県議会だより

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2月定例県議会一般質問(4)

県内の高等教育機関について

島根県では、高校卒業後の進学に際しての選択肢が少なく、60%を超える卒業生が県外に出てしまうという構造的な問題があります。この状況を脱するためには、どうしてもこの問題に取り組む必要があります。一朝一夕で解決する問題でないことは理解していますが、コロナ禍でのホームワークやWEB授業、テレワークの状況は、大学や高等教育機関のWEBやサテライト教室の実現を可能にするとの予感を持たせています。

 

 県内の高等教育機関、所謂、大学や専修学校の存置の状況および就学(定員の充足など)の現状についてお聞かせください。(政策企画局長)

 

 大学や専修学校、高校でのWEB授業の状況と高等教育機関の県内でのサテライト教室の現状についてお聞かせください。(政策企画局長)

 

文化勲章を受章された東洋思想、哲学の大家である中村元先生は松江市出身で、松江市八束町の中村元記念館には先生が生前に集めた約3万冊の蔵書が収められており、東洋思想、哲学を修める人々が集う場となっており、仏教系の大学のサテライトキャンパスとなっていますが、はじめに、中村元記念館に対する認識をお尋ねします。(政策企画局長)

 

中村元記念館の運営には松江市をはじめ山陰合同銀行や県内の企業も資金協力をしてきています。島根県は古代歴史文化賞の取組みを休止しましたが、島根県発の学術、文化賞では陶芸の「田部美術館賞」と「中村元東洋思想文化賞」が全国的なものですが、「中村元東洋思想文化賞」についての知見をお尋ねします。(政策企画局長)

 

公益財団法人中村元東方研究所東方学院は、関東、中京、関西に拠点を持つ東洋思想、哲学の研修組織で、その中核となる研究者が中村元記念館にも名を連ねており、この場所は知られざる知の拠点です。折角、こうした施設があり、島根大学や県立大学のみならず関東や関西の大学との接点もありながら、一般の認識も低く、十分な活用が図られているとは言い難いことは悔しい気がするのですが、島根県は、こうした施設をもっと活用、対外発信すべきだと思いますが、知見をお聞かせください。(政策企画局長)

 

太田史朗政策企画局長答弁

県内高等教育機関の設置状況について

令和4年度入学者の状況ですが、島根大学が、定員1,157人、入学者1,181人、充足率102.1%、県内出身者の割合23.1%となっております。以下、同様に各機関ごとにお示ししますと、島根県立大学が540人、579人、107.2%、47.0%。松江高等工業専門学校が200人、210人、105.0%、92.4%。大阪健康福祉短期大学が40人、41人、102.5%、85.4%となっております。県内には、このほか、医療、調理、理美容、IT等といった私立専修学校が14校あり、その合計値ですが、定員1,600人、入学者922人、充足率57.6%、県内出身者の割合73.5%となっております。

太田史朗政策企画局長答弁

県内高等教育機関でのリモート授業の現状について

まず、オンライン授業の状況ですが、島根大学、島根県立大学では、コロナ禍が始まった令和2年から3年におきましてオンライン授業が主流でありましたが、現在はほぼ対面での授業に戻っております。専修学校におきましては、対面を基本としながらも、必要に応じオンラインを活用されたというふうに伺っております。大学において長期的に行われていたリモート授業でしたが、学生からは、モチベーションの維持が難しい。孤独を感じる。目が疲れる。コミュニケーション力の醸成や実習が難しい、できないといった意見が聞かれ、高等教育機関として整理する課題が多いと聞いております。

高等学校におきましては、コロナ禍においても基本的には対面で授業が行われており、必要に応じて、自宅療養等の生徒に対してオンラインによる学習支援が行われておりました。

また、今年度から石見地域の4校で、教員配置の少ない学校における多様で質の高い教育の調査研究を行うための遠隔授業を行っており、拠点校の益田高校や津和野高校からオンラインで授業を配信し、受信する学校の開設授業を増やす取組を行っているところです。

県内のサテライト教室の現状でありますが、島根県立大学では、高校生とワークショップなどが行えるYASUGI未来アトリエと、地元との交流拠点となる津和野サテライトオフィスを開設しておられます。神奈川県の麻布大学が美郷町にフィールドワークセンターを開設しておられ、野生動物を用いたジビエ料理の加工技術の研究、有害鳥獣被害対策研究、現地指導、学生が来訪してのゼミ活動などを行われております。フィールドワークセンターから麻布大学本校へのオンライン授業も行われており、今後、こうしたICTを活用した取組を他大学や他地域へも広げ、フィールドワークセンターの魅力をこれまで以上に高めていきたいといったことも聞いております。

こうしたことを踏まえますと、場所や時間を問わず受講できるオンライン授業のメリットと対面でしか得られないメリットがあり、これをどのような割合で組み合わせ、より魅力的な教育環境をつくっていくのかといったことを各教育機関が模索されている段階と受け止めております。

太田史朗政策企画局長答弁

中村元記念館について

中村元記念館は、中村博士が設立されたインド哲学や仏教学を学ぶ東方研究会の当時の理事長や県内の商工団体、経営者等が発起人となり、平成24年10月に開館しました。記念館の運営は、その発起人の方々が設立されたNPO法人中村元記念館東洋思想文化研究所が行っております。記念館は、中村博士の御遺族から寄贈された博士の著作や論文を含めた3万3,000冊に及ぶ資料等を所蔵しておられ、インド哲学や仏教学を中心とする東洋思想を学ぶ方にとっての貴重な研究及び普及施設となっております。

このほか、非常勤の東洋思想研究者10名を中心に、東洋思想、文化に関する研究や講座、イベントなどが行われております。また、この蔵書は研究所のみならず一般の方も閲覧いただけるように管理されており、子どもたちにも博士の慈しみの心に触れてもらえるよう、書籍紹介や自習室の開放など、教育に関する事業にも取り組まれております。

このような取組から、平成24年の開館以降、令和3年度末までの来館者数は6万9,500名余りとなっております。今年度は、開館10周年の記念イベント等が実施されまして、12月末までに4,629名の方が来館されており、研究者のみならず地域の方にも親しまれている施設だと認識しております。

 

中村元東洋思想文化賞は、記念館を運営するNPO法人により、記念館の事業として平成26年10月に創設されました。島根大学や島根県立大学など記念館と連携する大学を含む全国約100校の大学を対象に、東洋思想研究を志す大学生及び大学院生の優れた論文を検証し、今後の研究を奨励することを目的としています。優れた論文には、優秀賞、松江市長賞、奨励賞の3賞が授与されます。これまで7回実施され、延べ19名の方が受賞され、奨励金が贈呈されております。この賞が次世代を担う研究者を後押ししていると承知いたしております。

 

中村元記念館では、中村博士が設立された私塾、東方学院の理念を継承する東方学院松江校を平成25年4月に開校されました。昨年度は、オンライン会議システムを利用し、連携する大学から講師を招き、17講座を実施されたほか、5回の文化講座を実施されております。記念館からは、オンライン会議システムを取り入れたことにより関東や九州からの受講者があった。今後、記念館から離れた場所に在住されている方々にも参加いただけるよう取組を進めていくと伺っております。

県としましては、NPO法人中村元記念館東洋思想文化研究所の御意見をお聞きしながらNPO活動に対する支援を行うほか、情報発信についても協力をしてまいります。活用につきましては、議員の御指摘は、交流人口の拡大など幅広く活用してはどうかといった趣旨と拝察いたしますが、現時点ではそうした視点からの県としてのアイデアは持ち合わせておりませんが、今後、こうした他大学との連携が進展し、NPO法人や関係機関から県の施策目的の推進に活用できる事業提案があれば、県として検討してまいります。

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