和而不流(和して流れず)

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「想定外」。動き出した竹島領土権問題

李明博大統領の上陸によって世論喚起が図られました

島根県議会は平成17年に「竹島の日を定める条例」を制定し、2月22日を「竹島の日」と定め、竹島問題についての国民世論の啓発を図ることとしました。島根県と島根県議会は再三に亘って政府および国会に対し、国際司法裁判所への提訴を含む韓国の不法占拠に対する毅然とした外交的対処、教科書への記述による学校教育での対処、政府部内への担当部署設置など、領土権確立に向けた具体的措置を求めてきましたが、その対応は極めて鈍いもので、毎年2月に開催する「竹島の日記念式典」への政府関係者の参席は見送られ、ようやく本年4月に憲政記念館において超党派でつくる領土議連の協力によって東京集会を開催しましたが、メディアの露出は微弱で中央のマスコミ報道はほとんどされないなど、然したる進展は見られませんでした。
李明博大統領は就任の前から「日本に対し、過去をめぐる謝罪や反省は求めない」と言明し、訪日の際に天皇、皇后両陛下と会見して韓国訪問を直接招請、首脳のシャトル外交を復活させるなど未来志向の姿勢を示してきました。しかし、昨年12月、京都の首脳会談で従軍慰安婦問題に言及、本年8月10日に竹島上陸など、対日強硬姿勢への転換で日韓関係を急激に冷却化、さらに天皇への謝罪要求と首相親書返却によって日本の国民世論を沸騰させました。このところ、メディアは連日、『日本固有の領土である島根県の竹島』との形容をつけたニュースを配信しており、「冷静対応」として抑制してきた政府も大使の召還、「韓国の不法占拠」に言及、国際司法裁判所への提訴、担当部署の設置を検討するなど急展開を見せています。
外交筋によれば日本政府の猛反発は韓国の想定外とのことですが、60年近くも韓国が実効支配してきた独島が李大統領の上陸によって「竹島問題」という大きな外交問題として世界に配信され、クローズアップされたことは島根県にとって積年の事態から脱却できるという点からは歓迎すべきことなのかも知れません。李大統領の上陸という行為は極めて遺憾で看過出来ませんが、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。事態は予期せぬ思わぬ方向に向かって急激に動き出したように思えます。しかし、同時に、平和だった山陰沖の海が否応なく韓国のみならず周辺国の外交的な駆け引き、パワーゲームの表舞台となったという意識を持つ必要を感じました。

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