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平成30年度から幼稚園やこども園、保育所の指導のあり方を規定した幼稚園教育要領、こども園教育・保育要領、保育所保育指針が改定されます。
その主たる内容は幼児教育の開始年齢を大幅に引き下げる(早期に)こととされ、幼、小の連携をより強化することと聞いております。
しかし、島根県教育委員会の組織には「幼児教育」の文字はなく、教育要領改訂にかかわるセミナーや講習などの取り組みはアナウンスされていません。8月に教育センターで幼小の連携講習がされ、ビッグハート出雲で教育要領に関わる研修が開催されたようですが、教育委員会のホームページ上での周知はなく、保育所からの参加は7名、こども園が9名に止まったとのことでした。
県内の保育関係者からは「保協や私保連の保育指針の改定講習が満杯で受講できないが、何とかならないか」との声を聞きますが、せっかくの機会が生かされておらず残念です。保育所を所管する健康福祉部も保育指針の改定に関する取り組みは遅れており、10月に県内で2カ所の講習が計画されているとのことですが、希薄と言わざるを得ません。
私は、必ずしも国の方針が適切で、望ましいとは思いませんが、現状では、県内施設で幼、小の連携を密にすることはかなわず、幼児教育の開始年齢の引き下げなど、国が求める幼児教育や保育の変更に対する認知は遅延する恐れが強く、識者からは、隣県に比べて幼・小の連携が微弱な状況が固定化すると心配されています。
「名は体を表す」と言いますが島根県教育委員会の組織には「幼児教育」と称する担当も部署も置かれていません。これは「幼児教育は市町村任せ」というスタンスを如実に表したものです。待機児童がある保育所と定員を大幅に下回っている幼稚園の状況は、とても無関心ではいられないはずですが、今後もこのスタンスを継続するのかお尋ねします。(教育長)
保育士や幼稚園教諭の免許、資格所有者はほとんどが両方を取得しておりますが、現在、幼稚園や保育所で職についていない者は言うにおよばず、在職している者であっても、改定以前のカテゴリーを前提とした教育を受けた者がほとんどで、再教育の必要がありますが、なかなかその機会は無く、また、あってもその情報は届かないことが圧倒的に多いと思います。
今後、保育指針と幼稚園教育要領などの改定要旨や必要となる対応について(県内の保育所、幼稚園、こども園に対して内容を周知・徹底させるために)「子育て」「保育」「幼児教育」という分野は所管を超えた共通理解、協調が必要と考えますが、県としてどのような対処(研修の実施や支援、組織的な対応など)をお考えになりますのかお尋ねします。(教育長・健康福祉部長)
また、島根県教育委員会は幼・小・中・高・大の連携についてどうとらえ今後、どのような取り組みと対応を行っていく考えかお尋ねします。(教育長)
│掲載日:2017年09月19日│
議員御指摘のとおり、島根県教育委員会には幼児教育を標榜する組織も専任教員の配置もないのが実態であり、これまで長きにわたってそのような体制を続けてきました。現状では、教育指導課の指導主事1名が、その者の分掌事務8本の一つとして、就学前教育に関することを担当しております。
このような状況の中、平成30年度に、幼稚園教育要領、保育所保育指針などの実施を控えており、幼児教育に対する支援の重要性はますます大きくなっております。
質の高い幼児教育を受けた子どもは、その後の学力の向上などが認められる、すなわち幼稚園、保育所などでよく使われる後伸びする力は、学術研究においても確認されております。また、幼児教育は学びの連続性の出発点という意味でも重要であります。幼児教育の中では、遊び込める子は学び込めると言われ、幼児教育で培われた学びの芽生えは、小学校以降の自覚的な学びへとつながっていくとされます。幼児教育で行われる総合的で主体的な活動としての遊びの充実を通して、主体的に課題を見つけ、さまざまな他者と競合しながら、定まった答えのない課題にも粘り強く向かっていく力を育成するための端緒とすることも期待できるわけであります。
このような幼児教育の充実を図るためには、保育者の力量の向上が必須であり、また幼児教育の現場からも、幼稚園、保育所などの実態に応じた研修の支援が求められておりますが、その要望に十分に応えられておりません。
このように、幼児教育の重要性については県教育委員会としても認識しており、担うべき責任と現状の体制との間に大きな乖離が生じていることについて苦慮しております。このため、幼児教育の体制整備のあり方も含めた研究が必要と考えており、健康福祉部とともに、現場のニーズや他県の状況についての情報収集を進めているところであります。
新しい幼稚園教育要領、保育所保育指針などでは、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を始めとして、満3歳以上の幼児の教育の狙いや内容の統一が図られており、これは全ての幼児教育、保育施設での質の高い教育、保育の提供を考えてのことであります。
幼稚園教育要領の改訂の周知に係る研修としては次のとおり実施しております。公立幼稚園対象の集合型研修を8月24日に実施しました。また、公立幼稚園設置市や幼児教育関係団体からの要請により、指導主事を派遣して研修を支援しております。研修には保育士、保育教諭も参加しております。
以上のような研修機会を提供しておりますが、先ほど述べた今後の研究の一環として、さらなる研修支援のあり方も考えてみる必要があると考えております。
保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領につきましては、ゼロから2歳児を中心とした保育所利用児童数の増加や子育て世帯における子育ての負担や孤立感の高まりなどの社会情勢の変化を踏まえ改訂され、平成30年4月1日から新たな指針、要領が適用されます。このたびの改訂では、乳児1歳以上3歳未満児の保育に関する項目を、3歳以上児とは別に設け、内容を充実するでありますとか、保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ、そして保護者や家庭、地域と連携した子育て支援の必要性などの方向性が明確に打ち出されました。
県では、この改正内容の周知を図るため、今年度、県の東部、西部の2カ所で説明会を開催する予定ですが、この7月に国が主催した説明会を受講したベテラン保育士が、現場に即した実践的な講義を行います。この説明会には、幼稚園に対しても参加を呼びかけています。
こうした幼児教育に関する研修については、これまでも教育委員会が主催する研修を市町村を通じて保育所等に周知するなど、連携を図ってまいりましたが、今後とも、保育所を所管する健康福祉部、幼稚園を所管する教育委員会、総務部が連携し、研修の相互参加等を進めてまいります。
保育所保育指針は、現場の保育所や保育士にとって保育のよりどころとなるものであり、保育所が一定の質を保ち、向上を図る上で大変貴重な指針です。この趣旨、内容が保育所や幼稚園など、幼児教育の関係者に十分に理解され、実践されるよう周知していく必要があります。県では今後、関係部局と連携し、保育現場等の御意見を伺いながら、新たに専門家による研修等の実施を検討してまいります。以上でございます。
多様な個性のある子ども一人一人と丁寧に向き合い、細やかな配慮のもとで一人一人の力を最大限伸ばしていくことが、島根らしい教育になると考えております。そのためにも、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校などが校種を超えて連携し、子ども一人一人にとって最適な学びの環境を確実にバトンタッチしていくことが大切であります。こうした学びの連続性を機能させるためには、まず連続性の出発点である幼児教育を充実し、小学校での学びに確実につなげていくことから始める必要がありますが、幼児教育についての担うべき責任と体制との間に大きな乖離が生じている本県の実態のもとでは、校種間の連携を進める上で基本的な部分に脆弱性を抱えているのではないかと思っております。したがいまして、先ほど述べました今後の研究に当たりましては、校種間の連携を進める上での最初のステップとなります幼児教育の重要性についてしっかり考えていきたいと思っております。以上であります。
教育長に尋ねます。来年から島根県立大学の保育科は4年制になるんです。平成20年の保育指針改訂により保育所で3歳以上の子どもに対する幼児教育の必要性が盛り込まれました。しかし、県内の保育現場で働いている保育士の約6割は、平成19年以前に資格を取った人達であり、県内の幼稚園、保育所で働いている保育士や幼稚園教諭のほとんど保育士と幼稚園教諭の両方の資格、免許を持っていますが、改訂後の教育は受けた人は4割です。今度の改訂は、幼稚園に2歳を受け入れする、保育所の幼児教育の開始年齢を1歳まで引き下げするとなれば、今までと全く違う視点や要素が必要です。県内で現場で働く人は4000人を越え、資格を持つ潜在者がが2,000人程度あり、わずか50人や100人を収容する会場で、しかも1年に1回や2回の講習で、質の高い幼児教育が提供できるでしょうか。そして、折角の県立大学の4年制移行を活かし、県立大と教育委員会、健康福祉部が相協調して、やる体制をつくるべきです。また、今は県内の幼稚園の定員充足率4割対して、保育所は待機児童がいる。例えば、幼稚園をこども園化すれば、待機児童はゼロとなり、現状の施設で定員が割れてしまうぐらいになるのです。今後の島根県の幼児教育をどうするのか。ゼロ歳から5歳までの子どもたちの受け入れをどうするのかの視点が欠けており、直ちに改善を要求します。
鴨木朗教育長答弁
幼児教育に対する支援、特に研修の充実など、急ぐ状況にあると、このようには認識しておりますが、今年度中にできるだけの対処はしたいと思いますが、体制強化をあわせて行わなければ、それ以上難しい課題も控えております。幼児教育の体制整備のあり方も含めた研究が必要と、先ほど答弁申し上げましたが、悠長に検討しているいとまのない重要な課題であると、このように認識しています。以上であります。