和而不流(和して流れず)
Columns
衆議院選を前に
国の有り様について真剣に考える機会としてください
民主党は成長を前提とする利益配分構造から脱せないままだった自民党の一党支配を崩す役割を果たしました。時代の要請に応えるために、しがらみを排し予算のムダを排除するという民主党の主張は、徹底した情報開示による予算編成の透明化がまず必要で、首相直属の国家戦略局によって国家ビジョンを策定するとする構想であり、劣化した社会システムを変えてくれるかもしれないと小生も期待しました。
しかし、民主党政権は国民の期待を大きく裏切りました。政権与党としての力量と人材の不足は政治主導どころか官僚台頭を招いた観さえあります。鳩山首相の躓きは米軍普天間基地移設問題の迷走によって外交的な敗北を喫したことであり、菅首相は東日本大震災の対応に危機管理能力の欠如を露呈しました。党内の主要政策を巡る対立の頻発によって政権党の責務である予算や法律案の提案が遅延したことは、基本政策や理念の共有という政党のイロハが欠如していることを見せつけるものであり、大量の離党者によって党が分裂したのは、マニフェストの矛盾によって自壊したと言っても過言ではありません。
小選挙区制という選挙制度によって、政党本位の政治を実現するためにマニフェストは欠くことのできないツールであり、個人の意見によってそれに反することは制度の否定に通じます。多くの政治家が今回の衆院選を前にした政党の乱立を、社会構造や国民意識の多様化が進む中で政党が多党化するのは当然の流れとして肯定しますが、これは、政権交代可能な2大政党制の確立によって政治改革を実現させるとしてきた自らに背信する所作であり、「政権ごっこ」による政治の混迷が続くことを危惧するのです。
民主党と自民党に第三極が対決する今回の衆院選の争点は、本来であれば政党が「憲法」「国のあり方」「負担と給付」など国家経営に対する基本政策の違いを前面に掲げて臨むべきですが、「原発」「消費税」「TPP」など、目前の課題に対する賛否に矮小化され、メディアの反応に左右されていることを残念に思います。「どこも大差ない」として今回の選挙を敬遠する予測がありますが、政権交代を実現したことも政治の劣化を加速させたことも紛れもなく選挙の結果であることを考えれば、ここはもう一度、真剣に国の有り様について考える機会としていただきたいと思います。
│掲載日:2012年12月03日│
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