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ヒトの体細胞は50回ほど分裂すると老化して死滅すると言われています。遺伝子の構造がヒトとわずか1.5%の違いしかないサルの寿命は50歳程度で、オス、メスともに死ぬまで生殖能力があり、老化が始まるとあっという間に死を迎えるそうです。しかるにヒトは、老化が始まってもずっと生きているのは、社会を構成して『互助』が進んできたからだと言う進化論の学説があります。
現代は人生100年時代を迎えたと言われますが、IT社会に生まれ育った世代は、友達と遊ぶことや女性とデートをしたり、趣味に興じたりすることを「時間のムダ」とする者が少なくないとのことで、それが、少子化の一因だとする人もあり、識者は効率や利便性重視は寿命を縮める可能性があると警告を鳴らしています。
コロナ禍は私たちにいろいろなことを考えさせてきました。いのちは大事ですが、必ずなくなるものです。私たちは生まれてきた瞬間からから死に向かって生きており、死から逃れることはできません。「なくなるものだからこそ大事にしなければならない」とする意見に反対する人はいないと思ますが、「感染症の発生・まん延によって死ななくてもよい人が亡くなる」とする言い方よりも、「人は必ず亡くなる」と言う前提に立つと「いのちが短くなる」とする方が正しいのかも知れません。
小生の義母はがんを宣告されましたが、手術や抗がん剤、放射線の照射などは選択せず、入院もしませんでした。3年余を自宅で過ごし、その間、在宅治療と在宅介護をお願いし、訪問医療と看護、介護関係者の皆さんの手厚いお世話のおかげで、コロナ禍中の一昨年の秋、自宅で家族や大勢の子、孫たちに看取られて91才で安らかに亡くなりました。
義母がどう思って亡くなったかは分かりませんが、小生は最高に幸せな臨終・最後だったと思っています。もちろん、病気になった時には、治療をして完治する見込みがあれば、徹底治療すべきであり、生産現場で働く現役世代の人であれば、なおさらですが、高齢者となり、残りの時間を意識する人たちは、考えるべきことがあるように思います。
はじめに、コロナ禍での問題点についてお尋ねします。
過日の質疑に、行動制限の緩和が提起されましたが、高齢者が多い島根県にあっては、ウイルス感染が拡大すれば、抵抗力が弱く、治療を要する高齢者の治療で医療現場が逼迫する可能性が強いため、高齢者はともかく、現役世代の人たちが「なくさなくてもよい命をウイルス感染で落とす可能性があるから、他県よりも強い行動制限をお願いする」という説明が必要だったと思います。
島根県の行動制限については、ある面、知事の死生観からくる選択だと感じています。小生は自分が高齢者になったので、若い時には全く意識しなかった『死』や自分に与えられた残りの時間を意識するようになってきました。もちろん、小生は欲張りですから、1分1秒でも長く生きていたいので、「その時はいつでも良い」と死を受け入れたわけでは決してありませんが、高齢者を生かすために医療が逼迫したり社会経済が混乱したりすることは必ずしも賛成ではなく、「なくなる」ということを意識して、その時が来れば、若い人に譲るという選択を受け入れることはできると思っています。
知事は長野県の飯田市で副市長をされた履歴があると聞きました。飯田地域は、臨終にあっても通夜が終わって納棺するまでは、「お悔やみ」は受けずに「お見舞」として受ける特異な地域だと聞いたことがあります。
そうした行為には、隣人や肉親の『死』を受け入れるために一定の時間が必要とする意があると思いますし、それだけ地域のつながりが強い地域なのだと感じますが、この地域での生活が、あるいは強くて優しい一面を見せる丸山知事の為政に影響があるのかもしれないと思うのですが、
この際、(1)知事の死生観をお聞かせ願いたいと思います。(知事)
医療水準などが必ずしもトップとは言えない島根県や沖縄県などの平均寿命が長いのは、コミュニティというか社会的な互助が他地域よりも深いからではないかとも考えるのですが、コロナ禍の継続によって、島根県の最大の強みである地域コミュニティが危機に瀕しており、住民の『つながり』をどう確保するかが大きな問題だと考えます。
田舎(農山漁村)では、『茶飲み』とする住民の相互訪問や共同作業がコミュニティの原点ですが、ほとんどの地域でそれが中断し、デイサービスや病院通いの高齢者はいくらかのつながりがあっても、健常な人々のつながりはほとんどなくなってきているのです。
県職員に島根県の魅力を尋ねたところ、「人とのつながり」「自然」「子育て環境」「歴史・文化」などがあがり、中でも「つながり」をあげた人が圧倒的に多かったのですが、長引くコロナ禍はこれを危機に陥しめています。そこで、知事にお尋ねしますが、(2)島根県のコミュニティの源泉となる住民のつながり確保の方策をどう図るおつもりですか。(知事)
地域に暮らす年寄りの楽しみは「茶飲み」と称する相互訪問であり、それは日々の安否確認であり、喜怒哀楽をともにする言わば互助の原点でもあります。しかし、コロナでこうした「対面行為」が「遠慮すべきこと」とされているのです。
スマホの普及で若年世代のコミュニケーションの方法が対面や通話いわゆるアナログからSNSやYouTube、LINEなど多様な方法デジタルに変化していますが、多くの高齢者はその外側にいます。若い人が在宅の時には、孫やひ孫と話をするし、家族でチャットも楽しんでいますが、昼間に一人でいるときにはそうしたことはできず、隣の人たちとの会話も電話でしか通話でしかできないと言います。
また、多くの地域では今もって通信環境が十分でないため、ITの恩恵にあずかれない高齢者は少なくありません。コロナ禍で期間が長くなるほど孤独感・寂寥感が募ると言います。
おばあさん、知事さんが原発の再稼働を決断されたので、中国電力が30km圏内の避難が必要な地域にはスマホやWiFiの環境を整えてくれますよと言っておきました。
コロナ対策で医療や介護、子育て、教育、経済などの様々な対策が進められてきましたが、コミュニティの維持存続と言う面を考える必要があると思います。県はデジタル田園構想に呼応して所要の組織を立ち上げて、これに取り組む姿勢を見せていますが、(3)コロナ禍においては、スマホの通信環境を調査し、県内どこでもスマホの使用ができる環境整備を急ぐべきだと思いますが、いかがでしょうか。(知事)
│掲載日:2022年06月06日│
人生観と死生観の違いが何かと考えますと、死を意識して人生をどう捉えるかということが死生観だと考えれば、どうしても死というのは、そう一般的も日常にないものですから、一般論としては、それぞれの方が身近な方々の死にどういう形でここを経験したかということによって変わってくるもんじゃないかというふうに思ってるとこでございます。
先ほど御紹介いただきました、私が副市長を務めました飯田市の風習について御紹介いただいたとこでございます。私自身は、こういった場に直接伺ったことはございませんけども、やはり最後の人との別れと、その方との別れというものを、やはり時間を取ってきちんと設けなきゃいけないという意識の表れ、そういう結びつきの強さが影響していることではないかというふうに思ってるとこでございます。
身近な人の死や自分が強い思いを持っていた方の亡くなり方というものを経験して、そこから自分のこれまでの生き方とかこれからの生き方を見詰め直していくということが、いろんな身近な方々などの死に当たって経験することだというふうに思っております。
私自身は、父が50代、60になる前に亡くなったことや、高校1年生のときに中学時代の同級生が病気で亡くなったりという、幾つかの経験はございますけども、やはりそれぞれいろんな経験の中でどういうふうに捉えるかということだと思いますけれども、やはり死を、自分の生きていくということの限界が必ず訪れて、その限られた生の中で自分が何ができるかということを、毎日意識的に考えていくということは難しいかもしれませんけども、そういう意識を根底に置いて自分の人生を豊かに充実させていくということが大事なのではないかというふうに考えておるとこでございます。
島根の豊かな暮らしのベースとなっております地域のつながり、住民相互のつながりを大事にしていくべきだという認識については、議員と同じ認識でございます。そして、新型コロナウイルス感染症の終息がなかなか迎えられないと、長期化がそういった地域コミュニティーのいろんな活動に大きな影響、マイナスの影響を与えているということも同一の認識でございます。
したがいまして、こういった状況がもう既にこれだけ長く続いているということ、それからさらに続きかねないということについては、こういった地域コミュニティーのベースとなります機能を希薄にしたり弱めたりしかねない、憂慮すべき状況であるというふうに認識してるとこでございます。
そのために、住み慣れた地域で身近な方々、周囲の方々、御家族等と生き生きと暮らしていただくための基盤づくりとしての小さな拠点づくりや、この島根に愛着と誇りを持ち、この地域を将来にわたって支えたいと思う人たちを育む人づくりなどの取組を進めていきたいというふうに考えているとこでございます。こういった習いの対応ということについては、一番いいのは、感染症自体を収束させていくということ、またはその感染の状況によってできるだけ様々な制約を合理的な範囲で外していくということと併せて取り組んでいきたいというように考えているとこでございます。
県内の携帯電話不感地域は、昨年度末で36地域、世帯にして89世帯、人数にして219人となってるとこでございます。
この不感地域解消につきましては、基本的には携帯電話事業者が基地局を整備して対応しておりますけれども、市町村におきましても、この事業者に働きかけまして、これ不採算となります、不採算地域でありますので、この事業者に働きかけて、国の国庫補助事業も活用するなど、早期解消に取り組まれているとこでございます。
政府のICTインフラ地域展開マスタープランにおきましては、この基地局整備につきまして、居住エリアの不感地域を令和5年度末までに全て解消する、そういう目標とされておりまして、県におきましても、昨年度、市町村と共同で、各携帯電話事業者への要望を実施したとこでございます。
引き続き、市町村と協力して、携帯電話事業者に着実な進捗を求めるとともに、早期の解消に向けて直接働きかけていきたいと考えているとこでございます。
様々なICT、デジタル関係の国家戦略等を含めて、そのベースとなりますのはこういった通信環境でございますので、そういった基盤整備について様々な政策、施策展開の前提として、政府、関連事業者一体となって取り組んでもらうよう求めていきたいというように考えておるとこでございます。