県議会だより

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令和3年9月議会一般質問(5)

ウィズコロナについて

過般、出雲市で放課後児童クラブのクラスター発生の関連で、学校や保育園、こども園等に通う児童に感染がありましたが、保健所の適切な疫学調査と迅速、かつ大規模なPCR検査で2次的な感染拡大を防がれたのを目の当たりにしました。本県の感染者数が全国最小である理由は、コロナ対応にあたる関係者の強い使命感と弛まぬご尽力の結果で、心から感謝を申し上げ、ご労苦をお労いしたく存じます。
新型コロナウイルス感染症については、国民の3分の2が1回目のワクチン接種を終え、過半数が2回目の接種を終えたとされ、高齢者は概ね9割の接種が終わったようです。64歳以下の接種率はまだ、半分には達していないとのことですが、ワクチン接種が順調に進展する一方で、治療薬はレムデシビルや抗体カクテルなどの緊急承認はあるものの、インフルエンザの特効薬であるタミフルやリレンザのような経口治療薬の開発がない限り、国民生活が平常に復するにはなお時間を要すると思われます。
先日、自宅で老人を看取った小学生の作文を紹介します。
「この前、大きいおばあちゃんが亡くなりました。僕にとって身内の人が亡くなるのは初めてでした。僕は大きいおばあちゃんといつも一緒に住んでいるわけではありませんが、お正月やお盆には、子や孫やひ孫などたくさんの人が大きいおばあちゃんの大きな家に集まって、いろんな話をして過ごします。大きいおばあちゃんのシワシワの顔いっぱいのうれしそうな笑顔を見ると、いつも世代を超えた家族の強い絆が感じられました。大きいおばあちゃんが亡くなったときも、いつものように大きいおばあちゃんの家にみんなが集まりました。目を閉じた大きいおばあちゃんの手はびっくりするほど冷たく、僕は悲しくて涙が止まりませんでした。でも、みんなで大きいおばあちゃんを天国に送ることができたので、きっと大きいおばあちゃんはシワシワの顔の目を細めて喜んでいると思います。」
こうした文章でした。コロナ禍での病院や介護施設では、感染防止の観点から、紹介されたような光景はありません。高齢者の仲間入りをし、残りの時間を意識するようになった世代の一人として、一日も早い日常が戻ってくることを願っているところです。

ところで、国で検討がされているワクチンパスポートと検査証明書の提示による『移動の自由』を図るとする方策は時宜を得たものだと思いますが、ワクチンの有効時間や検査体制の拡充に少なからず問題点を残していると思います。

1.初めに、本県のワクチン接種の状況と見通しについてお尋ねします。(健康福祉部長)

2.県内での抗体検査とPCR検査の実施状況(患者や濃厚接触者等に対する行政検査と任意の検査)と検査機関の整備状況についてお聞かせください。(健康福祉部長)

3.ワクチンパスポートと検査証明による『移動の自由』が認められる状況となった場合、パスポートは市町村の窓口で申請・発行はしていただけるとしても、抗体検査やPCR検査などについては、検査キットの開発や検査体制の整備、実施機関の認定、受益者負担の水準などに課題ありと思いますが、現時点での所見をお尋ねします。(健康福祉部長)

4.仮に、『移動の自由』が認められる状況になった後に、新たな変異株やウイルス出現となった事態の対応について、知事はどのようにお考えになっていますか。(知事)

丸山達也知事答弁

社会経済の復元と第6次感染にかかる今後の問題点について

希望する国民全てにワクチン接種が行き渡ったといたしましても、今、議員から御懸念のとおり、新たな変異株が出現して、これまでのワクチンが十分効かないといった状況にあることなども想定されます。また、今後、ワクチンの効果を超えて感染がそういったことで再拡大する可能性が十分にあることから、水際対策や変異株のモニタリング、積極的疫学調査を徹底することが重要だというふうに考えております。
現在、9月段階で政府が進められようとしてます行動制限の縮小、見直しについては、これは緩和でありますので、緩和というアクセルを踏む場合には、再び感染拡大が起こった際に拡大を食い止めるためのより強いブレーキを用意しておくことが欠かせないのではないかと考えております。特に、繰り返し感染拡大の基点となって全国にその波及をさせてきた首都圏などの大都市圏を念頭に置いて、感染拡大リスクを伴う行動に対する個人に着目した規制の強化の検討が必要であるのではないかというふうに考えておるとこでございます。
ワクチン接種の拡大によって、この日本社会が獲得します感染や重症化の抑止効果ということを活用して、経済社会を回していくためにこの行動制限の緩和を通じて経済活動の回復につなげていくという考え方には私も基本的には賛成でございます。ただ、幾つかの大事な留意事項があると思っております。一つには、日本全体で感染抑制と経済活動のバランスを取るということは、言葉で言うのは簡単ですけども、これまでの経験上も非常に難しい、経済へのプラス効果を目指しながら結果的には感染拡大を招いて経済に大きなダメージが生じる結果を招いてきたというのが、これまでの3波から4波までの流れであるというふうに評価せざるを得ません。したがいまして、今回の第5波が収束に向かった要因として、ワクチン接種がどれだけ貢献したのかということについてデータに基づく検証を行うことなどによりまして、感染拡大につながらないようにどの程度の行動制限の緩和が急を要されるのかということを十分に検討して進められるべきだというふうに考えます。
また、大都市圏と異なりまして、ワクチンなしの状況で比較的感染を抑えられてきた地域においては、大都市よりも感染再拡大のリスクが小さいということを十分に考慮すべきでありまして、一番感染拡大を招く大都市を前提として、全国一律の制度設計がなされるべきではないかというふうに考えております。
また、国内で変異が生じてしまうということは、まあこれはやむを得ない、対応は難しいと思いますけども、海外からの変異株の流入については、政策で対応できる部分は多分にございます。完全は無理だとしても、徹底した水際対策と国内感染を初期段階でできる限り抑えて遅らせていくということが重要でありまして、政府には徹底した水際対策、そして大都市圏には積極的な疫学調査の確立といったことを引き続き求めていかなければいけないと思っておりまして、ワクチンが普及したから水際を緩めていいとか、積極的疫学調査はできなくても仕方がないとかという対応で臨んでしまえば、再拡大の場面、新たな変異株やウイルスの出現といったことが生じた場合に3波から5波と同じような状況を招きかねないということで、このところの姿勢を誤解していただいては困るのではないかというふうに考えているところでございます。

小村浩二健康福祉部長答弁

ワクチン接種の状況と見通しについて

県内におけますワクチン接種の進捗状況につきましては、優先接種として医療従事者等への接種が7月末で完了をしております。次の優先順位であります65歳以上の高齢者への接種は、現時点でおよそ9割の方が2回目の接種を終え、接種を希望される方についてはおおむね完了したと考えております。現在、市町村においては、12歳から64歳の方への接種に取り組まれており、医療従事者と高齢者を含め、9月21日時点の県全体の接種率は、1回目で67.3%、2回目で57.1%となっております。今後、国からは10月上旬までに対象人口の8割の方に接種できる量のワクチンが供給される見込みであります。県としましては、引き続き市町村や企業の取組をサポートすることにより、希望する県民全てが早期に2回目の接種を終えることができるよう努めてまいります。
そうした中、ワクチンの2回の接種後にその有効性を示す指標の一つである中和抗体価が時間の経過とともに減少する可能性を示す研究データがあるということ、また諸外国の状況も踏まえて、先日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、3回目の接種が必要と判断をされたところであります。今後、同分科会で接種対象者、接種体制などを検討されることとされており、示される具体的な内容等について注視していく必要があると考えております。

小村浩二健康福祉部長答弁

抗体検査とPCR検査の実施状況および検査機関の整備状況について

まず、行政検査として行うPCR検査の体制につきましては、県自ら行うものとしては、保健環境科学研究所と浜田保健所において実施をしておりますが、このほかに県が委託契約を結んだ民間の医療機関や各圏域の地域外来検査センターにおいて実施する体制を整備しております。また、任意のPCR検査については、県内の一部の医療機関等において行われていますが、県が行政検査も委託をしていることから、行政検査を優先して実施をしております。県の委託を受けて行政検査を行っているのは、医療機関や検査機関など、合わせて21機関であり、また任意の検査を行う機関として県が把握しておりますのは6機関であります。
県内での1日当たりの検査能力は、PCR検査、抗原定量検査、簡易キットによるものも含め、最大2,500件余りであります。このうち、PCR検査は最大約1,000件であります。なお、抗体検査につきましては、公的に認められた検査法がなく、研究のために一部の研究機関で実施をされてるといった状況であります。

小村浩二健康福祉部長答弁

ウィズコロナにかかる課題について

本年9月9日に国の対策本部において、ワクチン接種歴または検査による陰性証明を基に飲食、イベントへの参加、人の移動などの行動制限を緩和するワクチン・検査パッケージが示されました。現時点ではまだイメージの段階ですが、検査については主にPCR検査が推奨をされております。
また、検査費用には、基本的に公費を投入をしないとする考え方が示されております。現状の県内のPCR検査能力では、疫学調査のための行政検査を優先して対応せざるを得ない状況であります。希望者がいつでもPCR検査を受けられるようにするためには、民間の検査センターを誘致したり、ベンチャー企業の育成など、新たな検査機関等を増やしていくことが必要だと考えております。また、PCR検査に係る費用は、検査の方法により価格の幅がありますが、一般的には3,000円ぐらいから数万円となっており、県内では平均2万円程度となっております。
なお、抗体検査のキットについては、様々な製品が研究用として流通しておりますが、公的な検査として認められているキットはなく、今後、開発が必要となります。ワクチン検査パッケージについては、まだ具体的な内容が示されておりませんが、これを進めるに当たっては、個人の検査費用の負担があることや実施機関の認定も含め検査を行う体制が十分でないため、これらを支援、充実するための財源についても課題になると考えております。

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