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若者や女性の県内へのUIターンを促進するためには、魅力のある職場となる環境整備や付加価値を向上させて給与、賃金水準を高めることが大切だとする認識が示され、所要の対策が執られてきています。令和5年度予算においても設備投資や雇用や労働環境の改善、金融支援など、各般に亘る対策が措置されています。
ところで、WEB上で示される都道府県の給与や所得のランキングでは東京などの大都市圏と比べると大きな差異があるように言われていますが、県内民間企業の給与水準の状況についてお示しください。(商工労働部長)
給与水準を向上させるためには、設備投資や無形資産投資(人材育成)によって生産性を向上させ、付加価値を上げていくことが不可欠としてそうした対策に多くに予算が準備されていますが、これをホップ、ステップ、ジャンプに例えると、問題点の探求、改善の計画策定段階がホップ、資金を準備して投資を実行する段階がステップ、実際に稼働を始めて付加価値が上昇して賃金、給与が上昇する段階がジャンプだと思います。県が用意している施策は、営業で言えば、マーケティングにあたる部分が不足しています。県内企業の多くは、例えばものづくりの現場では、生産技術の分野、サービス業の分野では宣伝、市場開拓にあたる分野の人材のほとんどを経営者が担っており、必ずしも専門的知見を有しているとは限らないため、投資と生産性向上にミスマッチを生じていることは少なくないのです。島根県に必要なことは、現状、事業不振からの脱却や再生に力点が置かれている計画策定の支援に加えて、現場の問題点や改善点を指摘できる人材、例えばコンサルタントの派遣などを厚くすることが大切だと考えますが、知見をお尋ねします。(商工労働部長)
│掲載日:2023年02月21日│
厚生労働省が毎年公表している賃金構造基本統計調査の、従業員が10人以上の事業所規模の正規、非正規を含めた所定内給与額によりますと、令和3年の県内民間企業の平均の給与月額は25万9,000円です。これは、全国平均の30万7,000円の84%、東京の36万4,000円の71%の水準となります。
次に、従業員数の規模別では、10人から99人で23万6,000円、100人から999人で26万円、1,000人以上で30万3,000円となっていることから、企業規模が大きくなるにつれて給与月額も高くなっている状況です。
次に、業種別では、給与月額が高い順に、金融・保険業が30万1,000円、建設業が29万6,000円、情報通信業が27万1,000円、製造業が25万1,000円、卸・小売業が25万円、宿泊・飲食・サービス業が21万7,000円となっており、業種により大きくばらつきがある状況です。
次に、新規学卒者の給与月額ですが、高校卒業で16万7,000円、専門学校卒業で18万3,000円、高専・短大卒業で18万1,000円、大学卒業で20万9,000円となっており、いずれも全国平均の約90%の水準となり、東京都と比較すると、高校卒業で84%、大学卒業で90%の水準となっております。
企業が付加価値向上に向けた取組を行う場合、現場や市場の状況を的確に把握した上で進めることが重要であると考えております。特に、コロナ禍の長期化やエネルギー・原材料価格の高騰、DXや脱炭素化などの進展により先行きが不透明な現状におきましては、経営資源が限られている中小企業がその経営の方向性を定めることが今まで以上に必要になると認識しております。
県では、企業が現場改善や販路拡大、新規事業などを検討する場合、各企業の実情に合わせた課題整理や経営計画の策定を支援するため、全業種を対象とした事業継続力強化アドバイザー、製造業向けのものづくりアドバイザー、デジタル化や脱炭素化のような個別課題専門のアドバイザーなど、様々な分野や課題に対応したコンサルタントなどの専門家を派遣する取組を行っております。
また、産業振興財団に設置しているプロフェッショナル人材戦略拠点では、専門的知見や高度スキルを有する人材を副業、兼業で直接雇用や事業委託する場合の人材紹介や助成制度を設けています。さらに、中小企業基盤整備機構や商工団体、金融機関においても独自のアドバイザー制度があります。
県といたしまして、今後は、県や各団体のアドバイザー制度を企業に分かりやすい形で情報提供し、外部人材をより有効に活用していただきながら、商工団体や産業振興財団などの支援機関と共に県内企業の取組を支援してまいります。