県議会だより

Reports

令和3年9月議会一般質問(1)

SDGsについて

「SDGs」は、2000年に「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「エイズなどの疾病の蔓延防止」など8つの目標を掲げた「MDGs」が2015年に達成期限を迎えたことを受けて、同年9月に「誰ひとり取り残さない」を掲げ、貧困や飢餓といった問題から、働きがいや経済成長、気候変動、ジェンダー平等、海洋環境の保全など、世界が共通で抱える課題を解決し、2030年までに先進国と途上国が一丸となって達成すべき17の目標と169のターゲットを示し、採択されたものです。
折しも、今週は「Global Goals Week」と呼ばれている「SDGs週間」で、SDGsへの意識を高め、行動を起こす機会だそうですありますが、SDGs全般について質疑をしようとすれば、相当な時間を要しますから、今回は、この7,8月に相次いだ大雨が、地球温暖化による気候変動によるものとして、一連の災害発生と菅総理が表明した「2050年カーボンニュートラル」などについて、県の取り組みをお尋ねしたいと思います。

1.まず、「カーボンニュートラル」について説明願います。(環境生活部長)

2.島根県では、昨年11月議会で知事が「カーボンニュートラル」を表明され、環境大臣からのメッセージが発給されました。
この3月に策定された「島根県環境総合計画」の中にも盛り込まれていますが、県内市町村の取り組み状況についてお聞かせください。(環境生活部長)

3.環境配慮契約法の制定により国内各地で「Jクレジット」による取り組みが始まっているようですが、その内容についてお尋ねします。(環境生活部長)

4.県庁や県の出先機関、学校や警察を含めた県有施設の1年間の使用電力と支払い電気料金についてお尋ねするとともに、県(企業局)が生産する1年間の電力量と受け取り電力金額をお尋ねします。(総務部長)

5.県内でも「地域新電力会社」の設立がされているようですが、その内容と取り組み事例についてお聞かせください。(地域振興部長)

6.企業局は基本的にFITによる売電を念頭に、水力発電や太陽光の事業を進めており、現在、施設の改修も行われていますが、法令改正をうけて、今後の取り組みを再検討する考えはありませんか。(企業局長)

7.脱炭素を進める欧州では、COP21を経て、新規課税や排出権取引、EU-ETSの拡大などで財源を捻出し、短期に目的達成を図るとしていますが、日本ではESG投資やre100,ep100などへの参画がさほど進んでおらず、今後、政府目標の達成に向けて、元請企業から下請けに対し、脱炭素化を求める動きが加速すると予測しますが、中小・零細企業が多い県内事業者に対する支援をどのように準備しますか。(商工労働部長)

8.カーボンニュートラルの進展には「エネルギー効率の向上」と「CO2の排出削減」に加えて「ネガティブミッション」いわゆるCO2の吸収が必要です。本県では豊富な森林資源を活用した植林・育成・伐採・植林という人工林による森林吸収源対策が過疎化を打開する大きなツールになると考えます。そこで、県内の森林面積と人工林の面積およびそこから導き出せるCO2の吸収量、人工林を40年サイクルで活用した場合のバイオマス発電の可能量を試算についてお尋ねします。(農林水産部長)

9.今回の災害の要因の一つが、山林環境の悪化にあることは紛れもない事実です。森林吸収源対策のみならず防災の観点からも、山林管理の重要性は大きいと考えますが、それには部局を超えた取り組みの必要性があると思いますが、知事はどのようにお考えになりますか。(知事)

丸山達也知事答弁

森林吸収源対策について

近年、激甚化が進んでおります豪雨災害に今後備えていくためには、県土の約8割を占めます森林を適切に管理し、水源涵養や土砂流出防止などの森林が持つ防災機能を十分に発揮させていく必要があるというふうに改めて認識したところでございます。
議員御指摘のように、森林は防災機能だけではなく、木質バイオマスの発電利用、森林セラピーなどの観光、水と緑の森づくりの事業によります県民参加の森づくりや森林の役割のPRなど、森林の多面的な価値を踏まえて、個別の部局を超えた視点を持って施策を進めていきたいというふうに考えておるとこでございます。

竹内俊勝環境生活部長答弁

カーボンニュートラルについて

カーボンニュートラルとは、人の活動によって大気中に排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの量を森林の適切な管理などにより吸収される量と均衡させて、実質的にゼロ、ニュートラルとするということであります。温室効果ガスは、地球温暖化の原因となるものであり、2015年にパリ協定で採択されました、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求するという世界共通の目標を実現するため、現在120以上の国と地域が2050年を目標年としてカーボンニュートラルに取り組んでおります。日本においても、昨年10月に菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を表明されたところであります。今年4月には2030年の温室効果ガス排出削減目標を、2013年比で46%削減と大幅に上積みされました。現在、国においては、46%削減を達成するため、部門別の具体的な取組や削減目標の見直しなど、地球温暖化対策計画の改定作業が進められております。
現時点で、市町村長が2050年カーボンニュートラルを表明した自治体は、島根県内では、松江市、出雲市、美郷町、邑南町の4市町であります。また、市町村自らの事業から排出される温室効果ガスを抑制する実行計画を策定している市町村は、県内では13市町あります。また、地域の住民の生活や企業活動などから排出される温室効果ガスを抑制する実行計画を策定している市町村は、6市であります。

竹内俊勝環境生活部長答弁

J-クレジットについて

環境配慮契約法では、国や地方公共団体が契約を結ぶ場合に、価格に加えて環境性能を含めて総合的に評価し、最も優れた製品やサービスなどを提供する者と契約する仕組みが定められております。
具体的には、例えば地方公共団体などが小売電気事業者と電気の供給を受ける契約において、入札参加資格に二酸化炭素排出ケースの提言、再生可能エネルギーの導入実績など5項目で点数化して評価することが、国では義務、地方公共団体は努力義務とされております。
一方、J-クレジット制度とは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用などによります二酸化炭素等の排出削減量や、適切な森林管理による二酸化炭素等の吸収量を売買可能なクレジットとして国が認証をする制度であります。先ほど申し上げました入札参加資格を評価する5項目のうち、二酸化炭素排出係数と再生可能エネルギーの導入実績によってJ-クレジットによる実績を加えることができることとされております。島根県では、県庁舎及び合同庁舎で使用する電力調達に係る一般競争入札において参加条件に反映しているとこであります。

山口研悟総務部長答弁

県有施設の消費電力について

島根県の県有施設の令和2年度の使用電力は約1億100万キロワットアワー、支払い電気料金が約17億6,300万円で、企業局が生産する令和2年度の電力量は約9,500万キロワットアワー、受け取り電力金額が約23億1,500万円となっております。

長岡秀樹企業局長

FITの活用について

企業局は、平成24年から始まった国の固定価格買取り制度、いわゆるFIT制度を活用し、これまで経営上取り組むことが困難であった、老朽化した水力発電所のリニューアルや新規発電所の開発に取り組んでいます。FITによる売電単価は、FITを適用しない場合に比べ2倍以上高く、企業局としましては、FIT制度の活用を経営の基本としています。企業局が発電している電力の一部をFITから外し、安い単価で県有施設に供給した場合を想定してみますと、FITによる売電単価が1キロワットアワー当たり、平均で約24円であるのに対し、研究施設が電力会社から購入している単価は約17円となっています。企業局が県有施設に0円で電力を供給したとしても、県トータルで見ると、差引き7円分が損失となり、加えて託送料金の支払いも別途必要となることから、メリットはありません。企業局としましては、今後もFIT制度の活用を継続した上で、FITによる利益を一般会計に繰り出すことにより県財政に貢献していく考えであります。

藤井洋一地域振興部長答

地域電力会社について

県内では、まず、平成28年に奥出雲町で奥出雲電力が設立され、主に町内の水力発電所からの電気を町内の公共施設や民間工場などに供給されております。収益については、林業や観光振興への活用を予定されております。
また、昨年度には、江津市で神楽電力が設立され、主に関連会社のメガソーラーや風力発電所からの電気を市内の公共施設に供給されています。地密着した活動に取り組んでおられます。
さらに、今年7月には、出雲市でいずも縁結び電力が設立され、市内の水力発電所や可燃ごみ処理施設のバイオマス発電所からの電気を市内の公共施設へ供給される予定です。
このほか、邑南町において今年度中の新電力会社設立が予定されております。

田中麻里商工労働部長

脱酸素の取り組み支援について

カーボンニュートラルにつきましては、国内の自動車メーカーが取引先企業を含めたサプライチェーン全体のCO2排出量を削減する取組を始めるなど、物づくり産業において先行した動きが出ております。将来的には、県内企業においても、生産活動でのCO2削減が取引継続の前提条件となることなども予想されます。県内企業からは、「取引先からCO2削減の要請を受けているが、具体的な対策は分からない」といった声や、「要請はないものの、今後の動向が見通せず不安」といった声を聞いております。県といたしましては、カーボンニュートラルがもたらす市場や事業環境の変化に県内ものづくり産業が適切に対応するため、今議会において県内への影響などを調査分析し、企業へ情報提供する事業を提案しております。この事業を通して、企業が課題を認識し、いち早く対策を検討していただけるよう働きかけていきたいと考えております。また、調査結果を基に県内企業の現状や課題、支援ニーズを踏まえて、設備投資などに対する支援について検討してまいります。

西村秀樹農林水産部長答弁

森林資源の活用について

県内の森林面積は約524,000ヘクタール、そのうち、杉、ヒノキ等の人工林は39%に当たる約205,000ヘクタールです。この人工林が1年間に吸収する二酸化炭素の吸収量は、林野庁が示した計算方法に準じて試算しますと、年103万3,000トンとなり、これは一般家庭が年間排出する二酸化炭素量の約38万世帯分に相当します。仮に、全ての人工林を40年サイクルで切って植えて循環させたとする単純モデルで試算しますと、1年間に利用可能なバイオマス量は約50万トンで、この試算上の生産過程で約4,500人の雇用創出効果が見込まれます。仮に、このバイオマスを木質発電所において利用したとする場合、松江市で稼働する木質バイオマス発電所の6基分を賄う量に相当します。このように、島根県の森林、林業は、産業振興だけでなく、地球温暖化防止や過疎対策の面でも大きなポテンシャルを持っていると考えております。

過去の投稿

園山繁の活動日誌