県議会だより

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令和4年5月定例県議会一般質問(3)

教育職の働き方改革(教員の確保)について

働き方改革は、安倍内閣が掲げた「一億総活躍社会」に向けた取り組みの総称で、厚生労働省の説明では、「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革で、その目的は、働き手を増加させ、出生率と労働生産性の向上を目指すものとされています。具体的には、2018年6月に「働き方改革法案」が成立し、2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されてきました。
その主なるものは、「時間外労働の上限規制の導入」
「勤務間インターバル制度の導入促進」「年5日の年次有給休暇の取得」「月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ」「労働時間の客観的な把握」「『フレックスタイム制』の清算期間延長」「高度プロフェッショナル制度の導入」
「産業医・産業保健機能の強化」「不合理な待遇差の禁止」「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」
「行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備」の11項目となっています。
働き方改革の背景には、「少子高齢化による生産年齢人口の減少」と「育児や介護との両立など、働き方ニーズの多様化」の2つの社会的要因がありますが、一般的には、「長時間労働の是正」「正規・非正規の格差解消」「女性と高齢者の就労促進」の3つが働き方改革の象徴で、施行後に新型コロナウイルスの流行が始まったこともあって、多くの民間企業では、業務効率の改善や生産性向上のため、従来の働き方を見直す必要に迫られたため、ワークフローシステムの導入が図られ、社内文書や申請手続きの電子化、フレックスタイム制や在宅勤務、テレワークの普及、拡大が飛躍的に進んだように感じます。
民間は好むと好まざるにかかわらず、法律の施行や社会経済の状況もあって、働き方改革に取り組んでいますが、公務員、とりわけ教職員の働き方改革は一向に進んでいるとは言い難いように感じますので、今回は教員の働き方改革に絞ってお尋ねしたいと思います。
小生は、平成20年の6月議会で、団塊の世代の教員が大量退職して大量の教員採用が必要となることから、医者や看護師などと同様に教員不足の事態が予測されるので、島根で教員を志す若者に対して、奨学金制度の拡充や弁済支援など積極的な支援を講じてはどうかと質したことがあり、また、同時に、次代を担う島根県の人材育成の役割を担う優秀な教員を育成、確保するため、島根大学教育学部と緊密に連携して島根の教育レベルの向上にともに汗をかくべきだとも付言しましたが、その時は、「教職員の採用試験の応募は7倍から15倍で、教員不足が生ずるような状況ではない」とし、「当面は、子供たちを教育できる立派な教師を育成するために島根大学の教員養成課程との共同研究を深める」と答弁された記憶があります。
15年が経過し、現状を見ますと県内の学校では、教員の不足が指摘され、教科によっては指導する教師が不足し、複数校を掛け持ちせざるを得ない状況が生じているとの声を聴きます。採用数が漸増する中で、採用試験の受験者は減少し、優秀な教員の確保が困難になってきているのではないかと危惧をしています。
教員は学校数や児童・生徒数で定数が決められていますが、学校の統廃合や児童・生徒数の減少、団塊世代の退職などから、採用数にバラツキがあり、30代後半から40代後半のいわゆる中堅教員が少なく、比較的、採用10年未満の20代から30代前半の教員数が多いという勤務者の年齢構成のアンバランスがあります。若年教員の結婚・出産のための産休・育休や病気のための長期休業も少なくないとのことで、人員不足を補充するための非正規教員の確保は容易でないと聞いています。
学校現場は、いま、再雇用の退職教員や常勤講師、臨時的任用教員など非正規教員の皆さんによって支えられていると言っても過言ではないと聞きますが。はじめに、(1)教員の充足状況および正規職員と臨時的任用教職員、産休育休代替教職員、再任用教職員、非常勤講師の配置(勤務)状況および待遇,賞与などについてお尋ねします。(教育長)

学校現場の人員確保について、当面は、退職者の再任用で切り抜けるとしても、優秀な教員の確保は島根県の将来にとって何よりも重要なことであり、理数教育のみならず、教員一般の養成に本腰を入れなければならないと考えますが、(2)教育職に対する奨学金制度の創設や現制度の拡充、弁済支援などの必要はありませんか。(教育長)
(3)また、島根大学教育学部および島根県立大学の教員養成セクションとの協調を深める必要はありませんか。(教育長)
少子化と市街地とその周辺地域に人口が集中するいわゆる都市化の進行によって、県内市町村の多くで、小中学校の統廃合は大きく進んでいますが、県立学校の再編は先送りされたままとなっています。県内の人口の減少は続いており、今後の学校のありかたや教職員の採用、配置、いままで当たり前とされてきた東西、南北の勤務交流(へき地や離島勤務の義務化)などを根本的に検討する必要が生じていますが、(4)教員採用についての中・長期的な方針策定の必要性についてお尋ねします。(教育長)

教員は新規採用されると初任者研修が課され、指導法や教科研究など現場で教育実践に必要となる事項について相当な時間をもって指導されますが、(5)臨時教員や任期付きの常勤講師に対する研修機会の付与は限定的と聞いていますが、本県の取り組み状況についてお聞かせください。また、教員免許の更新制度が廃止されましたが、教育職に対する研修機会をどのようにお考えになるのかお尋ねします。(教育長)

野津建二教育長答弁

教員の充足状況等について

今年公表の学校基本調査の基となる5月1日現在、学校に配置している常勤の教員の数は、臨時的任用教員も含め、小学校2,966人、中学校1,764人、高等学校1,496人、特別支援学校911人で、全校種合わせて7,137人であります。
この外数として、常勤教員が配置できずに非常勤講師で代替している数が、同様に73人、19人、4人で、特別支援学校はございません。全校種合わせて96人となっております。
また、非常勤講師等での代替もできていない欠員の数が、産休、育休等代替教員の欠員も含め、同様に20人、7人、5人、2人で、全校種合わせ34人となっております。この欠員については、直近の6月1日現在では29人となっております。
なお、4月1日現在の欠員として毎年公表している数値は教諭と常勤講師を対象としており、今年度は別に栄養教諭の欠員が1人ございますので、例年の公表数値のレベルで申し上げますと、5月1日現在が33人、6月1日現在が28人となっております。
また、常勤の教員を任用別に分類いたしますと、再任を除く正規教員は6,077人、再任用が371人、臨時的任用教員が689人となっています。
産休、育休等の代替の常勤教諭については、校種別で同様に、93人、28人、20人、33人で合わせて174人が配置されています。
授業を担う非常勤講師には複数校で指導する者もおりますので、延べ人数で申し上げますと、同様に286人、208人、329人、86人で合わせて909人を配置しており、そのうち授業を担うものが697人、指導を補助する者が211人、養護の業務をする者が1人となっています。非常勤講師の勤務時間は、週当たりで小中学校では25時間が最も多く、県立学校では12時間以内となっています。
給与を含む待遇につきましては、条例に基づいて対応しております。具体的には、常勤の教員では、再任用教員については扶養手当や住居手当などが支給されないという一部異なる点がありますが、それ以外については、正規教員も臨時的任用教員も大きく異なる点はございません。
非常勤講師については、報酬、通勤手当相当額の報酬、期末手当を支払っています。報酬は、1時間につき、授業を担う者及び養護の業務を行う者は2,630円、指導を補助する者は1,840円であり、勤務時間には授業準備や教材研究、評価の時間も含まれております。休暇については、勤務者の勤務日数や時間に応じて年次有給休暇のほか、有給で夏季休暇、忌引、結婚などに伴う各種休暇があります

野津建二教育長答弁

教員確保のための奨学金制度について

平成15年以前の日本育英会による奨学金には、教員等になった場合に返還が免除される仕組みがあり、優秀な人材を確保する上で一定の効果があったと考えております。16年の日本学生支援機構の設立の際、それまでの奨学金制度の見直しがあり、当時は教員が充足してきている段階にあったため、奨学金返還免除の果たす役割が薄れてきたことから返還免除の仕組みが廃止されたという経緯があります。その後、教員志望者の減少等により教員不足が非常に深刻化し、本県ではここ数年、年度当初から欠員が生じる状況が続いております。
安定的に教員を確保するためには、議員御指摘のとおり、新卒者を中心とした若手の教員志望者を増やしていくことが不可欠であります。県教育委員会や県内大学において教員志望者を増やすために、後ほどお答えいたしますとおり、様々な取組を進めておりますが、子どもたちの教育の充実のためには、優秀な教員を確保できるかどうかが非常に重要であり、現在その対策を総合的に検討しているところでございます。

野津建二教育長答弁

大学の教員養成セクションとの協調について

島根大学教育学部では、現職教員に対する研修と教員養成を共に充実させるため、昨年度、山陰教員研修センターを附属義務教育学校の敷地内に設置されており、幼児、児童生徒と共に学ぶという教員研修センターとしての機能を効果的に発揮した研修プログラムが計画、実施されております。
近年、教員不足が深刻化している中で、質の高い教員の養成及び現職教員の資質、能力向上を図るため、このセンターの活用を含めて、県教育委員会と島根大学が密接に連携して取組を進めていくことがこれまで以上に重要になってまいります。
ここ数年の傾向として、島根大学教育学では、入学時には9割程度の学生が教員を志望しておりますが、第2学年修了時には半数程度に低下し、最終的に教員になる学生も半数程度と聞いております。学生が早いうちから教職の魅力を実感できるよう、学校職場体験、インターンシップの実施や、現職教員と大学生の交流の場の設定など、島根大学と連携して積極的に取組を進めていきたいと考えております。
また、県立大学の松江キャンパスにおきましても、教員養成課程ができ、特に人材が不足する小学校及び特別支援学校の教員養成を担っていただいております。第1期生である昨年度の卒業生のうち6名が今年度から教員として勤務しており、連携を強化していきたいと考えております。
それぞれの大学とは包括的な連携協定を結んでおり、それをベースに、島根大学、県立大学、県教育委員会の三者が、認識を共有しつつ一体的に取組を進めていけるよう検討してまいります。

野津建二教育長答弁

中長期的な教員採用の方針について

安定的に教員確保を図るためには、退職者数の見通しを踏まえながら計画的に教員採用を進めていくことが必要であります。
本県の教員不足の背景には、主に次の4つのものがございます。
1つには、近年大量退職が続いていることでございます。現時点の50歳代の教員が40%を占めることから、この傾向は当分続いてまいります。退職された方にあっては、教育に関わる気持ちはあるものの、担任を持ったり、多くの授業を受け持つことに負担を感じ、再任用を希望されない方も多くおられます。これに対しては、従来の教壇に立つ仕事以外の多様な働き方を提供することが必要です。今年度から、主に中山間地域、離島において管理職として再任用する制度をはじめ、21人を再任用いたしました。また、近年では、事務局の指導主事、社会教育主事として再任用している例もあります。引き続き、多様な働き方について検討してまいります。
2つ目に、現場のリーダーとなる30歳代半ばから40歳代の教員が30%と少ないことがあります。これに対しては、教員経験者で今は現場から離れている方、他県で現職で働いている方、県内で講師として働いている方などの採用を進めております。今年の一般選考試験では、経験者への加点や試験の一部免除等を拡充いたしました。また、大型連休中に特別選考試験を実施し、正規教員として5年以上の経験を持つ人に面接のみの試験をしたところ、24人の出願があり、17人を名簿登載いたしました、この内訳は、Uターンが11人、Iターンが5人、県内在住が1人となっており、今後も工夫して実施していきたいと考えています。
3つ目には、議員御指摘のとおり、大学新卒者の教員志望者が少ないことであり、これに対しては先ほどお答えしたとおりでございます。
4つ目には、教員に代わって授業を行う常勤講師の成り手が少ないことであります。これに対しては、県外で教員を退職された方のUターン、Iターンの促進に取り組みます。移住の際の不安材料の一つである仕事については確保されており、島根での子どもたちとの新生活が始まるをテーマに、島根の子どもたちとの新鮮な関わりをアピールいたします。

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