県議会だより

Reports

令和4年2月定例県議会一般質問(3)

野生鳥獣対策について

従来、「野生鳥獣は無主物で、行政がその被害を防除あるいは補償することにはなじまない。」とされてきました。県内の山間地域、中山間地域の高齢化は深刻で、本来、自己で管理すべき農地や山林、宅地を野生生物の侵入や食害などから守ることが困難になってきており、生活支援の観点からも一定の対策が必要となっているところであります。
もともと、山間地は野生生物が先住者で、人間はあとからやってきた侵略者であり、野生生物から見れば、人間が迷惑な存在でありますが、このところ、中国山地一帯にシカの生息域が大きく広がってきています。
従来は、保護区域に設定されている島根半島地域を除いて、本県の山間地域でのシカの生息は他の4県と比べて少なく、食害や造林木への剥皮などの報告はほとんどなかったのでありますが、近年、岡山や鳥取、広島に生息している個体が、島根県に及んできたと考えられる事象が報告されておりますが、現状認識をお聞かせください。(農林水産部長)
島根半島のシカ対策は平成11年から今日まで県と当該市町の施策展開と住民による自衛班の編成などで、住民の受忍限度の範囲で被害を防止している現状にあります。高齢化により、自衛にあたる住民も減少傾向にあり、シカの個体を適正管理し、持続的にその活用を図ることが今後の課題となっていますが、どのような取り組みをお考えになるのか、この際、知事のお考えをお聞かせください。(知事)
兵庫県の多加町ではシカの駆除を持続的に行うため、福祉就業とジビエを組み合わせたペットフードの取り組みを行っていると聞いており、全国的にも好事例との評価がありますが、ご認識をお聞かせ下さい。(農林水産部長)
また、宍道湖西岸地域の農地整備が本格化してきていますが、今後は、稲作中心の農業を多目的な作物に転換する取り組みが大規模に進んできます。そこで、問題になるのが、秋から春にかけての渡り鳥の存在です。一帯が、その名の通り、斐伊川の下流に位置する宍道湖に面した地域であり、ラムサール条約の登録地である宍道湖の野鳥対策と不可分と考えますが、どのようにお考えになるのか、知事のお考えをお聞かせください。(知事)

丸山達也知事答弁

島根半島の鹿の適正管理とその持続的な活用について

島根半島のニホンジカにつきましては、北山山地全体を鹿捕獲禁止区域としてその保護を図ってまいりましたけれども、農林業の被害が顕著になったことを踏まえまして、平成15年に生息頭数を180頭まで減らす目標を設定しまして鹿の捕獲や被害防止対策を推進してまいりました。その結果、北山山地の鹿の生息頭数につきましては、平成18年度の約2,500頭がピークでありましたけれども、令和2年度の生息頭数調査では約700頭程度にまで減少いたしております。目標の180頭にはまだ達しておりませんけれども、農林被害額につきましては、平成11年度の4,300万円がピークでございましたけれども、令和2年度には25万8,000円まで減少したところであります。
鹿の被害を現状程度に抑えるためには引き続き捕獲を継続する必要がございますが、今後最新の生息頭数の調査結果なども踏まえつつ、北山山地における鹿の個体数管理の在り方について検証を行ってまいりたいと考えておるとこでございます。
また、今後も捕獲を継続していくためには、議員の御指摘のとおり、捕獲個体のジビエ活用法を増やすことが有効でありますが、現在加工処理施設に捕獲された鹿が十分に集まらないなどの課題があるというふうに伺っております。
出雲北山山地で捕獲される鹿につきましても、まずは出雲市内の加工処理施設において受入れ基準の明確化や捕獲個体の集荷体制を具体的に検討するように促してまいります。その上で基準などが決まれば、出雲市とともに捕獲者への情報提供を行っていきたいというふうに考えております。

丸山達也知事答弁

宍道湖西岸地域の農地整備に伴う野鳥対策について

宍道湖西岸地域の農地整備につきましては、現在、圃場整備が始まっているところでございますけれども、整備後の営農に向けて、ブロッコリーや小豆などの品目の試験栽培が行われているとこであります。この地域には冬に宍道湖や周辺の河川から水鳥が飛来しますが、現在作付されている品目の多くは冬までに収穫が終わることや、これまでの経験から被害を受けにくい場所で栽培を行うなどしていただいていることから、現状では目立った被害は報告されていないと聞いてるとこでございます。しかしながら、今後の栽培品目によりましては野鳥による被害が想定されることから、こういった被害が最小限となるよう、作付品目の選定や作付体系また作付場所の調整について県としても指導助言をしていきたいというふうに考えておるとこでございます。

西村秀樹農林水産部長答弁

中国山地のニホンジカの現状認識について

中国山地のニホンジカは現在のところ主に邑南町の広島県境から侵入し、そこから東西に拡散して広範囲に分布しているという状況であります。令和2年度末の推定生息頭数は、中央値で2,990頭。これを生息密度という観点で見ますと、県内の中国山地1平方キロメートル当たり0.6頭程度という低密度で生息している状況ではありますが、生息頭数自体は5年前の1,736頭から1,200頭余り増加しております。しかも繁殖力が強いため、今後さらに生息頭数が増加することが予想されるため、早期に捕獲対策を講じることが必要ですが、低密度で広範囲に生息している鹿を効率的に捕獲する手法が確立されていないこと、県内の中国山地は長期間鹿がほとんど生息していなかったため、鹿専門のハンターが少ないことなどが課題となっております。
県としましては、こうした課題に対応するため、生息が低密度の環境下で効果的に捕獲できる手法を実証し普及していくとともに、県境に接する市町において鹿専門のハンターの確保、組織化といった捕獲体制づくりを支援することにより、中国山地における鹿の捕獲を推進してまいります。

西村秀樹農林水産部長答弁

ジビエの取組の先進事例について

議員から御紹介のありました兵庫県多可町の事例は、町内で捕獲された鹿のペットフード事業に取り組むことで、捕獲個体の処理費用の軽減だけではなく、障がい者雇用の創出や休止中であった給食センターの有効活用などを図られたものと伺っております。ペットフード利用の取組は、食肉用に向かない部位でも商品化が可能であり、コスト削減効果が期待できるため、興味深い取組と考えております。県内でも鹿の捕獲個体を利用したペットフード製造を検討している事業者があることから、まずは原材料の確保、製造技術や販路など、事業化に向けた課題を検討するよう助言してまいります。

過去の投稿

園山繁の活動日誌