県議会だより

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令和3年11月議会一般質問(5)

地域経済の振興について

最低賃金が4%引き上げられ、島根県の地域別最低賃金は824円となりましたが、下請法に基づく元請と下請けの取引条件が変更されたという話はほとんど聞こえてきません。過般、下請法に関わる公正取引委員会の研修機会がありましたが、講師が講演対象としていた者は元請事業者であり、島根県での研修内容には違和感があり、「公取にしてそうなのか」と感じた次第です。(1)本来、行政が法令をもって賃金を引き上げるのであれば、対象となる事業者がコストアップになる部分を価格転嫁できるようにしなければ、弱い立場の者のみが負担をすることになり、経営破綻は必至の状況になりかねませんが、下請法に基づく県内企業の取引条件変更や価格転嫁の取り組み状況についてお聞かせください。(商工労働部長)
人事院は公務員給与について大都市部と地方の格差を決めていますが、これも「都会地の給与は高くて当然」と言うもので、いまの政策は「地方創生」ではなく、「地方早世」でしかないように感じます。都会と地方の公務員給与が同じであれば、利便性の高い都会を選ぶか自然豊かで住みやすい地方を選ぶかはその人の『価値観』によって決まりますが、国が都会と地方に経済的な差異をつける(容認する)現状では、都会地に人材が流れ込むのは当然で、地方に人材が来にくい状況を固定化させております。仮に、都会地と地方の最低賃金を含めた賃金水準が同じであれば、地方から都会に人が流出することは減少し、定着する可能性が高くなるのは自明です。
この際、「島根県の給与は都会の8割で良い」との常識を覆し、「島根県でも都会並みの、否、都会以上の待遇が受けられる」という目標を掲げてはと思います。 (2)県は、政府に対し、最低賃金の引き上げや公務員給与の考え方を改めるよう申し入れするべきであります。下請法の規定に賃金の引き上げに連動した価格転嫁が可能になるような法改正を求め、都会地と地方の給与格差を是正できるような仕組みの創設を働きかけるべきと考えますが、この際、知事のご所見をお尋ねいたします。(知事)
人口急減地域特定地域づくり推進法(人口急減法)に基づく組合設立が期待したほどには進んでいないように感じます。この法律の要件には、「人口が減少している地域」とあり、過疎地域と言う記載はありませんから、実態として一定の人口減少があれば取り組みが可能で、県内は全市町村が対象地域となるはずです。取り組み如何では県内の中小・零細企業の給与待遇を大きく向上させる可能性があり、市町村への情報提供に加えて、商工団体や農林水産業の関係団体などに対する説明会の開催などを通じて、組合設置の働きかけを強化し、少しでも都会と地方の格差解消に努めていただきたいと考えますが、担当部長の取り組みに期待します。(地域振興部長)

丸山達也知事答弁

都会と地方の給与格差是正について

まず、最低賃金につきましては、政府の中央最低賃金審議会が示します地域別最低賃金額改定の目安を参考にしまして、厚生労働省が都道府県ごとに設置します地方最低賃金審議会において、地域における労働者の生計費、賃金、企業の支払い能力を考慮して決定される仕組みとなっておるとこであります。
島根県における過去5年間の最低賃金の改定の状況を申し上げますと、平成29年は目安と同額の22円の増額、平成30年は目安より1円高い24円の増額、令和元年は目安と同額の26円の増額、令和2年につきましては目安は示されず2円の増額、令和3年が目安より4円高い32円の増額となっておりまして、最低賃金は、上げ幅をどう評価するかというのはありますけれども、年々上昇している状況にございます。
県はこれまでも、県内の企業が賃金の引上げに対応できるよう、企業の生産性向上への支援の拡充や、下請企業が増加経費を適正に価格転嫁できるよう、発注企業への指導監督の実施などにつきまして国に要望してるとこであります。このように、県内企業が最低賃金の今後の上昇にも対応できるよう取り組んでいくことが重要であると考えております。
また、価格転嫁につきましては、下請法や下請中小企業振興法によりまして、発注企業に対して、下請企業の利益を保護するため、買いたたきの防止や労務費上昇分の影響を考慮することを求めておりまして、価格転嫁を促す仕組みとなっておるとこであります。
政府では、下請Gメンの大幅な増員、下請企業1万社超へのヒアリング調査の実施、下請企業への配慮を宣言するパートナーシップ構築宣言企業を増やすことなど、取組の拡充強化を図ることとされております。県といたしましては、これらの政府の取組の状況や実効性を確認しながら、国に対して、発注企業に対する指導監督等について適切な対策を講じるよう強く要望していきたいというふうに考えているとこであります。
次に、公務員給与の考え方を転換することについてでありますけれども、公務員給与につきましては、地方公務員法24条に定めます均衡の原則によりまして、また県民の理解が得られるよう職員の給与は地域の民間企業の給与も考慮して定めなければならないとされているとこであります。
都会と地方の給与水準について格差が生じることは十分に承知をいたしておりますけれども、私といたしましては、県民の理解を得ながら職員の給与を引き上げていくためには、まず県内企業の給与水準が上がるようにすることが必要であるというふうに考えております。このため、新型コロナの影響によりまして影響を受けております地域経済の回復に向けて、引き続き、需要喚起、県産品の消費拡大を図ることや、活力ある産業づくりをはじめとした島根創生の実現に向けて全力を尽くしていかなければいけないと考えております。

藤井洋一地域振興部長答弁

人口急減法に基づく組合設置への働きかけ強化について

県内では現在6市町の組合を認定し、それぞれ派遣事業を行っておられ、さらに4市町村で今年度中の組合設立、認定に向けた準備を進めておられます。
認定した6組合では46の事業者が組合員として参加しており、このうち、業種別に見ると、農業が24事業者と全体の半数以上を占めております。一方で、宿泊業や食料品製造業、酒造業等の事業者が参加している組合もありますが、全体として商工事業者の参加は少ない状況となっております。この要因として、現在組合の設立手続を進めている町に聞いたところでは、地域づくりのための事業という誤解等により商工事業者では理解が深まらず、組合への参加を見送られたのではないかということでした。一方で、組合の設立の動きが具体化してきてからは、商工事業者の関心が高まってきているとも聞いております。
この組合制度は、国及び市町村の経常的な財政支援を受けながら地域における人材不足の解消等を進めることができ、幅広い業種の事業者に広く活用されることで地域経済全体の活性化につながるものと考えております。県としては、今後、市町村や関係団体と連携して、幅広い業種の事業者が組合に参加され、地域の安定的な雇用や所得の確保等が図られるよう、説明会の開催等を通じてさらに制度を周知していく考えです。

田中麻里商工労働部長答弁

最低賃金の引上げに伴う県内企業の状況について

下請法では、下請企業の利益を保護するため、発注企業に対して、買いたたきや発注後の代金の減額などの行為を禁止しております。また、下請中小企業振興法では、望ましい取引関係を構築するため、最低賃金の引上げに伴う労務費の上昇について、取引対価を見直す協議を行うことなどが定められています。さらに、取引上の問題が発生した場合には、全国に設置された下請かけこみ寺において下請企業の相談に応じ、専門の相談員や弁護士によるアドバイスや調停により問題解決を図る仕組みとなっております。
本県の下請かけこみ寺は産業振興財団に設置されており、相談件数は昨年度が22件、今年度は先月時点で12件の相談があり、件数は近年横ばいで推移しております。相談内容は代金不払いや契約に関わるトラブルが多く、近年、賃金引上げに伴う価格転嫁の相談はございません。
一方で、今年10月に県内企業114社を対象とする業況調査を実施いたしましたが、最低賃金の引上げについて影響があると回答した企業は約3割で、そのうち約7割の企業が、販売価格に転嫁できず、収益の悪化が見込まれると回答しております。価格転嫁ができない企業は、一層の経費節減や設備投資等による自動化、省力化などにより対応すると回答しており、議員御指摘のとおり、弱い立場にある下請企業がコストの増加分を負担することとなり、経営への影響は大きいものと考えております。
県といたしましては、県内企業が最低賃金の上昇を取引価格に反映できるよう、産業振興財団や経済団体と連携して、下請取引適正化の制度や賃金の引上げを行う中小企業を支援する助成制度の周知を図ってまいります。あわせて、国に対して、適正な価格転嫁が進められるよう、発注企業に対する指導監督等の対策を講じることを要望してまいります。

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