患者数は600万人を超え、死者数は18万7千人に上っています。これは第1次世界大戦の戦死者117,000人をはるかに上回るもので、ブラジルやインドの患者数は400万人超、世界の累計感染者数は約 2724万人、死亡者数は89.1万人に上り、依然として1日当たり20万人近くの新規感染が伝えられています。
日本の状況は、新規感染者の状況を表すグラフ(感染曲線)を見ると、3月下旬から5月上旬までが1回目の感染期で、6月下旬から上昇を始めた2回目の感染期は7月下旬から8月上旬をピークにして下降しており、この1~2週間で小康状態になると予想されます。
アメリカのワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)の予測では、アメリカでマスク着用率が現在のままであれば、(現在50%未満)12月までに新型コロナによる死者数が31万7,000人に達するとし、信じ難いことに、日本では現在1300人余の死者数が11月以降に激増し、12月末には6万2000人を超えると推定されています。
10年前に新型インフルエンザが流行し、政府はタミフルの大量備蓄などを法制化し、2013年4月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が施行されました。この法律はインフルエンザに限らず、未知の感染症の流行拡大を防ぎ、国民生活を守るためにインフラ関連の事業継続を行うこと方途が定められており、本年3月に改正され、対象に「新型コロナウイルス感染症」が追加され、緊急事態宣言の発令などが定められました。「新型コロナウイルス特措法」と言われているのは、あくまで、「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律」です。
季節性インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスは、ともに飛沫感染で気道に侵入し死に至らしめるウイルス感染症としてよく似ていますが、インフルエンザと新型コロナは毒性が異なり、発症の状況が異なることが言われています。インフルエンザウイルスは毒性が強く、体内に入ると即座に発熱や咳などの症状、いわゆる抗原・抗体反応が起き、1~2週間で免疫ができて回復しますが、死亡するケースは副次的な細菌感染に起因するものが多いと言われています。
人に感染するコロナウイルスは7種類が知られており、うち4種類は、上気道(鼻、口、咽頭)に感染する普通の風邪ウイルスで、新型コロナウイルスを含め3種類は下気道(気管、気管支、肺)に感染します。新型コロナウイルスは感染力が極めて高いものの、毒性は弱く、体内に侵入しても症状が出にくいとされていますが、死に至るケースは、肺で過剰炎症が起こり、多臓器不全に至るとされており、免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが、制御不能となって放出され続ける「サイトカインストーム」が起こり、自分の細胞まで傷づけてしまう現象が起こると説明されています。
サイトカインストームが高齢者や基礎疾患のある人に起こりやすいのは、免疫力の健全性に関係があると考えられますが、その理由は解明されていません。
季節性インフルエンザとコロナウイルス感染症は同じようなものと言う人は少なくありませんが、全く異なります。専門家によると、新型コロナウイルス感染症は約100年前に大流行した1918-1920年のスペイン風邪を例示すべきとしています。スペイン風邪の日本での感染者数は、当時の人口の約半数2380万人、死亡者数は約39万人に上り、致死率は1.63%と報告されています。
新型コロナウイルス感染症の致死率は、検査数の不足や患者の追跡情報が不完全で、1%未満から15%まで国によって大きく異なり、日本のように検査数を抑えている国では致死率が高くなるはずですが、日本の致死率は極めて低く、高い衛生思想の普及とマスク装着の徹底などが世界の注目を得ています。
まもなく季節性インフルエンザの流行時期に入ります。例年、インフルエンザワクチンの接種率は補助金の出る65歳以上の高齢者でも高々50%程度で、全体では20-30%程度ではないかと聞いていますが、集団のウイルス量を最小限に抑えるためには、季節性インフルエンザワクチンの接種は極めて重要で、インフルエンザと新型コロナウイルスのダブル感染となれば致死率は飛躍的に上昇することは容易に想像できますから、今年度は、インフルエンザ予防接種とマスクの装着、手洗いの徹底で、季節性インフルエンザの流行を最小限にしたいものです。
ところで、9月8日、中国・北京の人民大会堂で「新型コロナウイルス感染対策表彰大会」が開催され、新型コロナウイルスへの対策に貢献した政府の専門家チームを顕彰し、習近平主席が「過去8カ月以上の新型コロナとの闘いで重大な戦略的成果を挙げ、人類と疾病の闘争史上に英雄的な快挙を成し遂げた」と演説したと伝えられました。
世界保健機関(WHO)によると、欧米や日本で臨床試験中の新型コロナウイルスワクチンは約30種類とのことですが、8月11日、ロシア保健省はガマレヤ国立研究所が開発した新型コロナウイルス感染症ワクチンを2カ月弱の臨床試験(治験)を得て、世界で初めてとなる認可を与えたと発表し、中国政府も6月に軍人を対象とした「カンシノ・バイオロジクスのコロナワクチン」の使用を許可し、7月22日から医療従事者や防疫・検査担当者、交通機関の担当者を対象に「ワクチン管理法」に基づく新型コロナウイルスワクチンの緊急投与を開始、奇しくも、ロシアと同じ8月11日に知的財産当局が同ワクチンの特許を付与と発表しました。
筑波大学の掛谷英紀准教授は、過去、ウイルスの遺伝子を組み替えて人間に感染しやすくする研究は多数行われてきたが、新型コロナウイルスはコウモリのウイルスとセンザンコウのウイルスの断片を組み替えたような遺伝子構造をしており、人工的でなくても、多数の実験動物を飼育する特殊な環境で起きた可能性があると指摘しています。まだ大きくは報道されていませんが、8月には中国で新たな感染症「新型ブニアウイルス」が発生し、60人以上が感染し、7人が死亡したとあります。マダニが媒介するウイルス感染は日本でも発症例があり、ヒト-ヒト感染はないとされてきましたが、中国の新型ブニアウイルスは、ヒト-ヒト感染の可能性があるとされています。
これから先、鳥インフルエンザから変異する新型インフルエンザは言うまでもなく、新しいウイルス感染の可能性、もしかすると、人工的につくられたウイルスの世界感染を想定しなければならないとすれば、私たちは核兵器などの軍事的脅威と同様に生物、化学的脅威に対する備えを図る必要性が出てきます。
日本人にとってマスクや手洗いの日常の衛生習慣はそう難しいことではありませんが、3密回避は簡単ではありません。今回、企図されているPCR検査など検査体制の確立は今後に残るものでありますが、生活支援や需要の回復などとは違う、消費への投資ではない生産的な投資、次なる危険に備えて、後世に残る対策を考える必要があると考えます。

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