和而不流(和して流れず)

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「敬怠に勝つは吉、怠敬に勝つは滅ぶ」

平成29年度の政府予算で感じること

800年ほど前に中国で朱子と劉子澄によって、四書五経をはじめとする古い書物の中から大切な教えを『小学』としてまとめられた古典の一節に「古の小学、人を教うるに、洒掃、応対、進退の節、親を愛し、長を敬し、師を隆び、友に親しむの道を以てす。皆身を修め、家を齊え、国を治め、天下を平らにするの本と為す所以なり」とあります。その意は、「『小学』においては、まず人を教えるのに洒掃、応対、進退の大事なところ、そして親を愛し、目上の者を敬い、先生を尊び、友を親しむ。そういう道を教えることは、自分の身を修め、家を斉え、国を治め、天下を平らかにするもととなる(洒掃は掃除を意味し、応対は挨拶、進退は立居振舞いを指す)」と言うもので、戦前の日本で『修身教育』の根本とされました。
政府は12月22日、2017年度予算案を閣議決定しました。高齢化で医療や介護などの社会保障費は前年に比べて4997億円増加の32兆4735億円に膨らみ、公共事業費5兆9763億円、防衛費5兆1251億円などを含めた一般会計の歳出総額は過去最大となる97兆4547億円で、歳入は、税収を名目経済成長率の見通しを2.5%として景気回復による増を見込んで57兆7120億円を計上したものの、国債発行額は34兆3698億円で、依然として国債依存度は35.3%の高率で、基礎的財政収支も10兆8413億円の赤字となり、危機的な財政状況は一向に改善されません。
また、『小学』には「敬怠に勝つは吉、怠敬に勝つは滅ぶ」とあります。これは「吉を望み、存を望むのであれば、人に対する前に己の身を慎み、人に対する前に自分自身になすことが寛容」の意ですが、負担を求めず、将来世代へのツ廻わしによる給付を続けている国の有り様は「まさに滅びに向かっている」のではと訝しく思うほどです。憲法25条に規定されている生存権は尊重されるべきですが、人間には「生まれたら必ず死する」という宿命があることを政治家は逃げずに議論すべきであり、医療、福祉、介護など、社会給付の範囲と水準、負担のありかたについても徹底的な見直しを図っていただきたいと思います。国民1人あたり1000万円の債務のほとんどは現役世代、とりわけ高齢者の年金と医療、介護給付費で消費されており、次世代への重い負担として遺す状況を1日も早く解消する努力を怠ってはなりません。

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