県議会だより

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平成17年9月定例議会一般質問(2)

文化財等の管理について

9月2日の重要文化財を含む14点の鰐淵寺の文化財盗難というニュースは私を驚愕させましたが、「ついにやられたか」とも思いました。貴重な文化財の盗難に怒りがこみ上げますが、まず、知事の所感を求めます。

昨年、加納美術館での展示・収蔵品盗難が報じられました。このときは犯人が逮捕され、盗難品が返還されたと聞いていますが、この教訓は生かされませんでした。この折、県内の美術品、文化財の展示・収蔵施設の一斉点検や防犯体制の啓発等がされていればと悔いが残ります。鰐淵寺の宝物収蔵庫は立派な建物ではありますが無人で、住職夫妻がお住まいの庫裡からは離れており、今から考えれば盗難には極めて弱いものだったと思います。わけても、鰐淵は数年前に駐在所が閉鎖され、本年4月には平田署が出雲警察署に統合されました。警察には「統合になったからやられた」と言われないようその威信に懸けても犯人検挙をお願いしたいと思います。 しかし、どんなに貴重な文化財でもその所有、維持・管理は所有者の責任となっており、国、県、市町村の指定の別によって補習等の支援があるだけだと聞いています。そこで教育長にお尋ねいたします。 現在、県内の文化財の管理状況についてはどのようになっておりますでしょうか。 また、文化財管理に対する支援について今後の防犯啓発、体制整備についてどのようにお考えになっておりますか、お示しいただきたいと思います。
本年6月、河下港の臨港道路(進入路)整備事業に伴い、郷土史家から計画地内に旧川下村東西台場址があるとの指摘がありました。島根県出雲土木建築事務所の見解では、出雲市に対し、保存が必要な文化財であれば計画変更するとのことでありました。7月初旬から、出雲市によって調査が行われた結果、ほぼ江戸時代末期(文久三年)に築かれた原型をとどめた砲台址(台場)と判明しました。松江藩の文献と現存する砲台址が一致するきわめて貴重な文化財だとのことですが、地元の郷土史家たちはずいぶん前から台場址の所在を行政に進言していたようであります。新聞報道では、出雲市では市の文化財として保存したいとのことですが、東台場址は道路予定地、西台場址は下水道事業の処理場予定地とされていることもあり、詳細な調査と保存方法の検討は急務であります。鳥取県にある四つの台場址は全てが国の史跡に指定され、保存、整備されています。松江藩には25カ所の台場が築かれたとの記録がありますが、現存する台場址はほとんど残っておらず、河下台場址は極めて貴重で、十分に国の史跡に値するとの声もあります。そこで教育長にお尋ねいたしますが、河下台場址の歴史、学術的価値についてまた、県の関わり方についてお示しいただくとともに、現在、文化財保護、調査は原因者(開発行為者)の責任とされているため、ほとんどは何か事を起こすときにしか発見されず、時として闇に葬られることも多いように見受けられますが、もう少し計画的、積極的な関与が必要と思いますがいかがでしょうか。

広沢教育長答弁

文化財の管理について

現在県内には五五九件の国指定及び県指定の文化財が存在しており、 このうち、 絵画・彫刻・工芸品などの有形 (民俗) 文化財が二七〇件を占めている。これらの文化財は、文化財保護法で所有者に管理義務が課せられており、仏像などはそれぞれの地域で信仰の対象となっているものも多いことから、大部分は所有者自らが管理をしている状況で、約四十件の指定文化財を、県立博物館が寄託を受け、所有者に代わり管理をしている。有形文化財の所有者が管理するに当たり、専用の収蔵施設を備えている例は、十三施設・六十五件にとどまっている。管理に対する支援については、防火・防犯対策として、主に建造物を対象に、火災報知器や放水銃の設置及び維持管理、あるいは絵画・彫刻等を安全に保管するための、収蔵庫建設や、収蔵庫の防犯センサーの設置について、国・関係市町村と強調して助成を行っているとことろであり、近年は助成希望が防火対策に集中している。防犯対策については、毎年一月の文化財防火デーを中心に、消防・地元市町村と防火・防犯対策について巡回指導を実施しているほか、この度の事件直後に、市町村及び所有者に対し、文書による防犯の啓発を実施した。今後は、貴重な文化財を今後とも良好な環境で保存管理していくため、 新たに開館する古代出雲歴史博物館・美術館などの県機関への寄託や一定期間の預かりを奨励する。
河下台場跡は、出雲市河下町の十六島湾に面して残る、二ヵ所の大砲を設置していた陣地の遺構である。文献等によれば、松江藩は江戸時代後期に、海防のための台場を二十数ヵ所築造した記録があり、河下台場跡は、長さ六十mと三十m、高さ約二mの規模で、周囲の石垣とともに良好に残存している。文献、遺構共に良好に残る台場跡からは、幕末の松江藩の海防の様相を検証することが可能であり、学術的にも貴重な遺構であると認識している。県も、この遺構を保護していく立場で、地元出雲市が実施する調査に積極的に協力したい。
埋蔵文化財は、公共工事等によって初めて発見される場合があるが、県及び市町村では、計画的に遺跡の分布調査を実施し、その結果を「周知の遺跡」として公開しているほか、開発協議の場なども利用して、開発事業者に、文化財の保護と開発との調整に関し、理解と協力を求めている。

澄田知事答弁

鰐淵寺の文化財盗難について

この度発生した鰐淵寺の事件によって、数点の重要文化財をはじめとする大変貴重な歴史資料が紛失したことは、誠に残念であり、犯人に対し強い憤りを感じているところである。本県には、青銅器や多くの社寺、あるいは社寺に保存される美術品や史料といった、古代から近代に至る長い歴史の過程における、歴史・文化が豊富に継承されている。このような文化財は、学術的に貴重であるだけでなく、全県民の誇りであり、県のみならず国にとっても、かけがえのない財産である。こうした文化財が、盗難等により損なわれることがないよう、より一層適切な保存・管理を図っていく必要があると痛感しており、美術館や新しくできる古代出雲歴史博物館において、所有者の依頼による管理を行うことも有効な方法であり、積極的に進めて参りたいと考えている。今回の事件が一日も早く解決し、貴重な文化財が無事に帰ってくることをひたすら願っている。

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