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自民党島根県連は11月9日から11日までの3日間、県内市町村や農林水産業、商工・製造業、医療、介護、福祉、金融など31団体の代表80人余から県内のコロナ禍や諸物価高騰の実態と必要とされる支援措置などについて意見聴取しました。
島根県では、少子高齢化による勤労世代の減少に加えコロナ禍や働き方改革の労働時間規制による人出不足が顕著となっており、有効求人倍率も全国平均より高くなっています。
社会生活には大きな影響が生じているコロナ感染は、中小企業に対する00融資や生活困窮者に対する特別貸し付けなどによって経済的な破綻は回避されていますが、社会がウィズコロナの向かう中で、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する石油・石炭の高騰は、電気料金、金属、建築用材、食品などあらゆる分野に及んでおり、とりわけ、コロナで大きなダメージを受けた旅客運輸業や輸入穀物や租飼料の急騰の影響をモロに受けている酪農業は経費の上昇分を容易に価格転嫁できないため厳しい状況となっています。
生産コストの上昇分を販売価格に転嫁することが困難な事態は、農林水産業全般に言えることですが、同様に、公定価格が適用されている医療、福祉、介護、保育などの分野でも多くの事業者が経営圧迫となっている実態があります。
医療や福祉系の職場は世の中が経済に重きをおく中で、感染するリスクを避けるため、旅行やレクリエーション参加の自粛など、社会生活を営む上で大きな制約を受けて勤務しており、職員の精神的負担が大きい上に、感染発生時にも施設が休めないため、職員の疲弊が増加し、離職が増加する傾向にあるとも聞きました。
諸物価高騰は大きな問題となりつつありますが、まだ、始まったばかりの段階であり、巷間伝えられている令和5年4月からの電気料金の大幅値上げや給与・賃金改定による人件費の上昇は、本格的な物価上昇の波の襲来を予測させており、仮に、日銀が金利の引き上げを選択すれば、若年世代の多くが抱える住宅ローンの返済を困難とするだけに大きな問題の芽があると感じるところですが、以下、知事のご見解をお尋ねしたいと思います。
はじめに、県内経済の現状認識について知事にお尋ねします。
2点目は農林水産業についてです。
農林水産業は生産経費を価格に反映ができないことが事業の継続に暗雲をもたらしていますが、経済安全保障、とりわけ食料の安定供給と言う観点から、食料生産に携わる地域や国内の農林水産業を守っていく必要性について消費者理解を進めることが大切です。野村農林水産大臣はフランスのエガリュー法に言及されましたが、再生産可能な価格保証制度の構築や生産資材の急騰などに対応して価格転嫁を可能にする価格指示制度の法令整備を図るなどについて県としても国に働きかけをお願いしたいと思います。
県内の農林水産業は、コロナによる需要低迷・価格低落によって経営収支に厳しい状況が続いていますが、燃油、電気、生産資材の高騰に加えて飼・肥料の急騰によって酪農などの経営は窮地を迎えており、つい最近、事業の継続を断念された酪農家も生じましたが、当面の支援と中、長期の支援についてどのように取り組みするお考えか知事にお尋ねします。
また、価格支配権を持たない農林水産業に対しては相対取引の拡大が有効とされますが、生産と販売を同時にするためにはマンパワーが必要です。残念ながら1人親方の事業者や集落営農の団体には専従でバイヤーとの交渉にあたることは難しく、そうした役割を担うのが、JAやJF,森林組合であり、これらの販売体制強化が不可欠だと思いますが、協同組合の経営力は国の組合改革によって大きく毀損している現状です。しかし、今こそ、こうした組織の出番であり、相応の役割を果たしてもらうためにも県は指導力を発揮して尻を叩いていただきたいのであり、相協調して有利販売に向けた取り組みを深めていただきたいと考えますが、この際、知事のお考えをお尋ねします。
3点目は人材確保についてであります。
トラック業界から女性の運転手は車の扱いが丁寧で、運転も優しく大歓迎ですが、県内にはロードサイドに大型車が駐車出来る公衆トイレが少なく、大型免許の取得ができる教習施設が少ないことがネックと聞きました。清浄な公衆トイレの設置が女性の就業に有効と言う観点には驚きましたが、若年者が高校卒業後に県外に出て行くのは県内に就学施設が少ないことが大きな理由で、女性向けの就労施設や業種が少ないこともあげられています。
島根県中小企業団体中央会の杉谷会長から、医師や看護、介護、保育などの業種には、一定期間、県内での就労を条件とする県の奨学金制度があるが、民間企業の参画を得て、あらゆる業種で、卒業後に県内での就労を条件とする奨学金制度を作ってはどうかとの提案がありましたが、知事はいかがお考えになりますでしょうか。
│掲載日:2022年11月30日│
県内経済は新型コロナの感染拡大の長期化によりまして、個人消費、生産活動とも停滞しておりましたけれども、現在は緩やかに持ち直しの動きが見られてきているものの、ウクライナ醸成や円安などに伴います原油、原材料、物価の高騰が続いておりまして、県内経済を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあるという認識でございます。
個人消費につきましては、今月発表されました10月の全国消費者物価指数は、前年同月比で3.6%の上昇であり、この数値は約40年ぶりの高い伸び率となっております。
本県におきましては、松江市の指標となりますけども、2.4%の上昇となっております。ただ、これは松江市が実施されました水道料金の減免の影響が入っておりますので、全国と同等に物価が上昇していると見る必要があるというふうに思っております。
40年前の物価上昇は、同時に賃金も上昇するという局面であったことと比べますと、今回の物価高騰は、県内の消費動向に、より深刻な影響を与える懸念があると考えております。
次に、企業の業況につきましては、今月実施しました県内企業112社を対象とする県独自の業況調査によりますと、新型コロナウイルスの影響前であります令和元年の同時期と比較して売上げが増加した企業は36%、減少した企業は45%でありました。ここ1年は改善傾向にあるものの、全体としてはコロナ前までに回復するという状況には至っておらず、特に宿泊、飲食、卸小売業で回復が遅れている傾向がございます。
また、エネルギーコストと原材料費の高騰は、それぞれ89%、83%の企業に影響を与えておりまして、大きな経営課題となっておるとこでございます。
さらに、信用調査会社によりますと、全国的に物価高倒産、円安倒産が夏以降急増しているとされまして、県内ではまだ顕在化していないものの、今後の注視が必要だというふうに考えているところでございます。
雇用情勢につきましては、本県の有効求人倍率が直近の10月で1.71倍と全国で2番目に高い水準で、人手不足の状況が続いている状況でございます。中でも建設業、飲食・宿泊業、福祉関連業、製造業で不足感が大きくなっておりまして、人材確保が今後の経済回復に向けて大きな課題となるものと捉えておるところでございます。
こういった諸情勢を踏まえまして、引き続き状況をきめ細かく把握しながら、状況に応じた対策を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
コロナの影響によります消費の低迷や、ウクライナ侵攻、円安などによります燃料、肥料、飼料などの価格高騰は、生産資材の多くを輸入に依存します農林水産業に大きな影響を与えております。
県では、この資材価格の高騰に補填を行う政府の事業の想定を超える急激な価格高騰が経営に及ぼす影響をできるだけ緩和するために、緊急的な措置といたしまして、国の事業と連携し、肥料、飼料価格の高騰分への補填、そして農業者、また業者を対象とした低利融資の創設などの対策を実施をしているところでございます。
加えて、中長期対策といたしましては、国に対してセーフティーネット事業の充実強化や、適切な価格転嫁が実現できるような環境を実現するための飲食需要喚起対策など要望をしていくとともに、県の事業といたしましては、畜産農家が耕種農家などと連携いたしまして、飼料作物の生産や堆肥の利用を拡大する取組に対する支援、また低コストを技術や反収の向上、肥料低減マニュアルの実践などによる水稲などでの生産コスト削減、そして水田園芸の導入によります収益性の高い経営への転換や、エネルギー効率の高い農業用ハウス、林業、水産業における省エネ機器の導入、また高性能の漁船や、選択的に漁獲できるシステムの導入といった取組を進めているところでございます。
今後の飼料や肥料などの価格の動向は不透明でございますので、県といたしましては国に対して全国的な状況に対応した全国的な対策を政府で行っていただくこと、そしてその上で各地域の独自の状況に対して対応できる財源を国に求めながら、対策を検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
零細な経営体が多い農林水産業において、この販売量や品質を確保し、価格交渉力を確保して販売していくためには、JAなどの協同組織の役割が重要であります。
特に、農業や漁業においては資材高騰などによる生産コストが上昇する中で、この再生産価格を確保するためには、価格を全て市場に委ねるのではなく、量販店や加工業者などの実需者と直接取引をしていくことが有効でありまして、JAなどで積極的に進めてもらう必要があるというふうに考えております。
現在もJAでは県と共に取組を進めております水田園芸において、加工事業者などとの量、価格、期間を定めた取引を行います契約取引を進めておりまして、現在キャベツでは約5割、タマネギでは約6割が契約取引となっているところであります。
JFにおきましても大手流通業者との直接取引などの取組も行われているところであります。
森林組合につきましては、輸入材の減少によって国産材の需要が高まっているという状況にございますので、森林組合連合会が運営されておられます原木市場の拡張の検討のほか、関係者が連携して原木市場以外に製材工場等へ直送する販売体制を構築するなどの取組が行われているところであります。
県といたしましては、それぞれの協同組合において組合員が置かれた状況、その声を踏まえて、組合員の所得向上に向けて販売体制の強化の取組を進めてもらうとともに、必要に応じて取組に対する支援を考えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
あらゆる業種を対象とした奨学金制度は、当然対象者が広がることで財政負担が非常に大きくなります。議員から御指摘のございました民間企業、経済界等からの拠出をこの経済環境が厳しい時期に大幅に求めていくことは、現実的ではないと考えておりますので、拡大分のほとんどは財政負担というふうに考える必要があるというふうに考えております。
そして、奨学金を借りずに学業を終えて、同じように県内就職をされた方、例えばそもそも高校卒業後に就職をされる方、そして進学等される際に奨学金を借りられない方、そういった方々や、その保護者に御理解をいただけるかという大きな課題がございます。したがいまして、その実現は困難でありますので、県としては人材確保の目標などを定めております、国家資格を持つ方が一定期間就業されるといった場合に限定して、こういった制度を実施している状況でございますので、この点御理解をいただきたく存じます。