和而不流(和して流れず)

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消費税の改定が本当に「税と社会保障の一体改革」の目的だろう

現状では「ムダの根絶」を放棄して歳出を拡大させた民主党政権の「失政のツケ廻し」にしか過ぎない

国会で平成24年度予算の審議が始まり、野田内閣は消費税の税率改定を柱とした「税と社会保障の一体改革」について大綱を閣議決定し、必要となる法律案を3月末までに国会に提出するとの報道がされ、いよいよ国会でも関連する議論が白熱してきた。
民主党は「ムダの根絶」を掲げて国民の支持を集め、政権奪取を果たした。しかし、事業の中止や政策の見直しで捻出された財源は、マニフェストの17兆円にははるかに及ばない2兆円ほどで、子ども手当や高校無償化などのバラまきと整備新幹線の着工、エコカー減税など、財源をすべて国債の増発で賄う予算編成を続け、自民党政権時代に比較して、実に年間14兆円もの歳出拡大が続いている。
民主党が政権を奪取して最も実現したかった事は何だったのだろうか。「脱官僚依存」「コンクリートから人へ」といった政権交代の原動力になったキャッチフレーズは早々に姿を消した。「高速道路無料化」「子ども手当」といったマニフェストの柱も次々と腰折れしている。自民党政権が、医師会や厚労族議員の猛反発を押し切り、毎年2200億円の圧縮が続けた医療費は民主党が引き上げを決定した。
欧州の通貨危機はギリシャなどの国家財政の赤字に端を発したもので、日本も余所事ではなく、財政赤字の圧縮と少子・高齢化に伴う社会保障コストの捻出のために一定の国民負担はやむを得ないとするのが一般的な認識である。ところで、マスコミによる「増税の前にやることがある」との論陣をうけ、国会議員の定数削減や公務員の人件費削減について与野党で関連法案の協議が進められている。もとよりその事に異議はないが、2011年度の予算ベースで見ると、医療費の33.6兆円に加えて、年金で53.6兆円、介護や福祉といったその他で20.6兆円の合計107.8兆円がわが国の社会保障の全体の給付費だ。なぜ、年金や医療費の給付が年に1兆円ずつ増加するための財源に、5%もの消費増税が必要なのかという説明は、今もって聞こえてこない。
政府答弁では、国内総生産がプラスとならず、自然増収が見込めない中では、消費税の改定を行っても、実質的に社会保障の財源として充当されるのは1%程度で、大半は「予算規模拡大のツケ廻し」の後始末に充当されてしまう可能性が強いことが明らかにされている。消費税の改定を提起する前に、まず、民主党政権自らが肥大させた歳出の縮減をすべきで、それが「増税の前にやることがある」の正しい方途・解答ではないだろうか。
予算の60%を国債で賄うなどとても正気の沙汰ではなく、財政規律の確立が一番に求められることであり、不要不急の歳出削減と徹底した行政機構の整理・統合・縮小が喫緊の課題である。失政のツケを増税で帳消しにしたあげく、深刻な消費不況で国内経済を破綻させる愚挙を犯してはならず、与野党協議は「負担と給付のありかた」を徹底議論し、政治の混乱による国家の危機から一日も早く脱してもらいたいと思うのは私だけではあるまい。

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