和而不流(和して流れず)

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第2次野田改造内閣の発足に思う

「民主党に人材なし」 国政の先行き見通しは暗さを増したと見る

野田首相は参議院での問責閣僚を更迭し、防衛大臣に森本敏拓殖大大学院教授を起用するなど、第2次野田改造内閣をスタートさせた。森本教授は自衛隊幕僚と外務省情報調査局安全保障政策室長の履歴を有する安全保障論や国際政治などの専門家であり、過去に安倍内閣の日本版NSCのメンバーや麻生内閣の防衛相補佐官を務め、鳩山内閣の普天間迷走に「国を誤る」など、民主党の外交・安全保障政策を鋭く批判してきた。野田首相は森本教授の起用について「安全保障に関する我が国の第一人者で、防衛情報の分析や発信に貢献いただける」としているが、緊迫しつつある尖閣など東アジア情勢よりも国の防衛にあたる最高責任者を政治家でない人に委ねることにシビリアンコントロールが有効に働くか否かなど、要らざる議論が繰り返されることは必至である。
首相は「内閣の機能強化」と強弁するが、菅前首相が地域主権改革を担当する総務大臣に片山康博慶大教授を起用したことに続いて、民主党の政策に批判的な民間人に、マニフェストに掲げた主要政策を事実上「丸投げ」し、変更・放棄させる手法は、政治主導という政権運営のかたちを放棄することに等しい。「民主党に人材なし」を露呈させるもので、甚だ無責任である。閣僚の民間人起用は、もとより憲法に反するものではない。しかし、民主党は前の総選挙で、日本の議院内閣制を官僚内閣制であると批判し、政治家主導によって、政策形成や意思決定、政策転換を行うとした。地域主権を確立、ムダを排除して実現すると主張した政策給付から現金給付への転換は「財源の裏付けの無きバラ撒き」となって瓦解寸前であり、いま、そのツケを消費増税に求めていることは明らかである。
政権党が掲げた政策と真っ向から異なる指摘・批判を行ってきた民間人を政府機関のアドバイザーならいざ知らず、主要閣僚に起用することには大きな違和感があり、国民の政治不信をさらに増嵩させることは自明である。仮に、今回の内閣改造がきっかけとなって与野党協議がまとまり、国会で消費税率引き上げ法案を可決したとしても、「大義」を放棄した政党に民心が集まるとは到底考えられず、国政の先行き見通しはさらに暗さを増したと感じる。

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