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この7,8月の大雨は、江の川水系で本川の氾濫がありましたが、時間雨量80~100mmに達する豪雨に際し、斐伊川水系では、支川となる上流部で氾濫、護岸崩落などが発生したものの、ダム、放水路の整備の効果で、宍道湖の水位が上昇せず、かつて水害常襲地帯であった平田市街地や出雲市の連担地の浸水・冠水がほとんど見られなかったことは、永年、治水事業に関わっていただいた関係者のご労苦のおかげと、心から感謝を申し上げる次第であります。
ただ、河川改修が及んでいない地域の浸水・冠水は酷い状況であり、県道鰐淵寺線では冠水が常態化し、一畑電車の美談-大寺間は1か月に4回も冠水による運休があり、今後は中小河川の計画的な改修が求められると思いますので、この点について、何点か伺います。
1.災害復旧は原則、原形復旧ですが、従来の想定を超える大雨で損壊した災害箇所を原形復旧しても、今後の豪雨には耐えられません。必要によっては、応急的な対処をした上で、「改良」を考える必要性はありませんか。(土木部長)
2.整備済みの大河川の冠水は避けられましたが、上流部の支川、例えば、稗原川、三刀屋川、湯谷川、平田船川などの上流部、またそれに注ぐ中小河川のほぼすべてで氾濫や護岸崩壊を起こしています。大半の地域が周辺に水田があり、河川が氾濫してもそこが大きな遊水地の役割を果たして、下流の本川への流下を遅延させる大きな治水効果を発揮しています。改良によって支川の流下能力を向上させると、本川に影響が及ぶ恐れを生じますが、従来の降雨確率による河川計画は一定の見直しが必要ではありませんか。(土木部長)
3.田圃は、大雨の際のダム・遊水地として、大きな効用があります。今まで、稲作が中心であった連担地の水田では、コメから園芸作物への転換が図られています。コメは、冠水に堪えますが、ほとんどの園芸作物は腐れてしまいます。時間雨量50~100mmや1日あたり200mmを超える雨量を想定した河川整備を実施することはほぼ不可能で、そうした大雨については越水を前提にした考え方(計画)を執ることは致し方のないことだと思います。
そこで、仮に河川が氾濫して、流域の水田がダム・遊水地の役割を果たした時の園芸作物について、一定の補償ルールを作っておく必要性を感じます。そうしておくことで、地域の安全や必要以上の投資が防げるのではないでしょうか。(農林水産部長)
4.河川に流れ込む水量が想定(能力)を超えた時、下流部となる市街地の被害を最小限に止める方策と現状で対応可能(財政的)な施設整備をどう組み合わせるかの判断が必要だと思いますが、いかがお考えになりますか。(土木部長)
│掲載日:2021年09月24日│
河川の氾濫により護岸の決壊などの施設被害に加えて、家屋浸水などの一般被害が多く発生した場合は、下流の整備状況や費用対効果などを踏まえた上で、改良復旧制度の活用や河川改修事業の導入により、河川の拡幅や堤防のかさ上げなど改良を考える必要があると考えております。
河川整備の計画は流域全体で作成するものであり、その想定降雨量を超えない範囲での支川の改良であれば本川の計画の見直しは必要ありませんが、超えた改良をしようとする場合には計画の見直しが必要となります。ただし、本川の計画の見直しは堤防の再整備など非常に大きな影響があると考えられます。
想定を上回る洪水が発生した場合は、河川整備の計画に基づく施設整備を進めるとともに、施設整備では防ぎ切れない被害に対しては、流域全体で被害の軽減を図る流域治水の考え方によりあらゆる関係者と協力し、水田の遊水機能の活動や避難行動につながる情報発信など、様々な対策を組み合わせていくことになると考えております。
議員御指摘のように、水田は雨水を一時的にためることで洪水を防止、軽減する働きがあるのに対しまして、水田園芸での野菜は被害を受けるリスクがあります。大雨が頻発する中、水害を想定しながら、まずは被害を発生させない、あるいは被害を最小限にとどめることが重要と考えております。水田園芸の推進に当たって、排水対策の徹底はもとより、水害を受ける可能性のある農地で作付せざるを得ない場合は、出水期を避けて栽培できるタマネギなどの作付を推進しております。
また、農作物の補償としまして、水害など自然災害が発生した場合の収入減少を補填する農業収入保険が国において制度化されております。水田など農地について、補償ではありませんが、多面的な機能を重要視し、維持していくための日本型直接支払制度があります。県としては、水害があった際には農業者の方々にこれらの制度を有効に活用していただきながら、経営再建が円滑に進むよう支援してまいりたいと考えております。