県議会だより

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11月定例県議会一般質問(2)

物価高騰対策について(その2)

物価対策に関わる4点目は、公共調達の物価スライドについてであります。

島根県は、例えば公共工事の場合、資材や人件費の上昇などによって請負代金が上がり、上昇分が1%を超えたものは申請に基づき改定される国(国交省)が基本的に定めているスライド条項を準拠されていると聞いていますが、通常、請負代金額の変更は、基準日における出来高部分に相応する請負代金額を基にして算出されるとのことですが、その要件に、『残工期が2ケ月以上』とする規定があり、工種によっては、工期末に機器納品や取り付けを行うものもあり、受注者の負担とされている1%条項と残工期規定を見直しする必要はないのか、今後、入札から納入まで時間を要する場合、諸物価高騰で公共工事のみならず業務や物品の購入など公共調達全般においてどのような対応わされるのか総務部長にお尋ねします。

5点目は電気料金についてであります。

中国電力は発電にかかる火力発電の割合が高く、化石燃料の高騰で採算が悪化し、令和5年4月からの基本料金値上げを発表し、監督官庁に申請したようですが、電気料金は、燃料調整額や再エネ負担の増加によって、ここ2年余りの間にすでに30~40%の値上げとなっており、県内家庭のみならず事業体の光熱費負担は驚くほど増大しています。

さきの意見聴取では、ほとんどの業界から電気代の高騰に対する懸念が示され、例えば、80人定員の特別養護老人ホームでは、(コロナによる24時間換気を義務付けられているため、空調管理が窓を開ける必要が生じて、以前は電気代が100万円/月であったものが、今年は170、180万円/月となり、介護施設全体のアンケートの集計では電気代が全体で158.3%増となっているとのことでした。ところで、今は平時ではありません。コロナ感染やウクライナ問題によって起こっている『言わば緊急非常事態』に近い状況であり、国家予算や自治体の予算も水膨れしている状況が、一時ならまだしも2年も3年も続いているのであります。エネルギーの確保には、原発の1日も早い『早期稼働が必要』で、施設が完成しているのに2号機の審査が終了するまで「待った」をかけている国の姿勢は、まさに『小田原評定』で、『国益』を欠いていると思います。

 また、わが県においても、カーボンニュートラルやSDGsの進展に資するバイオマスや風力、太陽光などに加え波力や地熱、廃棄物などの活用によるエネルギー開発に本腰を入れる時期だと考えますが、地域振興部長の見解をお尋ねします。

6点目は公共交通機関の確保などについてです。

バス、タクシー、鉄道、旅客船など県内の公共交通事業者は漸減する人口で厳しい経営環境にある中で、コロナ感染拡大で観光需要が激減し、また、燃油高騰等により、ほとんどが採算割れとなる事態であり、県は市町村とともに緊急支援を行っています。ただ、現状でも民間が経営する路線バスや鉄道、航路の運賃水準は行政支援が高じられていても大都市圏に比べるとかなり割高です。

例えば、出雲市佐田町の須佐(ゆかり館前)から出雲市駅まで、高校生が3か月通学定期を買うのに60,000円を超える料金が必要で、保護者からは悲鳴が上がっており、もう一段の値上げによって収益を改善することは難しく、事業体がコロナ後に立ち直るためには燃費効率の良い車両機器などの導入が必要ですが、車両や船体価格は大きく値上がりしており、導入が極めて難しい状況にあると聞いています。

地域住民の負担となる運賃の低廉化を考える上からも県内の交通事業者が安定的かつ継続的に運行をするには、県が主体となって国の支援や関係市町村と協調して一畑電車や隠岐汽船で執られている公設民営の『上下分離方式』を選択する以外にないと考えますが地域振興部長の見解をお尋ねします。

7点目は生活困窮者の相談体制とマンパワー確保についてです。

このところ、生活相談者が増加しているそうです。生活保護までには至らないが、生活の苦しさを訴える人が増え、無料食糧配布の利用者が回を追うごとに増加しているとのことで、生活困窮者自立支援事業及び生活福祉機器の貸付事業について、本年4月からの実績調査では、コロナ禍によって収入が減少してきた上に物価高騰が輪をかけて状況を悪くしており、冬季を迎える今後は暖房代が家計をさらに圧迫するのではないかとする不安が広がっているようです。

コロナの特例貸付は、島根県では3年弱で24億円が貸付され、うち約3割の市町村民税の非課税世帯は減免対象となるものの、多くは令和5年4月からの償還ができる状況にはなく、延長や更なる貸し付けが必要となる可能性が高く、相談を受ける体制の強化が必要だと感じており、支援のツールも絞られており、相談を受ける人、質の高いマンパワーを継続的に置くことが必要です。しかし、県社協や市町村社協で経験スキルを持った人やセーフティーネットを担う職員は財政上の担保がなく、必ずしも長期雇用となっていない現状にあります。島根県では、このほどセーフティーネット強化交付金をベースにして、人件費補助を来年度から県単で5か年間行うこととされたようですが、セーフティーネットの現場は非常にハードであり、財源的な担保を国に求めるべきであると考えますが、健康福祉部長のご見解をお尋ねします。

8点目は観光・飲食・運輸業の支援についてです。

コロナによって著しい影響を受けてきた観光、飲食、運輸の業界は、00融資や、雇用調整助成金、再起に向けた設備投資支援に加えプレミアム付きの需要喚起対策などによって急場を凌いできています。今年の秋口から、全国旅行割の効果もあってか、県内の観光地にはコロナ前と見間違うほどの賑わいが戻ってきていますが、ここにきて、燃油高騰や光熱費、食材、人件費の高騰が収益を圧縮させ、00融資などの返済を困難とさせるのではないかと懸念します。

幸い、県は制度融資の返済繰り延べや燃油高騰に伴う省エネ設備導入などの支援施策を用意されていますが、供給量を増減できる製造業などと異なり、観光・飲食・運輸業は過去の需要喪失をカバーできないため、借入金を返済するために求められる付加価値の向上は、経費の圧縮に求める必要があり、もう一段踏み込んだ事業を継続させるための手立てと収益を向上させる手立ての両面を意識した対策を求めますが、商工労働部長の見解をお尋ねします。

籏野敏行総務部長答弁

公共事業の物価スライド制度について

物価スライド制度は建設工事等におきまして、日本国内で急激なインフレ等が起きて契約金額が著しく不適当だとなった場合に、契約金額の変更を請求できるものです。物価スライド制度には、全体スライド、単品スライド、インフレスライドの3つがございます。全体スライドとは、工期が12か月を超える工事において、建設資材価格と労務単価等の変動に対応するもの、単品スライドとは、部分払いを行った部分を除いた残工事の特定の建設資材価格の急激な変動に対応するもの、インフレスライドとは、基準日以降の残工事上に対する建設資材価格と、労務単価等の急激な変動に対応するものとなっております。

いずれも、受注者と発注者が協議を行い、双方の了承の下、合理的な範囲を超える価格の変動を受注者と発注者で分担して負担する制度となっております。その中の1%条項は、受注者の必要な利益までは損なわれることがないように、自然災害等の不可抗力による損害と同様に規定したものであり、価格の変動が1%を超える金額を発注者が負担するものでございます。

残工期2か月の規定は、受注者と発注者の協議や、変更契約の手続に必要な期間を確保するためのものとなっております。このような考え方に基づく物価スライド制度につきましては、現時点で問題がないと考えておりますが、受注者及び発注者双方への説明会でも、この物価スライド制度についての周知を行っているところであり、県としてもその適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

 

藤井洋一地域振興部長答弁

多様なエネルギー開発について

県では再生可能エネルギー導入促進の取組として、民間事業者が事業化を検討する経費に対する支援や、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど幅広い電源や熱源を対象とした、家庭や民間事業者等の設備導入に対する支援を継続して行っております。

こうした中、エネルギー価格の高騰に伴う電気料金の高騰を受け、電気代の抑制や、電気、代替熱源の確保のため、住宅用太陽光発電や蓄電池等の再生可能エネルギーを活用した設備導入への需要が高まり、これらの設備導入費を助成する市町村からの要望に基づき、今年9月補正予算で追加の支援を行ったところであります。

再生可能エネルギーの導入は、カーボンニュートラルに資することはもとより、エネルギー自給率の向上や、エネルギー供給源の多様化、非常時のエネルギー確保による地域防災力の強化など、広範多岐にわたり効用があります。県内においても、昨年3月に民間事業者が海士町で波力発電の実証実験を行い、現在その際のデータを基に試作機を製作されているとのことです。

また、地熱については、松江市が玉湯小学校に発電設備を設置する計画があります。そして、松江市、浜田地区広域行政組合の可燃ごみ処理施設では、燃焼による熱エネルギーを利用して発電し、施設内の電気としての使用や、電力会社への売電を行っています。

出雲市においても可燃ごみ処理施設で発電を行っていますが、あそこでつくられた電気をいずも縁結び電力株式会社、いわゆる地域新電力を通じて市内の公共施設に供給されております。

このように県内においても取組事例がありますが、再生可能エネルギーの設備導入や、バイオマス燃料の供給などにつながる取組には、様々な主体による多様な参画の形があると思いますので、それぞれの取組が進むよう、引き続き検討してまいりたいと考えております。

藤井洋一地域振興部長答弁

県内交通事業者への上下分離方式導入について

島根県では一畑電車や隠岐航路などの広域的な公共交通については、関係市町村と協調して、上下分離方式も取り入れながら運行を支援しております。具体的には、一畑電車では上の部分に当たる電車の運行に係る経費を事業者が負担し、下の部分に当たる線路や電路、車両の維持修繕などを国の補助金も活用しながら、県と沿線2市で負担しております。

また、隠岐航路のフェリーおき及び超高速船レインボージェットにおいては、上の部分に当たる運航費を事業者で負担し、下の部分に当たる船舶の取得について、県と隠岐4町村で負担をしております。

一方で、バスは複数の市町村にまたがる幹線系統においては、車両に対する国庫補助の仕組みがあり、県も協調して支援を行っています。これに対しまして、幹線以外の系統では、車両購入の支援制度はありませんが、新型コロナの影響で厳しい経営状況にあることも踏まえ、特例的に今年度からの3年間、乗合バスの車両取得費の2分の1を助成することとしたところであります。

このように、県内のバス路線につきましては、車両購入の支援も行いながら、路線を維持するために、運行欠損額を行政が負担している状況にありますが、議員御指摘の上下分離方式の導入が運賃引下げにどの程度つながるかは、バスが鉄道や船舶に比べて、固定資産の償却に係る負担の割合が低いことも踏まえて、よく検証することが必要と考えております。

一方で、他県においては、バス利用者の減少を受け、新たに上下分離方式の導入を検討する動きもあるほか、津和野町では常用タクシーの維持確保のために、上下分離方式を導入されている事例があります。こうした先進的な事例を参考にしながら、バスと同じく地域の交通を支えるタクシーも含めまして、住民が利用しやすい交通の確保に向けてどのようなことができるのか、市町村と共に研究してまいります。

安食治外健康福祉部長答弁

生活困窮者の相談支援のマンパワー確保について

コロナの長期化による雇用情勢の悪化に伴う収入の減少に加え、物価高騰などにより生活に困難や不安を抱える方に対し、市町村の自立相談支援機関においては、就労や家計改善に向けた支援が行われているところです。

県では今年5月から7月にかけて市町村を訪問するなどして、相談支援の対応状況について聞き取りを行いましたが、相談支援の現場では相談内容が多岐にわたり、就労や家計改善に向け相談者に寄り添ったきめ細やかな対応が、これまで以上に求められていることが分かりました。

また、令和5年1月からは、生活福祉資金の特例貸付の償還が始まり、償還に伴う支援に加え、償還免除となった方の生活支援の対応も必要となり、相談支援を担う職員の負担はますます大きくなります。このため、即戦力として社会福祉士などの資格や、相談支援業務の経験を有する方などを新たに確保する必要がありますが、そのためには長期的な雇用を担保することも重要であります。また、人材の確保だけではなく、現在従事している支援員のさらなるスキルアップも必要となります。

市町村においては、国のセーフティネット強化交付金事業などを活用し、人材確保やスキルアップなどに取り組んでおられますが、こうした国の事業は次年度以降の継続実施が担保されていないことから、支援員の雇用が進まなかったり、非正規雇用の支援員が約4割を占めるなど、短期の雇用にとどまっている状況が見られるところであります。

このため、県では本年の9月補正予算において、国の交付金事業が今年度で終了する場合を想定し、来年度以降の5年間、支援員を長期の雇用も含め増員した市町村に対し、県独自で人件費の一部を助成する事業を創設するとともに、生活困窮者支援の豊富なノウハウを持つ民間団体から人材を派遣し、OJTによる支援員のスキルアップを図る事業を開始したところです。この事業の開始以降、一部の市町村では、支援員の増員による相談支援体制の拡充に向けた動きも見られるところです。

今般の社会経済情勢の悪化を背景とした市町村の相談支援体制の強化に関しては、その財源の確保は、基本的には国が責任を持って対応していただくものと考えております。

県ではこれまで国に対して、セーフティネット強化交付金をはじめとした国の財政措置の継続について、重点要望や全国知事会を通じて要望を行ってきたところであり、今後も引き続き財源の確保について国へ強く求めてまいります。

田中麻里商工労働部長答弁

観光、飲食、運輸業の支援について

観光、飲食、運輸の業界は、長期化するコロナ禍の中、行動制限もあって売上げが大幅に減少しております。この売上げの減少分は機会損失であり、その回復はなかなか困難な厳しい状況にあると認識しております。さらに、燃油価格や物価高騰の影響を幅広い業種で大きく受けている状況です。

このような状況の中、議員御指摘のとおり、資金繰り支援やコスト削減などの事業継続と、新事業の展開や生産性向上などの収益向上の両面を意識した対策が必要だと考えております。

まず、資金繰り支援につきましては、令和2年度のコロナ資金、いわゆるゼロゼロ融資の返済開始をきっかけに資金繰りが逼迫しないよう、本県におきましては据置期間を4年に、融資期間を13年に延長する条件変更に伴う負担の増加分を支援し、また新規融資に対しましては、保証率を一律0.3%まで大幅に引き下げるなど、最優遇とした特別資金を設けております。

また、事業者による省エネルギー、省電力となる設備の更新や機器の導入によるエネルギーコスト削減を図るための取組について、経費の一部を補助し、事業者の事業継続につながるよう取り組んでおるところであり、この事業の増額補正予算案を今議会に提案しているところです。

さらに、観光業や飲食業などの中小事業者が行う新たな取組に必要な設備の導入や改修について、経費の一部を補助するなどして、事業者の生産性向上を図るための支援を実施しております。

また、運輸業においては、これまでの公共交通事業者への運行経費等の支援に加えて、貨物自動車運送事業者に対し燃料費の一部を支援する補正予算案を今議会に提案しているところです。引き続き、こうした事業継続と収益向上の両面を意識した対策に、事業者の状況をきめ細かく把握しながら取り組んでまいります。

 

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