和而不流(和して流れず)

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社会システム全般の改革の必要性を国民に説明すべき

枯死寸前に見える自民党だが、地方にはまだ丈夫な根が残っている

衆議院選挙で自民党が歴史的な惨敗を喫し、政権交代が実現した。経済成長戦略を掲げ、敗戦後の日本を世界有数の先進国に導いたプロセスから、政治の役割を持続・安定へ移行させる途を国民自らが選択したということである。
日本は、経済成長で生ずる税収増が、社会保障や地方に対する補助金、交付金制度の拡大いわゆる行政サービスの高度化に充てる財源であり、経済成長がなければ、少子高齢化の進行による医療や福祉給付の自然増に対応できないばかりか、所得や地域間格差を縮小させる「富の再分配」ができずに格差を拡大させることは必至である。残念ながら、自民党は政権党として、社会システムの改革プランを国民に示すことができなかった。「出直せ」と言われても仕方のない仕儀だと思う。
国は財政法第4条で「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定しながら、但し書きで「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と例外的に建設国債の発行を認めてきた。しかし、戦後初めて、昭和40年度の補正予算で一時的に赤字を補填するためにいわゆる赤字国債が発行され、昭和50年に赤字国債の発行を認める1年限りの公債特例法を制定してからは、平成初年の3年間を除いて、現在まで発行し続けており、その金額は拡大する一方である。つまり、従来の社会システムは機能不全を起こしており、抜本的な改革を行わなければ日本の財政制度が崩壊すると言うことである。
今回の衆議院選挙では与野党を問わず「小泉改革が格差を生んだ」と言われたが、必ずしもそうは思わない。国は、50兆円あまりの税収で80兆円もの予算を編成する状況を10年以上も続けているが、著しく少子高齢化が進行し、経済が低迷する中、所得や地域間格差を是正しようとすれば、国債の発行を拡大させる以外に方途は限られており、社会システムを大幅に変革しなければ対応できないとする小泉元首相の意見は当然で、だからこそ多くの国民が支持したのだと思う。
年金制度は未加入者の増加によって生活保護制度との矛盾が表面化し、医療制度は高齢化による医療給付の増大が世代間格差を拡大させている。都市と地方の財政力や道路、下水道など社会基盤の整備水準の格差をどうするのかなどについて、自民党は社会システム全般の改革の必要性を国民に説明し、大胆に制度の作りかえを起案すべきだ。大きな政府を志向する民主党は、いずれ財源問題で政権運営に行き詰まることは自明であり、目先の問題対処よりも、時間をかけて住民と向き合い、対話し、時代に相応しいしくみや基本政策の土台を築くことが必要である。確かに2年前の参議院選挙と今回の衆議院選挙で自民党は敗北し、枯死寸前に見えるが、どっこい、地方にはまだ丈夫で強い根を張っている。

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